2023年07月14日

第141話崩壊2P6


◆◆◆

 ワカスーカルト沖合約10km海上
 
 日本国 海上自衛隊 第4護衛隊群 イージス艦ちょうかい CIC

「え?」

 レーダーを見ていた南野は驚きの声を上げた。
 見間違いでは無いか、もう一度確認する。

「そんな事があるのかっ!!!」

 イージス艦の艦橋外に取り付けられた8角形のファイズドアレイレーダーは、位相の変化によりレーダーの射出方向を変えているため、機械式に比べて一瞬で各方向にレーダー波を飛ばすことが可能となっている。
 この強力なレーダーは、遙か上空にも向けられていた。

「レーダーに感有り!!8時の方向、距離30マイル,高度1080000フィート、弾数3、展開中の友軍……第4護衛隊群に向け落下中!!
 速度……時速4600kmから加速中!!!」

「まさか……弾道弾かっ!!!」

 新世界において体験したことの無い弾道弾の可能性のある攻撃に、戦闘指揮所は騒然となるのだった。
 
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第141話崩壊2P5

◆◆◆

 軍神の棟最上階 
 儀式の間において、魔道機械音が大きく鳴り響いた時だった。

「ギャァァァァァッ!!!」

「なっ!!」

「えっ??」

 中心部にいた大魔道士5名が青色の炎に包まれ、灰となる。

「何があった??」

 軍王はとっさに報告を求めた。

『不明です。術式も完璧で、術者防壁も完璧だったはず……現在原因を調査中です。なお、魔法(メテオ)の起動は成功し、敵艦隊付近に向かって星の欠片は落下を開始しました』

 メナスはローブの下で舌打ちした。

「ちっ!出力を上げすぎたか、使えない魔道士どもめ……しかし、目的は達成出来そうですねぇ……フフフ」

 メナスは皆に聞こえぬようにつぶやいた。

「なんてことだ!!!」

「気をつけろ!!防壁が破れている可能性があるぞっ!!」

 突然の大魔道士の死に、術式に関わる者達は動揺を隠せなかった。
 魔道を極めし者達の死は、国家の損失と言っても差し支えなく、軍幹部の衝撃も大きい。
 動揺は波のように伝搬し、場全体に広がっていった。

「うろたえるなっ!!」

 儀式の間全体に響き渡る軍王ミネートの声

「古代神聖魔法は発動している!!敵に1撃は加わるのだ!!
 大魔道士の死、この無念さは筆舌に尽くしがたい!!しかし、死を無駄にするな。
 うろたえるのでは無く、原因を特定し、再発防止措置を行え!!」

 場は冷静さを取り戻す。

『防壁部の術式については現在原因を解析中、メテオについては魔力投影します』

 ブゥゥゥン……

 音と共に、立体映像が儀式の間に映し出される。
 宇宙空間から大気圏へと突入し、空気の粘性発熱で高温の赤い尾を引く星の欠片が映し出された。

「おおおおぉぉぉぉ」

「こ……これが……」

 初めて見るメテオ(国家級敵国殲滅魔法)に感嘆の声が流れる
 星の欠片は重力加速度と指向性のある神通力に引っ張られ、速度を徐々に上げていく。
 赤い炎の尾は徐々にその長さを伸ばしていくのだった。


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第141話崩壊2P4


◆◆◆

 〜軍神の棟の最上部〜

 薄暗い部屋に複雑な魔方陣が画かれる。
 中央部には国でトップの実力を誇る大魔道士5名が五芒星を画くように立つ。

 同5名を魔力伝導率の良い配線で繋ぎ、中央部に秘宝が置かれていた。

「これより国家級敵国殲滅魔法を使用する」

 軍王の号令の元、大魔道士達が呪文を唱え始める。

「今ですね……」

 メナスは他に聞こえぬよう、小さくつぶやいた後、目に見えぬほどの直径1mmほどの使い魔を飛ばした。

「さあ、魔方陣5節の防壁部を指示通り、53秒以内に書き換えなさい」

 軍王、魔道士その他警備を行う兵に気付かれる事なく、メナスは使い魔を放つのだった。

◆◆◆

 国家級敵国殲滅魔法の準備は着々と進んでいた。

 5人の大魔道士は呪文に集中し、魔道機械を多くのオペレーターが操る。
 総括の報告者が無機質な声で報告を続けていた。

『魔力充填135%、神通力変換必要魔力に達しました』

『神の棟へ接続開始』

 軍神の棟が光り輝き、クルセイリース大聖王国の端に設置された神の棟へ光の道が出来る。 空から、いや、宇宙から見ると、まるで光り輝く十字架……グラウンドクルスのようだ。

