2017年07月12日

第67話 大戦前夜 P3

◆◆◆

 第2文明圏 列強国ムー 東の工業都市マイカル

 海岸は、軍の出発を一目見ようと多くの人々で賑わっていた。
 軍人の家族と思われる者たちが、心配そうな目で彼らを見送る。
 不安になり、泣き出す母と子も多く見かけた。
 5隻ある空母の上にはムーの最新鋭艦上戦闘機マリンが所狭しと並ぶ。
 空母5隻、ラ・カサミ級戦艦4隻、装甲巡洋艦8隻、巡洋艦12隻、軽巡洋艦16隻、補給艦5隻、計50隻にも及ぶ第2文明圏列強国ムーの艦隊は、グラ・バルカス帝国海軍を滅するための世界連合艦隊と合流するため、工業都市マイカルを出港していった。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍
 
 神聖ミリシアル帝国が発案者となり、中央世界と第2文明圏と連合で艦隊を組み出港した。
帝国の第2文明圏への足掛かりとなる旧レイフォル地区へ向かった事を探知したグラ・バルカス帝国は、空母機動部隊による打撃及び戦艦等の打撃力による艦隊決戦を行うべく、レイフォル西側海域に集結を開始していた。

 帝国監査軍所属の、帝国で最も強力な超戦艦『グレードアトラスター』の艦橋で、艦長のラクスタルは前方の海を眺める。

「……すごいな。」

 超巨大戦艦を最も見慣れた彼をもってしても、感嘆するほどの光景。
 上空には刃を研ぎ澄ましたかのような、美しい戦闘機が一糸乱ぬ編隊飛行をしている。
 その乱れない美しさから、帝国航空兵の練度の高さが伺えた。

 視線を海に向ける。
 海を覆いつくさんとするほどの艦艇数、帝国監査軍と、帝国海軍東方艦隊の連合軍が展開していた。
 巨大戦艦や空母が多数集結するその姿は見る者たちを圧倒し、決して負けぬと信じさせる力強さがあった。
 
 戦艦10隻、空母9隻、重巡洋艦18隻、軽巡洋艦20、駆逐艦112……ここには見えぬが潜水艦64隻も参加する。
 戦闘可能な艦だけで233隻あり、補給艦等補助する艦艇を入れればその数は遥かに膨れ上がるだろう。

「帝国監査軍と東方艦隊……異世界の主力とも言える連合軍を撃破するにしても、過剰戦力のような気がしますね。」

 超戦艦グレードアトラスターの副長が艦長に話しかける。

「この戦いは、我が国がいかに強力かをこの世界に真に知らしめる結果になるだろう。
 本国の人間は、本当はもっと出したかったのではないかな。」

「とはいえ、西方艦隊も本土防衛隊も必要ですからね。
 本土を完全防衛している事を考えると、今回の派遣は相当戦力を捻出したと私は考えます。
 まあ、有り得ない事ですが、すべての艦隊が派遣されたら、補給艦を除く戦闘可能艦艇だけでも790隻にも及びますから、どんな国でも滅んでしまいますが。」

 艦長ラクスタルはフッと笑う。

「では、帝国に刃向かった愚か者たちを殲滅しに行くとするか。」

「そうですね。」

 グラ・バルカス帝国、帝国監査軍及び帝国東方艦隊233隻と補給艦は、同海域に集結した後、決戦海域のなる可能性の高いバルチスタ海域に向かい、出撃していった。

◆◆◆

 神聖ミリシアル帝国 バネタ地区 対魔帝対策省古代兵器分析運用対策部直轄 秘密基地 エリア48

 広大な敷地に巨大な建造物群が立つ。
 その中で2隻の古代兵器……古の魔法帝国の遺産が出撃しようとしていた。

 現代の日本人が見たならば、中央部に円形構造物があり、三菱重工のマークのような形が三方向に延びて、リング状の物体が付く。
 言い方を変えるならば、メルセデスベンツのマークを横にしたような飛行物体。
 
 中央部には円形構造物の上に城のような艦橋構造物がある。

 今、古代兵器である空中戦艦パル・キマイラが皇帝陛下の命を受け、出撃しようとしていた。
 パル・キマイラ2隻は徐々に高度を上げていく。
 基地には出撃を見守るヒルカネ・パルぺが立つ。

「ヒルカネ様、無礼を働いた異界の軍を相手に、世界連合のみならず、対魔帝の要となるような古代兵器まで投入するとは……。
 皇帝陛下のやり方に文句を言うつもりはございませんが、少しやりすぎのような気がします。」

