2023年04月25日

第140話崩壊1P5


◆◆◆

 イージス艦みょうこう 戦闘指揮所

「敵、ミサイル10発を発射、先ほどと同様、放物線を描いて向かってきます」

 レーダーを見ていた南野は再度敵から誘導弾が発射された旨を報告する。
 射撃管制を行っていた牟田口も極めて落ち着いている。

「どうやら敵は攻撃の手を緩めるつもりは無いようだな」

 艦長が牟田口に話しかける。

「そのようですね、あれが攻撃のつもりなのでしょう。当たるわけ無いのに、1発では解らんのだろうか」

「牟田口、戦場で楽観だけはするなよ」

「失礼しました」

 艦長は目を瞑る。

「確認だが、SSM1Bは対空プログラムがなされたもので間違い無いな?」

「はい、間違いありません。
 簡易な対空プログラムに仕様変更がなされています」

 既存のSSM1Bは簡易式対空プログラムへ仕様変更され、SSM2も順次対空プログラムと新型人工衛星誘導システムに対応出来るよう、順次改良が加えられている状況であった。
 彼は目を開く。

「敵の攻撃を迎撃、その後敵空中艦に対空ミサイルを2発、艦隊艦誘導弾(SSM1B)を1発ほど届けて差し上げろ」

「はっ!!」
 
「敵艦への直接攻撃を開始する!」

 ギリシャ神話において、主神ゼウスが娘、女神アテネに与えたとされる、あらゆる災厄、魔除けの能力を持つとされるイージスの盾
 イージスの名を冠した護衛艦がその真価を発揮する。

 
 イージス艦みょうこうの前部に設置された垂直発射装置の蓋が開いた。
 煙と炎をあげ、連続して対空誘導弾が射出された。

 その数12。

 12本もの科学の槍は白い尾を引きながら飛翔し、一瞬で青空に消えた。

 続けて艦中央部、斜めに設置された筒から一際大きな煙が上がる。
 さきほどよびもゆっくりと発射されるそれは、明らかに今までのミサイルよりも太くて大きい。
 斜め上方を向き、ロケットモーターによりゆっくりと加速を開始する。
 巡洋艦でさえも1撃で大破させうる威力を有する自衛隊の艦対艦誘導弾(SSM−1B改)は敵空中戦艦に向けて放たれた。

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第140話崩壊1P4

 
◆◆◆

 空中戦艦 聖帝ガウザーからは猛烈な数の対空光弾が射出される。
 光弾は敵の未来位置を予想し、その部分に打ち込む機能を有していたため、本来であれば当たるはずであった。

 まるで第2次世界大戦時、日本国の神風特別攻撃隊を迎撃しようとしたアメリカ海軍空母機動部隊が行った途轍もない「数」による対空砲弾のように、雨のごとき攻撃がたたき込まれた。

 しかし、魔帝製アトラタテス砲の想定を超える速度でミサイルは接近する。
 空中戦艦のような大目標に向かってくる物体に、そのような速度をもって飛翔してくる誘導弾は想定されていなかった。
 (空中の大質量物体の戦いでは閃光魔法が主力兵装として使用されていた)

 やがて……。

『アトラタテス砲沈黙!!魔力出力最大値、魔素前方に集中させ装甲強化!!!』

 空中戦艦に光の幕が瞬間的に出現する。

「くそっ!当たらなかったかっ。何かにつかまれ!!」

 自分たちの前で起こるあり得ない事象。
 おそらくは対空目標に対する攻撃など、空中戦艦ならば耐えきってしまうだろう。
 しかし、今の状況そのものが想定外であり、恐怖が彼を支配する。

 ガァァァァン!!

