2022年07月23日

第135話文明の衝突3P3

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 翌日早朝 クルセイリース大聖王国属領タルクリス 西側約150km 海上

 ほのかに明るくなり始めた空、水平線からは海から太陽が顔を出す。
 海の波は低く、そよ風が吹いていた。

 島はどこにも見えず、360度見渡しても水平線が見える海に、8つの航跡が現れる。

■ 海上自衛隊第4護衛隊群 旗艦 かが 戦闘指揮所

 大小様々なディスプレイが並び、各艦の状況が集約される。
 ハイテクの塊たる戦闘指揮所において、艦隊司令である海将補平田の額からは汗がこぼれ落ちていた。

「敵基地が近すぎる。
 これほどまでに胃にくるものか……」

 近代戦としては敵に近すぎる位置。地球であれば地対艦誘導弾の射程圏にすでに入っている。
 
 シルカーク王国侵攻の第1波を退けた報告を受けた日本国政府は中央世界等からの外圧もあり、出撃してきた敵の基地に対する攻撃を決定。
 各自衛隊に早急なる敵軍事施設への攻撃を指示した。

 しかし、シルカーク王国は固定翼機を運用出来る飛行場が無く、ロデニウス大陸から空中給油機を使用した飛行では、1回の投射力がどうしても低くなる。
 衛星写真等からの分析結果により、クルセイリースには強力な地対艦兵器は無いであろうと判断。
 主に政治的圧力から、投射力に優れる海上自衛隊が第1撃を加え、少数の空自が上空支援につく事となった。

 敵の島に近づき過ぎる行為は相当に危険であり、反対意見も出たが、「政府の意思」という言葉に消された。

 日本国政府の意思決定が迅速に行われたため、海上自衛隊はクルセイリースとの戦闘の後、相手の体制が立て直される前に攻撃を行う事を決定、夜通し走り続けて同海域に至った。

「タルクリスの統合基地、射程に入りました」

 パーパルディア皇国戦で判明したSSM1-B(艦対艦誘導弾)の地上攻撃能力。
 プログラミングの変更により、地上攻撃も可能となり、さらに空中目標に対しても、今回の戦闘で試射する事としていた。
 それではSSMという言い方はどうかという議論も出たが、海上自衛隊では変わらずSSMという名称を使用している。

「この位置は危険すぎる。早く撃って離脱するぞ」

 横に立つ幹部に話しかける。

「確かに、先の戦いでの敵対空戦闘は我々の想定を上回っていました。
 線状のレーザーのような光、そして炎の壁、最後はCIWSの様な光弾の連射、結果勝利しましたが、どの様な兵器を使用してくるのか解らない状況です。
 私も早く離脱すべきと考えます」

 平田は重責を実感した。
 とにかく敵に近い。
 自分が死ぬだけなら良い。しかし多くの部下の命が自分の采配にかかってくる事がこれほどまでに重い事とは……。
 しかも、敵の兵器形態は訳が解らない。
 本当にファンタジーだと嘆きたくなった。

 部下は……言い方は悪いが、例えどんなにショボく見える男であっても、家族がおり、一家の大黒柱となってプライドを持って働いている。
 自分の采配は多くの部下の命と、その家族の人生を左右する。

「絶対にミスは許されない!」

 自分に言い聞かす。
 この指示は、敵を多く殺し、その家族の多くを悲しませる事となるだろう。
 彼は目を瞑る。

「業深き仕事よ……」

 仕事であり、相手を殺さないと自分たちや守る者たちの家族が死ぬ。解ってはいても、敵とはいえ人が大量に死ぬことになる命令には覚悟がいる。
 彼は黙祷する……覚悟が決まった。
 彼は目を見開いた。

「攻撃開始、目標を撃破せよ」

「攻撃開始!!攻撃開始!!!」

 復唱され、ミサイル発射ボタンが押される。
 護衛艦に搭載された筒状のものから対艦誘導弾が射出された。
 衛星からの情報を元に、あらかじめ割り当てられた各施設、そして基地上空を警戒中の飛空艦を目標として攻撃は開始された。

 澄んだ空に線状の煙が多数出現する。
 
 ロケットモーターによる轟音は空気を震わせ、多数の射出されたミサイルはタルクリスに向かって飛ぶ。
 発射されたミサイル群はロケットモーターによる初期加速を終えた後、ターボジェットエンジンによる飛行に切り替わった。

 クルセイリース大聖王国飛空艦隊にとっては破壊神の降臨……絶望の宴が始まろうとしていた。

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第135話文明の衝突3P2


◆◆◆

 夜〜ターコルイズ自室

「失礼します」

 ドアがノックされ、軍外交担当のカムーラが入室してくる。

「すまんな、呼び出して。
 もう戦闘結果は知っていると思うが……。
 残念ながら、我らと日本国の海における戦力比は明らかで、このまま戦争に突き進んでも艦隊をいたずらに全滅させるだけだ。
 戦争ではなく、紛争として処理出来ないのか、明日軍王様に申し上げるつもりだ。
 外交部にも君のほうから根回しをしてほしい」

