2023年09月06日

第142話崩壊3P2

◆◆◆
 
 クルセイリース大聖王国 聖都セイダー 軍神の棟最上階

『ワカスーカルト沖合の敵艦、何かを発射した模様。
 キル・ラヴァーナルの電磁反射式レーダーで追います』
 
 ワカスーカルトに展開する黒月族の遺産、キル・ラヴァーナルから報告が入る。

「フフフ……フハハハハッ!!無駄だ無駄だ!!無駄ムダムダムだぁ!!
 我らが魔法は国家級魔法、飛空艦やワイバーンとは速度が違いすぎる!古の魔法帝国の誘導魔光弾よりも桁違いに速い。
 正に神速!!
 メテオは古の魔法帝国の対空誘導魔光弾でも防げぬわっ!」

 軍王は吼える。

「フフフ……消えゆく者達の足掻き、心地よいではありませんか。
 良い余興……。
 虫たちよ、足掻け足掻け!!フオーッホッホッホ!!」

 メナスも珍しく大きな声で笑った。

『メテオ加速中……9800…10000……12000……』

 本来ならば、メテオは魔法名であり、隕石の名前では無い。
 しかし隕石に対して軍としての名称が定められていなかったため「メテオ」という言葉を使う。
 指摘する者はおらず、言葉はそのまま、同様の意味で使われることとなる。

「なんと!!まだ加速していくぞ!!」

 事前の知識では速いという事は知っていたが、実際計測される具体的な数値、未だかつて経験したことの無い神速に軍王は興奮を隠せない。 
 魔力によって投影された映像では、隕石が3個、炎の尾をさらに大きくし、落ちていく様が映っていた。

 その場にいた者達は、神々の攻撃魔法に酔いしれ、大きな誇りを感じた。
 画像の画面を少し引いて固定する。

 速き物体が虚空を切り裂きながら進んでいる。
 隕石は高温となり、光を発しながら落ちる。
 敵の強力な艦隊を殲滅する歴史的瞬間を見ようと、誰もが画像を注視した。

「こ……これが……神々の魔法か!!」

「聖なる国、クルセイリース大聖王国万歳!!」

 場がざわつく中、冷静な報告員の声だけが不気味に響く。

『メテオ到達速度、時速5万、敵の発射した飛翔体は間もなくメテオに到達、到達まで13.12.11……』

「ご……ご……ご……5万!!なんという速度だ!!」

「無駄だ!どのような攻撃も決して当たらぬ!!速度が違いすぎる」

 メテオは強烈な神通力や同変換用魔力を使用するため、画面に投影可能であるが、敵の攻撃には魔力が無いため、投影画像は見えない。
 キル・ラヴァーナルの電磁反射式レーダーで位置のみを捕らえていた。
 
『3.2.1.今!!』

 イージス艦より発射された弾道弾迎撃ミサイルは、高空において飛翔中の隕石に命中。
 運動エネルギーによって敵の弾頭を砕くために開発されたキネティック弾頭は寸分違わず命中し、隕石をも砕くことに成功した。
 途轍もない相対速度。
 大きな運動エネルギーの衝突により、落下中のメテオの岩石は超高圧に晒されて瞬間的に内部が蒸発、膨らんだエネルギーは石の外殻を破って圧力の弱い方向へ飛び出す。
 隕石にまとわりついていた強力な神通力と反応して「メテオ」は大きな光と爆発を伴って分裂する。

 四方八方に火の雨を降らす。

「ぬおっ!!!」

 画面が白く、大きく輝きを放った。

 次の瞬間、映像には大きな白い爆炎と、そこから光の弾が白色の尾を引きながら、四方八方に飛んでいく姿火球が映し出された。
 高性能な魔力による機械は音も拾い、大きな爆発音の後、地響きとも取れる重低音が響き渡る。

「おおおおおおっ!!!!」

「そ……そんな……そんな!!」

 爆発の光と音を伴う映像はすさまじく、場は騒然となった。

「メテオは神速……神の……神の魔法なんだぞ!古の魔法帝国でも防ぐことは出来ない魔法なんだぞ!!!」

 軍王の狼狽する声が響き、メナスは目を見開いて固まる。

『飛翔体はメテオ3発全てに命中!隕石は分裂して制御を失いました!!!』

「全てに命中!?全てに命中だと!!馬鹿な時速にして5万kmは出ているのだ!!5万だぞ!!そんな事は無理だ!!そんな事は無理なんだ!!!
 あ……あ……ありえん!!」