「確かに、やりすぎ感はある。
 陛下は魔法文明の有益性をこの戦いで証明したいのかもしれないな。
 新たに出現した科学文明国家、日本国がこのところ、文明圏外国家からの求心力を高めていると聞く。
 グラ・バルカス帝国に対しても絶対勝利の必要性を感じておられるようだ。
 それにしても……。」

 彼は空を見上げる。
 空中戦艦の名にふさわしく、空気力学以外の方法で空中に浮くその姿は見る者を圧倒する。
 軍部の者、いや、情報局の者でさえも、噂には聞けど見た事のある者はほとんどいないであろう。

 対空魔光弾に対する装甲を持ち、時速にして200km/hもの速度で移動するため、対艦用砲撃は当たらない。
 半径130m、全長にして260mもある巨大な物体が、2隻も連続して出撃し、「実戦」に向かう様は、それを見慣れたはずのヒルカネですら感嘆するほどに力強く、そして美しかった。

 レイフォルやパーパルディア皇国程度の列強国であれば、この2隻の出撃で勝敗を決してしまうだろう。
 パル・キマイラ2隻はあっという間に先行している連合軍に追いつき、おそらくは時間的に戦闘が始まった時間帯に戦場に到着し、その圧倒的な力、戦術をもって敵を殲滅し、他国を震撼させる事になるだろう。

 世界で最も栄えし中央世界の列強国、神聖ミリシアル帝国は、国のプライドをかけ、自国の保有する古代兵器の一部を投入した。

 古の魔法帝国(ラヴァ―ナル帝国)の超兵器、空中戦艦パル・キマイラ2隻は旧レイフォル沖合に展開するグラ・バルカス帝国軍を滅するため、暁の空に向かって飛び去って行った。

◆◆◆

 日本国 首都 東京 防衛省

 防衛省が運用する偵察衛星、他国の脅威から身を守るために現在運用されている。
 この星は地球に比べてもとても大きく、一周するのに地球の倍以上は時間がかかる。
 現時点の運用基数では、敵性国家の常時監視等はとても不可能なものであり、各国の状況、首都、地理や、基地の定点撮影を行い、分析するのが精一杯であった。

 人工衛星の撮影した画像を解析していた横田は、20秒おきに3回撮影されたある写真を見て、戦慄を覚えていた。
 自分の考えが間違いでは無いかと思い、横田は解析を進める。

「ばっ!ばかな!!!おい!これ、これ!これを見てくれ!!!」

 興奮した口調で横に座る同僚、堀山に話しかける。

「何を興奮しているんだ?」

 堀山は写真を覗き込んだ。

「なんだ?これは。」

 不可解な物体が写真に写る。

「これと見比べてみてくれ!」

 横田の出した他の2枚の写真と見比べた。

「なっ!なんだ!!これはまさか!!!」

 驚愕。

「神聖ミリシアル帝国の基地を写した写真だ。
 これが1枚目、そしてこれが20秒後の写真、そしてさらに20秒後の写真。
 この物体は動いているんだ。
 しかも、解析した結果、高度約100mに浮いている。」

 上から見たその写真は中央部に丸、そこから3方向に細いひし形の物体でリングにつながっている。
 リングはその物体を囲むように円形に機体を構成していた。

「こ……この大きさって……。」

「直系260.2mもある。こんな化け物みたいに大きい物体が、浮いて移動している、しかも2基も。
 信じられるか?」

「信じられんが信じるしかあるまい。
 いったいどういった原理で浮いてるんだ?」

「解らん。しかし、移動方向がムー大陸方向だから、対グラ・バルカス帝国戦に参加するつもりかもしれないな。」

「こんなデカいものが浮くなんて……。まるでUFOだ、恐ろしい世界だな。」


 神聖ミリシアル帝国の投入した空中戦艦パル・キマイラはすぐに日本国の知るところとなった。

 画像から脅威度が非常に高いと防衛省は判断、空中目標にも対応可能な対艦ミサイル用プログラミングを急ピッチで進める事となった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:07| Comment(19) | 小説
この記事へのコメント
ムーの艦載機って未だに艦上戦闘機しかないのか?
Posted by at 2017年07月12日 20:23
対空ミサイルで落ちない防御力と対艦ミサイルを躱せる機動力の空中戦艦は海底軍艦みたいでロマン感じます

