2018年09月14日

第82話駆け抜ける衝撃2P3


◆◆◆
 
 第2文明圏 列強 ムー国 西部方面空軍 「剣閃隊」

 ムー国の大規模航空基地で、バルクルスに届く航空基地のほとんどは、グラ・バルカス帝国の空爆によって壊滅的被害を受けていたが、点在する小規模基地や、空から見えにくい空洞山脈に囲まれた航空基地は被害を受けていなかった。

 今までのムー国の技術であれば、各航空基地から飛び立った航空機が合流し、大規模作戦を行う事は不可能であった。
 しかし、日本国から提供されるレーダーからの情報がそれを可能にした。
 結果、日本軍の攻撃直後に敵基地上空に到達する事が出来た。

 ムー国にとって、侵略国家グラ・バルカス帝国への初めての、しかも成功確率の高い大規模作戦。
 この第1次攻撃隊は、「閃光の如く早く、国の剣となって敵を討つ」という意味で「剣閃隊」と名付けられた。
 

 剣閃隊 隊長 ナギー

 150機という大編隊、そのうちマリン型戦闘機は隊長機を含めて30機程度であり、残りは旧式の爆撃機や戦闘機が飛ぶ。
 大規模基地や、首都近くであれば、最新型の航空機が主力となっただろうが、地方隊の寄せ集めであるため、どうしても旧式が多くなる。

 しかし、150機もの大編隊が空を飛ぶのは壮大な光景であり、旧式部隊の寄せ集めとはいえ、自分がムー国としては初めて異界の軍、グラ・バルカス帝国への反撃、有効な反撃の一番槍をもらえるとあって、意識は高揚する。

 無線機の性能も、日本国との交流により、2年前とは比べものにならないほどに向上し、もはや魔信は過去のものとなっていた。
 旧式機の多い彼の部隊であってもすべての機に、無線機は搭載されていた。

 まもなくグラ・バルカス帝国のムー国に対する最前線基地バルクルス上空に到達する。

『隊長、まもなく基地を視界に捕らえます。』

『うむ、各機グラ・バルカス帝国戦闘機に厳重に注意を払え!!』

 異界の戦闘機の性能は、我が軍を遙かに超えているとの情報もある。

『隊長、日本軍が先行して敵の空戦能力を削ぐと聞いていますが、やはり戦闘機は来るでしょうか?』

 隊員が、無線機で語りかけてくる。
 本国中枢の部隊であれば、無線でこんな軽口をたたく事は許されないであろう。しかし、敵は強大で、皆死地に向かう覚悟をもっており、無線での軽口に文句を言う者はいない。

『日本の戦闘機は、先に向かったのはたったの10数機と聞く、いくら日本軍でも多勢に無勢、奇襲が成功したとしても、敵はまだかなり残っていると考えていい。
 最悪、日本軍が全滅している可能性もあり得る』

『そんな……では、何故政府は今回の攻撃を初の反攻作戦と定義しているのでしょうか?』

『日本軍が強い事は、事実のようだ。軍のお偉いさんは、えらく日本をかっている者が多い。
 お偉いさんが、強いと判断したから、たった15機でも敵の航空戦力が大きく削がれると期待してるのだろう。
 上に行くほど考えは現場から乖離するからな。
 しかし……まあ、我らも相当な数といっていい。
 しかも、相手は航空機では無い……動かない基地だ。
 戦果は上がる!!!』

 第2文明圏列強ムー、彼らは誇り高く、他国より隔絶した科学文明によって、列強第2位までの地位に上り詰めた。
 しかし、異界の大帝国が敵となり、連敗につぐ連敗、苦渋を舐め、兵たちの心は折れかけていた。
 初の大規模反攻作戦。
 これほどの規模の部隊を、敵基地へこれほどまでに接近させた事は初めてであり、敵の強大さへの恐怖と、敵を打ち負かそうとする強い意志、そして微かな希望。
 感情が入り混じる。
 隊長ナギーは、入り混じる感情を振り払った。

『敵は満身創痍だ!!行くぞ!!お前ら気合を入れて行け!!
ムー国の……反撃の第一撃は我らがとる!!!!!ムー国は……俺たちが守る!!!異界の帝国をムー大陸から叩きだせ!!』

