2018年02月04日

第71話 古の超兵器P4


 空中戦艦 パル・キマイラ

『魔砲撃、20発が命中、効果確認のため一時射撃を中断します』

 たまたまではあるが、風向きが敵艦と並走するように吹いているらしく、艦を覆った煙はなかなか晴れない。
 着弾の爆炎に包み込まれる敵艦。

 今までの敵中型艦であれば、爆炎の中にあっても、砲の爆発とは明らかに異なる内部からの「爆発」が認められたため、敵の被害が解りやすかったが、この旗艦については内部からの爆発は無く、砲弾の爆発煙のみが艦を包み込んでいた。

「……内部からの爆発が無いようだねぇ」

 メテオスがつぶやく。

「もしかすると、燃料に引火しにくい構造なのかもしれません……しかし、これほどの攻撃を食らい続けている。魔素展開による装甲強化技術を持たぬ者達であれば、上部構造物は無くなっていることでしょう」

 技術部長コルメドが返答した。

 時折下部に当たる敵の対空火砲が不快な音をたてるが、強力な魔力により強化された金属による装甲は、敵対空火器をはじき返していた。
 やがて、戦艦を包み込んでいた煙を割き、敵艦が出現する。

「おお……お……」

 無機質な勤務員に感情が宿ったかのように、艦橋に驚愕の声が響く。

「なんという硬さだ……致命傷を与えていないではないか!!」

 驚愕するメテオス。

「魔素による装甲強化技術を使用せずにこの硬さ……信じられません」

 技術部長コルメドの額にも、驚きのあまり汗が流れた。

 画面に映る敵は、脱出用ボートや、高射砲等の非装甲物は壊れていたが、主砲や艦橋は健在であり、小破程度のダメージしか負っていないようにすら見える。

「なるほど……第零式魔導艦隊に土を付けただけの事はあるようだねぇ……敵戦艦を倒すには、魔導戦艦の主砲並みの火力が必要という事か……」

 一瞬の沈黙。

「ジビルを使用したまえ」

 艦橋がざわつく。

「よろしいのですね?」

 コルメドが確認を取る。

「もう一度言おう。ジビルを使用して敵艦を消滅させたまえ」

「はっ!!」

 古の魔法帝国の技術を解析し、近年実戦配備に結び付ける事が出来た超大型魔導爆弾「ジビル」古の魔法帝国のコア魔法に比べると、大幅に弱いが、現在の神聖ミリシアル帝国の中では最大にして最強の爆弾だった。
 通常の天の浮舟では重すぎて運ぶ事が出来ず、空中戦艦パル・キマイラに搭載した帝国の切り札的な存在……。
 パル・キマイラはグラ・バルカス帝国の戦艦ベ・テルギスの直上に進出し、空中に停止した。

◆◆◆

 旗艦べ・テルギス

 ゴウン…ゴウン……ゴウン……

 不気味に上空に停止する敵空中戦艦……。

「くそっ!!一体何をするつもりだ!!!」

 敵艦は上空に停止している。
 本艦の高角砲や対空機銃はさきほどの攻撃で大破し、使い物にならない。
 主砲や副砲は仰角が足りないため、撃つ事が出来ずにいた。

「くぅ……あまり言いたくは無いが……今各艦の判断で攻撃を控えていますが、今が絶好の的ですね……」

 参謀バーツがつぶやく
今直上に停止している艦……艦隊程度に低速になった物体は、絶好の的であり、指示すれば、確実に有効弾を与える事が出来るだろう。
しかし、この旗艦よりも大きい飛行物体が落ちて来る……確実に死の覚悟を伴う命令を出さなくてはならなかった。

 もちろん、直下から離れるために、旋回を行う等の努力はしている。しかし、上空にいる敵艦の運動能力は我が方を明らかに凌駕していた。

「……皆、すまんな……あの敵は明らかにグラ・バルカス帝国の脅威となり得る。数がたったの1艦というのは、奴らにとっても虎の子である証拠だ。奴らは強い……この機を逃すと、確実に帝国に仇をなす存在となろう。今は各艦の独自の判断で攻撃を控えているようだが……帝国の未来のため、私は各艦に攻撃指示を出す」

