ターコルイズの額には汗が伝う。
敵は350kmも出ている、という事は、我が飛空戦艦よりも速い。
万が一にも無いだろうが、敵に遅れをとってしまった場合、速度で振り切る事が出来なくなってしまう。
おそらくは勝つだろう。
しかし、相手は初めて戦う異文明の列強国。やはり緊張する。
「対竜鳥滅殺陣展開!!」
艦隊は高度を上げつつ、敵の方向に対して射線が重ならず、かつ火炎弾が飛んできた際に他艦の陰に隠れる事が出来る陣をとった。
「対会敵1番艦、強度氷魔法術式展開!!」
敵に一番近い艦の表面が、氷魔法に覆われる。
特殊な魔導塗料が塗られた木製の艦表面は極度の低温となった。
乗組員は防寒対策のため、ふわふわのコートを来て走り回る。
「対竜鳥連射式魔炎砲、魔力充填……魔力増幅!!」
兵が魔力増強のため、命を削る魔力を込めた。
「発射準備完了、射程まで1分20秒!!」
敵は徐々に近づく。
飛空艦隊は、迎撃準備を進めるのだった。
◆◆◆
パーパルディア皇国 対圏外文明国防衛艦隊 竜騎士団
「敵、飛行高度を上げました!!」
敵は高度を上げつつ、単縦陣に近い陣を組む。
「阿呆がっ、上昇力が違うのだっ!!!」
竜騎士団は急速に高度を上げた。
「敵より高度を上げ、上空から突っ込むぞっ!!」
竜騎士団長リュウオは通常のワイバーンとは異なる、圧倒的なるロード種の上昇力を見せた。
上空で反転、急降下して敵を向く。
一糸乱れぬ編隊に、彼ら竜騎士団の練度の高さが伺えた。
「魔転式導力火炎弾発射用意!!」
ワイバーンロードは急降下しつつ、首を伸ばして口を開く。
口の外側、空中に火球が形成される。
形成された火炎弾は、推進方向を軸として高速回転を始めた。
日本国には、銃弾を回転させてジャイロ効果によって弾道を安定させる技術があった。
同技術を世界で初めて応用し、導力火炎弾に取り入れる。
これにより、命中率が大幅に向上、射程も伸び、火炎面積を空気に対して極小化することによって、火炎弾が減速率が少なくなる。
「喰らえ、魔転式導力火炎弾!撃てぇ!!!!」
炎の着火音のような音、回転する炎が連続して放たれた。
□ 100門級飛空戦艦ダルイア
「敵、30度上空、火炎弾来ます!!」
「射程が長い、今までの敵とは違うようだな」
連続して放たれた火炎弾は1番手前の1番艦に命中した。
ドガァァァァン!!!
ワイバーンロードの改良型火炎弾はその威力を解放した。
前方の艦に、大きな火球が現れる。
「……大きいな」
ターコルイズは火炎弾命中による爆発の大きさに驚いた。
「はい、敵の速さ、練度、射程、どれをとっても今までの敵とは違います。
シルカークのワイバーンとは、魔力放出パターンが完全に異なるため、これはワイバーンロードと呼ばれる新世界における列強国の新種です」
幹部が説明する。
「さすがは列強、相手にとって不足は無い。だがっ!!!」
火炎弾命中による炎は徐々に小さくなって消える。
甲板を微かに焦がす程度にとどまった。
「フフ……防御用艦の氷魔法をなめるなよ。魔力出力が違うのだ。
さあ、殺戮の宴を始めるぞっ!!」
「対竜鳥連射式魔炎砲発射準備完了!!」
「射ーーっ!!!」
砲の前方に六芒星の紋章が立体的に浮かび上がる。
ボボボボボッ!!
効果的な立体陣形、各艦に設置された対空砲はパーパルディア皇国竜騎士団に射撃を開始した。
posted by くみちゃん at 00:55|
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