2023年01月09日

第138話古の超兵器3P3


◆◆◆

 パーパルディア皇国対圏外文明国防衛艦隊 120門級戦列艦ジャスティス

「バイア司令長官、良かったので?」

 ガーラスはバイアに問う。
 バイアは苦虫をかみつぶしたような顔で沈黙した。

「……仕方なかろう、日本からの要請だ」

 敵の竜騎士団との戦い、ムー国のマリンを仮想的として想定して作られたワイバーンオーバーロードの力、やはり凄まじかった。
 当初の想定以上の速さで敵を撃退し、全滅させ、残った敵1騎は恐れおののいているのが解るかのような機動で撤退していった。
 新生パーパルディア皇国として久々の完全勝利であり、戦勝に沸いた。
 その頃、日本国から無線が入る。

 東方向から飛空艦と思われる艦隊が約50隻向かってきており、内1隻は異常に大きいとの内容であった。
 ○ 日本国艦隊が対応する
 ○ 同士討ちを避けるために引いてほしい

 旨の内容だった。
 要は、邪魔だからどけという事を遠回りに言われたに等しい。
 心情的には言い返してやりたいが、我が国の軍を完膚なきまでに叩き潰し、神聖ミリシアル帝国でさえも手を焼いた異界の大帝国、グラ・バルカス帝国の大侵攻をも撃退した彼らの「力」は本物であり、現在敵対的立場に無い彼らから要請が来たならば、それは受けなければならない。

 それに、1隻だけ非常に大きいという情報も気になる。
 
 ジャスティスはすぐに魔信で竜騎士団に撤退するよう伝えた。

「我らはどうしましょうか?」

「敵の陸からの砲撃は無くなった。
 艦載式魔導砲の射程ギリギリまで沖に出る。
 魔導砲の照準を街に向けよ、ただし砲撃は日本国が敵の空飛ぶ船団を撃退した後だ。 
 邪魔になったと国際問題にされてはたまらんからな」

「了解」

 パーパルディア皇国は艦直上の直掩騎のみ残し、空の軍を引く。


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第138話古の超兵器3P2


◆◆◆

 混迷を極めた魔信は静粛を取り戻していた。

 クルセイリース大聖王国 王都防衛竜騎士団120騎は、第3文明圏列強パーパルディア皇国ワイバーンオーバーロード竜騎士団10騎と交戦し、騎士団長セイルートを残して全滅した。

「あ……あ……あああっ!!!ああああああっ!!!!」

 騎士団長セイルートは、離れて飛んでおり、戦場を見渡せる位置にいたため、撃墜を免れていた。
 眼前に広がる光景は、多くの友軍が火だるまとなって雲の海に落ちる様であり、敵はすべて健在。
 我が軍よりも、圧倒的な速度、大きさ、攻撃力を持つ竜であり、明らかに種類が異なる竜だった。
 栄えある聖王都防衛竜騎士団が全滅した。
 夢であってほしいが、紛れもない現実……。

「ううう……うわぁぁぁぁぁつ!!!」

 怖い、怖い。部下達は死んだ。
 あれほどの操竜技術を持っていた部下はすべて撃墜された。
 異界の列強国とはさも恐ろしいものであったというのか。 
 とにかく生き残りたい。
 我が方にはまだ飛空戦艦の艦隊がある。
 常々竜をバカにしていたのだから、奴らに戦わせるべきである。

 命を守るため、ひたすら自分に言い訳をする。
 最後の1兵となったセイルートは、もはや敵への恐怖しか無く、戦場から逃げ出す。

 一方、パーパルディア皇国の竜騎士団も、反転、撤退した。

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第138話古の超兵器3P1

クルセイリース大聖王国 聖都防衛竜騎士団 

「ん?何だ?あれは」

 前方に10もの黒い点が現れる。
 よく見ると、微かに上下に動いていた。

「羽ばたき?……まさか竜か!」

 やっと巡ってきた竜同士の対戦、セイルートは喜びに震える。
 空の主力の座を飛空艦に奪われ、ワイバーンは2級戦力だと国民には思われていた。
 苦汁に満ちた日々、やっと報われる時が来た。
 その相手は飛空艦ではなくワイバーンであり、友軍の方が遙かに数が多い。
 
