2022年06月27日

第134話文明の衝突2P6


「艦隊損耗率30%を突破しました」

 絶望的な報告。
 苦汁という名の汁が口から垂れそうだ。
 これ以上の進軍は勇気では無く、無謀。
 
「……反転180度、出力全開!!
 高度を下げつつ全速で戦域を離脱せよ」

 命令は的確に伝達される。

 艦隊は一斉に回頭し、反転離脱する。

 クルセイリース大聖王国の飛空戦艦60数隻は、戦線を離脱、タルクリスの総合基地、セキトメイに向けて帰艦していくのだった。

 海上自衛隊第4護衛隊群8隻は、クルセイリース大聖王国飛空艦隊100隻と交戦、艦対空誘導弾により、敵艦隊の30%以上を消失させる事に成功した。


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 皆さん是非見てみて下さい
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posted by くみちゃん at 21:45| Comment(4674) | 小説

第134話文明の衝突2P5


 しかし、敵は彼にゆっくりと考える暇を与えてはくれなかった。

『レーダーに感有り、さ……さ……32発飛んできます!!!』

 絶望が艦橋全体を支配した。
 飛空戦艦を1発で沈められる性能を持つ超強力な攻撃が32発も飛んでくる。
 このままではたったの1撃で、100隻もの大艦隊の内、実に3分の1が消失してしまう。
「エネルギー充填値を上げて閃光魔法の射程を延伸しろ!!!」

「しかしっ!!魔石がもちません!!」

「構わん!!!このままでは全滅するぞ!!無理をしてでも魔法の射程を延伸して生存可能性を上げる必要があるのだっ!!!」

「了解!!クルスかリバーエネルギー充填……70%……90%……110%……120%!!魔石耐久限界突破!!!」

 艦首に設置してある魔石から魔力が漏れ出す。

「陣形再構築、レーダーリンク正常値、魔方陣形成完了、長距離艦隊級極大閃光魔法発射準備整いました!!」

「敵の攻撃が射程に入り次第放射せよ!!!」

「射程まであと2秒……クルスカリバー放射!!」

「いっけぇぇぇぇぇっ!!!!」

 14本もの先ほどよりも太い閃光が空を駆ける。
 瞬間的に方向を変え、放たれるレーザービームの様な光。
 クルセイリース大聖王国の本気だった。
 しかし……。

「当たりません、効果無し、効果なし!!!敵が速すぎます!位置情報からの術式構築が追いつきません!!
 防衛ライン突破されました!!」
 
 敵の放った32発もの絶望は、飛空艦隊に容赦なく迫る。

「や……止めろ……やめろぉぉぉぉっ!!!」

 迎撃の手筈は取ったが、3重もの極大魔法は今回も全く効果を発揮しなかった。
 無情にもミサイルの雨は飛空艦隊に到達した。

 空に無数の爆発が出現し、時折誘爆して大きな火球を作り出す。

「スラリマー、ドクレース、ゲート、アコヤ爆沈!!
 ズライス、アズロ、マカライト出力減衰、落ちます。
 アパタイト、チュリン被弾!!」

 魔信は混乱を極め、被害報告は追いつかなくなる。
 魔信を入れる間も無く爆沈した艦もおり、被害把握も出来なくなる。

 ダルイア艦橋は混乱を極めた。


 爆沈し、四散した艦の残骸が燃えて落つ。
 晴れ渡った空に炎の雨が降り注ぐ。
 それはまるで終末を予感させるような光景だった。

「うおぉぉぉぉっ!!!うおぉぉぉぉぉぉおおおぉっ!!!」

 ターコルイズは叫ぶ。
 飛空艦ブライスとマカライトの艦長は幹部候補学校の同期だった。
 気の良い奴らで、クルセイリース大聖王国の軍体系について夜遅くまで語り合った。
 酔っ払って道で寝込み、上司に大目玉を喰らう事もあった。

 彼らの艦は特に優秀で、厳しい訓練を……血の滲むような訓練を突破してきた猛者共だった。
 練度も申し分無い。
 しかし、その全てが圧倒的軍事技術の差によって崩れ去る。

「うおぉぉぉぉぉっ!!」

 ターコルイズの目からは涙が伝う。
 許せなかった。
 敵国が、そして敵の力を見抜けなかった自分が。
 しかし時既に遅く、何も出来ぬまま多くの兵が命を散らす。


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posted by くみちゃん at 21:43| Comment(15) | 小説