 カムーラの表情は曇る。

「もう宣戦布告は行っていますので、今更紛争処理は無理でしょう。
 栄えある飛空艦隊司令長官が、たったの1回戦負けただけで、まだ多数の戦力を有したまま、国の方針を覆せと言われるのかっ!!」

 カムーラは怒りを露わにするが、ターコルイズも引き下がらない。

「気持ちだけで何とかなるのであれば、いくらでも頑張るだろう。
 しかし、精神では埋めようの無いほどに差がありすぎるのだ。
 多大なコストをかけて作った艦と、膨大な年数をかけて育成してきた乗組員が敵の弾の数だけ消える!!
 こんな事が考えられるか?
 強すぎる!敵は強すぎるのだ!!
 確かに、国としてはまだ六分の1ほどの戦力損失だろう。
 しかし、戦力が有る時だからこそ、有利な条件で講和出来る。
 我らが全滅し、被害を出した後に有利な条件で講和など出来る訳がないだろう!!
 戦力が無くなってからではもう遅いのだ!!!」

 カムーラは表情を曇らせた。

「ターコルイズ様は呆けられてしまったのか!!!」

 大声を出す。

「北西新世界の開拓はクルセイリース大聖王国の発展のために必要な事!!
 そしてこれは聖王子ヤリスラ様が決定された国の大方針ですぞ。
 それをたったの1回の負け戦で覆す?笑わせないで頂きたい!!!」

「各人立場もあるだろう。
 しかし私は現実を述べている!
 飛空艦隊無くして北西世界の開拓は達成出来ない。
 しかし、日本国の兵器はその飛空艦隊を無力化するほどに強力だ。
 私は国のために、現実を述べている!!!」

「どうやら貴方は自分の負け戦を日本国が強い事として、自己の評価が下がる事を恐れているようだ。
 軍王様にはそのように報告しておく。
 失礼する!!」

 ターコルイズはカムーラを止めようとするが、彼は無視して退室した。

「馬鹿者めっ!!」

 どうしようもない組織のしがらみ。自分は部品の一つに過ぎぬのだと実感する。
 個人ではすぐに軌道修正出来るような事も、組織としては出来ない。
 ターコルイズは一人吠えるのだった。

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第135話文明の衝突3P1

クルセイリース大聖王国 属領タルクリス 統合基地セキトメイ

 空から船が編隊を組んで飛行する。
 天駆ける船が降りてくる様子は力強かったが、夕日を背に降りてくる様は何処か哀愁が漂っていた。
 大艦隊は当初の予定よりも遙かに早く基地へと戻り、その数を大きく減らす。

 着艦した船からは、幹部達が足早に降りる。
 彼らの顔は皆暗く、表情は厳しい。基地に残っていた職員達は何事が起こったのかとざわつくのだった。

 艦隊司令ターコルイズをはじめ、軍幹部達は休む間も無くすぐ会議室へと入室した。

 小会議室の円卓に幹部達が着座する。

「これより戦闘結果の検討を開始する」

 大まかな戦闘結果の報告から始まり、各艦がどういった対策を行い、結果どうなったのかが報告される。
 王国主力艦隊を投入し、日本国艦隊を見ることすら無く1/3もの戦力が消失した。
 各艦の動き、練度は申し分無く、レーダー連動型の長距離艦隊級極大閃光魔法も問題なく起動している。

 しかし、今回は敵の兵器があまりにも速すぎて、全く捕らえる事が出来なかった。
 おそらく風竜程度、時速にして500km超程度の速度であれば、捕らえることが出来ていたに違いない。
 しかし、今回の敵兵器は時速2800kmを超える。
 これほどまでに速いと、レーダーでは正確な位置を捕らえる事が出来たとして、魔導位相に基づく方向修正を加えたとしても、術式構築が追いつかない。
 そもそも敵の兵器が想定速度を遙かに超えている。

 様々な検討が加えられた結果、絶望的な結論が導き出された。

「パーパルディア皇国であれば多少の被害が出たとしても勝つことは十分に可能ですが、日本国の対空誘導魔光弾に対し、我々は防御する術を持ちません。
 あれほどの兵器がどれほどの数あるのかは解りませんが、弾の数だけ飛空艦が沈みます」

 現場レベルの合理的思考による冷静な分析結果。
 この思考がクルセイリース大聖王国の連戦連勝を支えてきたのである。
 
 予想された結論であったが、ターコルイズの顔は苦渋にまみれる。
 絶対に勝つはずの、国の威信を掛けた初戦であってはならない事が起こった。

「敵の誘導魔光弾には飛べない高度があるかもしれません。
 様々な高度から旧式のワイバーン竜騎士団を仕掛けて弱点を探ってみてはいかがでしょうか?」

 命をかけた敵兵器の評価方法が検討される。
 様々な案が出るが、運用上現実的ではなく、会議は夜遅くまで続いた。
 クルセイリース大聖王国主力艦隊にとって、唯々絶望的な戦力比が明らかになり、大きすぎる衝撃となった。

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