この世界での活躍が楽しみ
Posted by at 2017年07月12日 20:51
ついに発掘戦艦が出てきましたか。さすがにスーパーキャッチ光線までは再現していないと思いますが…もっと掘ればヱルトリウムやヱクセリヲンも出てくるかな?
Posted by at 2017年07月13日 00:20
メルセデスベンツと三菱重工の例えは読者にはわかり易いですが、この世界の日本人に当てはまるかどうか…
八菱重工ならあるようですが。

「三菱重工のマークのような形が」を
「やや細長い菱形のアームが」に変えても十分伝わるのではないかと思います。
メルセデスベンツの下りは削除するか、もしくは「ドイツを代表する名門自動車企業のマーク」などと言い換えた方がいいのではと思います。
Posted by at 2017年07月13日 07:55
 他の方も気付いているみたいですが、ムーはなぜ、この辞典で艦隊を出撃させたのでしょう?
「日本軍が来るまでは」と言って、他国を引き止めにかかるとばかり思っていたのに。
 それとも単純に、グラ・バルカス艦隊の侵攻が予想より早くて、自衛隊の到着が間に合わなかった?
Posted by にしなさとる at 2017年07月13日 08:12
Posted by にしなさとる at 2017年07月13日 08:12

古代の友好国とはいえ遥か彼方にある新興国家の日本。今まで長い付き合いがあって、第2文明圏の危機に連合軍を呼びかけて敵に立ち向かおうとするミリシアル。そりゃ参加しないわけにはいかないよ。
Posted by at 2017年07月13日 08:59
>Posted by at 2017年07月13日 08:59

 その通り、一度出撃と決まったら、立場上、参加しないわけにはいきません。
 だから、「なぜ出撃そのものを引き止めなかったのか?」と、言っているのですが。
Posted by にしなさとる at 2017年07月13日 11:14
出撃を引き留めて
列強クラブから弾かれる危険性を
考慮したんでしょうねぇ…
そして、サイヤ人編で悟空が帰ってくるまで
時間稼ぎでベジータに挑んだZ戦士の心境で
艦隊を送り込んだんでしょうねぇ……
Posted by at 2017年07月13日 12:17
http://dragonballsokuhou.net/archives/sb3785.html

多分、今後のムーの心境はこれ
Posted by at 2017年07月13日 12:20
"良"い方を変えるならば
"言"い方を変えるならば
Posted by sane at 2017年07月13日 18:27
"良"い方を変えるならば
"言"い方を変えるならば
Posted by at 2017年07月13日 18:31
 ムーが艦上戦闘機のみを使っているのは他の機種が「不要」だからだと思います。
Posted by at 2017年07月15日 03:55
ムーに海自の基地でもつくっとけば参戦の機会もあったでしょうけどね。
まあトンデモ兵器の出現で自衛隊も出番ナシ?
でも魔帝出現後、空中戦艦が操られちゃう展開もあったりして。
Posted by at 2017年07月15日 09:43
列強のプライド2でマリンを爆装するか聞いてるから艦上戦闘機と言っても多目的機なのでは
Posted by at 2017年07月15日 22:02
いわゆる爆戦だか戦爆だかじゃない純戦闘機の零戦でも水偵でも爆装はできる物だし
単に「爆装できる」というだけじゃ本職の爆撃機に近い爆装を出来る機体かどうかは分からないような
Posted by at 2017年07月16日 10:22
これは暴走フラグ!案外グラバルガス負けるかもな!
そして暴走空中戦艦を各国連合で打つ流れかな?
Posted by at 2017年07月16日 12:23
1970年に謎の円盤UFOって海外ドラマがあったなあ。
 あの当時のコンピューターでもテープ式だったなあ。今の一部の銀行とおなじやん・・・・・・。

Posted by at 2017年07月23日 09:01
衛星描写いつも思ってたんだけど、この惑星が仮に直径が地球の2.8倍だとしても第一宇宙速度が23.7km/sになって低高度衛星が惑星を一周する時間は地球とほぼ同等になってします。
さらに、H2ロケットではこのとんでもない宇宙速度を出すのは大変であり、もしかしたらこの惑星の静止トランスファ軌道までGPSを上げるにはH2シリーズ規模のロケットでは最悪300kgも上げられないか、到達不可能と思います。たぶん1トンは上がらいはず。
燃焼時間を減らして短時間で宇宙速度を出せるもっと馬力のある大型の新型を開発すべきかも。
Posted by at 2017年08月07日 10:55
すいません、13.2km/sでした。
なので1週に地球の1.63倍の時間が掛かります。
こめんなさい。
Posted by at 2017年08月07日 12:52
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