2018年09月14日

第82話駆け抜ける衝撃2P2


 ズガァァァァン!!!

「……第2レーダーがやられました!!!!」

「な……何だって!?」

 敵はまず反撃手段を奪い、その後に重要な施設を狙って攻撃している。
 レーダーが狙われたと言うことは、レーダーが重要な施設であると、敵が理解しているということになる。

 敵は……近代戦をすでに理解している!!

 衝撃……敵は明らかに近代国家……このまま敵の分析を怠り、戦火を拡大すれば、とんでもないことになる。

 それに、敵の練度があまりにも高い、むしろ人間業とは思えなかった。
 通常爆弾というものは、多くを投下し、そのうちの1発が目標物に命中して破壊するものであるが、今回の攻撃はそのすべてが……1発1発が重要物を破壊していく。

『第1レーダーサイト、大破!!レーダー使用不能!!』

『滑走路使用不能!!』

『待機中の第12から18飛行隊、航空機全滅!!』

 無線からは悲痛な叫び声が聞こえる。

「そんなバカな!!どうなってやがる!!!」

 理解が追いつかず、同じような言葉を繰り返す。
 ……震えが止まらない。

「どこから攻撃を!!!まさか……空爆では無く、砲撃か!?」

 あまりにも敵が見つからないので、陸軍による砲撃かもしれないという結論に至る。

『敵機発見……超高空!!』

 目の良い監視員から無線で報告が入った。
 無線による情報を共有した兵達は、一斉に双眼鏡を手にとり、上空を必死に探す。

 青空に描かれた一筋の雲、パースはようやく戦闘機らしき機影を捕らえた。
 先進的な機体、おそらく高度は15000mを超えているであろう、にもかかわらず、自軍の常識では考えられないほどの速さで飛ぶ。
 
「は……速い!!!プロペラが無いぞ!!!」

 神聖ミリシアル帝国の航空機には、プロペラが無かったと、海軍からは聞いていた。
 しかし、我が国の戦闘機よりも、遙かに性能が下であるとも……双眼鏡に写る敵戦闘機は、圧倒的な速度を誇り、途轍もない速さで移動していた。

「ミリシアル帝国の新型か!?」

「先ほど報告にあった日本軍ではないのか!?」

 現場に居合わせた幹部達は、必死に考えを巡らす。

「あ……あんなに高空から!!!」

 あまりにも高い……高射砲でもあれほどの高空までは届かないだろう。
 そして、重要施設に爆弾を正確に当てている。
 あんなに高空から当たる訳が無い。
 練度でカバー出来る領域を遙かに超えているのだ。

 多くの爆弾をばらまき、その多くは基地の外側に着弾しているのかもしれない。
 当たったのは偶然かもしれないと、先ほどの考えを改める。
 あれほどの高空から目標に当てるためには、他に大型爆撃機が多数いるはずだった。

「爆撃機がいるはずだ!!他にも敵機を探せ!!」
 
 兵達は必死で空を見る……しかし、いるはずの大型爆撃機多数は見つからなかった。
 弾薬庫さえも誘爆し、基地は混乱を極める。

 司令室は、報告があまりにも短時間に集まるため、すでに被害を把握できないほどの状態に陥いる。 味方の機は空に上がる事が出来ず、駐機してある航空機と滑走路は使用不能に陥り、戦車もその一部が破壊された。

 混乱を極めたバルクルス……敵の攻撃が止んだ時、基地からは勢い良く炎と黒煙が上る。

 燃えさかる炎を前に、立ち尽くす……沈黙する対空砲……そして待機中に爆撃された航空機……優秀な部下、異世界においては圧倒的戦力だったはずの、彼らが……あっという間に死ぬ……つい先ほどまで、力強さを誇っていた帝国陸軍航空隊が無くなる。
 死の突然さ、不条理さえも感じる。

 将となった時から、部下が死ぬという事に、ある程度の覚悟はしていた。
 しかし……あまりにも一方的な不条理に……感情がこみ上げた。
 人の形をした炭のようなものも見える。

