2023年04月25日

第140話崩壊1P8

◆◆◆ 
 
 クルセイリース大聖王国 聖都セイダー テンジー城

「な……な……ば……ば……馬鹿な!!」

 軍王ミネートは、映像を見て目を見開く。
 飛空艦によって中継されたリアルタイムの映像は、彼の心を粉砕するのに十分な威力を持っていた。
 歴史上無敵の強さを誇った聖帝ガウザーが粉砕されて地上に墜ちる姿は、とてもこの世のものとは思えなかった。

「そ……そ……そ……そんな!!そんな!!まさか空中戦艦がやられるなんて!!!私は見誤ったというのかっ!!」

 狼狽する軍王ミネートに、黒色ローブの男が近づいた。

「ほっほっほ、何を慌てふためいておられるのか。
 まだ軍も古代兵器キル・ラヴァーナルも残っているではないか」

「貴様……古代兵器たる空中戦艦の強さを知らない訳ではなかろう」

「フフフ確かにあれは強い、信じられぬほどにな。
 だが、狼狽していても現実は動かぬぞ。考えるは今後の事、私が敵ならば無理に地上兵器と戦わず、キル・ラヴァーナルは無視して聖都へ向かうであろうな」

 軍王の額から汗が伝う。

「キル・ラヴァーナルだけでは心細いのか?ならばあれを使うが良い。
 本土から150km付近に敵主力艦隊が展開している。
 今なら本土にダメージが無いため、好都合ではないか」

「………」

「何を迷っている?今使わずしていつ使うのか?国に与えられし無限にあふれ出る神通力は、神からこの時のために遣わされた力であろう?」

 ローブの男はミネートを煽る。

 軍王ミネートの眼光が光る。
 
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第140話崩壊1P7


「被害報告!!」

『装甲展開用の魔素はすべて使い切りました!!魔導機関損傷無し、の出力安定!!』

『電磁波反射式レーダー破損、使用不能!前部外殻損傷、魔素安定化に影響有』

「!!!電磁反射式レーダーが損傷したのか?復旧は可能か!!」

『完全にもっていかれました。修復不能』

「なっ……」

 敵の攻撃は魔導レーダーに反応しない。
 どうやったのかは全く検討がつかないが、本当に反応しない。
 そんな中、唯一の魔力不使用の攻撃を防ぐための超高性能の目が失われる。

 他の後ろに控える飛空艦も劣化版のレーダーは備え付けてあるが、リンク機能が無いため、正確に飛翔位置を把握するためには、魔信で話し続けなければならなかった。

 撤退したい所だが、飛空艦が後ろに控えており、攻撃の要、聖王家の象徴、もはや神話を具現化したとも言える聖帝ガウザーが撤退する事があって良い訳が無く、ガウザーの撤退はクルセイリース大聖王国の王家敗退と同じ意味を持つため、出来ない。
 
「なんという事だ……」

 絶望の中、ガウザーはつぶやく。
 そんな中、追い打ちがかけられる。
 
『敵、大型誘導弾が近づいてきます!!!距離20,超低空から亜音速で近づいてきます!!』

 魔導望遠装置を眺めていた監視員が運良くSSM−1Bを発見した。

「くそっ!!何と言うことだ!!しかし……亜音速で間違いないな?
 下部アトラタテス砲は使用可能か?」

「はい、上部は冷却中ですが、下部は使用可能です!!」

 今回の誘導弾は遅くて大きい。迎撃可能な可能性が高い。
 勝機はある。
 ガウザーがにやけた瞬間……

『敵大型誘導弾上昇!!』

「いかん!!すぐにアトラタテス砲で迎撃!!」

『射程外です!!』

「閃光魔法だ!!クルスカリバーを使用せよ!!」

『しかし!敵の攻撃に魔素が無く、電磁反射式レーダー故障中のため光学手動照準になります!!』

「かまわん!」

『了解!!クルスカリバー(極大閃光魔法)放射!!』

 聖帝ガウザーの前方に六芒星が出現した。
 その中心部から目視可能なレーザーが宙を駆ける。

「当たれ!!当たるのだっ!!もやは装甲が無い!!頼む、当たってくれぇ!!」

 神速の誘導弾に比べて今回のは、亜音速であり、酷くゆっくりと見える。
 とはいえ、音速に近い速度が出ているため、当たりそうなのに当たらない。

「着弾まで3……2……1……」

「く……くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 イージス艦みょうこうから発射された90式艦隊艦誘導弾改(SSM−1B改)は、古代魔法帝国(ラヴァーナル帝国)の遺産、空中戦艦、聖帝ガウザーに命中、実に260kgにも及ぶ弾頭はガウザーの表面装甲を粉砕して内部に侵入して高性能爆薬に着火し、その威力が解放された。
 
