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空中戦艦 聖帝ガウザーからは猛烈な数の対空光弾が射出される。
光弾は敵の未来位置を予想し、その部分に打ち込む機能を有していたため、本来であれば当たるはずであった。
まるで第2次世界大戦時、日本国の神風特別攻撃隊を迎撃しようとしたアメリカ海軍空母機動部隊が行った途轍もない「数」による対空砲弾のように、雨のごとき攻撃がたたき込まれた。
しかし、魔帝製アトラタテス砲の想定を超える速度でミサイルは接近する。
空中戦艦のような大目標に向かってくる物体に、そのような速度をもって飛翔してくる誘導弾は想定されていなかった。
(空中の大質量物体の戦いでは閃光魔法が主力兵装として使用されていた)
やがて……。
『アトラタテス砲沈黙!!魔力出力最大値、魔素前方に集中させ装甲強化!!!』
空中戦艦に光の幕が瞬間的に出現する。
「くそっ!当たらなかったかっ。何かにつかまれ!!」
自分たちの前で起こるあり得ない事象。
おそらくは対空目標に対する攻撃など、空中戦艦ならば耐えきってしまうだろう。
しかし、今の状況そのものが想定外であり、恐怖が彼を支配する。
ガァァァァン!!
空中に爆発が出現した。
爆発音は戦艦内部にこだまし、空中戦艦、聖帝ガウザーが激しく振動する。
「うあぁぁぁぁつ!!!」
聖帝の兵達は初めて死の恐怖を感じて声を上げた。
「被害報告!!!」
艦長が吼える。
『魔素装甲出力70%低下!!その他システム異常なし』
「な……な……70%低下だと??それほどまでの攻撃だったというのか」
装甲魔素をほとんど持って行かれてしまった。
70%の低下という事は、備蓄魔力のほとんどを失ったに等しい。
ガンドライトの額からは、汗が流れた。
「爆沈」の2文字が頭に浮かぶ。
嫌な予感を振り払った。
『今の攻撃をメータルラステル法により、攻撃力換算すると数値は357です』
「さ……357!?357だと!!何という攻撃能力数値!!対空攻撃でそれほどの数値を出すというのか。
魔素回復までの時間は?」
「今の攻撃でほとんどを持って行かれたため、ラヴァーナル帝国の魔導機関を最大にしてもおよそ10分かかります」
絶句……。
次は防御できない可能性が出てくる。
「まずい、それは不味いぞ!!
全火力をもって敵艦を叩く!!!「神の炎」目標、ワカスーカルト沖合の敵戦闘艦。
準備が整い次第順次発射せよ。
全弾発射だ!!!」
『神の炎、全弾発射!!』
『全弾発射準備』
生産の出来ない兵器を全弾発射するとのやりとりを聞いていた司令アロエリットが慌てて口を挟む。
「ガンドライト艦長、全弾発射が必要か?それほどの相手なのかね?」
「司令、議論をしている暇はありません。
ワカスーカルト沖合にいる艦は空中戦艦をもってしても脅威です。
これほどの艦……敵もおそらく虎の子の古代兵器を持ち出しているものだと推定されます。
それ以外にこの状況は考えられない。
敵の対空兵装はあと1発防ぐのが限界です。
2発は耐えられない。甚大な被害に繋がる可能性があります!!
思えば単艦で前方に進出している艦です。敵も相当な自信があるからこそ出来る事なのでしょう」
彼は続ける。
「とにかく、空中戦艦が墜ちれば国内備蓄も含めて神の炎は使えなくなります!!
今あるすべての攻撃力を眼前の敵艦に向けなければ生き残れないほどの状況なのです!
全弾発射といっても、射撃管制可能な数に限りがあります。
とにかく、全力で攻撃することが必要です!!」
「そ……そうか、解った」
ガンドライトの剣幕に押されたアロエリットは納得し、発射準備は進む。
posted by くみちゃん at 14:16|
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