クルセイリース大聖王国 ワカスーカルト
パーパルディア皇国軍 120門級戦列艦ジャスティス
「ハル・カーク様、船が着きました」
「ありがとう、やはり列強国の船はすごいですね、船足が速い」
よっこらせ……というかけ声と共に初老の男、シルカーク王国全権大使、王族の1人ハル・カークは立ち上がる。
クルセイリース大聖王国の外交大使カムーラの事前連絡によると、この後迎賓館で和平調印式が行われる予定となっていた。
ハル・カークは外務郷カルクやその他護衛と共に最上甲板へ出た。
辺りを見渡す。
「これが……クルセイリースですか?」
歴史ある都市だと事前に聞いていた。
しかし、どんよりとした街、暗い色を基本とした建物群、歴史ある町並みというよりもむしろ軍事敵施設に近い。
港から船にラッタルがかかり、軍外交担当のカムーラが歩いてくる。
「ん?」
バイアの本能が警笛を鳴らす。
カムーラの表情から前までの謙虚な雰囲気は消えていた。
かつて新興国を統治した際、敗戦協定で攻撃を加えてきた蛮族によく似た顔。
「おい、警戒レベルを戦時警戒レベル1種まで引き上げておけ。
いつでも戦闘に移行出来るよう、準備を怠るな」
小声で部下に指示を行う。
皇国は秘密裏に警戒レベルを上げた。
「シルカーク王国、その他の方々、よくぞ来られた」
カムーラは1冊の書類を取り出してカルクに手渡す。
「これに署名してもらおう」
突然現れ、迎賓館へ案内する訳でもなく、突然書類を渡して署名をしろと迫る。
失礼極まりない言動にカルクは怒る。
「事前の話では迎賓館に移動する手筈だったはず」
国と国の関係ではありえないほど失礼な対応だった。
「迎賓館?ああ、あれは賓客をもてなす所だ。とにかくそれを読め」
先日のしおらしい対応と一変した強気の態度。
国の方針が変わったとしか思えない。
カルクは書類を読んだ。
「こ……これはっ!!!!」
事前の内容とは似ても似つかない文章で、シルカークに無条件降伏を迫る内容だった。
「こ……こんなものが飲めるはずがないだろう!
お前達は国と国の外交を何と考えているのだ!」
「これは心外だな。最初から私はお前達に降伏を迫っている」
「貴様っ!!渡された文章にはこんな文字は全く無かったぞ!!」
「渡した文章には、末尾の右下に案と書いてあったはずだが?」
よく見ると、末尾右下にインクのにじみのようなものが見える。
虫眼鏡で拡大すると、3mm程度の文字で、小さく案と記載があった。
まるで悪徳商法のようなやり方に、カルクは顔を赤くする。
「このような降伏を迫る内容、この調印は無しだ、破談とする!!」
「そうか、残念だ。では帰られるがよい」
カムーラは足早に船を下りる。
彼らはすぐに馬に乗り、全速力で街の方向へ駆けていった。
一部始終を見ていたバイアは経験から攻撃の可能性を察知し、指示を出す。
「錨を上げろ!!すぐに帆を張り、風神の涙の出力を全開!!
全速力で同海域を離脱する!!!」
「はっ!!!」
120門級戦列艦ジャスティス乗組員は俊敏に動く。
その時だった。
「日本軍ちょうかい より発光信号!!
飛行物体を探知!!南南東方向距離70km!!
騎数120騎、速度211km、高度400m!!」
攻撃が来ることは間違いが無く、緊張が走る。
「空中戦艦か、もしくはワイバーン?……オーバーロードに迎撃を指示!!」
「了解、飛行物体接近!!飛行物体接近!!竜騎士団にあっては南南東方向の警戒にあたれ!!
交渉は決裂した。交戦を許可する。
繰り返す、交渉は決裂した。交戦を許可する!!!」
ギュオォォォォォォンンン!!!!!!!
付近にワイバーンオーバーロードの咆哮が響き渡る。
上空を警戒していた竜騎士団は、南南東方向へ飛ぶのだった。
タグ:日本国召喚