「お……おのれ……」

 目尻が熱くなる。怒りさえも感じるが、すぐに我に返った。

「消火活動を実施!!被害把握せよ!!」

「はっ!!」

 部下達はこのような状況の中でも、的確に動く。
 実に頼もしかった……。

「航空機多数接近中!!数は……約120!!!機影確認、複葉機!!」

 レーダーサイトは沈黙している。
 監視塔から双眼鏡で監視をしていた目の良い者からの報告が上がる。

「くそっ、こんな時に……ムーの攻撃隊か!!!」

 バルクルス周辺でムーの大規模基地は粗方空爆したはずだった。
 何処から送り込まれた攻撃隊かは解らないが、おそらくは偵察に漏れがあったのか……。
 先ほどの圧倒的なまでの正確な攻撃は、おそらく神聖ミリシアル帝国の新型機か、日本軍のものであろう、事前の情報分析でこれほどの性能を持つ航空機の情報は無かった。
 そして、今そこにいる攻撃隊、機影からしておそらくはムー国の攻撃隊だろう。

 通常であれば……基地機能が正常であれば、今回の攻撃隊など恐れるに足りず、すぐに全滅させられる……が……。

「対空砲火全滅!!滑走路も穴だらけで、駐機していた戦闘機は全滅です。
 空将!!対空攻撃の手段がありません!!!」

 悲鳴に近い報告、そんなことは見れば解る。先ほどまで帝国は負けぬといっていた心意気を見せてほしいものだ。

 対空陣地や航空機は全滅に近い被害を出していた。
 
「手段が……無い……」

 絞り出る声、正確な攻撃だった。
 冷静になって見渡すと、基地の外側への着弾は、無いように思えた。
 基地の中だけに攻撃が行われたとするならば、爆弾の総量ははっきり言って帝国の1回の大規模爆撃に遠く及ばないだろう。
 しかし、その攻撃が正確すぎた。
 滑走路、駐機中の航空機、そしてレーダーサイト、対空砲火陣地、さらには燃料タンクと弾薬庫まで、まるでそこへ誘導したかのように、爆弾は命中した。
 
(どうする……)

 パースは悩む。
 突然ドア強くを開け、ガオグゲルが部屋に入る。

「航空隊司令部は現時点をもって、第18倉庫へ行け!!移動式対空機関銃が数機残っている。
 現在すでに指示は出しているが、隊舎も無線も破壊されているため、指示が届いているのか確認出来ない、人員が不足するかもしれん」

「し……司令、大丈夫ですか!?」

「はあ……はあ……はあ……何をしている、さっさと行け!!」

 息を切らすガオグゲルの、額からは大量の血が流れ落ちる。
 爆発片が当たったのだろう。
 彼は大けがをしていたが、職務は正確にこなす。

 航空管制司令室にいた者達は、走り出す。
 予想外の攻撃を受けたグラ・バルカス帝国陸軍は、迫り来る脅威を前に動き続けるのだった。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:54| Comment(22) | 小説
この記事へのコメント
更新ありがとうございます。
グラ・バルカス帝国には、誘導兵器の概念が無かった。
加えてこの世界には、日本以外、誘導兵器を持つ者はいなかった。
それが、致命的な結果を生んだわけです。
Posted by にしなさとる at 2018年09月14日 23:17
>>『待機中の第12から18飛行体、航空機全滅!!』
飛行体 → 飛行隊
のほうが良いかと思います
Posted by at 2018年09月14日 23:18
混乱を極めたバルクルス……敵の攻撃が止んだ時、基地からは炎と黒煙が上がっていた。

誘爆などで凄惨な状況になっていると考えられます。黒煙について形容詞をつけるとよりひどい状況を表現できると思います。

勢いよく黒煙があがる
もうもうと黒煙があがる 

などどうでしょうか。
Posted by 誤字見つけ隊 at 2018年09月14日 23:23
>> 突然ドア強くを開け、基地司令ガオグゲルが部屋に入る。
>> 基地司令ガオグゲルだった。

部屋に入って来た時には誰かわからなかったという描写なので、
「突然ドア強くを開け、誰かが部屋に入ってきた。」
のほうが良いか思います
Posted by at 2018年09月14日 23:23
最後の一文
>予想外の攻撃を受けたグラ・バルカス帝国陸軍は、迫り来る驚異を前に動き続けるのだった。

