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2週間後〜
シルカーク王国 日本大使館
朝田は大使館の窓から東の空を見ていた。
「……本当か?」
先ほど入った通信によると、クルセイリース大聖王国の外交担当がシルカーク王国日本大使館に会談を申し入れてきた。
しかも事前に入った無線では停戦に向けた話し合いがしたいとの事だ。
クルセイリース大聖王国の空中艦隊を自衛隊が退け、タルクリスにある敵基地に打撃を与えた事は聞いている。
初戦で大きな打撃を与えたため、戦略が大きく変わった可能性もある。
しかし……。
「猛烈にいやな予感がする」
組織とは合理的に考えて動けるものではない。
それは現代日本でさえ、信じられないほど非効率な動きになる場合もある。
あれほどの国力差を見せつけたにも関わらず、戦争に舵を切った国が、急に合理的になるなど不自然だ。
「来たか……」
東の空に1隻の飛空艦が見えた。
船はシルカーク王国のワイバーンに誘導されて着陸体制に入っている。
「さて……行か」
クルセイリース聖王国は会談を日本国へ申し込んで来た。
しかし既にシルカーク王国とパーパルディア皇国は当事者である。
シルカーク王国の求めにより王城で会談する事となった。
朝田はシルカーク王国の用意した馬車で王城へ向かう。
■ 王城
カムーラは会議室の扉の前に立っていた。
内心は穏やかでは無い。
前回の外交での言動は、反発しか生まないだろう。
栄えあるクルセイリース大聖王国の軍外交ともあろう私が、芝居のようなものとはいえ蛮族どもに頭を下げなければならない屈辱。
国のため、国のためと自分に言い聞かした。
しかも、これは自分の独断でやっているという事になっている。
組織は守ってくれず、上手く行けば良いが、失敗すれば最初から切り捨てるつもりだ。
成功させるしか道は無い。
カムーラは胃に痛みを覚えながら、会議室の扉を開く。
「ぐっ!!」
会議室はピリピリとした空気が漂う。
前回と同様のメンバーが既に着座しており、皆厳しい目つきをしていた。
「こちらへお座り下さい」
促されて席につく。
会議が始まった。
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