2023年02月05日

第139話古の超兵器4P5


◆◆◆

 ワカスーカルト沖合約8km付近
 日本国海上自衛隊 第4護衛隊群 イージス艦ちょうかい 戦闘指揮所

 指揮所において南野は画面を注視していた。
 敵空中戦艦はレーダー反射面積がとてつもなく大きく、こちらに近づいて来ている。
 事前の人工衛星による監視ではそのような兵器の情報は無く、突然実戦投入された空中戦艦に緊張が高まっていた。

 光点が突然現れる。
 3次元レーダーはその物体の高度上昇を捉えていた。
 見慣れた光点、この世界において向けられた事の無い近代兵器のそれ……。
 
 南野は背筋が凍った。

「敵、ミサイル発射!!!弾数1、放物線を描いて飛翔中!!!」

 ちょうかいのCICルームに緊張が走る。

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第139話古の超兵器4P4


◆◆◆

 同時刻 ワカスーカルト東側約120km 上空
 クルセイリース大聖王国 聖王直轄飛空艦隊  旗艦 聖帝ガウザー 中央司令室

 中央部に浮かび上がる映像には、神話級兵器キル・ラヴァーナルが敵のワイバーンを堕とし、魔導戦列艦を粉砕する映像が映し出されていた。
 港から7km先にいた敵艦1隻は、高速で距離を取ろうとしている。

「ガンドライト艦長……見たまえ、黒月族の兵器を。何と野蛮な兵器か」

 聖王直轄飛空艦隊司令長官アエロリットは艦長ガンドライトに話しかけた。

「全くです、優雅さの欠片も無い。しかしワカスーカルト港の敵はエル・ガンエン殿が全滅させそうですね」

「そうだねぇ。しかし、聖王様の御心は、全ての敵の殲滅をお望みだ。
 沖合に展開する敵主力艦隊はもちろん我々が片付けるとしても、ワカスーカルト沖8km付近から逃げているゴミ虫も、キル・ラヴァーナルだったか?あれでは逃がしてしまう可能性があるね」

「確かに、船としては相当に速い」

「フフフ……我らが支援してやろう」

 パチン!!
 アエロリットが指を鳴らすと、画面は航行する船を映し出した。

「艦長、もう射程に入っているな?」

「え?」

「この船を殲滅したまえ。「神の炎」の使用を許可する」

「ワカスーカルト沖の敵はたったの1隻、いきなり「神の炎」を使用して良いのですか?」

 爆裂魔法封入型コアを使用した艦隊艦誘導魔光弾、通称「神の炎」
 古の魔法帝国の遺産であり、在庫が多くあるとはいえ、一度使うと二度と作れない。
 真に必要な時以外の使用を許可されていない虎の子兵器を、たったの1隻でさしたる脅威も無く、しかも本土から離れようとしている船に使用するなど、彼の常識からは考えにくい事だった。
 空中戦艦は対空兵器に対する装甲はある程度厚いため、近づいて主砲で対応すれば十分であると考えていた。

「聞こえなかったのかね?「神の炎」で殲滅したまえ。
 艦長、これは政治なのだよ。
 軍王にこれ以上王室に対する発言権を与えてはならない。
 少しでも我らが倒す必要があるのだよ」

「は……はっ!!そこまで考えが及びませんでした。失礼いたしました!!」

 ガンドライトはすぐに指示を飛ばす。

「「神の炎」発射準備、1発で十分だ。目標ワカスーカルト沖合約8kmを航行中の敵艦艇!!」

「発射準備に入ります」
 
 女性による無機質な復唱。

「コアに対する魔力注入開始、爆裂49,推進風31、炎20、急速充填モード……
 エネルギー充填78%……86%……100%
 注入完了、続いて封入安定化……
 安定化完了、目標設定……座標入力11585571、形状認識化完了、魔力ロック完了」

