■ イージス艦ちょうかい
「人型兵器、倒れます!!」
敵の放った黒い球を射出する攻撃の後、土煙の中から赤いレーザーのようなものが放たれ、人型兵器の右腕を吹き飛ばした後、大きく倒れ込む。
土煙の中からやがて、大きな化け物が姿を表した。
「おお、何と大きく、おぞましき姿だ!!」
すでに距離は50km近く離れているはずなのに、あまりにもはっきりと形が解るほどに大きい。
他の自衛官も、その姿に嫌悪感を抱く。
「ん?」
無線を聞いていた者が怪訝な顔をして報告する。
「人型兵器から無線が発せられています……これは……奴の故障?」
「どうした?」
「スピーカーから出力します」
彼はスピーカーからの音声に切り替えた。
『強い……強すぎる!!だがこのままでは……このままではまだ少数残っているワカスーカルトの民が!!
隣町のイルソベも……何も知らぬ聖王国臣民が化け物に喰われてしまう!!
護る!!護る!!!命に……この命に代えても彼らの生命はこの私が護る!!!
化け物め、負けん!!負けん!!絶対に負けはせぬぞっ!!
我はクルセイリースの守護者!!ワカスーカルト防衛司令長官!エル・ガンエンなり!!
我が命を賭して祖国を守り抜く!!
ぐうぅぅぅっ……全砲門化け物へ!!
魔導砲連撃!!放射!!』
人型兵器に設置された700門もの魔導砲の連撃が始まる。
砲は連続して化け物に当たり、大きな爆発を起こす。
しかし……。
「化け物、動き始めました!!」
文字通り砲弾の雨を、まるでただの雨にぬれているだけのように、化け物は前進を開始する。
艦長小圷は目を瞑った。
敵ながら、自らが護るべき民を護らんとするエル・ガンエンの決意に胸が熱くなる。
カッと目を見開く。
「副長、あの人型兵器は敵だ……しかし、奴は自らの民を必死に……命をかけて護ろうとしている……熱い男だ」
「はい……」
「あの化け物は傍受した無線によると、町の民を食べるようだな」
「そのようです」
「化け物は少なくとも味方では無く、さらにあれが日本に来たらやっかいだ。
海が渡れるのかどうかも解らないが、少なくとも今、陸において対応しておいた方が、良い。
眼前でジェノサイドが行われる可能性があるなら、それを回避する措置を行うべきであると思うが、どう考える?」
「私も、同意します」
副長との会話中、化け物の目が赤く光った。
化け物から放たれたレーザーはイージス艦ちょうかいの30m南側を通過する。
レーザーは海に当たり、瞬間的に蒸発した海の水が大きな爆発を起こし、艦を超えるほどの水しぶきが上がった。
「うおぉぉぉぉぉぉつ!!」
ちょうかいは爆発による波で激しく揺られる。
「なんてことだ、生物の攻撃がここまで届くのか!!!」
考えが甘かった。小圷はもっと早期に距離を取らなかった事を後悔する。
「迷っている暇は無い。攻撃を受けたため、正当防衛を実施!!艦隊艦誘導弾を使用。目標、巨大生物!!」
「了解!!」
隊員達は、高い練度で的確に動く。
レーダーを監視していた南野は、反射面積のあまりの大きさに生唾を飲む。
「自衛隊はとんでもない化け物と戦う運命なんですかね」
彼は緊張しながらつぶやいた。
通常は海上兵器のみを叩く艦隊艦誘導弾だが、50km近く離れていてもはっきりと目視出来る山よりも大きい敵にぶつける事は容易だろう。
「先ほどの大爆発にも耐えるほどの装甲を持ったあれほど巨大な相手に、対艦誘導弾が通用しますかね……」
副長が疑問を呈す。
「とんでもない化け物だが、おそらく背骨はあるだろう……背骨を折る!上から的確狙え!!」
「無茶をおっしゃる……しかし、やってみましょう」
「……敵巨大生物、艦対艦誘導弾(SSM1−B)2発、発射準備完了」
「てーーっ!!」
対艦誘導弾発射筒から90式艦隊艦誘導弾が射出される。
固体ロケットブースターにより、煙を出しながら空へと向かう。
やがて、一定加速を得た誘導弾は、巡航を開始する。
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