 猛烈な炎と圧力は艦内を駆け巡り、兵達を焼き尽くしながら圧力の弱い方に向かう。
 やがて、空中に巨大な十字架の光と炎が出現し、周囲に爆音が響く。
 
 聖帝ガウザーは3つに折れ、炎を纏いながらゆっくりと地上に墜ちていく。

 地上に衝突したそれは、猛烈な炎と爆発を伴いながら、周囲の草木を焼き尽くすのだった。 司令アロエリット、艦長ガンドライトは苦しむ間もなく戦死。
 
 後方から聖帝ガウザーに続いていた飛空艦隊は、その壮絶な最期を唖然としながら見守るのだった。


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第140話崩壊1P6


◆◆◆

 クルセイリース大聖王国 古代兵器 聖帝ガウザー

『敵、12発もの迎撃兵器を放出、神の炎に向かって飛翔中』

「くそっ!!これほどの数をも単艦で対応してしまうのか!!迎撃が12発、相当に命中率に自信があると見える」

 やるべき事はやった。
 レーダー上に写る敵と自分の放った神の炎。
 その距離は徐々に近づく。

 艦長の思考は巡る。
 敵は先ほど、1発の神の炎に対して2発の誘導弾による迎撃を行った。
 つまり、100%当てる自信は無い。
 今回も、12発を放っている。
 撃ち漏れを警戒しているのだろう、20発撃たないのは、おそらくは管制能力の限界なのかもしれない。
 それにしても、北西世界は何と高い技術力を有しているのか。
 敵の力を測らず、勝手に開戦した軍王も本当に無能だ。

 艦長ガンドライトは凄まじい気迫で画面を睨み付ける。
 司令アロエリットは、緊迫の空気の中、口を挟めずにいた。

 眼前では魔力探知センサーで感知した魔力を元に、映像化される画面が浮かび上がる。
 青い光の尾を放ちながら飛翔する優雅な姿、そして途轍もない性能を持った攻撃が10発も飛翔する。
 本来であれば誇らしいだけの映像だが、先の攻撃により、足の震えが止まらない。
 これが通用しない場合、管制能力が許す限り数で押すしか無いが、それを防がれたら打つ手が無い。

『まもなく接触する模様……4……3……2……1……今!!』

 先ほど見た悲劇、神の炎が爆発し、2秒か3秒の間隔をおいて次々と……次々と神話級兵器が迎撃されていく。
 音速に近い速度で飛翔しているはずの……小さなコアに当てていく。
 
 司令アロエリットは眼前のあり得ない光景を呆然と眺める。
 悲劇の再来……すべての神の炎は爆散し、炎の雨と化す。

「あ…あ…あ……そ……そんな!!」

 主力兵装が封じられた。
 追加攻撃があたまに過るが、まずは敵の攻撃を防がなくてはならない。
 攻撃の効かない相手には、相手の弾切れまで神の炎を撃つしかないが、どちらが先に弾が尽きるのだろうか。

『敵!!残り2発が向かってきます!!!』

「ちくしょう!!アトラタテス砲自動管制!!」

「了解!!」

 2発の誘導弾が迫る。
 近づき、射程に入ったそれに対し、轟連式対空魔光砲(アトラタテス砲)が火を噴く。
 
「2発当たると不味い!!」

 艦長は他者に聞かれぬよう、小さくつぶやいた。
 魔導電磁レーダーを見ると、敵はどんどん近づいてくる。
 対空砲はシャワーのように打ち込まれているのに当たらない。
 何故当たらないのか、ガンドライトはたまらず叫んだ。

「何故だ!!何故当たらぬのだああぁぁ!!当たれ、当たれ当たれ当たれ当たれ当たれーーーーっ!!!」

 小さな爆発が起こり、敵の弾が空を回転しながら落下をはじめた。

『命中!!残り1発!!』

「や……やった!!!」

『アトラタテス砲オーバーヒート!!!冷却開始します』

 射撃が止まる。

「魔素展開!!前面にエネルギーをすべて回せ!!装甲強化!!」

『了解!!!』

 空気がゆがむほどの強力な魔力が前方に展開された。

「来るぞっ!!!」

 全員が何かにつかまった。次の瞬間。

 ガアァァァァン!!