第134話文明の衝突2P4


「艦隊級極大閃光魔法発射陣形!!レーダー出力全開、魔法射撃管制を行い、電磁レーダーとリンクさせろ!!!」

「はっ!!!」

 艦隊は敵の攻撃が飛んできた方向に艦首を向ける。

「陣形完了、魔力を艦首へ移行」

 六芒星を描くように陣形を取り、各艦の艦首に設置された大型魔石が魔力を帯びて光輝き始める。

「長距離艦隊級極大閃光魔法、クルスカリバー起動!」

 6隻で一つの大きな六芒星が形成される。
 艦隊行動で行われるため、実に15個もの魔方陣が出現、巨大六芒星が空に浮かび上がった。

 飛空艦は空で陣形を整えるため、海で行われたイルネティア王国のそれよりも遙かに早く魔方陣が形成される。

「敵の発射位置は特定出来たか?」

「未だ判明しておりません」

 日本国護衛艦隊は、クルセイリース艦隊の探知距離外にいたため、彼らは護衛艦の位置が特定出来ずにいた。

 旗艦ダルイア艦長タンソーは、ターコルイズに話しかけた。

「司令、いきなり艦隊級極大閃光魔法を使用するので?」

「ああ、敵の攻撃が速すぎる。
 長距離防空魔法結界の中でも最強の方法をもってしなければ危険だ」

 対パーパルディア皇国戦では奥の手を見せるまでも無かったが、日本国による対空兵器の攻撃を見た彼は、その危険性を察知し、最大最強の防空システムを起動する。

『敵の攻撃を探知!!弾数3、距離89……70……すぐに艦隊級極大閃光魔法、クルスカリバーの射程に入ります。
 レーダーリンク正常値、エネルギー充填100%!!
 距離50、射程に入りました!!』

「クルスカリバー放てっ!!!」

 艦隊陣形により空中に出現した青白い光の六芒星、星の周囲は古代文字で描かれた魔法陣が形成される。
 星の中心部からまるで可視化したレーザービームのようなものが射出された。

 15もの光の線が空を駆ける。

 魔力の位相変異により、瞬時に射出角度を変える事の出来るそれは旗艦ダルイアのレーダーとリンクしてミサイルの方向を向く。

 光の一斉射撃は見る者達を魅了した。

 しかし……。

『敵攻撃が速すぎます、命中しません!ああっ、第1次防衛ライン突破!!』

「拡散フレアを使えっ!!!」

『魔力転換……エネルギー転換完了、中距離艦隊級極大火炎魔法拡散フレア放射!!!』

 青白かった魔方陣は赤い輝きへと変化し、魔方陣の術式が変化する。

 巨大な炎が扇状、放射状に放出された。
 大量の竜騎士の侵攻があった場合の切り札、空間制圧射撃に近い拡散フレア。
 15もの数、空に巨大な火炎放射器が出現する。

 レーダーを見ていた監視員は凍り付いた。

『効果なし!!効果なし!!!当たっているものもあるはずなのに……そんな……』

 拡散フレアはあくまで木造船や、対竜騎士用の魔法であった。
 すでに超高温であるミサイルの衝撃波境界層で無力化される。

『第2次防衛ライン突破されました!!』

「ぐうっ」

 ターコルイズの顔は苦渋に満ちた。

「近接最終防御システム起動!!リュウセイを使えっ!!」

『最終防御システム、極大連光弾魔法リュウセイ放射!!」

 クルセイリース大聖王国飛空艦隊の最終防御システム、リュウセイは、魔方陣中央部から1秒間に100発もの光弾を放つ。
 いかなる空の敵も、この3重の防御システムをによって粉砕出来るはずだった。

 ブアァァァァッ!!!!

 連射速度が速すぎて、空気が特殊な音を出す。
 マッハ1ほどの速さの光弾はとんでもない量空に出現する。
 
 適度な速度の光弾が、空にばらまかれる様子はまるで古きシューティングゲームのようだった。

『さ……最終防衛ラインが突破された!!!』

「ばかなっ!!信じられん!!!」

「各艦魔導出力最大展開!!!対物理攻撃用装甲強化!!!」

 絶望的な状況の中、ターコルイズが吠えた。

「くるぞぉぉぉおぉぉぉぉぉっ!!!」

 ガァァァァァァン!!!!!

