2019年12月31日

第97話 日・グ大海戦P4

 
◆◆◆

 旗艦バルサー艦橋

「総員戦闘配置!!総員戦闘配置!!」
 
 艦内にはけたたましいブザーが鳴り響き、兵は慌ただしく走り回る。

「空母は直掩機を上げろ!!雷撃機は雷装のまま発進待機、各艦は上空警戒を厳とせよ!!」

 矢継ぎ早に指示が飛び、艦隊は戦闘配備へと移行した。
 兵は迅速に動く。練度はあまりにも高い。

 レーダー技師マゼランは、艦橋においてレーダー監視員と共に画面を見ていた。
 周波数を変えての最高出力での再起動。
 今度こそレーダーの使用できない現象を何とかしたい。

「では、再起動します」

 落ち着いてスイッチを押す。
 完全に消えていた画面に一筋の光が現れ、10時の方向から2時の方向へ向けて右回りに回転を始める。

「え!!??」

 一本の伸びる線、付近には考えられないほどの大量の光点が確かに映る。

「敵機!!?」

 思わず声が漏れ出た。
 攻撃が差し迫っている!!かつて無い恐怖。
 一瞬だけ再起動したレーダーは、すぐに真っ白な画面へと変わる。
 一瞬だけ映った光点を見逃さずに済んだ事は幸運だった。

「どうしたっ!!!」

 司令ミレケネスはレーダー監視員から漏れ出た声を聞き逃さなかった。

「ぜ……前方、11時方向敵機接近!!距離200km、速度不明!!数……即時レーダーが使用不能となったため、詳細把握できませんが、50以上!!!
 50以上の敵機が向かってきています!!!」

「なんだとっ!!」

 自分たちに向けられた明確な殺意に背筋に悪寒が走る。

「航空攻撃か!!迎撃機を可能な限り上げろ!敵機を1機たりとも近づかせるな!!!」

 指示が飛ぶ。
 予測していた攻撃、そして予測通りに攻撃が来る。
 艦橋はさらに慌ただしくなった。

「距離200で探知出来た事は幸いでしたな」

 傍らに立つ参謀、デルンシャはミレケネスに話しかける。
 日頃はおっとりとした雰囲気で眼鏡をかけ、やさしい風貌を持つ。
 彼は続けた。

「距離が200あるなら、迎撃も余裕をもって間に合うでしょう」

「敵が我が帝国と同程度ならな。
 第2先遣艦隊との距離は近い。その第2先遣艦隊が連絡する間もなく全滅している。
 司令アウロネスは優秀だ。大艦隊が手も足も出ずに連絡すら出来ずに全滅しているのだ。
 敵がどういった戦いをするのか全く読めん」

 出撃前に聞いた資料を思い出す。
 日本軍は誘導弾という未来兵器をもっているかもしれないと。
 荒唐無稽に思えるその想定性能を見たとき。そんな事が出来るわけが無いと一笑に付した。
 しかし、第2艦隊が……しかも大艦隊が全滅しているのならば、軍本部の荒唐無稽な仮説も現実味を帯びてくる。

「デルンシャ、全艦に指示、敵は誘導弾を使用してくる可能性有り。先進技術実験室配布の妨害装置を使用できる状態にしておけ!!」

「はっ!!あれを使用なさるおつもりですか?」

「ああ、我が軍の頭脳ともいえる先進技術実験室は優秀だからな。きっと効果があるだろう。先進技術実験室の職員を艦橋に呼べ」

「はっ!!」

 ミレケネスは艦の中央部を見る。
 左右に取り付けられた筒状の物体が、斜め上空を向いていた。
 しばらくして、艦橋の扉が開き、眼鏡をかけた優男が入ってきた。

「やっと我々の出番と言うことですねぇ」

 先進技術実験室の第1級技術者、万が一の時のために装置が配備されている第2艦隊旗艦に乗り込んでいた。

「司令ミレケネス様、参謀デルンシャ様、艦長フイトル様、改めてご挨拶申します。
 先進技術実験室第1級技師カンダルと申します」

「カンダル殿、現在の状況は聞いているな?」

「はい」

「迎撃に失敗した場合、敵の誘導弾の攻撃に晒される可能性がある。
 迎撃、さらに対空砲で撃ち漏らした場合、新兵器の出番となるだろう。
 ……自信はあるか?」

「フッ、当然でしょう。ミレケネス様」

 軍人であれば帝国3将たるミレケネスにこのような言葉遣いは決して許されないが、技術員と言うことで、苦言を呈する者はいない。

「情報局技術部にナグアノという人物がいます。帝国大学時代の私の同級生で、非常に優秀な人物でした。
 彼が、日本国が誘導弾を配備している可能性を指摘します。
 そして、ムー国内において販売された日本の書物でも誘導弾を確認いたしました。
 何処までが欺瞞情報で、何処からが本当の情報なのか。彼は悩んでいたようです」