 聖帝ガウザーが激しく揺られる、同時に各種アラームが鳴り響いた。


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第140話崩壊1P5


◆◆◆

 イージス艦みょうこう 戦闘指揮所

「敵、ミサイル10発を発射、先ほどと同様、放物線を描いて向かってきます」

 レーダーを見ていた南野は再度敵から誘導弾が発射された旨を報告する。
 射撃管制を行っていた牟田口も極めて落ち着いている。

「どうやら敵は攻撃の手を緩めるつもりは無いようだな」

 艦長が牟田口に話しかける。

「そのようですね、あれが攻撃のつもりなのでしょう。当たるわけ無いのに、1発では解らんのだろうか」

「牟田口、戦場で楽観だけはするなよ」

「失礼しました」

 艦長は目を瞑る。

「確認だが、SSM1Bは対空プログラムがなされたもので間違い無いな?」

「はい、間違いありません。
 簡易な対空プログラムに仕様変更がなされています」

 既存のSSM1Bは簡易式対空プログラムへ仕様変更され、SSM2も順次対空プログラムと新型人工衛星誘導システムに対応出来るよう、順次改良が加えられている状況であった。
 彼は目を開く。

「敵の攻撃を迎撃、その後敵空中艦に対空ミサイルを2発、艦隊艦誘導弾(SSM1B)を1発ほど届けて差し上げろ」

「はっ!!」
 
「敵艦への直接攻撃を開始する!」

 ギリシャ神話において、主神ゼウスが娘、女神アテネに与えたとされる、あらゆる災厄、魔除けの能力を持つとされるイージスの盾
 イージスの名を冠した護衛艦がその真価を発揮する。

 
 イージス艦みょうこうの前部に設置された垂直発射装置の蓋が開いた。
 煙と炎をあげ、連続して対空誘導弾が射出された。

 その数12。

 12本もの科学の槍は白い尾を引きながら飛翔し、一瞬で青空に消えた。

 続けて艦中央部、斜めに設置された筒から一際大きな煙が上がる。
 さきほどよびもゆっくりと発射されるそれは、明らかに今までのミサイルよりも太くて大きい。
 斜め上方を向き、ロケットモーターによりゆっくりと加速を開始する。
 巡洋艦でさえも1撃で大破させうる威力を有する自衛隊の艦対艦誘導弾(SSM−1B改)は敵空中戦艦に向けて放たれた。

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第140話崩壊1P4

 
◆◆◆

 空中戦艦 聖帝ガウザーからは猛烈な数の対空光弾が射出される。
 光弾は敵の未来位置を予想し、その部分に打ち込む機能を有していたため、本来であれば当たるはずであった。

 まるで第2次世界大戦時、日本国の神風特別攻撃隊を迎撃しようとしたアメリカ海軍空母機動部隊が行った途轍もない「数」による対空砲弾のように、雨のごとき攻撃がたたき込まれた。

 しかし、魔帝製アトラタテス砲の想定を超える速度でミサイルは接近する。
 空中戦艦のような大目標に向かってくる物体に、そのような速度をもって飛翔してくる誘導弾は想定されていなかった。
 (空中の大質量物体の戦いでは閃光魔法が主力兵装として使用されていた)

 やがて……。

『アトラタテス砲沈黙!!魔力出力最大値、魔素前方に集中させ装甲強化!!!』

 空中戦艦に光の幕が瞬間的に出現する。

「くそっ!当たらなかったかっ。何かにつかまれ!!」

 自分たちの前で起こるあり得ない事象。
 おそらくは対空目標に対する攻撃など、空中戦艦ならば耐えきってしまうだろう。
 しかし、今の状況そのものが想定外であり、恐怖が彼を支配する。

 ガァァァァン!!

 空中に爆発が出現した。

 爆発音は戦艦内部にこだまし、空中戦艦、聖帝ガウザーが激しく振動する。

「うあぁぁぁぁつ!!!」

 聖帝の兵達は初めて死の恐怖を感じて声を上げた。

「被害報告!!!」

 艦長が吼える。

『魔素装甲出力70%低下!!その他システム異常なし』

「な……な……70%低下だと??それほどまでの攻撃だったというのか」

 装甲魔素をほとんど持って行かれてしまった。
 70%の低下という事は、備蓄魔力のほとんどを失ったに等しい。
 ガンドライトの額からは、汗が流れた。

 「爆沈」の2文字が頭に浮かぶ。

 嫌な予感を振り払った。

『今の攻撃をメータルラステル法により、攻撃力換算すると数値は357です』

「さ……357!?357だと!!何という攻撃能力数値!!対空攻撃でそれほどの数値を出すというのか。
 魔素回復までの時間は?」

「今の攻撃でほとんどを持って行かれたため、ラヴァーナル帝国の魔導機関を最大にしてもおよそ10分かかります」

 絶句……。
 次は防御できない可能性が出てくる。

「まずい、それは不味いぞ!!
 全火力をもって敵艦を叩く!!!「神の炎」目標、ワカスーカルト沖合の敵戦闘艦。
 準備が整い次第順次発射せよ。
 全弾発射だ!!!」

『神の炎、全弾発射!!』

『全弾発射準備』

 生産の出来ない兵器を全弾発射するとのやりとりを聞いていた司令アロエリットが慌てて口を挟む。

「ガンドライト艦長、全弾発射が必要か?それほどの相手なのかね?」

「司令、議論をしている暇はありません。
 ワカスーカルト沖合にいる艦は空中戦艦をもってしても脅威です。
 これほどの艦……敵もおそらく虎の子の古代兵器を持ち出しているものだと推定されます。
 それ以外にこの状況は考えられない。
 敵の対空兵装はあと1発防ぐのが限界です。
 2発は耐えられない。甚大な被害に繋がる可能性があります!!
 思えば単艦で前方に進出している艦です。敵も相当な自信があるからこそ出来る事なのでしょう」

 彼は続ける。

「とにかく、空中戦艦が墜ちれば国内備蓄も含めて神の炎は使えなくなります!!
 今あるすべての攻撃力を眼前の敵艦に向けなければ生き残れないほどの状況なのです!
 全弾発射といっても、射撃管制可能な数に限りがあります。
 とにかく、全力で攻撃することが必要です!!」

「そ……そうか、解った」

 ガンドライトの剣幕に押されたアロエリットは納得し、発射準備は進む。


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第140話崩壊1P3


 無機質で落ち着いた報告をする者が、悲鳴のような声を上げる。

 アエロリットはカッと目を見開いた。
 報告書にあった時速2800kmを超える神速の攻撃。

「神の炎を迎撃するための誘導弾ではなかったのか?まさか空中で目標変更したというのかっ!!!」

 あまりの射程の長さに舌を巻く。

 長距離対空兵装もあるが、敵攻撃のあまりの速さに準備する時間が無い。
 ガンドライト艦長は吼える。

「ピンポイント装甲準備!」

「速すぎて命中箇所判別不能!!!危険すぎます!!」

「くそっ!!ならばアトラタテス砲魔導電磁レーダーとリンク!
 距離0.5kmを切ったら自動で砲撃を止め、魔素を前方に最大展開!前方のみの装甲を強化しろっ!!!
 20秒で来るぞっ!!」

 オペレーターは途轍もない指の速さで空中に浮かび上がった光のボタンに触れる。
 艦長の指示を的確入力する。

「アトラタテス砲魔道回路接続完了!!」

「撃てえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 空を無数の光弾が埋め尽くす。

 クルセイリース大聖王国の持つ最強の隣接対空兵器、アトラタテス砲(轟連式対空魔光砲)のうち、上部に設置された3門が火を噴いた。
 各砲が分速3000発を誇り、3門で分9000発を打ち出す猛烈な光弾による迎撃。
 すべての弾が曳光弾のように輝くため、空に光弾の雨が出現する。 

 魔導電磁レーダーとリンクし、各砲が独立、敵の位置と速度を確認しながら照準を修正していく。

「どうだっ!!!!」

 これで当たらなかった物体など、知らないし聞いたことも無い。
 


 イージス艦みょうこうが発射した艦対空誘導弾は、敵空中戦艦に向かって飛翔していた。
 ミサイルからは先端から斜めに衝撃波が出現し、粘性発熱によって衝撃波境界層で高温に達する。 
 敵の位置が比較的低空にあるため、空気の粘性発熱は大きく、表面の一部を溶かしなが ら敵に向かうのだった。

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第140話崩壊1P2

◆◆◆

 クルセイリース大聖王国 聖王直轄飛空艦隊  旗艦 聖帝ガウザー 中央司令室

『神の炎は順調に飛行中』

 艦橋では立体的映像に、対艦誘導魔光弾(神の炎)が飛翔する映像が写る。
 敵の戦闘艦など1撃で葬る威力を有する強烈な威力。
 青い光に包まれて飛翔する姿は優雅で力強かった。