『了解!!!』

 大声の指令、そして了解の返信。
 彼らの覚悟は決まる。

『前方!煙!!!』

 雲の裂け目、先を飛んでいた者が報告を行う。
 やがて雲が切れ、ナギーも遠くを見通せる状況となった。

「なっ!!」

 眼下に写る帝国の最前線基地バルクルス……その基地からは、空を焦がすほどの猛烈な炎と煙が立ち上る。
 基地の燃える煙で、攻撃目標が解らなくなるほどの硝煙。

「いったい何が……」

『敵航空機、そのほとんどが破壊されています!!!滑走路も使用不能状態!!!』

 さらに報告が来る。

「こ……これは……神が我らに与えしチャンスか!!!」

 敵の航空機による反撃の可能性が激減する。部隊の士気が上がった。
 前方を飛ぶ、部下が数度バンクし、降下を開始した。
 ナギーは我に返る。

『攻撃開始!!攻撃開始!!!国境の町、アルーの民の……ムーの怒りを奴らにたたき込め!!!』

 次々と降下する旧式爆撃機、100機以上にも上る複葉機は、バルクルスに攻撃を開始した。
 
◆◆◆

 100機を超える数の機から打ち下ろされる機関銃、そして投下される爆弾……次々と基地重要施設から爆炎が上がる。
 曳光弾を交えて打ち上げられた機関銃弾が敵を捕らえるが、その数は少なく、報復として打ち下ろされた機銃に打ち抜かれ、沈黙する。

 帝国の誇る最前線基地、バルクルスは燃えていた。

「お……おのれ……あんな……あんな旧式機、機能がまともであれば!!!」
 
 おそらくは日本軍の精密な攻撃、奴らに多大なダメージを与えられていなければ、こんな攻撃は難なく防ぐことが出来た。
 しかし、戦闘機の大半はすでに破壊され、対空砲陣地はほぼ壊滅、唯一残った移動式の対空機関銃で応戦するのみ……その火力弱く、被害は拡大していく。

 応戦手段が無い敵に対し、第2文明圏列強国ムーの空軍は、その力をいかんなく発揮していた。
 
 空爆は続く。
 バルクルス空爆は、後の歴史書に帝国の異界における最初の……強烈な敗北として記される事となる。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 22:55| Comment(30) | 小説
この記事へのコメント
基地の重要施設は日本の攻撃でほとんど破壊されているので、ムーの航空隊は何を攻撃したのでしょうか
破壊されていない建物とか車両とかでしょうか
基地が燃える炎と煙で視界が悪いはずなので、複葉機だとかなりきついのでは
Posted by at 2018年09月14日 23:49
なんで窓があるくらい防御力低そうなソフトターゲットの司令部を狙わんのかと思ったら第2次攻撃があったのか。
記述の無かった通信設備も2次攻撃で破壊ってことですね。
Posted by at 2018年09月15日 00:10
ムーのことなめきってたのに、はるかに劣る戦闘機や爆撃機にやられるとか涙目だな。
Posted by at 2018年09月15日 00:52
日本が支援していて電波妨害と基地施設破壊しているとはいえ、ムーの攻撃隊が無線封鎖していないのが気になる。

「敵は強大で、皆死地に向かう覚悟をもっており」とあるくらいなのだから、表現的に緊迫感を出したいのであれば、部下が無線で語りかける場面ではなく隊長ナギー黙考にした方がいいと思う。

>100機を超える数の機から打ち下ろされる機関銃、そして投下される爆弾

破壊をもたらす表現なのだから「打ち下ろされる機関銃」ではなく「放たれる機銃弾」などとしないと、その後の「投下される爆弾」につながらない。
あと「打つ」は「撃つ」。
Posted by at 2018年09月15日 00:59
>>無線封鎖

おそらくグ帝が使用しているのはアナログ無線機。日本からムーに提供されているのはデジタル無線機。グ帝に傍受されても意味不明な雑音しか拾えないから、無線封鎖しなくても大丈夫。
Posted by at 2018年09月15日 01:44
>>先に向かったのはたったの10数機と聞く
>>たった15機でも敵の航空戦力が大きく削がれると期待してるのだろう。
「10数機」と「15機」はどちらかに表現を統一したほうが良いかと思います
Posted by at 2018年09月15日 06:12
>>前方を飛ぶ、部下が数度バンクし、急降下を開始した。
>>ナギーは我に返る。

隊長機から攻撃指示がないので、部下が注意を促した、という意味ですよね
複葉機が数度もバンクするのは不自然だし、勝手に降下するのは命令違反ですから
Posted by at 2018年09月15日 06:59
>>しかし、戦闘機の大半はすでに破壊され、対空砲陣地はほぼ壊滅、唯一残った移動式の対空機関銃で応戦するのみ