「驚異」は「脅威」の間違いではないでしょうか?
Posted by at 2018年09月14日 23:27
ガオグゲルみたいな軍人は同等か格上の相手と戦う時には頼もしいな。ぬるま湯に浸からせちゃダメな人物だった。
Posted by at 2018年09月14日 23:27
>>「航空隊司令部は現時点をもって、第18倉庫へ行け!!…
司令部を移転するという意味なら
 「航空隊司令部は現時点をもって、第18倉庫へ移転する!!…
戦闘に加われという意味なら
 「航空隊司令部の要員は現時点をもって、第18倉庫へ行け!!…
のほうがわかりやすいかと思います
Posted by at 2018年09月14日 23:28
>>パースはようやく戦闘機らしき機影を捕らえた。
おそらく飛行機雲があったのでわかったのでしょう。
レシプロ機では飛行機雲はほとんど発生しないため、バースは初めて見たのかもしれません。
飛行機雲の描写があるとよりリアルかと思います。
Posted by at 2018年09月14日 23:34
敵は……近代戦をすでに理解している!!
この表現って、日本側からの視点では現代戦じゃなくて近代戦だと思うんですけど
グ帝側から見たらまさにその『近代』が『現代』なのかなぁ〜?なんてグルグル思ったり。
Posted by at 2018年09月15日 09:45
〉プロペラが無いぞ

双眼鏡を使っても15〜17Km以上距離があると確認できないと思うのですが。

〉監視塔から双眼鏡で監視をしていた目の良い者からの報告が上がる。

頭に「生き残った」あるいは「奇跡的に生き残った」をつけたらいかがでしょうか?

奇跡的に生き残った監視塔から、、、
Posted by at 2018年09月15日 10:15
高射砲でもあれほどの高空までは上がらないだろう。

高空よりも高度のほうがしっくりくるような
Posted by at 2018年09月15日 10:17
>>先進的な機体、おそらく海抜高度は15000mを超えているであろう、にもかかわらず、自軍の常識では考えられないほどの速さで飛ぶ。

グ帝のレシプロ機では高度15000mまで到達できないので、速度を比較しようがないのでは
日本機の高度と速度の両方に驚いていると考えて、
にもかかわらず、→ しかも、
としたほうがわかりやすいと思います
Posted by at 2018年09月15日 11:39
>>Posted by at 2018年09月15日 10:17
加えて「上がらない」じゃなく「届かない」の方がいいんじゃないかと。

ちなみに、17,000mを飛行可能(新世界は地球やユグドより対高度の圧力勾配がゆるい)なら、高射砲も飛翔時は砲弾の空気抵抗が増すんで射高は旧スペックより低くなるんじゃないかと。
Posted by at 2018年09月15日 12:36
>そして、重要施設に爆弾を正確に当てるには、あんなに高空から当たる訳が無い。

「当てるには」と来たら、その後には当てる方法または当てるための前提が来ないといけません。

その方法が不可能または現実的に有り得ないから「当たる訳が無い」と続けられるわけです。
Posted by at 2018年09月16日 09:36
>当たったのか偶然かもしれないと、

当たったのが偶然かもしれないと、

 または、

当たったのは偶然かもしれないと、

ですかね。
Posted by at 2018年09月16日 09:42
あまりにも高い……高射砲でもあれほどの高空までは上がらないだろう。

高射砲を高射砲弾にするか
上がらないを届かないにした方がいいと思います。
Posted by at 2018年09月16日 19:23
>>彼は大けがをしていたが、職務は正確にこなす。
「正確」より「的確」のほうが良い気がします
Posted by at 2018年09月17日 17:18
報告や命令の台詞が目に見えて良くなっていますね!
余計な形容詞や勝手な感想が無くなって、誰が判断すべきで誰がそうでないのかがよくわかるようになりました!
Posted by at 2018年09月18日 12:28
>先進的な機体、おそらく海抜高度は15000mを超えているであろう

「海抜高度」は山や台地など地理的な事物への説明に使いましょう。ここでは「飛行高度」または「高度」でどうでしょうか。
Posted by at 2018年09月18日 14:19
>「は……速い!!!プロペラが無いぞ!!!」

15km先の物体が亜音速で飛んでるのを見ても速いかどうかはわからんと思いますよ
Posted by at 2018年09月18日 14:20
>報告があまりにも短時間に集まるため、すでに被害を把握できないほどの状態に陥いる。 

戦況を語る際に「誰が」を省略するのはやめましょう。特に混乱してるときは。上の文の主語が「司令部」の場合は

→報告があまりにも短時間に集まるため司令部はパニックに陥り、被害状況を把握できない状態になっていた。

になります。
Posted by at 2018年09月18日 14:25
ひょっとして、くまちゃんもみのろう 氏も北海道厚真町
埋まった方々でしょうか・・・
更新も動静も絶えて久しいですから。
最低でも月一ペースで上がっていたものが二カ月ですからね。
ゼロ魔の山口氏の例もありますし。
Posted by 名無し at 2018年11月10日 21:34
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