2019年12月31日

第97話 日・グ大海戦P1

「敵魚雷、向きを変え我が方に向かってきます!!」

 通信士からの悲鳴のような報告。
 敵魚雷は推定50ノットという高速で、我が方に向かってきている。
 戦艦クウェーサは、先ほどから何度も魚雷回避運動を行っているが、敵魚雷も向きを変えて進んできていた。
 沈み駆けた夕日、一定時間をおいて行われた対艦誘導弾の着弾による煙が、未だ艦隊の所々から立ち上る。

(ついに狙われたか!!)

 誘導魚雷という規格外の兵器、そして迫り来る死。
 第二艦隊司令アウロネスの手はガタガタと震えた。

「まさか……この俺が!!!」

 心の底からわき出る恐怖。
 帝国軍人に拝命した時から、国のために命を捨てる覚悟は出来ていた。
 しかし帝国は強く、死の可能性といっても全体の兵からの割合としては少ないため、決して可能性の高いものでは無かった。
 しかし、理不尽なほどの高性能兵器、そして現実味があり、可能性の高い死を前に、想像とは遙かに異なる真の恐怖がこみ上げる。

(死にたくない)

 叫びそうになった。
 しかし、司令という立場が恐怖の声を押しとどめる。

 敵魚雷は急速に近づき、ゆっくりと考える暇を与えてはくれない。

「ダメです!!避けきれませんっ!!」

 監視員が叫ぶ。

「全員何かにつかまれぇ!!」

「神様っ!!」 

 艦橋には様々な声が響き渡った。
 
 鉄の砕ける鈍い音、僅かに送れて耳を劈く爆音が響き渡った。
 鋼鉄の……巨大戦艦クウェーサが激しく振動する。
 続けて右舷から猛烈な水柱が上がり、空中に上がった大量の海水が艦に降り注ぐ。

「右舷被弾!!」

「被害報告せよ!!」

「右舷に破口発生!!浸水が止まりません!!」

 猛烈な量の海水が船内に流れ込み、艦がじわじわと傾き始める。

「左舷注水開始!!」

 右側に入った海水によってバランスが崩れ、艦が右に傾く。
 左側にも注水することによって、艦を海と平行に保とうとする。
 徐々に艦の傾きが戻っていった。

「左舷、注水限界に達しました!!ダメです。右舷浸水止まりません!!」

「なんだとっ!!」

 右舷に発生した敵魚雷による破口はあまりにも大きく、簡易的な補修すら出来ない。
 区画された扉をことごとく破壊し、海水は入り続ける。
 浸水による被害は戦艦クウェーサのダメージコントロールの限界を超え、再度徐々に右側に傾き始めた。

「ぐっ!!たったの1発だとっ!!敵の魚雷は我が軍のそれを威力においても陵駕すると言うのかっ!!!」

 魚雷の雷速、射程距離、そして誘導という反則級の化け物魚雷。
 それだけでも驚異だというのに、威力までもが隔絶している。

「敵誘導ロケット再度飛来!!!」

「ぐっ!!こんな時にっ!!!」

 司令アウロネスは傾く戦艦の艦橋から空を見る。
 外周の艦隊も敵攻撃を察知し、対空砲による曳光弾が空を埋め尽くした。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 16:08| Comment(16) | 小説
この記事へのコメント
今年の更新、今年のうちに?
Posted by at 2019年12月31日 16:10
あれ?前話だと2発だったけど減ってません?
Posted by at 2019年12月31日 16:51
更新ありがとうございます
良い大晦日を過ごせそうです
Posted by at 2019年12月31日 17:12
はて? 89式魚雷といえども、戦艦を一撃で沈めるのは無理があるのでは? よほど当たり所が良くない限り。

もちろん、戦艦側の防御力にもよりますが、戦艦クウェーサは、旧日本軍で言うとどのクラスに該当する戦艦なのでしょう?
Posted by にしなさとる at 2019年12月31日 17:34
更新ありがとうございます。
今年最後で最高のプレゼントでした。
Posted by at 2019年12月31日 18:59
誤字報告

「右舷被弾!」→「右舷被雷!」

 魚雷が命中した場合はそう形容します。
Posted by at 2019年12月31日 20:30
>>区画された扉をことごとく破壊し、海水は入り続ける。

「扉」というか「防水壁」のようなイメージでしょうか
旧日本海軍戦艦の防水扉はかなり丈夫で、区画の壁が水圧で変形して海水が入るケースが多かったようです
Posted by at 2019年12月31日 21:46
89式魚雷は、昔の魚雷のような直撃するタイプではなく、敵艦の直下で爆発し船体をへし折るタイプなので描写が少し違いますね
威力については、現代の艦艇ならニミッツ級でも撃沈できると聞いたことがあるので問題はないかと思います。
Posted by 名無し at 2019年12月31日 22:32
Posted by にしなさとる at 2019年12月31日 17:34
今回は描写が間違ってるけど、実際一撃でこれだけの大損害を出すことはできる
昔の魚雷とは攻撃の方法が違うからね
Posted by at 2019年12月31日 23:36
船体を真っ二つにへし折る感じですね。
竜骨が折れて、自重で折れるイメージでしょうか。
しかし、戦艦も同じようにいくのかはわかりませんね。
右舷に被雷の表現は修正された方がしっくりきます。
Posted by at 2020年01月01日 00:11
大型艦艇を狙う場合
船体に突き刺さる魚雷は威力を高めるため船腹へ突き刺さっても即座に爆発せず
突き刺さった破孔から海水が入り込む時間を置いて爆発するように信管を調整しますね

現代の魚雷の艦底爆発は爆発の衝撃で持ち上げ、
爆発の衝撃波で海水を蒸気の泡と化していきなり船の下に大きな落とし穴ができ、
爆圧で持ち上がった船体を落とし穴へ落して竜骨を折る
そんなイメージですね
Posted by at 2020年01月01日 10:41
そもそも火薬の性能から違うしなぁ。
Posted by at 2020年01月01日 10:50
プロに揉まれたからか、文章上手くなってるなぁと。

ちくしょー しかなかった頃と雲泥の差。
素晴しい。
Posted by at 2020年01月01日 16:04
敵魚雷の動きを報告するとしたら、通信士ではなくソナーマン、昔で言う水測員では?
Posted by at 2020年01月01日 18:14
曳光弾好きすぎない? なんとかの一つ覚えじゃないんだから必要のなさそうなところにまで使う必要はないんじゃない?
Posted by at 2020年01月02日 14:59
魚雷の雷速→魚雷の速度あるいは単に雷速?
Posted by at 2020年03月08日 17:48
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: