2017年07月12日

第67話 大戦前夜 P2

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国  情報局技術部 レイフォル出張所

 職員のナグアノは、昨日徹夜で作成した報告書と、ムーで入手されたとされる日本国で作成されたと思われる書籍、『別冊宝大陸』を手に取り、上司に報告のため、席の前に座って説明を開始していた。

「以上、この本に記載されている兵器が仮に実在した場合、我が帝国は破滅的な被害を受ける可能性があります!!」

 ナグアノは説明に力が入る。
 超音速で飛行する航空機、マッハ4以上の速度で飛来する誘導弾、そして重巡洋艦をたったの1発で大破させるほどの威力を持つ対艦誘導弾……。
 仮にこれらの兵器が実在すれば、軍は壊滅的な被害を受けるに違いなかった。
 彼の上司、バミダルはこの報告書を見て頭を抱える。

「ナグアノ君……君はこの本の信憑性についてはどう考えているのかね?」

「はい、我が軍に対する予想、規模はともかくとして兵器の性能は極めて的を得ていると考えます。
 しかも、この本では日本国は70年も前に我が軍の軍事水準に達していたとあり、極めて脅威となる存在かと……」

「バカモノ!!!」

 執務室にバミダルの怒号が響く。
 付近にいた者達は、何事かと彼の方向を見た。

「お前は現実と空想、同盟国への民衆の安心と混乱防止のための欺瞞情報と、現実の区別もつかないのかっ!!!それでも情報局技術部の職員か!!」

 一括、彼はつづける。

「本件の一番の問題は、我が軍の情報が何処からか第3国に漏れているという事実だ!!!
 君の報告書はともかくとして、軍上層部への伝達は、情報漏えいの視点で適正になされるだろう。」

 静まり返る執務室、そして沈黙……上司は諭すように話始めた。

「ナグアノ、お前はまだまだ勉強が必要だ。
 例えば、この本が偽情報かと思われる箇所がいくつかある。」

「と、いいますと?」

「この……イージス艦の記述を読んでみろ、同時に200以上の目標を追尾してその中から12目標を同時に攻撃可能とある。
 しかも、うち漏らした敵は個艦防衛を行い、それでもうち漏らした場合は砲を打ち、最後は20mmバルカンファランクス……飛行する敵の未来位置をも予測して迎撃する。これを行うためには敵の飛行速度、砲の安定、そして弾丸の飛翔速度までもを計算する必要が出て来る。
 君は今の我が国の電算機の計算速度を知っているかね?」

「…すいません、電算分野に関しては、勉強不足で解りません。」

「仮に、この本に書いてある事を実現しようとした場合、電算機械だけで戦艦を超えるサイズになる事は間違いなく、下手をすると高層ビルレベルの大きさになる。」

「70年にも及ぶ技術格差があれば、それも可能かもしれません。」

「いや、70年では現実の電算速度はそこまで上がらない。
 真空管の小型化にはどうしても限界があるのだ。
 そして、仮に真空管に変わるものが出たとして、コインほどの大きさまで小型化に成功したとしても、とても大きなものになる。これほどの計算能力のアップは、70年ではとても不可能なのだ。
 400年差があると言われるならば、産業の発達度合いが未知数となるため、解らないが、70年という数値は想像可能な数値なのだよ。」

 黙り込むナグアノ、バミダルは続ける。

「まあ、軍部には参考としてこの本は送られる。軍には色眼鏡無しでこの本の分析結果を伝えよう。」

 電算機の構造について、知識の乏しいナグアノはうなだれる。
 しかし、彼の本能は、全力で日本に対する危険信号を送っていた。

「し……しかし、もしも!もしもこれが本当ならば、欺瞞情報では無かった場合、我が国の根幹を揺るがすほどの被害が出てしまいます!!」

「まあそうだな、被害が出たら軍幹部も考えるだろう。
 情報は適切な分析をして上に報告する。我々の出来る事はこれだけだしな。」

 話が終わりそうになる。ナグアノは、食い下がった。

「繰り返しますがもしも、これが本当ならば、我が国は多大なダメージを食らいます。情報の信用性を確かめるためにも、諜報員の日本国への潜入や、周辺国家からの情報収集強化も併せて軍部に報告したいと考えます。
 軍部から情報が漏れていたとして、逆サイドから漏えい者を捕らえる事も可能かもしれません。
 戦闘状態にある敵国への潜入が難しければ、周辺国家からであっても良いので情報収集強化を!」