 次々と発射行程が行われる。
 
「神話級兵器「神の炎」発射準備完了」

 艦長は司令を向く。

「アエロリット司令、開戦の指示を」

 司令アエロリットはこれから訪れるであろう圧倒的な勝利を想像し、微かに笑う。

「フム……彼らは何が起こったか理解すること無く爆沈することになるのだね。
 我が聖なる国に弓を引いた愚か者め……これより我らは聖王様に代わり、敵蛮族に対して神罰を降す!!
 聖戦を開始せよ!!」

 司令の命により、艦長は部下に下命する。

「聖帝ガウザー主力兵装、神話級兵器「神の炎」発射!!敵を滅ぼせ!!」

「神の炎、発射!!」

 前部に取り付けられた発射管から誘導魔光弾は垂直に打ち出され、加速を開始する。
 青い尾を引きながら、誘導魔光弾「神の炎」は飛翔する。

 クルセイリース大聖王国 空中戦艦聖帝ガウザーは、日本国海上自衛隊第4護衛隊群、  イージス艦ちょうかい に対し、誘導弾による攻撃を開始するのだった。


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第139話古の超兵器4P3


 驚きながらも自艦の被害を確認する。
 皇国の誇る最新式対魔弾鉄鋼式装甲を施した120門級戦列艦ジャスティスには20もの大きな穴が開いていた。
 装甲をかろうじて貫通したかのようであった。

 煙が燻る。

『フフフ……蛮族の諸君、あいさつは受け取ってくれたかな?我が名はクルセイリース大聖王国の守護神、エル・ガンエンである。
 この神話級兵器、キル・ラヴァーナルの外殻岩石を剥がす手間が省けた。礼を言おう』

 超大音量で敵は語りかける。

『ただの挨拶で瀕死ではないか、フフフ……弱い、弱すぎる。あまりにも弱い。もっと楽しませてくれよ』

「くそっ!!」

 風神の涙により、帆をいっぱいに張った魔導戦列艦は迅速に旋回している。
 しかし、強大な敵を前に、いつもは速く見える船がひどくゆっくりともどかしく見えた。

「ぐ……ぐううぅ!!」

「バイア司令!!気付かれたか」

 司令バイアは頭に破片を受け、意識が朦朧としていた。
 額が切れたようで、頭から血を流す。

「ガーラス艦長、最善をつくしてくれ」

「はっ!!」

「しかし……化け物だな」

 山という大質量と戦っているようだ。
 しかも、外壁の岩は削れたが、肝心の城部分に魔導砲はあまり効果が無いようにも見える。
 周囲には死体が散乱し、なんとも言えない匂いを放つ。

「あの砲撃をつぶす!!」
 
 彼は魔信を手に取った。

「こちら司令バイアだ!!直掩の竜騎士団は敵の砲を攻撃しろ!」

 通信士も死んでいる者が多い。
 人手不足の中、司令バイアは指揮をとる。
 ワイバーンの火炎では効果は薄いであろうことは重々承知している。
 しかし、魔導砲を発射して来るのであれば砲手がいるはずであり、敵が炎に焼かれれば攻撃の手は少なくなる可能性があった。

 ギュオオオォォォォォン!!!!

 竜の咆哮が響き渡る。
 しかし……。

「え!あれは……」

 敵化け物の口の前に6つもの魔方陣が出現する。
 報告書で見たことがある……アガルタ法国の艦隊級極大閃光魔法に似た魔法陣だ。

 上空を旋回していた皇国のワイバーンオーバーロードが攻撃態勢に入る。

『やれやれ、うっとおしいハエはたたき落とさねば』

 キル・ラヴァーナルの顔の前に六芒星が出現した。 

『これほどの魔力と記憶容量があれば、我が国の魔法を組み込んで使用することなど造作も無い。
 フフフ……殲滅の裁きだ。
 神に矢を引いた愚か者どもよ、死ね。
 クルス……カリバー』

 次の瞬間、魔素の位相変化によって集積したレーザー状の熱線が空を駆け、ワイバーンオーバーロードに命中。
 命中した竜は真っ二つに引き裂かれる。

 空を可視出来るレーザー光線様のものが駆け抜ける。

 一瞬だった。
 一瞬ですべてのワイバーンオーバーロードが炎に包まれ、空から落つ。

『フハハハハハッ!!フアーッハッハッハッハ!!!こんなことも出来るぞ!!』

 キル・ラヴァーナルは拳を振り上げる。
 旋回中のジャスティスに近づき、力任せに拳を振り下ろした。

 ドガアッ!!

