2022年09月13日

第136話古の超兵器P7


 3ヶ月後〜

 双方すべての準備が整う。
 和平を信じるシルカーク、そしてパーパルディア。
 疑いを向ける日本国、そして強襲を企むクルセイリース大聖王国……。
 歴史の歯車は衝突へと……多くの被害を生む原因となる戦いに向かって回り出すのだった。

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第136話古の超兵器P6


◆◆◆

 夕方〜シルカーク王国 日本大使館

 外務省の朝田、海上自衛隊の平田、そしてシルカーク派遣混成団の大内田は事務レベルで話をしていた。

「今回の和平について、どうも私はひっかかるのです」

 朝田は皆に問う。
 和平は日本国にとっても良いことである。
 しかし、組織の意見は簡単に変わるものではない。増してクルセイリースは国内に相当数の戦力を残しており、たったの1回の戦いで残敗したからといって、突然和平に舵を切るとは考えにくかった。

「クルセイリースの国内でクーデターの線は?」

「人工衛星からの情報からはそのような状況は見受けられません」

「我々は先進11カ国会議の教訓を忘れてはならない。戦略的に一カ所にまとめて総攻撃をしかけてくる可能性を考慮した方が良いでしょう。
 となると、やはり艦隊の派遣とエアカバーは必要ですな」

「出来れば現在急ピッチで進められているシルカーク王国簡易式飛行場の建設が完了してから、空中給油機を運用、P-1やF-2が届く距離でエアカバーが出来る体制が整ってから護衛隊群を派遣したいものです」

 自衛隊としては同じ派遣されるならば最善の状態で行きたい。

「では、日本国の意思決定が整うまで回答時期を延ばすよう、シルカーク王国に打診します
 政府の意思決定が降りた後、具体的な日程調整に入ることになるでしょう」

 朝田は時期を調整するためシルカークに申し入れる事とした。

 かつて、神聖ミリシアル帝国で行われた先進11カ国会議。
 世界の指導者達が集う場所を、グラ・バルカス帝国艦隊は強襲した。
 
 この世界は異常で、万全に万全を尽くすべきである。
 クルセイリースの言を信じないといった意見が多く出された。

 今回は敵国の街で開催されるため単純な比較は出来ないが、用心に越した事は無い。
 特に、本能が警笛を鳴らしている場合は理屈では通らない事でも当たってしまうものだ。

 今回の件は他国との調整もあるため、日本国としては和平を進める事を前提とするが、外交文章に関しては注意しつつ事を進めることとした。


 後日、他国との調整の結果、クルセイリース大聖王国、西部の都市ワカスーカルトにおいて、シルカーク王国の代表が出向き、和平に関する調印式を行う事となる。 

 クルセイリース大聖王国の言うとおり、護衛隊群を派遣するが、日本国艦隊は1隻を除いて沖合150km付近で待機、周辺の空はF-2戦闘機、P-1哨戒機、E-767早期警戒期が飛ぶ事となった。

 一方、パーパルディア皇国艦隊はシルカーク王国の代表者を乗せ、ワカスーカルトへ砲の届く位置まで接近して待機、なお、自衛隊の護衛艦は「イージズ艦ちょうかい」が、ワカスーカルト沖合7kmで待機する事となった。


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posted by くみちゃん at 23:36| Comment(8) | 小説

第136話古の超兵器P5


 大円卓には
○ 日本国外務省 朝田
○ 海上自衛隊第4護衛隊群 海将補 平田
○ 陸上自衛隊シルカーク派遣混成団長 大内田
○ パーパルディア皇国圏外文明国防衛艦隊司令長官 バイア
○ パーパルディア皇国ワイバーンオーバーロード竜騎士団長 ハムート
○ シルカーク王国外務郷 カルク その他幹部達
 が着座していた。

 シルカーク王国外務郷カルクが低い声で問う。

「して……カムーラ殿、今日はどういったご用件で来られたのか?」

 カムーラは湧き上がる屈辱感に耐えながら頭を下げる。

「国の方針が変わりました。
 私は和平交渉のために参りました」

 静まりかえる会場

「ハッ……ハハハ……ハーッハッハッハ!!笑わせてくれるワッ!!」

 パーパルディアの将バイアはカムーラを見下して大声で笑う。

「前回の会議の威勢は何処へ行った?お??
 我ら連合艦隊に貴国の艦隊が大敗し、大打撃を被り、前線基地も大きな損害を負った。
 このままではとても勝てぬと思って和平に来たのか?
 貴国の戦力はあれが全てではなかろうに。
 早々に我らの強さを悟ったという事かぁ?」

 彼はさらに煽る。

「尻尾を巻くのが早い国だなぁ。我が国が降してきた蛮族でも、もうちょっと骨があったぞ!
 フアーッハッハッハ!!!」

 シルカーク王国陣営の顔は曇り、日本国の者達は苦笑いをする。
 一方カムーラの顔は渋い。

 日本国は強い、このような作戦を取らざるを得ない程に。
 栄えあるクルセイリース大聖王国の軍外交が頭を下げなければならない程に。
 カムーラの手は湧き上がる屈辱に震える。

 シルカーク王国陣営からすると、パーパルディア皇国のあおりによって和平への道が閉ざされては困る。
 どういう条件なのか、話だけでも聞きたい。

 クルセイリース大聖王国と日本国。敵国であるはずのこの2国の考えは、奇跡的にも共通点があった。

『クルセイリース大聖王国へ打撃を与えたのはお前ではない』

 と……。


 カムーラは国旗の入ったファイル入りの書面を日本国へ手渡した。
 日本国のみに手渡したのは、彼の僅かな抵抗だった。
 我々は、シルカークやパーパルディアが原因で侵攻計画が頓挫した訳では無いと……日本国の影響によるものであると……。

 蛮族と見下していたパーパルディア皇国からあおられたため、屈辱で手の震えが強くなる。
「これが我が国の考えです」

 同文章は長々と記載されていたが、要約すれば下記のとおりとなる。
○ クルセイリース大聖王国とシルカーク王国及びそれを支援する国々(日本国、パーパル ディア皇国等)は相互不可侵条約を結ぶ
○ 紛争当事者の代表者をクルセイリース大聖王国の西部の都市ワカスーカルトへ招き、調 印式を行いたい
○ 我が国の和平への意思が本物である事を示すため、シルカーク王国、パーパルディア皇 国及び日本国艦隊も調印式に招きたい
 旨が記されていた。

 また、ワカスーカルトに決定した経緯として、都市の歴史が記されて格式の高さを出そうとしていることが伺える。
 つまりクルセイリース聖王国としては、都市への砲撃が届く箇所での調印式を行う事により、聖王国が本気であるという事を伝えたいようであった。

 外務郷カルクはすぐにでも調印したい気分に駆られた。
 これが調印されると、国が滅亡の危機から回避される。
 しかし解せない。

「いったいどういう風の吹き回しだ?」

 文章を日本から受け取ったカルクはカムーラに問う。

「国の方針が融和路線に変わったのです」

「先の交渉との差が激しすぎる。クーデターでも起きましたか」

「いいえ、ただ詳細は申し上げる事が出来ないが、この文章は本物です」
 
 怪しさを感じながらも、カルクは文をよく読むことにした。

「持ち帰って検討する。
 後日連絡する」

「解りました、結果が出るまでシルカーク王国で待機いたします」

 外交文章(偽)は、クルセイリース大聖王国その他の国々で検討される事となった。


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posted by くみちゃん at 23:35| Comment(10) | 小説