『神通力変換開始……なっ!!これはっ!!』

「どうした?」

『神通力、の力が想定の28倍出ています!!これほどの出力だと重力引き寄せに、より指向性を持たせ、より高高度にある星の欠片を引き寄せる事が可能です!!』

「ならば高威力をたたき込め」

『はっ!!』

『神通力変換、出力向上……』

『最終呪文詠唱』

 5人の大魔道士がほのかに光る。
 音域を会わせて最終呪文が唱えられ始めた。

「神の僕たる幾千の星々よ、我らに従属し、敵を滅せよ」

『出力安定、座標入力……入力完了!!国家級敵国殲滅魔法(メテオ)起動準備完了』

 軍王は神話級の魔法使用に震える。
 正に神の力を我が采配で使用する。
 この一撃は国を救った一撃として、歴史に名を刻むであろう。

「フフフ……俺ともあろうものが、緊張してきたぞ」

「私も感無量です。この神の技法に立ち会う事が出来るなんて……」

 感極まり、全身が震えた。

「軍王様、号令を」

「うむ……我が国を侵略せんとする、悪魔の艦隊よ、聖なる国に牙を向いた事を後悔しながらあの世へいけ
 我らが一撃は神の一撃!三千世界の灰となれ!!
 国家級敵国殲滅魔法……メテオ!!」

『メテオ起動』

 国に出現した大きな光の十字架から、宇宙に向かってクロスの光が伸びる。
 高空に漂うチリに巨大なクロスの光が映し出された。
 この奇跡の光は多くの国民が目撃することとなる。

「な……なんだ、あれはっ!!」

「空に十時の光??」

「神が降臨したのか?」

 多くの国民は、その奇跡の出現に驚き、歓喜し、祈るのだった。


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第141話崩壊2P3


 軍王は思考を止めて目を瞑った。
 神通力の使用を先祖に詫びる。
 拳を天に向けた。
 上を向く軍王の顔は晴々としていた。
 
 
「古代の掟よりも、眼前の脅威を取り除く。それが軍王たる私に課せられた使命である!!
 聖王国臣民を繁栄に導く使命が私にはある!!!
 すべては聖王家のために!!
 すべては臣民のために!!
 すべては公のために!!!
 我が決定に一片の悔いなし!!」

 軍王は誰もいない部屋で大声を張り上げる。
 強く拳を握りしめた。

「メナスはいるかっ!!!」

 隣の部屋まで聞こえる大声に、メナスはやってきた。

「……軍王様、ご決断を」

 ローブの下にはイヤラシい顔があった。

「神通力の使用による副作用の可能性はどう考えている?」

「神通力は大地より無限にあふれ出ています。
 神々の大いなる遺産が地下に眠っているとしか思えません。
 無限の神通力は、文字通り無限。
 大量使用をしたとしても、すぐに次の大魔法が連発出来るでしょう。
 副作用など無い、まさに万能なる力なのです!!
 クルセイリースは神に守護された国としか思えません。」

「……そうか、ではこれより国家級敵国殲滅魔法を使用する。
 目標は沖合に展開中の日本国艦隊だ!!!」

「承知しました……2発目として、日本国には使用しないので?」

「敵国の正確な座標が解らぬ。それに、関係ない民を巻き込んで消滅させることもあるまい」

「……ふふ…甘いですね。
 私は大魔法の補助につきましょう。
 この大いなる魔法は神の魔法。かつて名を馳せた古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国でさえもこの大魔法を防ぐ事は出来ず、国ごと尻尾を巻いて逃げ出した」

