2018年06月18日

第76話迫る戦火2P2

◆◆◆

 ムー国 日本大使館

 1人の男が上司の命令に対し、強く質問していた。

「何故ですか!?我が国はすでに宣戦布告を受けている。
 この状況下において、グラ・バルカス帝国に行って、いったい何を交渉するというのですか!!」

 男の名は朝田……転移後、外交においてここぞと言う時に投入され、確実に成果を上げているため、上司からの信頼は厚い。

「帝国は外交窓口について、いつでも開いておくと言っていた。
 身の安全は保障されている。
 宣戦布告を受けているこの状況下で行く理由は簡単だ。
 グラ・バルカス帝国と、我が国が本格的な戦闘に突入する前に、回避の道を模索……」

「無理です!!状況を考えてください!!!」

 上司の話を遮って、朝田は反論した。

「話は最後まで聞け!!!無理な場合、時間稼ぎをしてほしいのだよ」

「時間稼ぎ?」

「まだ報道発表はなされていないが、自衛隊のムー国への派遣が、先日正式に決定された。
 今回は、日本近海で行われたロウリア王国戦や、パーパルディア皇国戦とは訳が違う。
 戦後日本初の本格的かつ大規模な……派兵だ。
 陸上自衛隊等も数が多く、民間船舶を徴用して行ったとしても、兵力がきちんと展開完了するまでに相当の時間を要する。
 配置完了までの時期については、各国との調整もあるため、正確な試算が出せない状態だ。
 しかし……グラ・バルカス帝国は、アルーの街近くに基地を作りつつあり、近いうちに完成させるだろう。
 そこで、外務省の出番となるのだよ」

「……かなり難しい案件です」

「敵国の性質から考え、かなり難しい事は解っている。
 しかし、外務省として何もしない訳にもいかない。これも解るな?」

「はい……」

「今回は、多少技術を見せつけて揺さぶる事も許可されている。
 朝田、頼んだぞ!!期待している」

(また……俺なのか……)

 国、そして自分の交渉が上手くいくかどうかによって、ムー国人の多くと、国益が多大に左右されるという重圧……。
 今回は、圧倒的な技術格差があったパーパルディア皇国とは訳が違う。
 多少の技術格差を見せつける事は許されていると言っても、国益を損なう情報は一切出してはならない。
 例えば、人工衛星の存在や、衛星写真等、相手に対策をされると軍事情報が得にくくなってしまうような情報は出す事が出来ないし、ジェット機やロケット等、相手に技術の方向性を明確に与えてしまう可能性のある情報も出す事が出来ない。
 朝田は、使える外交カードの少なさに苛立ちを覚えながら準備を行うのだった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:36| Comment(10) | 小説
この記事へのコメント
ジェット機やロケット等、相手に技術の方向性を明確に与えてしまう可能性のある情報は出せない?

いえ、出しても良いのではありませんか? 数年程度で真似できるはずはないし、戦後になれば、どうやってみてもその種の情報は知られてしまうだろうし……。
そもそも、あの、ムーで出版された「別冊宝大陸」に、その種の情報は書かれているのでは?

もう一つ、安物の超小型電卓くらいは、渡しても良いのではないでしょうか? これこそ、グラ・バルカス帝国には、どう調べたところで「絶対に」理解不能な技術が使われているのですから。
Posted by にしなさとる at 2018年06月18日 23:25
「帝国は外交窓口について、いつでも開いておくと言っていた。
 実の安全は保障されている。

身の安全は保証されている。 ではないでしょうか。
Posted by 誤字見つけ隊 at 2018年06月19日 00:08
戦後日本の本格的かつ大規模な……派兵だ。

戦後日本初の本格的かつ大規模な……派兵だ。

でしょうか。
Posted by 誤字見つけ隊 at 2018年06月19日 00:12
追伸ですが、その電卓は、内部まで完全に接着されていて、分解不可能。分解しようとすれば、必ず壊れるタイプの物を渡します。
もちろん、そのことは告げておく。

「分解不可能だと? それでは、故障しても修理できないではないか?」と問われたら、言ってやれば良い。

「故障したら、買い換えれば良いのですよ。我が国ではこんな物、庶民の子供が自分の小遣いで買える、安物にすぎないのですから」と言われたら、グラ・バルカス側はどんな顔をするでしょうね?
Posted by にしなさとる at 2018年06月19日 00:19
ひとこと書き忘れていました。もちろん太陽電池タイプです。
Posted by にしなさとる at 2018年06月19日 00:29
 しかし…「て」グラ・バルカス帝国は、アルーの街近くに基地を作りつつあり、近いうちに完成させるだろう。

ここの「て」は誤字ではないでしょうか。

あと「…」は2つセットで使用かなーと。
Posted by at 2018年06月19日 00:59
>>民間船舶を徴用して行ったとしても
「徴用」という言葉にケチつける輩が出てくるかも
このご時世ですので何かと注意なされたほうがよろしいかと
Posted by at 2018年06月19日 07:19
それ言葉狩りだろ徴用は徴用なんだから
Posted by at 2018年06月19日 07:45
「帝国は外交窓口について、いつでも開いておくと言っていた。
 実の安全は保障されている。
 宣戦布告を受けているこの状況下で行く理由は簡単だ。
 グラ・バルカス帝国と、我が国が本格的な戦闘に突入する前に、回避の道を模索……」

実の安全×→身の安全
Posted by at 2018年06月20日 06:52
Posted by at 2018年06月19日 07:19
依頼で来てもらったけど、原発事故で使ったコンクリートポンプ車も徴用みたいなものだろう。ぶっちゃけ、輸送能力が国以上にある会社がこの状況で断ったらどうなるか想像できる。国からの依頼で船を使えば戦争に加担した企業と言われ、貸さなかったら、原発事故でコンクリートポンプ車の使用を拒否するようなもの。徴用だったら国が強制するものだから会社が反戦団体に文句言われづらくなる効果もある。
Posted by at 2018年06月20日 23:53
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