 空中に爆発が出現した。

 爆発音は戦艦内部にこだまし、空中戦艦、聖帝ガウザーが激しく振動する。

「うあぁぁぁぁつ!!!」

 聖帝の兵達は初めて死の恐怖を感じて声を上げた。

「被害報告!!!」

 艦長が吼える。

『魔素装甲出力70%低下!!その他システム異常なし』

「な……な……70%低下だと??それほどまでの攻撃だったというのか」

 装甲魔素をほとんど持って行かれてしまった。
 70%の低下という事は、備蓄魔力のほとんどを失ったに等しい。
 ガンドライトの額からは、汗が流れた。

 「爆沈」の2文字が頭に浮かぶ。

 嫌な予感を振り払った。

『今の攻撃をメータルラステル法により、攻撃力換算すると数値は357です』

「さ……357!?357だと!!何という攻撃能力数値!!対空攻撃でそれほどの数値を出すというのか。
 魔素回復までの時間は?」

「今の攻撃でほとんどを持って行かれたため、ラヴァーナル帝国の魔導機関を最大にしてもおよそ10分かかります」

 絶句……。
 次は防御できない可能性が出てくる。

「まずい、それは不味いぞ!!
 全火力をもって敵艦を叩く!!!「神の炎」目標、ワカスーカルト沖合の敵戦闘艦。
 準備が整い次第順次発射せよ。
 全弾発射だ!!!」

『神の炎、全弾発射!!』

『全弾発射準備』

 生産の出来ない兵器を全弾発射するとのやりとりを聞いていた司令アロエリットが慌てて口を挟む。

「ガンドライト艦長、全弾発射が必要か?それほどの相手なのかね?」

「司令、議論をしている暇はありません。
 ワカスーカルト沖合にいる艦は空中戦艦をもってしても脅威です。
 これほどの艦……敵もおそらく虎の子の古代兵器を持ち出しているものだと推定されます。
 それ以外にこの状況は考えられない。
 敵の対空兵装はあと1発防ぐのが限界です。
 2発は耐えられない。甚大な被害に繋がる可能性があります!!
 思えば単艦で前方に進出している艦です。敵も相当な自信があるからこそ出来る事なのでしょう」

 彼は続ける。

「とにかく、空中戦艦が墜ちれば国内備蓄も含めて神の炎は使えなくなります!!
 今あるすべての攻撃力を眼前の敵艦に向けなければ生き残れないほどの状況なのです!
 全弾発射といっても、射撃管制可能な数に限りがあります。
 とにかく、全力で攻撃することが必要です!!」

「そ……そうか、解った」

 ガンドライトの剣幕に押されたアロエリットは納得し、発射準備は進む。


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第140話崩壊1P3


 無機質で落ち着いた報告をする者が、悲鳴のような声を上げる。

 アエロリットはカッと目を見開いた。
 報告書にあった時速2800kmを超える神速の攻撃。

「神の炎を迎撃するための誘導弾ではなかったのか?まさか空中で目標変更したというのかっ!!!」

 あまりの射程の長さに舌を巻く。

 長距離対空兵装もあるが、敵攻撃のあまりの速さに準備する時間が無い。
 ガンドライト艦長は吼える。

「ピンポイント装甲準備!」

「速すぎて命中箇所判別不能!!!危険すぎます!!」

「くそっ!!ならばアトラタテス砲魔導電磁レーダーとリンク!
 距離0.5kmを切ったら自動で砲撃を止め、魔素を前方に最大展開!前方のみの装甲を強化しろっ!!!
 20秒で来るぞっ!!」

 オペレーターは途轍もない指の速さで空中に浮かび上がった光のボタンに触れる。
 艦長の指示を的確入力する。

「アトラタテス砲魔道回路接続完了!!」

「撃てえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 空を無数の光弾が埋め尽くす。

 クルセイリース大聖王国の持つ最強の隣接対空兵器、アトラタテス砲(轟連式対空魔光砲)のうち、上部に設置された3門が火を噴いた。
 各砲が分速3000発を誇り、3門で分9000発を打ち出す猛烈な光弾による迎撃。
 すべての弾が曳光弾のように輝くため、空に光弾の雨が出現する。 

 魔導電磁レーダーとリンクし、各砲が独立、敵の位置と速度を確認しながら照準を修正していく。

「どうだっ!!!!」

 これで当たらなかった物体など、知らないし聞いたことも無い。
 


 イージス艦みょうこうが発射した艦対空誘導弾は、敵空中戦艦に向かって飛翔していた。
 ミサイルからは先端から斜めに衝撃波が出現し、粘性発熱によって衝撃波境界層で高温に達する。 
 敵の位置が比較的低空にあるため、空気の粘性発熱は大きく、表面の一部を溶かしなが ら敵に向かうのだった。

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