「今回あふれ出る神通力を使用するとはいえ、触媒となる「王家の秘宝」と「軍神の指輪」は相当に古く、補修に人の手も加えられている。
 使用される神通力の出力も、神の使用した星堕としに比べると遙かに低いため威力は相当に落ちる。
 しかし……」

「はい、艦隊を全滅させるなど造作も無い事」

「……儀式を開始する!!軍神の棟へ行くぞ!!!」

 軍王ミネートは、聖王国を護るため、軍神の棟へ向かうのだった。


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第141話崩壊2P2


 軍王ミネートは思考を巡らせる。

 当初の北西世界や日本国に対する報告書はすべて間違っていた。 
 軍の想定を遙かに上回る日本国の強さは「尋常では無い」という言葉が正しい。

 多少想定を上回る事は考えていたが、あまりにも強さがかけ離れていた。
 軍の中核たる飛空艦艦隊も効果が無く、あっさりと滅せられた報告を聞いた時、衝撃が体を駆け抜けた。

 そんな中、聖王家直轄の軍、空中戦艦が出撃すると聞いて、内心安堵したものだ。 
 いかな国の軍であろうとも、古の魔法帝国の遺産には勝てない。
 勝てるはずがない。
 別格、いや、次元そのものが違う……はずだった。

 歴史上最強の強さを誇り、神々でさえも手を焼いた最強にして最悪な帝国、古の魔法帝国の空中戦艦は1回の出撃で1国を制圧出来るほどの強さがあり、しかもその戦艦稼働率は90%を超える。
 古の魔法帝国の遺産は解析技術や劣化によって、稼働率(本来の戦力における稼働可能兵器率)が低いものが多い。
 しかし、王家の空中戦艦は90%を超える。
 いかに未知の国とはいえ、勝てるはずがあろうか……いや、無い。
 
 確信的な思いだった。
 しかし、日本国によって……しかもたったの1隻の海上艦によってその考えは粉砕されてしまう。

 今思えば聖王女による荒唐無稽な報告が正しいのだろう。

 報告書の備考欄にあった「国ごとこの世界へ転移してきたと申し立てた」との文字を見て、頭がおかしくなった、もしくは幻惑魔法にかけられた可能性が極めて高いと判断したのは間違いだったというのか?

 ……いや、そんなずはない。
 国ごと転移など、そんな事が起こりうるはずが無いではないか。

「いったい何が起きている……」

 軍王の額を汗が伝う。
 日本国という国は、全く意味がわからない。
 しかし、いくら後悔しても現実の時間は遡らない。
 彼らは聖都へ駒を進めるだろう。

 『あれ』を使用すれば、確かに敵は殲滅出来る。
 古の魔法帝国の海上要塞でさえ、1撃で葬る事が出来るだろう。

 メナスの持ち込んだ魔導技術は神通力の使用を可能とした。
 画期的な技法ではあるが、微かな出力しか出ず、魔法に比べて効率が極めて悪いと言わざるを得なかった。
 しかし、「天才」達の活躍により、この技術は神の遺産たる「王家の秘宝」と代々の軍王に貸与される「軍神の指輪」と組み合わせる事により、神通力を大量に使用する事が可能となる。
 よって、神通力を大量に消費する魔法……神の魔法とも言える国家級敵国殲滅魔法が理論上使用可能となった。
 この神通力を使用した魔法……いや、魔法ではなく神法とでも言えばいいのだろうか、これは神通力を使用し、最新の技法により成功に至る。
 微細実験でも成功しているため使用可能だろう。

 しかし、建国時に刻まれた「不破の石板」の中に
    大地よりあふれ出る神通力の使用は厳禁とする
という不可解な文字が刻まれている。
 この国宝に刻まれた文字の意味は重く、相議をとるならば聖王家は神通力の大量使用に反対するだろう。 
 
 聖王子ヤリスラはまだ5歳であり、実質的に権力を握っているのは聖母ラミスである。
 ラミスからの私に対する信頼は厚く、古代魔法に必要な神器は決戦前に拝借していたため、すでに「王家の秘宝」と「軍神の指輪」は手元にある。