破壊されていない戦闘機も離陸できない、ということも示したほうが良いかと思います
戦闘機の大半はすでに破壊され →戦闘機の大半と滑走路はすでに破壊され
Posted by at 2018年09月15日 07:04
>「こ……これは……神が我らに与えしチャンスか!!!」

いいえ、それは日本国と航空自衛隊が与え給うたチャンスです。
Posted by at 2018年09月15日 08:53
ハイ(日本)ロー(ムー)ミックスw
日本は精度は良いですが高コストなんで制空奪取を、ムーは低コストなんで重要施設の完全破壊をって感じですかね。
あと外向的にムーの面子を立てるのもあるかと。
Posted by at 2018年09月15日 09:27
【問題】以下の文を読んで設問に答えなさい
>>150機という大編隊、そのうちマリン型戦闘機は隊長機を含めて30機程度であり、残りは旧式の爆撃機や戦闘機が飛ぶ。
>>次々と急降下する旧式爆撃機、100機以上にも上る複葉機は、バルクルスに攻撃を開始した。

【設問】
新型戦闘機、新型爆撃機、旧式戦闘機、旧式爆撃機の数はそれぞれ何機でしょうか?
Posted by at 2018年09月15日 11:25
無線がデジタルだアナログだ傍受不可だのスペック厨な解釈はどうでもいい。
今まで負け一辺倒だった側が反撃に出てその期待や不安の表現として攻撃体内での会話が間延びして平坦になってその心情が伝わってこない。せっかくの盛り上げていく部分なのにもったいなく残念。
Posted by at 2018年09月15日 14:06
>最悪、日本軍が全滅している可能性もあり得る

いくらなんでも日本軍との連携がとれていなさすぎ、無線封鎖されてないのなら、「日本軍の作戦成功」とその成果のあらましくらいは伝えるべきでしょう。

隊長がそれを信じない、というのならまだわかりますが。
Posted by at 2018年09月16日 09:52
対空陣地があっさりやられすぎやしないか?移動を前提としない基地の対空砲なら一基づつ距離を置いて防壁で囲んで設置するだろうから、爆弾一発で対空砲一基しか破壊できないはず。
Posted by at 2018年09月16日 14:13
Posted by at 2018年09月16日 09:52
確かに考えてみれば、日本側から「攻撃成功」の連絡が行っていて、当然に思えますね。
Posted by at 2018年09月16日 16:37
ソードフィッシュ大活躍?
Posted by at 2018年09月17日 12:59
フェアリー・ソードフィッシュが名機になり得たのは、信頼性と耐久性が抜群で、操縦がやさしく整備も容易。しかも汎用性に優れ、実用性が高いという長所があったから。
複葉機がすべてソードフィッシュになり得るわけではない。
Posted by at 2018年09月17日 22:33
>今までのムー国の技術であれば、各航空基地から飛び立ち、空で合流して大規模な攻撃を行う事は不可能であったが、日本国がリュウセイ基地に設置した大出力対空レーダーと、その航空管制技術により、日本軍の攻撃直後に到達する事が出来た。

焦りすぎて文章が少しおかしいです。いくつかに区切ってきちんと伝えましょう。

→今までのムー国の技術では、各地に散在する航空基地から飛び立った航空隊が合流し、大規模作戦を行うことは不可能だった。しかし、日本が提供するレーダーからの情報がそれを可能にした。結果、ムーの対地攻撃部隊は日本軍の攻撃直後に敵基地上空に到達することができた。

>ムー国は、本土へ侵略してきたグラ・バルカス帝国に対する初の成功する確率が高い大規模反撃の、初撃ととらえ、ムー国による第1次攻撃隊を、閃光の如き速く、ムー国の剣によって敵を討つという意味を込めて、「剣閃隊」と名付けるに至った。

自分でも「あ、ちょっと文章が長いな」と思ったときはいくつかに区切ってもいいと思います。結構とっちらかってしまいますので。


→ムー国にとって、侵略国家グラ・バルカスへの初めての、しかも成功確率の高い大規模作戦だ。この第一次攻撃隊は、「閃光の如く早く、国の剣となって敵を討つ」という意味で「剣閃隊」とと名付けられた。
Posted by at 2018年09月18日 12:42
↑「剣閃隊」とと名付け