 神話級兵器、キル・ラヴァーナルの拳を受けた魔導戦列艦は炎に包まれながら真っ二つに折れる。
 発現した炎はすぐに海水に浸かって消火した。

 艦長ガーラス、司令バイアは海に投げ出され、流木につかまる。

「はあっはあっ……化け物めっ!!!」

 見上げた先には、岩の化け物が彼らを睨み付けていた。

 パーパルディア皇国 対圏外文明圏防衛艦隊旗艦 120門級戦列艦ジャスティスは、クルセイリース大聖王国の神話級兵器キル・ラヴァーナルと戦闘し、轟沈した。


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第139話古の超兵器4P2


◆◆◆
 
 ワカスーカルト沖合
 パーパルディア皇国 120門級魔導戦列艦 ジャスティス

 皇国の120門級魔導戦列艦はワカスーカルトから少し距離をとり、沖合にいた。
 上空ではワイバーンオーバーロードが旋回を続けている。

「なっ!!何だ!!あの化け物はっ!!!」

 それを見た艦長ガーラスと、司令バイアは驚愕の声を上げた。

 山が歩いて向かってくると言った表現が正しいかもしれない。
 1歩1歩が途轍もない音を発し、地面を陥没させ、海の表面まで震わせる。
 民家を踏み潰しながらこちらへ向かう姿は化け物の行進という言葉がふさわしい。

 魔導レーダーを見ると、魔力が強すぎて、敵兵器を中心に画面が真っ白に近い状態となっていた。
 凄まじい魔力を放出しているのが解る。
 
 ゴーレムのように見えるそれは山ほど大きく、骨太で力強さがある。
 歩幅が大きく、見た目よりも高速で近づいて来るものの、砲撃をするような素振りはなかった。

 砲撃が無いのであれば、勝機はある。

 パーパルディア皇国の名を再び世界に知らしめるため、目に見える戦果がほしい。
 岩の塊であるならば、魔導砲で粉砕出来るだろう。

 ワイバーンの攻撃も考慮したが、おそらく火炎ではあの岩の塊には効果が無い。

「ゴーレムか……あんな岩の塊、魔導砲で粉砕してくれるわっ!!!
 日本国艦隊へ連絡、あの化け物は我らが相手にする!!貴君らは手を出すなとなっ!!」

「はっ!!」

 命令は迅速に行われる。

「左舷魔導砲発射準備!!発射体系へ移行!!」

 海兵は慌ただしく走り回る。
 高い練度によって船はすぐに動き出した。
 風神の涙により帆をいっぱいに開いたジャスティスは迅速に右へ旋回、敵に対して左舷を敵に向ける。

「魔力充填完了、左舷魔導砲発射準備完了!!」

「最大出力で攻撃!!あの化け物を粉砕しろ!!攻撃開始!」

 砲門の先に六芒星が出現する。
 先の大戦時に比べ、高出力化した魔導砲から弾が高速で射出される。

 ドーンドドドドドドドド………。

 ジャスティスは発射炎に包まれた。
 キル・ラヴァーナルに命中した砲弾は破裂して、岩の破片をまき散らす。
 クルセイリース大聖王国の誇る神代兵器、キル・ラヴァーナルは皇国の艦載式魔導砲弾が命中して爆炎と煙に包まれる。