 聖王家は無理だが、聖王子のみの承認であるならば、最悪事後承認でも降りるだろう。

 しかし、何かが引っかかる。 
 まず、この国は何故大地から神通力があふれ出ているのか。

「まさか……建国神話が本当だというのか?」

 ミネートの考えは巡る。
 建国神話2章1項
  かつて世界に大きな災厄が訪れた。
  突如として現れし8つの首と、8つの尾を持つ山よりも巨大な邪竜は人々を襲い、多く の街を飲み込んで人類を恐怖のどん底に陥る。
  人々が絶望したとき、北西より神の化身が現れ、十字の地にこれを封印す。
  神の化身、多くの英知と力を我らに授けん。
  我らは選ばれし民、クルセイリース
  この大いなる力は人類の為に使用し、いつの日か復活する邪竜討伐のため、さらなる力 を手に入れなければならない。

 魔法とは根本的に力の種類が異なる神通力があふれ出しているのは本当に神の化身からの英知なのかもしれない。
 聖都と国土の端には、「神の棟」と呼ばれるいつ作られたのかも解らないアーティファクトがあり、神通力があふれ出ている。
 そして聖都の中心部には「軍神の棟」と呼ばれる一際大きな棟があり、神通力の濃度が高い。
 では、何故あふれ出る力の使用を禁止するのか。
 何故今は神通力が使用が出来ず、神通力に関する使用法は後世に語り継がれなかったのか。
 謎は謎を呼ぶが、今は謎解きをしている場合ではない。
 古代兵器すら倒してしまう悪魔が首都に……艦隊を率いて向かってくる可能性が高い。

「……悩む暇は無いか……決断するしかあるまい」


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posted by くみちゃん at 06:50| Comment(10) | 小説

第141話崩壊2P1

ごめんなさい、前話で、イージス艦ちょうかい が、みょうこうと記載されていました。
 今日は時間がないため、後日是正します
 誤記です。

◆◆◆◆◆
 
 クルセイリース大聖王国 聖都 セイダー 

 薄暗い部屋でロウソクの炎が揺れる。

「ぬううぅぅ……ぬぅぅぅぅっ!!」

 軍王ミネートは揺らぐ炎を見つめながら苦悶の表情を浮かべていた。
 ミネートの横にはメナスと呼ばれる男が立つ。
 いつもは白いローブを着る彼は、今日は黒色のローブに身を包んでいた。
 メナスはミネートを見てイヤラシく笑う。
 
「ミネート殿、何を悩んでいる。我らには「あれ」があるだろう?今なら沖合150kmに集中している敵艦隊を……北西世界の連合国主力艦隊を一撃で殲滅出来るのだ
 期を逸すると、悩む贅沢すら与えてもらえませんよぉ。
 最悪の想定を気にしておられるのか?
 大事を成し遂げるためには、多少の犠牲は致し方ない事だ」

「簡単に言いおるわ!メナス!!」

 ミネートの頭に「国家級敵国殲滅魔法」の文字が浮かぶ。
 星の世界より星の欠片を引き寄せるこの古代魔法は、命中誤差150m程度ではあるが、威力があまりにも凄まじく、周辺ごと消滅させる。
 「艦隊」に使用した場合、敵艦隊は殲滅出来るだろうが、引き寄せる星の欠片は1発とは限らない。
 多くの欠片のうち、1発は命中誤差150mとなるが、他の欠片は周辺に散らばる可能性もあり、もしも引き寄せたメインの欠片が空中分裂してしまえば、魔力誘導線から外れ、数百キロ離れた場所に落ちる可能性もあった。
 つまり、自国民に犠牲が出る可能性すらあったのだ。

 軍王は大きな声を出すが、メナスに動じる気配はない。
 軍王は続けた。

「ただ発言するだけの者とは違う。責任ある立場は違うのだ……少し一人にしてくれ」

 一瞬の重き沈黙が流れる。

「……解りました、ただ時間は残されていない。敵は待ってはくれないのだから……。
 隣室で待機する。準備が出来たら声をおかけ下さい……フフフ」

 メナスは退室した。

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posted by くみちゃん at 06:49| Comment(19) | 小説