 軍王の狼狽をよそに、隕石の欠片は制御を失って地上に落下していくのだった。

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posted by くみちゃん at 17:35| Comment(12) | 小説

第142話崩壊3P1

「弾道弾様のもの、艦隊に向け加速中!!この大きさは……まさか隕石??レーダー反射面積が異常に大きい!!」

 レーダーには、反射面積が威容に大きい3つの物体が降下している様子が映る。

「隕石?隕石堕としだと?」

 艦長、小圷は驚愕の声をあげた。

「まかさゲームに良く出てくるあのメテオか?何処までファンタジーな世界なんだ!!」

 副長が嘆く。
 ロールプレイングゲーム等において、よく使用され、ゲーム終盤で覚える強力な魔法、隕石を堕としその威力をもって敵を殲滅する「メテオ」が自分たちに向けられた可能性に、なんとも言えない気持ちになる。

「艦隊にメテオが向けられるなんて、なんて世界だ」

 誰かが叫んだ。
 イージス艦ちょうかい には、弾道弾迎撃ミサイルがあるが、小圷の額には冷や汗が伝う。
 小圷の思考は巡る。
 まず隕石の大きさや硬度が解らない。
 迎撃ミサイルのインパクト時は超高速にはなるが、果たして弾道弾迎撃ミサイルで隕石が割れるかどうかも解らない。
 そして敵の誘導方法が不明のため、隕石を割ったとしても、欠片が艦隊に向きを補正してくる可能性も否定できない。
 仮に迎撃出来たとしても、ミサイルの数には限りがあるため、ロールプレイングゲームのように連発されたら詰んでしまう。
 誘導の大元を破壊したいところだが、何処から誘導しているのか全く解らない。

 初期のみの誘導であれば高空で迎撃した方が、微かな角度であっても地上では大きな距離となるため、迎撃は早ければ早い方が良い。
 そもそもSM3は、弾道弾中間段階での迎撃を想定しており、終末段階はPAC3の領分だ。
 落ち始めた隕石に的確に実戦で当てなければならない。
 それにしても、日本国初の弾道弾迎撃ミサイルの実戦で、魔法、しかも隕石を迎撃することになるなんて、入隊時は全く想像も出来なかった。

 何れにせよ、考える時間が長くなるほど迎撃は困難となるため、艦長は即決する。

「弾道弾迎撃ミサイルを使用し、物体を破壊する
 SM3発射準備」

 艦橋に設置されたフェイズドアレイレーダーが隕石を捉える。
 反射波を感知し、瞬時に正確な高度と速度が計算され、ミサイル発射角を決める。
 
 迅速的確に迎撃ミサイルの発射準備が行われた。

「準備完了」

「撃ちぃかた始め!!」

 弾道弾は、亜音速の巡航ミサイル(時速1000km程度)や、超音速の戦闘機もしくは爆撃機(時速2500km程度)に比べ、速度が遙かに速く、文字通り桁違いの速さ(5万kmを軽く超える)であるため、かつては絶対防御不能の攻撃だった。
 数多の構想が生まれては消えていき、構想が現実となる事は無かった。
 
 やがて日本国から今までの技術を遙かに凌駕する弾頭制御技術が生まれ、空力制御の及ばない宇宙において迎撃する事が可能となる。
 ここにおいて、アメリカ合衆国の構想は実現に至る。 
 決して防ぐ事が出来なかった弾道弾という悪魔の兵器はもはや万能では無くなった。
 
 弾道弾迎撃ミサイルを搭載したイージス艦は、艦隊のみではなく、日本国そのものを護る盾の役割を与えられる。

 押された発射ボタン、電気的信号は瞬時に伝わり、その情報は前方に設置された垂直ミサイル発射装置に伝達される。
 ミサイル発射筒の蓋が開き、炎が吹き上がった。

 轟音と共に、イージス艦前部から科学技術の結晶が飛び上がる。

 神速を誇る大陸間弾道弾でさえも迎撃可能なミサイルは固体燃料ロケットに点火し、炎の尾を引きながら虚空に消えた。

 その数6発。

 イージス艦ちょうかいは、クルセイリース大聖王国の国家級敵国殲滅魔法(メテオ)に対し、弾道弾迎撃ミサイルを6発発射するのであった。

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posted by くみちゃん at 17:34| Comment(19) | 小説