「撃て撃て撃て撃て撃て撃てーーーーっ!!!手を休めるなっ!!!左舷の弾薬が尽きるまで撃ち続けろっ!!!」

 60門もの砲撃、その迫力は凄まじく、海に砲撃音がこだました。
 やがて、左舷弾薬が底をつく。

 ゴゴゴゴゴォォォォォ……

 敵ゴーレム様の者は上半身が煙に包まれている。

「フハハハハッ命中したぞっ!!どうだっ!?もう上半身は残ってはいまい。魔石出力全開!!距離を取りつつ、右舷魔導砲発射体系へ!」

「はっ!!」

 魔導戦列艦が旋回しようとしたその時だった。

「敵魔力、出力がさらに上昇!!!こ……これはっ!!魔導砲???」

 ゴーレムの上半身部分から多数の光が出現する。

「発射炎??」

 キル・ラヴァーナルから発射された120発もの魔導砲弾は、魔導戦列艦ジャスティスに
向かった。

 ジャスティスの周囲に大量の水柱が上がる。
 敵の魔導弾の爆圧は逃げ場を求めて圧力の低い上方に向かう。
 多く出現した水柱は、ジャスティスに滝のようにふりかかった。

 ジャスティスにも敵の攻撃は命中し、20もの炎が出現した。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 120門級もの巨艦……高性能魔導戦列艦が揺れる。
 指揮所付近にも砲弾は命中し、煙と炎に包まれた。
 
「何があった??被害報告!!!」

 まだ視界が悪い中、艦長ガーラスは吠える。
 しかし、復唱は無かった。

 やがて、ジャスティスの煙が晴れ、同時に敵ゴーレムの上部を覆っていた爆炎も晴れていった。

「ば……馬鹿なっ!!!」

 敵を睨み付ける、先ほどの岩に包まれた姿とは裏腹に、上半身に巨大な城が出現していた。 城には砲門も多数設置されている。

「歩く城!?」


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第139話古の超兵器4P1

◆◆◆  

 ワカスーカルト防衛司令長官 エル・ガンエンは喜びに震える。

「すばらしい……なんて素晴らしいんだ!!!
 これほどの大きさの超兵器をたったの1人で動かせるなんて……」

 体育館のように広いスペース、壁には古代文字が描かれ、空間には四角の物体に集積回路のような模様が刻まれた物体が浮いていた。
 中央部に操縦席が設けられ、彼は座る。
 座ると映像が切り替わり、外の様子がはっきりと見えるようになった。
 黒月族の神話級兵器、キル・ラヴァーナルのすさまじさに感極まる。

「おおおぉっ!!!」

 エル・ガンエンの頭の中に操縦方法、兵装等、キル・ラヴァーナルの動かし方が入ってくる。

「ぐうっ!!!」

 多くの情報を短時間で詰め込まれ、頭がおかしくなりそうだった。

「はあっはあっはあっ!!!」

 情報の入力が終わる頃、エル・ガンエンはヨダレを垂らしながら頭を抱え、息を切らす。
 そして不気味に笑い始めた。

「フ……フフフ……フハハハハっ!!!素晴らしい!!素晴らしいぞっ!!この兵器はっ!!!
 これは正しく神の力……私は……私こそがクルセイリース大聖王国の守護神だ!!!
 さあ、我が聖なる神域を犯す侵略者どもに神の怒りを……殲滅の裁きを与えよう」

 エル・ガンエンはキル・ラヴァーナルを起動した。
 ゴゴゴゴゴゴ………。

「フハハハハハッ!!!」

 付近は大音響の地響きが鳴り響く。
 キル・ラヴァーナルが埋まっていた採掘場は、山ごと盛り上がり、2足歩行する岩のごとき、とてつもない大きさのゴーレムが現れる。
 目は鋭く、角のようなものが張り出していた。
 大質量のそれは動き出しす。

 ドゴーン……ドゴーン……。

 大きな地響きと共に、200mから300mはあろうかと思われる大きな太いゴーレムのような物体が歩く。
 ゆっくりと歩いているように見えるが、その歩幅はとても大きく、相当な速度が出ていた。
 彼は異国の艦隊を殲滅するため、ワカスーカルト沖へ向かうのだった。



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