「ふ……フフフ……フハハハハッ!!神は我らを見放さなかった!!!」

 眼光鋭く敵を睨み付け、邪悪な笑みで微笑んだ。

『前方の敵を蹴散らせぇ!!!』

 彼は大声で司令する。

『了解!!』

 歓喜に震えた兵達は、士気が高く、大声で返信した。

 クルセイリースの守護者達は、前方に展開する侵略者を滅するために力強く羽ばたくのだった。

◆◆◆

「ん?何故……」

 クルセイリース大聖王国竜騎士団の小隊長、エジルキは違和感を覚えた。
 敵よりも上をとるために上昇していたが、彼らは関係なく突っ込んでくるようにも見える。 戦術思想の違いかもしれないが、上を取った方が「圧倒的有利である」とたたき込まれていた彼にとって、それはひどく不可解に見えた。

「ふん、まあ良い。新世界の竜を、たったの十数騎葬っても自慢にもならぬが……物量で一気にカタをつけてやる!!」

 竜対竜の戦いでは、集団戦術が取れる方が圧倒的有利であり、彼も勝利を疑わなかった。

 間もなく空戦に至るだろう。
 たたきつけられる合成風、轟音に近い風切り音。
 近づく決戦、緊張がピークに達した時……エジルキの左前を飛んでいた部下の騎が突然炎に包まれた。

「ギャァァァァァッ!!!」

 高熱の粘性を持った火炎に焼かれ、離れていても聞こえるほどの断末魔が響いた。

『モウブ騎被弾!!』

 魔信で誰かが叫ぶ。

 モウブ騎は、竜共々猛烈な炎に焼かれ、断末魔をあげながら落ちる。

「モウブ!!モーウブ!!!ちくしょう!!」

 炎は上から飛んで来た。
 彼は上を見る。

「くっ!!!」

 太陽に隠れ、まぶしくて良く見えない。
 本能的に左へ旋回した。

 ゴウッ!!!

 大きな火球が上から下へ通り抜けた。
 火球は焼けるような熱を感じるほど近くを通り過ぎた。
 まっすぐに飛んでいたら丸焼けになっていただろう。

 エルジキは前進から汗が噴き出した。

 次の瞬間、5騎が爆発し、炎に包まれて落下し始めた。

「敵襲!!!」

 上から下へ大きなワイバーンが5騎通り抜ける。
 それは今まで見たことも無い大きさで、見た事も無いほど速い。

 下へ向かったそれは、すぐに猛烈な旋回能力で旋回し、ワイバーンの射程圏から抜け、上昇を開始した。
 敵ワイバーンの翼端では、気圧差により翼下から上へ回り込む空気によって白い雲を引く。
「別動隊がいたのかっ!!!」

 前方から来た敵も火炎弾を打ち込んで来る。
 その射程は我が方よりも長い。
 すぐに乱戦となった。

「くっ!!負けるものかっ!!」

 大きな敵に対して闘志を燃やす。
 エルジキは敵に火炎弾を当てるため、すでに射程圏外に出てしまった敵を向く。

「なっ!!!」

 追いつけない。
 相棒のワイバーンは必死で羽ばたいているが、全く追いつけない。
 
『ギャァァァァァッ!!!』

『は……速い!!なんて速さだっ!!』

『あれは化け物だっ!!あんなのに勝てる訳が無い!!』

 魔信は混信し、混沌を極める。

 友軍ばかりが、また落ちる。
 こちらの方が数が多いはずなのに、圧倒的戦力比であるはずなのに、落ちていくのは友軍騎ばかりだった。
 焼かれた竜の落下により、炎の雨が降る。

「そんなっ!!これほど……これほどまでに差があるというのかっ!!!」

 自分に狙いを付けられている事に気づく。
 右へ、左へ旋回して必死で避ける。
 エルジキは、間違いなく国一番の竜騎士である。
 自分の操竜技術を超える者はいないと自負してきた。
 そんな自分が異国の竜に対して遅れをとっている。
 もはや友軍の心配をしている場合では無かった。

 圧倒的に速く、大きく、そして旋回能力も高く、導力火炎弾の威力も高い。
 そんな敵が自分を狙ってくる。

「くそっ!!おのれ、おのれおのれおのれぇぇぇぇっ!!!」

 3発の火炎弾を避けた刹那、4発目が彼の騎に着弾した。

「ぐおぉぉぉぉぉっ!!!」

 敵の強さを悟った時、敵導力火炎弾の火球が被弾し、彼の意識は虚空に消えた。


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