「解った解った。それは軍部に私からきちんと報告しておこう。しかし、ナグアノ、心配には及ばんかもしれんぞ?」

「と、言いますと?」

「今、レイフォルの我が軍を攻撃するため、異世界どもの大艦隊がここへ向かってきている。我が国は東方艦隊と、帝国監査軍合同で、この異世界艦隊の殲滅に当たる予定だ。本戦いの後には、ムーへの陸上侵攻が予定されている。
 ムーが落ちたら、いやでも日本国の情報は多く手に入るだろう。」

「ならば、異世界艦隊が来るならばすぐに軍部にこの情報を!!」

「いや、異世界艦隊には日本軍は混じっていない。心配しすぎだ。」

 上司に説得されたナグアノ、不安がぬぐえない。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:07| Comment(25) | 小説
この記事へのコメント
予想の通りに、握り潰されたな・・・
Posted by 陸の自◯隊のおじさん at 2017年07月12日 21:14
まあ確かに彼らにはLSIなど想像もつかんだろうな。
Posted by at 2017年07月12日 21:26
>>2017年07月12日 21:26

LSIどころか「i7」ですからね(笑)
Posted by 陸の自◯隊のおじさん at 2017年07月12日 21:28
これはナグアノ君がカイサルに直接渡すしかないな。
Posted by at 2017年07月12日 21:39
日本は松下じゃなかったパナソニック系列の会社が「数十年ぶりに」オーディオ用真空管の生産を再開すして話題になるくらい半導体に移行してる国だなんて想像する方が無理だもんな
Posted by at 2017年07月12日 21:52
誤字報告

重巡洋艦をたったの1発で「対破」
             ↓
重巡洋艦をたったの1発で「大破」
Posted by at 2017年07月12日 22:12
「日本の巡洋艦」に航空機をバンバン落とされたのを忘れてる?
ソリッドステートという詐欺に使われまくった代物が実現してるのは「ありえない」と思うにしても、航空機を落とされたという事実は残ってるはずなんだけどなぁ
(まあ、イージスシステムのそれではないのでコンピュータ技術の差のせいとは思ってないのかもしれないけど)
Posted by at 2017年07月12日 22:13
まあ雷撃と急降下爆撃の死亡率は凄いからな
情報部は現場の練度が落ちてると思ってるのかもな
Posted by at 2017年07月12日 23:11
それでも「対空能力に関しては明らかに強力」という情報は上がってるはずだから現場の練度の問題にはしがたいはず
少なくとも将軍達が「日本艦の対空はヤバい」を共通認識にしている以上「航空隊の練度が落ちた」とだけ思っているとしたら「情報に疎すぎる情報部」としか言いようの無い怠慢ですし
メアリー・スーもびっくりの「知能低下電波」かなにかが日本から敵国に照射されている可能性を本気で考えないとダメになりませんか?(笑)
Posted by at 2017年07月13日 00:35
 まあ情報部が当てにならないのはどこも一緒だから(ドイツ空軍を見ながら)。
Posted by at 2017年07月13日 01:07
「知能低下電波」なんか絶えず全開じゃん
Posted by at 2017年07月13日 01:28
とりあえずムーの首都電気街バキアで売っている日本製電気製品や、ムーに進出した百均で売っているソーラー電卓や安ラジオが届いて、見て弄って性能にまず驚く。

分解調査しようとして開けるのも一苦労。
分解して理解出来そうだと思った簡単に見える製品(スマホ)は、機構部品以外は正体不明のゲジゲジ素子や米粒みたいな受動素子(チップ抵抗やチップコンデンサ)と発光素子(LED)や薄っぺらい画像表示素子や充電池が入っているだけとかを発見して、驚愕するグアナノくんは見たいかもw

そういやWWII程度の技術基盤だと他の人もいっているように集積回路以前の半導体素子も精々ダイオードがあっても良いくらいでトランジスタは存在しないんでしたね。
あと原始的なプリント基板はあっても機械的強度や絶縁性、経年劣化や生産性が良くなくてダメ出しされていたり。

超薄やフレキシブル基盤に超ファインピッチのプリントパターンを見るだけで、隔絶した技術の差を感じられると
Posted by at 2017年07月13日 01:43
2017年07月13日 00:35