 空に光りが3つ出現した。

「ルイビ、タール、アイオラ被弾!!!」

 致命的なダメージを受けたルイビは火を吐きながら高度を下げる。
 一方旧式艦のタールとアイオラは空中で大きく爆発した。

『タール、アイオラ爆沈!!!』

 ターコルイズは混乱する。
 3重もの圧倒的なる対空防御陣を貫ける者など、見たことも聞いたことも無い。
 最強の防御結界がこうも易々と突破される事など、現実に起こって良いはずが無い。

 戦力を根本的に覆す圧倒的なる敵の強さに、打つ手がなくなってしまう。

 完全に想定外だった。


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posted by くみちゃん at 21:42| Comment(21) | 小説

第134話文明の衝突2P3


◆◆◆

 クルセイリース大聖王国の新世界開拓軍飛空艦隊旗艦ダルイアは、他の飛空艦に比べて圧倒的なる探知距離を持つ。
 魔導レーダー、そして万が一魔力を出さない飛行物体に遭遇した場合にも対応するため、電磁波反射式レーダーを持つ。
 その探知範囲も、他艦に比べて圧倒的高性能であり、さらに高度な管制能力も有していた。
 艦隊の目というべき旗艦の管制室は、クルセイリース大聖王国の中でも特に優秀な者がつく。

 魔導探知レーダーと、電磁波反射式レーダーを映し出す画面を見ていたリーベーはある異変に気づいた。

「えっ!!!」

 思わず声を上げる。
 あり得ない事象が画面に映る。
 こんなことは考えられない、故障の可能性が高い。
 しかし、万が一本当ならばとんでもない事になると考えた彼女はすぐに声を出す。

「前方90kmに飛行物体を感知!数1、速度2800、まっすぐ艦隊に向かってきます!!!
 そんな、もう75kmまで接近!!」

「に……に……2800だとぉ!!」

「そんな馬鹿な、速すぎる!!」

「故障では無いのか?」

 議論をしている間にその圧倒的なる速度を持った物体は近づいた。

「え?」

 超高速で飛翔してきた「それ」は、旗艦ダルイアの前を飛行していた新型80門級飛空戦艦サルファに直撃した。

 斜め下方から直撃した艦対空誘導弾は圧倒的な運動エネルギーによって木製の船体を貫通して内部で爆発した。
 爆発はサルファの魔導機関を大きく傷つける。

 出力が低下する。

「え?回転が鈍くなってきたぞっ!!!」

 誰かが叫んだ。

『我、操作不能、我、操作不能!!』

 魔信からは悲壮な声が響く。
 艦橋に設置されたスピーカーから鳴る絶望の声に衝撃が走った。

 船体を制御出来なくなったサルファは炎を上げながらゆっくりと傾く。
 やがて内部の魔導爆雷が転がって誘爆し、光が走った後、衝撃波が空を駆け、轟音と共に大きな火球が生まれる。
 サルファだった物体は燃えながら四方八方に広がり、炎の雨が降る。
 
「バ……バ……バカなっ!!」

 1撃だった……たったの1撃で威容を誇っていたサルファが消える。

 炎の残骸となって落ちゆくサルファだった物。
 皆呆然となった。

 ターコルイズもまた、呆然と立ち尽くしていた。

「司令!!気を確かにっ!!!」

 幹部の激によって我に返る。

「いかん!!次が来るぞっ!!!」

 パーパルディア戦は魔力消費の少ない兵器を選んで選定していた。
 しかし、このクラスの敵に出し惜しみをしていると、艦隊が消滅してしまう。

 彼は全力で戦う事を決意する。

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posted by くみちゃん at 21:42| Comment(14) | 小説

第134話文明の衝突2P2

「私はクルセイリース大聖王国、新世界開拓軍現場総司令官ターコルイズという。
 何の要件だ?」

『こちら日本国海上自衛隊第4護衛隊群、海将の平田です。
 直ちに進路を変更し、自国に引き返していただきたい。
 これより先はシルカーク王国の領海がある。進路を変更しない場合はシルカーク王国への侵攻と見なす。
 我々は、シルカーク王国に住む邦人を守る義務がある。
 直ちに転進していただきたい。
 さもなくば、クルセイリース大聖王国の武力侵攻と見なし、あなた方の艦隊を攻撃する!!!』