 カンダルは続ける。

「我が先進技術実験室と、情報局技術部は情報共有し、仮に誘導弾が本当に存在するならば、どういった誘導方式になるのかを徹底的に洗い出しました。
 情報局技術部は、レーダー技術の応用だと指摘し、我が先進技術実験室は、レーダーの可能性も捨てきれないが、熱源探知型の可能性もあると考えました。
 おそらくは中間は慣性誘導、最終はレーダーもしくは熱源探知型の誘導でしょう」

 意味の解らない技術用語が多く登場し、軍人達の頭にははてなマークが浮かぶ。
 
「レーダー誘導方式であれば、弾頭からのレーダー反射波を利用して誘導しているに違いない。
 我が国のVT信管も、レーダー反射波を利用していますしね。
 レーダー反射率の高い金属片をばらまいてやれば、敵誘導弾が艦を見失う可能性が高い。 また、仮に先進技術実験室の導き出した可能性の一つ……熱源誘導方式を使っている場合ですが、艦よりも遙かに大きな熱源を多数出現させ誘導弾を欺罔すれば良い。
 我々先進技術実験室は、本件誘導弾欺罔装置のうち、電波を対象とした攪乱装置をチャフ、熱源追尾型を対象とした攪乱装置をフレアと名付け、本第1艦隊と本艦隊主要艦艇に配備いたしました」

 カンダルは熱弁した。

「そ……そうか、それは頼もしいな。是非頼むぞ」

「はい!!現在の我が国の考えられる対抗手段をすべて使用しており、私は絶対の自信があります。
 誘導弾の存在自体驚異的ではありますが、この欺瞞装置は仮に敵が我が国の20年……いや、30年先の技術を使用していたとしても、絶対に効果があります。
 最終防御は我らに……お任せ下さい!!」
 
 参謀デルンシャは拍手する。

「それは素晴らしい。さすがは我が国の頭脳ともいえる先進技術実験室……よろしく頼みますぞ!!」
 
 かつて無い敵を前に、絶対的な自信を示すカンダルに、艦橋の空気は少しだけ和らいだ。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 16:12| Comment(29) | 小説
この記事へのコメント
チャフは70年前の技術でしたな・・・
Posted by at 2019年12月31日 16:17
一応93式は終端誘導は赤外線画像誘導ではあるけどフレアに誘導されないように艦船データ入力されてから発射されるからほぼ効果がないんだよな…ご愁傷様
Posted by at 2019年12月31日 16:22
素晴らしいフラグ立てだw
ワクワクがとまらないな

この時間で戦闘機上げたら夜間着艦になりそうだけど練度に自信があるのだろうな

急降下爆撃は夜間は不可能らしいが雷撃なら準備していたら可能性ありそうではある

じつは夜間雷撃に備えて照明弾用意してるかもしれないな
Posted by at 2019年12月31日 16:55
意味のないチャフ
二重三重に絶望しか無いな
Posted by at 2019年12月31日 17:41
この『攪乱装置』が、以前出て来た『ナグアノの秘策』だろうか?
Posted by at 2019年12月31日 17:47
ナグアノ着眼点はいいんだが現代のミサイルはその程度では防げない。

10年前くらいに航空ファンかなにかでパイロットの話的なのでAAMは撃たれたらほぼ防げないとか言ってた気がする。
Posted by at 2019年12月31日 19:12
レーダー探知を予想するならまだしも、熱源探知まで予想できるのかな。
Posted by at 2019年12月31日 19:30
F-15やF-2の編隊を200kmのレーダー探知はものすごく優秀かも

第二次大戦のSC-2 レーダーは地球だと爆撃機でも148kmぐらいまでが性能限界らしい

より小型の航空機を200kmで探知できたのは水平線の遠い異世界に対応するため強化した優秀なレーダーを使っているように見える

異世界用に作った自慢のレーダーとか書いてあっても違和感無さそう
Posted by at 2019年12月31日 20:59
絶対の自信がそれを圧倒する実力に呆気なく
木端微塵に粉砕される瞬間ほど愉悦なものをない。

というわけで若作りBBAの処刑はっじまるよー!
Posted by at 2019年12月31日 21:07
何だか帝国が少しだけ哀れになりますね。
以前、ワイバーンの炎に誤作動しかけたことはありますが、あれは異世界産だからの想定外。この程度の欺瞞では。
同じ科学文明だからこそ、技術格差が残酷なまでに浮き彫りになります。
Posted by at 2019年12月31日 21:53
マゼランがもう少し頭がよければ、再度レーダー周波数変更して再起動するのだが
Posted by at 2019年12月31日 22:28
レーダーに映ったのがミサイルだったなら、カンダルが説明している間に、至近距離まで接近しているはずだが
Posted by at 2019年12月31日 22:30
思い付きの周波数変更でおおまかにせよ人間が方位距離が測れる間隙をつけるものなのだろうか?