 司令カオニアの心は、乗務員への懺悔で満たされる。
 しかし、このまま奴を生かすと、今までよりも遥かに多くの帝国民が犠牲になる事だろう。
 彼に反論する者はおらず、皆覚悟を決めた。

「各艦へ指示、攻撃を続行せよ!!!!」

 各艦に指示が伝達された。


 
 派遣艦隊巡洋艦ピペリオン

『撃ち方やめ!!撃ち方やめ!!!今撃つと旗艦に落ちる!!!』

 べ・テルギスの上空で停止する敵艦、一時艦長の判断で攻撃中止の指示が飛ぶ。

「何をするつもりだ!!!」

 上空に停止したそれは、ゴウン……ゴウン……といった、重低音のような音を響かせ、停止している。
 狙いやすい、しかし落ちれば確実に旗艦は沈むだろう。
 べ・テルギス上部の対空火器は、すでに先ほどの攻撃で沈黙してしまっている。

『各艦旗艦上空にいる今が絶好のチャンスだ。攻撃を続行せよ』

 艦橋に、旗艦からの指示が流れた。
 このまま攻撃すれば仲間を殺す事になる……しかし、この空中戦艦を放置すると、帝国の脅威となるのは目に見えて明らかだった。
 
 攻撃指示を行おうとしたその時、ピペリオンの艦橋から敵を眺めていた艦長は、空中戦艦に異変を感じた。

「なんだ!?」

 敵中央部の艦橋から、とてつもなく長い何かが下に向かって落ちる。

「!!!」

 グアッ!!ズオォォォぉ!!!!!!

 投下されたそれは、旗艦べ・テルギスに当たると同時に猛烈な光を放つ。
 次の瞬間、旗艦よりも遥かに大きな火球が出現し、旗艦を包み込む。
 遅れて凄まじいまでの衝撃波と、見た事も無いほど大きなキノコ雲状の爆炎が出現した。
 海上が衝撃波で波打ち、音響がこだまする……やがて、大音響の後に爆炎の煙の出現とは裏腹に、静粛があたりを支配した。



 パル・キマイラ

『敵旗艦、艦内の魔力反応すべて停止、全滅した模様です』

 乗務員が全員死亡した事を伝えるその報告。

「フン、当たり前だ。ジビルが直撃したのだよ、もう跡形も残ってはいまい」

 煙が晴れる。

『おおお……ば……ばかな!!!』

 艦橋に驚きの声が走る。
魔力反応が無いため、中の乗務員は死亡している。
 しかし、敵べ・テルギスは船の形を保ち、海に浮かんでいた。

 旧日本帝国海軍の戦艦長門に酷似した船体構造はとてつもなく強いものであり、ビキニ環礁での2回にもわたる核実験の直撃を受けてもなお、すぐには沈まなかった艦である。
 強力な船体構造は、神聖ミリシアル帝国の超大型魔導爆弾ジビルの直撃にも耐えていた。

「どうやら……敵に対する評価を少し改める必要があるようだねぇ……一時的射程圏内から離脱、旋回しつつ、敵を攻撃し、1艦ずつ撃沈せよ」

「了解」

 一度離脱し、各艦に砲撃を加え、各個撃破していく。
 40分後……グラ・バルカス帝国第1打撃群36隻は神聖ミリシアル帝国、空中戦艦パル・キマイラ1隻を前にして全滅した。
 第1打撃群を滅したパル・キマイラは、本隊に向けて飛行を開始するのだった。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 19:52| Comment(15) | 小説
この記事へのコメント
誤解されている方も多いけど、長門や酒匂がビキニでくらった核兵器は水爆じゃなくて原爆ね。
Posted by at 2018年02月04日 20:12
>Posted by at 2018年02月04日 20:12
長崎型(21kt級)の原子爆弾ですね
長門は両実験とも爆心地からかなり離れた位置で被爆しているので、直撃に耐えたというのも間違いです
Posted by at 2018年02月04日 21:33
グ帝でも初見のパル・キマイラにダメージを与えることはできなかったか

