2023年02月05日

第139話古の超兵器4P2


◆◆◆
 
 ワカスーカルト沖合
 パーパルディア皇国 120門級魔導戦列艦 ジャスティス

 皇国の120門級魔導戦列艦はワカスーカルトから少し距離をとり、沖合にいた。
 上空ではワイバーンオーバーロードが旋回を続けている。

「なっ!!何だ!!あの化け物はっ!!!」

 それを見た艦長ガーラスと、司令バイアは驚愕の声を上げた。

 山が歩いて向かってくると言った表現が正しいかもしれない。
 1歩1歩が途轍もない音を発し、地面を陥没させ、海の表面まで震わせる。
 民家を踏み潰しながらこちらへ向かう姿は化け物の行進という言葉がふさわしい。

 魔導レーダーを見ると、魔力が強すぎて、敵兵器を中心に画面が真っ白に近い状態となっていた。
 凄まじい魔力を放出しているのが解る。
 
 ゴーレムのように見えるそれは山ほど大きく、骨太で力強さがある。
 歩幅が大きく、見た目よりも高速で近づいて来るものの、砲撃をするような素振りはなかった。

 砲撃が無いのであれば、勝機はある。

 パーパルディア皇国の名を再び世界に知らしめるため、目に見える戦果がほしい。
 岩の塊であるならば、魔導砲で粉砕出来るだろう。

 ワイバーンの攻撃も考慮したが、おそらく火炎ではあの岩の塊には効果が無い。

「ゴーレムか……あんな岩の塊、魔導砲で粉砕してくれるわっ!!!
 日本国艦隊へ連絡、あの化け物は我らが相手にする!!貴君らは手を出すなとなっ!!」

「はっ!!」

 命令は迅速に行われる。

「左舷魔導砲発射準備!!発射体系へ移行!!」

 海兵は慌ただしく走り回る。
 高い練度によって船はすぐに動き出した。
 風神の涙により帆をいっぱいに開いたジャスティスは迅速に右へ旋回、敵に対して左舷を敵に向ける。

「魔力充填完了、左舷魔導砲発射準備完了!!」

「最大出力で攻撃!!あの化け物を粉砕しろ!!攻撃開始!」

 砲門の先に六芒星が出現する。
 先の大戦時に比べ、高出力化した魔導砲から弾が高速で射出される。

 ドーンドドドドドドドド………。

 ジャスティスは発射炎に包まれた。
 キル・ラヴァーナルに命中した砲弾は破裂して、岩の破片をまき散らす。
 クルセイリース大聖王国の誇る神代兵器、キル・ラヴァーナルは皇国の艦載式魔導砲弾が命中して爆炎と煙に包まれる。

「撃て撃て撃て撃て撃て撃てーーーーっ!!!手を休めるなっ!!!左舷の弾薬が尽きるまで撃ち続けろっ!!!」

 60門もの砲撃、その迫力は凄まじく、海に砲撃音がこだました。
 やがて、左舷弾薬が底をつく。

 ゴゴゴゴゴォォォォォ……

 敵ゴーレム様の者は上半身が煙に包まれている。

「フハハハハッ命中したぞっ!!どうだっ!?もう上半身は残ってはいまい。魔石出力全開!!距離を取りつつ、右舷魔導砲発射体系へ!」

「はっ!!」

 魔導戦列艦が旋回しようとしたその時だった。

「敵魔力、出力がさらに上昇!!!こ……これはっ!!魔導砲???」

 ゴーレムの上半身部分から多数の光が出現する。

「発射炎??」

 キル・ラヴァーナルから発射された120発もの魔導砲弾は、魔導戦列艦ジャスティスに
向かった。

 ジャスティスの周囲に大量の水柱が上がる。
 敵の魔導弾の爆圧は逃げ場を求めて圧力の低い上方に向かう。
 多く出現した水柱は、ジャスティスに滝のようにふりかかった。

 ジャスティスにも敵の攻撃は命中し、20もの炎が出現した。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 120門級もの巨艦……高性能魔導戦列艦が揺れる。
 指揮所付近にも砲弾は命中し、煙と炎に包まれた。
 
「何があった??被害報告!!!」

 まだ視界が悪い中、艦長ガーラスは吠える。
 しかし、復唱は無かった。

 やがて、ジャスティスの煙が晴れ、同時に敵ゴーレムの上部を覆っていた爆炎も晴れていった。

「ば……馬鹿なっ!!!」

 敵を睨み付ける、先ほどの岩に包まれた姿とは裏腹に、上半身に巨大な城が出現していた。 城には砲門も多数設置されている。

「歩く城!?」


タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 09:32| Comment(14) | 小説

第139話古の超兵器4P1

◆◆◆  

 ワカスーカルト防衛司令長官 エル・ガンエンは喜びに震える。

「すばらしい……なんて素晴らしいんだ!!!
 これほどの大きさの超兵器をたったの1人で動かせるなんて……」

 体育館のように広いスペース、壁には古代文字が描かれ、空間には四角の物体に集積回路のような模様が刻まれた物体が浮いていた。
 中央部に操縦席が設けられ、彼は座る。
 座ると映像が切り替わり、外の様子がはっきりと見えるようになった。
 黒月族の神話級兵器、キル・ラヴァーナルのすさまじさに感極まる。

「おおおぉっ!!!」

 エル・ガンエンの頭の中に操縦方法、兵装等、キル・ラヴァーナルの動かし方が入ってくる。

「ぐうっ!!!」

 多くの情報を短時間で詰め込まれ、頭がおかしくなりそうだった。

「はあっはあっはあっ!!!」

 情報の入力が終わる頃、エル・ガンエンはヨダレを垂らしながら頭を抱え、息を切らす。
 そして不気味に笑い始めた。

「フ……フフフ……フハハハハっ!!!素晴らしい!!素晴らしいぞっ!!この兵器はっ!!!
 これは正しく神の力……私は……私こそがクルセイリース大聖王国の守護神だ!!!
 さあ、我が聖なる神域を犯す侵略者どもに神の怒りを……殲滅の裁きを与えよう」

 エル・ガンエンはキル・ラヴァーナルを起動した。
 ゴゴゴゴゴゴ………。

「フハハハハハッ!!!」

 付近は大音響の地響きが鳴り響く。
 キル・ラヴァーナルが埋まっていた採掘場は、山ごと盛り上がり、2足歩行する岩のごとき、とてつもない大きさのゴーレムが現れる。
 目は鋭く、角のようなものが張り出していた。
 大質量のそれは動き出しす。

 ドゴーン……ドゴーン……。

 大きな地響きと共に、200mから300mはあろうかと思われる大きな太いゴーレムのような物体が歩く。
 ゆっくりと歩いているように見えるが、その歩幅はとても大きく、相当な速度が出ていた。
 彼は異国の艦隊を殲滅するため、ワカスーカルト沖へ向かうのだった。



タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 09:30| Comment(17) | 小説