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統合基地 セキトメイ 早朝
この日、軍外交担当のカムーラは基地第3棟の屋上で青茶を飲んでいた。
透き通るような青い海、昇る太陽は美しく、陽光が海上に反射して輝く。
海鳥たちはのんびりと海に浮かび、魚を狙っている。
「うむ、平和な光景だ」
戦争開始早々に、飛空艦隊の三分の一を損失、聖王国の大方針にケチがついてしまった。
しかし、大戦力はまだ国内にある。
ふと、ターコルイズの言が頭に浮かんだ。
『日本国の兵器は飛空艦隊を無力化するほどに強力なのだ!!』
「ふん、敗者の弁か、小賢しい。
しかし損失を与えられたのは事実……。
日本国、実に不愉快だ」
青茶を飲み干した。
彼は上を見上げる。
飛空艦2隻が上空警戒についていた。
空に船が浮かぶ姿は何者にも負けないほどに力強く、聖王国の力を誇らしく感じる。
「はっ!!やはり聖王国はすさまじい。
負ける事があろうか……いや、無い!!」
船が空に浮かぶという、他国からすれば常識外れの力が増長を加速させる。
「ん??」
北西の空、高速で飛ぶ何かが、飛空艦に向かうのが見えた。
「何だ!?あれはっ!!!」
2つの物体はまるで吸い寄せられるように飛空艦に進路を取る。
空中目標へのプログラム変更が成された艦隊艦誘導弾(SSM1-B改)2発は時速1150kmで海面スレスレを飛行してきた後に上昇、タルクリス上空を警戒中の飛空戦艦に命中した。
飛空艦内部に飛び込んだ260kgにも及ぶ弾頭。
内蔵された高性能爆薬はその威力を解放し、猛烈な火球が出現した。
鋼鉄の水上艦艇でさえも大破させるほどのエネルギーに、木製艦が耐えられるはずもなく、飛空戦艦は中にいた乗組員と共に、文字通り爆散した。
ガァァァァン!!!!!!!!!!!!
聞いたことの無い轟音、船は船体よりも遙かに大きな爆炎に包まれる。
火球は信じられないほどに大きく、その爆発の熱線は離れていてもはっきりと解る程に熱かった。
「うおぉぉぉぉぉっ!!!」
彼はその場に倒れ込んだ。
「何だ?あの大爆発は!何が起こった!!!」
上空の飛空艦2隻は爆散し、炎に包まれながら基地に落ちる。
炎は魔導を含んだ燃料に引火、運の悪いことに乗組員の待機する寮に落ち、人的被害は拡大した。
一瞬だった……。
一瞬であれほどの威容を誇っていた飛空戦艦は消滅し、燃え盛る基地は地獄の様相を呈す。
しかし、敵は攻撃を待ってはくれない。
「馬鹿なっ!!そんな……何が起こったんだ!!」
同じ言動を繰り返す。
カムーラは未だに何が起こったのか、認識出来ずにいた。
「ぬうっ!!」
西の空を見た時、見えてしまった。
先ほど大きな破壊を起こした物体が多数飛翔してくる。
ウウウウウゥゥゥゥゥゥーーーー!!!
基地中にサイレンが鳴り響き、同基地は緊迫感に包まれた。
多数出現した「それ」は基地手前で上昇し、まるで狙いを定めたかのように急降下してくる。
「あああっ!!!」
猛烈な爆発……轟音が鼓膜を、いや、体全体を大きく振動させる。
カムーラの眼前で威容を誇っていたタルクリス統合基地セキトメイの司令本部が崩れ落ちた。
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!!」
彼が体験した事の無いほどのあまりにも大きい爆発に本能的に恐怖し、みっともない声をあげてしまう。
自分が死ぬかも知れない。
命の危機とは、彼の想像を遙かに超える恐怖だった。
攻撃は続き、引火性魔力燃料貯蔵タンク、飛空艦の整備基地、そして駐機……いや、駐艦していた艦が次々と使用不能となる。
炎は他の建物にも延焼し、セキトメイは炎と煙に包まれた。
一瞬の攻撃だった……ほんの僅かな時間の攻撃で、セキトメイは基地機能を損失する。
posted by くみちゃん at 09:44|
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