想像より強いな
Posted by at 2018年02月05日 01:37
>次の瞬間、旗艦よりも遥かに大きな火球が出現し、旗艦を包み込む。
>遅れて凄まじいまでの衝撃波と、見た事も無いほど大きなキノコ雲状の爆炎が出現した。

直上200mにいるパル・キマイラ自身も火球や爆炎に巻き込まれていることになります。
そのあたりの描写があるとなお良いかと。
Posted by at 2018年02月05日 03:18
時速200キロとはいえ間近まで接近してくればべ・テルギスは主砲を命中させることは充分可能。長門型戦艦の主砲の最大仰角は30°なのでこれと同等性能と考えると、上空200mの巨大目標に対しては数百メートル手前まで迎撃できる。べ・テルギスが直前まで主砲を撃っている描写があってもいい。
Posted by at 2018年02月05日 03:29
一時的射程圏内からの離脱を開始した時点で、戦艦が最大7隻残っていたはずだが、加速して離脱するまでの間に、近距離からの戦艦の主砲攻撃は全く当たらなかったということか。
Posted by at 2018年02月05日 16:17
ビキニの原爆では中に入れてた動物はそれなりの割合が生きてたらしいので
(原爆だけど)中性子爆弾にして放射線による人員殺傷用、とかなのかな?
Posted by at 2018年02月06日 03:38
うっほーいナディア
Posted by at 2018年02月06日 09:37
誤字
たまたまではあるが、風向きが敵艦と「兵装」するように吹いているらしく、艦を覆った煙はなかなか晴れない。

兵装→並走
Posted by at 2018年02月06日 10:59
艦内の魔力反応すべて停止って、グ帝人は元々魔力がないので初めから計測できないのでは?
Posted by at 2018年02月06日 13:45
ヒント、世界会議でのエモールの発言
Posted by at 2018年02月06日 14:04
異世界の食物を食べたら魔力が補充されるんじゃない?(適当)
Posted by at 2018年02月06日 19:28
Posted by しんさく at 2018年02月19日 12:40
原爆がモデルの爆弾を受けて、ベテルギス が沈まないのはおかしいですよ。

クロスロード作戦で、長門やアドミラルビッパーが沈まなかったことを参考にしているのでしょうが

それはクロスロード作戦が空中爆発による艦隊全体への原爆の効果を調べる為のものであったから爆風と大幅に弱まった熱波のみしか届かなかったのから沈まなかっただけです。

直撃=火球の中心に入ると言うことなので一瞬で消し飛びますよ。

なんたって鋼鉄の融点が1500度で火球の温度は一瞬とはいえ最低でも30万度以上に達します。

もっとも、ジビルが原爆並みの威力を持っていると言う設定であるならばの話ですが、、、


Posted by ととたけ at 2018年02月19日 12:53
べ・テルギスが長門型戦艦に準拠しているとしているとすると、装甲が高角砲はともかく艦橋船体全体に万遍なく均等に配されているわけではないんですね。これは他の戦艦でも同じですが、船体の側面は水面に近いところだけ厚く装甲を貼る。船体の最上部天井も航空機の機関銃の弾を弾く程度。船体内部の下層に設けた弾薬庫機関室ボイラー室の天井に主要装甲を貼るだけでした。艦橋も司令塔と言われる指揮官を防護する区画のみ装甲が貼られています。べ・テルギスの受けた攻撃が巡洋艦を轟沈させる程度の火力であれば、船体の上面はボロボロになると思います。
Posted by at 2018年02月24日 00:07
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