教えて、詳しい人!
Posted by at 2019年12月31日 23:49
「慣性誘導なんて概念がグラ・バルカスに有るのか」と思っている人が多いみたいですが……。
 航空機の自動操縦装置は、1930年代の日本にも有りました。
 ミサイルの慣性誘導も、原理的には同じですから、概念は有っておかしくないのですよ。
Posted by at 2020年01月01日 09:55
実は予想したんじゃなくて、宝大陸に誘導方式がばっちり記載されてたんだよ〜ん。
だったりして
Posted by at 2020年01月01日 13:47
慣性誘導は思いつくのは簡単だろう
問題なのは終末誘導でレーダーや熱源探知に切り替わると予想してるところ
愚弟は半導体に関しては概念すら無いくらい技術が遅れていて、機械式計算機がせいぜいなので、こういうアイデアが出るのは異常。
ありえない
Posted by at 2020年01月01日 17:21
異世界現在の日本が使用する兵器の説明の為に用意した演出かもね。
Posted by at 2020年01月01日 17:43
誘導弾を保有していないから実験でもその有効性を試したことも無い、書籍情報から泥縄で作られたグ帝のチャフやフレアが、旧式とはいえチャフフレアなどの電子防御へも配慮され設計開発されていて、試射行われており、設計通りの性能が発揮できることが判っている対艦ミサイルに対して有効だとはとても思えないんだけど・・・
Posted by at 2020年01月01日 18:34
Posted by at 2019年12月31日 22:30
残念ながら射程200km以上持つ誘導弾は日本は保有してません
現実のほうでようやく射程400km以上の誘導弾の導入が決定されたぐらいですから
Posted by at 2020年01月01日 19:00
A1とA2が突撃援護
A3が情報収集
どこぞのホライゾンの三河を思い出した
Posted by at 2020年01月01日 19:07
立った!!!フラグがたった!!!

グ:「熱源探知と電波撹乱さえすれば!!」
日本:「いい着眼点だ、感動的だな!!だが無意味だ!!」

理由
熱源探知:AAMみたいな対飛行機だと高熱源は有効なんだけど
船舶の場合高温部って煙突部分だから使えないんだよなぁ・・・
チャフ:まぁ、有効かもしれんけど…自分の艦隊包むようにチャフ撃ったら自分の電探が使えなくなるな
そもそもチャフって遮断できる周波帯に合わせてアルミ箔のサイズ変えにゃあかんからわからずに使っても…
しかも今回最終誘導は上空の偵察機からの誘導だからどうにもならんねぇ…
Posted by at 2020年01月02日 14:42
自衛隊との戦いに備えてチャフとフレアという方向性は間違ってない
技術水準が違いすぎることに全く気付いてないけど

誘導兵器に着目したのは良いが、ミサイルのみで魚雷に対しては全く無策

技術者の発想はかなり偏ってる。

まあ、未だ真空管使ってる時代だから無理もないか。
日本に対抗するための演算装置を作っても、その真空管を運ぶのにグレードアトラスター級が何隻必要になる事か…

トランジスター開発の可能性はあるのだろうか?
Posted by at 2020年01月03日 10:40
グ帝先遣隊終了のお知らせw
第一陣のF2も補給して待機してるだろうし。
五十年くらい前の誘導弾対策が効果あるとはねぇw
Posted by at 2020年01月04日 13:32
まあ、慣性誘導装置ったって、精度がガバい初期の機械式と、現代のサニャック効果を利用するレーザ系じゃ精度は天と地の差だわね。

>トランジスター開発の可能性はあるのだろうか?
現実だと開発はWWIIのギリ後だが、この世界のグ帝はどうなんだろうね?
といっても初期は点接触型で信頼性がロクでもない代物だったらしいけど。
(ちょっとしたショックや温度変化により接触点が変わり故障するらしい)
Posted by at 2020年01月06日 12:15
>といっても初期は点接触型で信頼性がロクでもない代物だったらしいけど。
しかし、信頼性に偏るのもどうかと…
自衛隊が世界に恥を晒したベレンコ中尉亡命事件、函館に着陸したMig-25の電装品には真空管が使用されており、当時の西側の技術者を驚愕させたとか。
Posted by at 2020年01月07日 00:15
レーダー周波数変更に即対応された技術力ギャップにゾッとしないのかな?
Posted by at 2020年01月07日 05:06
残念だな〜'70年代ですら電波戦の概念は有ってECMだけではなくECCMってありましたし。
Posted by at 2020年01月14日 23:21
凄いのは誘導兵器の存在が濃厚になった会議からの短期間で手探り状態からレーダー及び熱源探知を割り出して対策を考えだし対処兵器を作り出し実用化させ全艦艇に配備できたグ帝の国力と技術力と人的資源と決断力。

この異常な発達力がラスボス戦での強力な手助けになるって布石かな。
Posted by at 2020年01月21日 15:35
赤外線誘導(感知できるのは方向と強さだけ)と赤外線画像誘導(要は画像誘導を赤外領域も判る撮像デバイスとかでやる)じゃまったく違うものなんだけれど、グ帝だと前者程度しか念頭にないみたいだなあ。
Posted by at 2020年01月23日 20:23
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