→「剣閃隊」と名付
Posted by at 2018年09月18日 12:46
>無線機の性能も、日本国との交流により、2年前とは比べものにならないほどに向上し、もはや魔信は過去のものとなっていた。

「日本国との交流により」→「日本からの技術供与により」または「日本からのモジュール供給により」または「日本の民生品を改良して搭載したことにより

電源の問題もあって、そうそう簡単にアビオニクスは流用できないのと、「交流」などというあやふやなもので戦略兵器ともいえる無線機を渡されることは通常ないので上のいずれかになるかと。
Posted by at 2018年09月18日 12:51
>『そんな……では、何故政府は今回がグラ・バルカス帝国へ本格的ダメージを与える初激と定義しているのでしょうか?』

→『そんな……では、何故政府は今回の攻撃を初の反攻作戦と定義しているのでしょうか?』
Posted by at 2018年09月18日 12:54
>次々と急降下する旧式爆撃機、100機以上にも上る複葉機は、バルクルスに攻撃を開始した。

複葉機の、しかも旧式機の急降下爆撃機の現実性はわかりませんが、ここは普通に爆撃してもいいと思います。そもそも急降下する意味ないですよね。
それより、「何に」爆撃したのかですよね。


→100機以上の旧式爆撃機に爆弾投下の合図が飛んだ。残存するバルクルスの基地施設への攻撃が開始されたのだ。

Posted by at 2018年09月18日 13:00
>曳光弾を交えて打ち上げられた機関銃弾が敵を捕らえるが、その数は少なく、報復として打ち下ろされた機銃に打ち抜かれ、沈黙する。

ムーを「敵」とこの章で言うのはいかがかと。

→曳光弾を交えて打ち上げられた対空陣地の機関銃弾がムー国の攻撃機を捕らえるが、その数は少なく、攻撃機から打ち下ろされた機銃に打ち抜かれ、次々に沈黙いていく。
Posted by at 2018年09月18日 13:05
>その火力弱く、被害は拡大していく。

→その火力は弱く、被害は拡大していく。

Posted by at 2018年09月18日 13:07
>応戦手段が無い敵に対し、第2文明圏列強国ムーの空軍は、その力を発揮していた。

→応戦手段が無い敵に対し、第2文明圏列強国ムーの空軍は、その力をいかんなく(または存分に)発揮していた。
Posted by at 2018年09月18日 13:09
>9月15日11:45
新型戦闘機マリン 約30機
新型爆撃機 なし
旧式戦闘機 約20機(四捨五入)
旧式爆撃機 100機以上
じゃないですか?
Posted by at 2018年09月19日 22:59
無線機に関しては技術交流で知識を導入して開発を行い〜なんて国産化の試行錯誤をしている一方で現場には完成品パッケージを必要数日本から輸入して早急に配備したとも考えられる
そしてパッケージ商品だと転移時の日本の工業技術の水準から携帯電話同様デジタル信号を使ったものになるから、グラ帝は使用周波数を探し出して受信しても意味不明なノイズにしかならない

ただ、傍受できて通信内容が分からなくても問題ないんだよね
軍用無線なら前線でも簡易的な暗号が使われるから、無線使用者の母国語(モールスのような万国共通のものではない)での数字の羅列と判ればよく、そうした電波が出ていることを探知することの方が重要

ところが本文中からグラ帝は「逆探」も行っていないようだし、何というか伝播を使った技術が酷くアンバランスな印象


Posted by at 2018年09月21日 17:57
伝播 ×
電波 ○
Posted by at 2018年09月21日 17:58
>複葉機の、しかも旧式機の急降下爆撃機の現実性はわかりませんが、ここは普通に爆撃してもいいと思います。そもそも急降下する意味ないですよね。

 急降下爆撃の利点は爆弾が目標に当たりやすいということですので、可能ならしかも防空陣地が壊滅しているのであればやるべきです。
 複葉機で急降下爆撃機として造られた機体は、現実にあります。(急降下爆撃機ウィキペ参照)また急降下爆撃機と称する機体でなくとも、比較的緩い角度で降下して爆弾を落とすというのはできます。
Posted by at 2018年09月25日 19:51
あちこちで戦争が起きるくらい国際情勢が不安定な世界で、簡単に軍事パッケージを売り買いするはずないと思うんだけどなあ。特にメタ情報込のやつは。

Posted by at 2018年09月27日 03:23
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