 無線はダルイアの艦橋全体に聞こえていた。
 艦橋では笑い声が響く。

「お前達は今更何を言っている?
 すでに国の意思は決定された。
 我らは正義の名の下に、シルカーク王国を低文明の王政から解放する。
 そのために、シルカーク王国の癌たる王都を焼き払うのだ!!」

 ターコルイズの語気は強まる。

「我が艦隊は、崇高な目的を持ち、聖王子ヤリスラ様の命により動いている。
 お前達はその神聖な行軍を止めようとした。
 これは聖王様の意思を覆さんとする大罪だ。
 お前達日本艦隊は1艦残らず神罰を降す事とする。
 ……死刑だ」

 彼は語気を強めたが、無線から聞こえる声は冷静に語りかけてくる。

『あなた方の艦隊の動きはすでに捉えている。
 我々はいつでもあなた方に攻撃出来る状態にあるのです。
 本当に引き返す気は無いのか?
 全滅を覚悟してでも我が艦隊を攻撃してくるというのか』

「カンに障る言い方だ。先ほどから出任せばかりを言いおって!!
 1つ訂正しよう。
 我が艦隊を攻撃しようとしているのか……だぁ?
 違うな。
 1艦残らず殲滅させてやろうとしているのだ。
 我が国への不敬、お前達は降伏すら許さん」

 ターコルイズは無線を切った。

「よろしかったので?」

「パーパルディア皇国のワイバーンは脅威だったが、たかが海上艦に何が出来る。
 しかもまるで自分たちの方が、実力が上だと言わんばかりの言い方よ。
 ちょうど良い訓練にもなる。
 奴らの艦を見つけたら無慈悲に攻撃を行って全滅させてやろう。
 艦から泳いで逃げようとした兵も見逃すな。
 どうせすぐ近くにいるはずだ」

 クルセイリース飛空艦隊は戦闘配備に移行して進軍を続けるのだった。


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posted by くみちゃん at 21:41| Comment(14) | 小説

第134話 文明の衝突2P1

■ パーパルディア皇国のワイバーンロード竜騎士団との戦いが終わった約1時間後
  飛空艦隊旗艦 100門級飛空戦艦ダルイア

  艦橋において、司令ターコルイズと艦長タンソーは話す。

「司令、今回の軍事拠点を潰した後、おそらく魔力に余力が相当残ると想定されますが、運用はいかがしますか?」

「やはり敵国の民には恐怖を植え付け、隣国にはクルセイリース大聖王国に逆らうと民ごと殲滅されるという恐怖を与えなければならない。
 余力はすべて王都への攻撃に回し、一人でも多くの敵国民を殲滅する事とする」

 ターコルイズは軍人である。
 クルセイリース大聖王国の軍人には国家運営能力や、外交能力等、今後100年を見据えた行動が求められていたため、政治的な見地を持つ。
 一見非情に見える作戦も、国のためなら容赦なく行う事の出来る冷徹な人間だった。
 彼は続ける。

「攻撃は残虐に見えるが、それが今後我が国の効果的支配につながり、結果的に兵も人的被害も最小限になる」

 遙か先を見据えていた。

「お話中失礼します」

 幹部が会話に割って入る。

「先ほどから、電磁無線システムに日本国自衛隊と名乗る者から、我が艦隊に対して呼びかけが行われています」

「何だと?」

 基本的に艦隊間通信は魔信で行う事となっている。
 しかし、高威力魔法の連続使用や、大規模魔力の出力があった場合に魔場が乱れ、魔信に影響を及ぼす場合があるらしい。

 古の魔法帝国の文献で見つけたものであり、現実に魔力が原因で乱れた事は1度も無かった。
 サブ機能として、最悪を想定して電波無線が配備されていたが、今回それが敵の信号を受信している。

「万が一電波を発信した事によって、位置を特定する技術が敵にあると不味い。
 無視が妥当か……」

「それが……敵は我が方の座標と高度を言い当てています。
 その上で、さらに侵攻すると攻撃すると。
 我々の司令官もしくは代理の者が通信に出るよう、繰り返し呼びかけが行われています」

 ターコルイズの直感が、通信に出るべきであると強烈に訴えかけてくる。
 彼は己の直感に従う事とした。

『……応答せよ』

 ターコルイズは眉間にしわを寄せて無線を手にした。


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posted by くみちゃん at 21:40| Comment(12) | 小説