やめんか!グ帝情報部は作中でも有数の仕事をしてない部署なんじゃ!
Posted by at 2017年07月13日 01:56
旧軍も酷かったけど当時のアメリカ軍もだもんなあ…
現場から上がってきた報告が上に上がっていく過程で無視や握りつぶしや楽観論へのすり替わりが結構酷い。

知能低下とか言っているけどこの作品の日本の敵はえらく慢心しているし、こんなもんじゃね?
ナグアノくんはかなり優秀だけれど「組織の力学には勝てなかったよ…」だねえ。
Posted by at 2017年07月13日 02:34
ナグアノ君先の戦いで沈めた日本の船は
自国に於いての沿岸警備隊に所属する船ってこと報告してなくない?
それとも知らなかったのかな?
前回あれだと知ってそうな感じだったけど
Posted by at 2017年07月13日 12:56
日本だって今までの敵に対しては結構バカにして油断してたよ
その上でほぼ被害ぜロで勝ってるのは技術格差以外の何物でもない
グ帝は核持ってるかもだからその点のみ油断できないのと
ミリの兵器は魔帝(核同等以上+別次元の発展)の下位とは言え魔帝戦力の推察が出来るから注視しているだけ

下等な敵をバカにする日本 VS. 敵の強大さを理解して全力で弱点を突こうとする(戦線の引き伸ばしやゲリラ戦・テロなど)旧列強なら
この設定でもいい勝負は描けるかもだけど、多分読んでる方はめっ☆ちゃイライラするだろうねw
良く描けているそういうなろう作品もあるにはあるけど
Posted by at 2017年07月13日 13:17
 この場合「握り潰された」というのとは、違うと思いますね。ナグアノの上司バミダル、少なくとも、上に伝える気は有るようだから。

 ただ「これをそのまま上に伝えても、信じてもらえない」と考えているということ。そもそも彼自身が「信じる気になれない」ということでしょう。

 ただし彼、一つ大きな考え違いをしていますけどね。グラ・バルカス軍の情報は、日本に漏れてはいません。

 ただ日本にとっては、「過去によく似た兵器を保有していたから、それに照らせば、グラ・バルカスの兵器の性能は、手に取るように判る」だけのことです。
Posted by にしなさとる at 2017年07月13日 22:38
日本も油断するとダメージを食らう。グ帝の攻撃力は日本の船を沈めるのに十分だから。
Posted by at 2017年07月14日 00:16
「どんな敵でも殺せる剣」を持っていたとしても剣の間合いに入る前に射殺されるんじゃ意味は無いし
鎧を着込んでも身体中全部守りきれるという訳でも無い

怖いのは気がつけないまま接近される事と弾切れかな
Posted by at 2017年07月14日 13:44
ただ問題なのは
明らかに海上部門のハジキの弾より敵の数が多くて
明らかにクラスUとクラスVの防弾着を着てる敵が
数人いるって事ですね
Posted by at 2017年07月15日 00:50
まともに撃ち殺せない相手の暗殺についてはサブマリナー=サンのトーピドー・クナイ・ダートでしつつ(ん?)

その他潜水艦で前線辺りに機雷敷設してもらって漸減するとかして
「勝てても共倒れ」
くらいに思わせられれば弾が足りなくても半ばハッタリで解決……ハッタリが機能しないくらい痴呆化が進んでるかなぁ
Posted by at 2017年07月15日 05:26
ナグアノ君が提出した資料が「日本も潜水艦を持っているし、潜水艦を撃沈することもできる」という内容だったら上司の反応も違ったんだろうな
Posted by at 2017年07月15日 08:36
演算装置の発達速度が18ヶ月ごとに倍になる、なんて馬鹿げた話を大戦中の常識で想像できるわけないよなそりゃ
Posted by at 2017年07月16日 23:21
戦後平和になって
全世界で開発の競争と共有がなされて
加速度的に開発速度が早まるなんて
戦後平和を知らないグラ帝には
想像もできないでしょうしね。
Posted by at 2017年07月17日 19:43
戦後平和って…
即米ソ冷戦だったじゃないですか。
基本的に冷戦での軍事技術開発競争が開発速度が上がった原因ですよ。
Posted by at 2017年07月20日 22:37
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