「フフフ……敵が哀れになってきたよ」

 司令アエロリットは右手に持ったグラスの液体を一口能み、艦長ガンドライトに話しかける。

「全くでございますな、彼らは何も知ること無く、神の炎に包まれるのです。
 このような超高性能兵器によって死する敵はむしろ光栄に思うかもしれませんな」

 約束された勝利を確信した。

『電磁反射式レーダーに反応!!敵は何かを2発発射しました!!速度……音速の2倍を超過!神の炎に向かっています!!
 なお、魔力レーダーに反応しないため、映像化出来ません!!』

「なっ……何だって?」

 ありえない、敵の行動が理解出来ない。
 仮に神の炎を探知し、対空砲を発射したとしても敵までまだ70km近くあり、距離がありすぎる。
 たったの2発で、無誘導ならば当たるはずがない。
 たどり着く1つの結論。

「ま、まさか……まさか神の炎を探知して迎撃の誘導弾を発射したのか?」

「そんなバカな、飛空艦のような大きな目標ならともかく、音速に近い速度で飛翔し、小さいコアである神の炎を迎撃出来るはずがありません!!」

 日本国が誘導弾を有しており、さらに魔力レーダーにさえ反応しないという情報は得ていた。
 さらに、飛空艦を粉砕するほどの威力を有し、正確に高速で着弾するとの情報も得ていたが、神の炎のような音速に近い飛翔速度で飛ぶ対艦誘導魔光弾を迎撃出来るという事は、前記兵器よりも超絶な性能が必要であり、想定の遙か上だ。

 地球の文明を知っていたなら想定した事象であるが、彼らの生きてきた常識、魔導技術レベルからは想像すら出来ない事象であった。
 電磁反射式レーダーの情報も艦橋に光点の映像として表示される。
 その速さは凄まじく、まっすぐに神の炎に向かっていた。

『接触まであと10秒!!7……6……』

「まさか……まさかっ!!!」

『3……2……1……今!!』

 急速に接近してきた光点は、神の炎と重なる。
 
 同時に、映像として映し出されていた神の炎が大きく爆発した。

「なっ!!」

「そんな、そんな馬鹿なっ!!!」

 誇らしく飛翔していた神話級兵器は爆散し、炎の欠片となって空から落つ。
 彼らはワナワナと震えはじめるが、現実はそれを待ってはくれなかった。

『敵の攻撃、残り1発がまっすぐこちらに向かって来ます!!!時間算出中!!』

「な……何だと!?」

『算出完了、約40秒で到達します!!!』


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第140話崩壊1P1

「何だっ!!これは」
 
 射撃管制をしていた牟田口は自分の目を疑う。
 新世界において、日本国が経験する初のミサイルによる攻撃に、CICルームには緊張が走った。
 敵の発射した誘導弾と思われる物体の機動は放物線を描いて飛翔する。
 角度ある放物線ならば、上昇速度は遅くとも最終的な速度は重力加速度の影響で速くなる可能性はある。
 しかし敵の発射角は浅く、緩やかな放物線を描くと共に、速度も音速よりも遙かに低い。

 敵誘導弾様のものは、レーダー反射面積も大きかった。

「これはどういう事だ?撃墜してくれと言っているようなものだ」

「これはデコイ?もしくは、上昇後に急加速する可能性もある。別に低空飛行の超音速誘導弾もしくはステルス性を有するミサイルを同時に複数発射している可能性も高いぞ!!」

 空中に大規模質量物体を浮かすほどの技術を有する敵が、単発であれほど簡単に迎撃可能な弾のみを撃ってくるはずはない。
 途中で高速化する、または迎撃ミサイルが近づいてきたら不規則な回避行動を行う、もしくは他に誘導弾があるはずだとの想定の元、みょうこうの有する各種レーダーを駆使するが、他に誘導弾は見つけられなかった。

「1発以外確認出来ない!!」

「まさか、探知不能なのか?」

 CICでは、他の誘導弾が探知出来なかったため、緊張は極度に達する。
 対応可能な措置として、ますは探知出来た低速誘導弾を撃墜することにした。

 迎撃のための目標入力が迅速的確に行われる。
 みょうこう前部に設置されたVLS(ヴァーティカルローンチングシステム(垂直発射装置))の蓋が開いた。

 艦橋に届くほどの発射炎が吹き上がる。

 轟音……

 青空に向かって艦対空誘導弾が射出された。 VLSから射出されたミサイルは、ロケットモーターで急激な加速を行う。
 猛烈な加速により、科学の槍は十数秒で虚空に消えた。

 撃ち漏れを無くすため、2発のミサイルが発射されるのだった。



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