2020年01月30日

第98話 日・グ大海戦2 P2

 作戦会議においては、第1艦隊全滅の報は伏され、一部の航空隊員と発光信号を見ていた者のみが知っており、その隊員にたいしても守秘義務が課せられる。
 正確な情報は末端まで伝わらず、戦場は悲劇へ傾くのだった。

「ん??」

 クラ・ダークヤミーは、飛行機に微かな異常を感じる。

「エンジン音がおかしくないか?」

 ボンッ!!!

「!!!」

 機体が激しく揺れ、エンジンから激しい煙が上がる。
 機体後方へはエンジンの出した煙が尾を引いた。
 エンジン音は激しくなり、出力が低下する。

「こ……故障!?冗談では無いぞ、こんな海域で!!!」

 戦闘海域、しかも暗闇に包まれる前の海上で不時着すれば、命に関わるかもしれない。
 ヤミーの気持ちとは裏腹に、小隊から遅れ始める。
 出力が低下し、高度の維持すら難しくなってきた。
 高度が低下する。

『S5D1、エンジンから火が出ているぞ、直ちに帰投せよ』

 自分の呼称名に対し、攻撃隊長機から指示が出る。
 隣接戦には自信がある。帝国のために戦い、勝利を治めたかったが、このまま行ってもお荷物となるだろう。
 悔しいが、命令に従わざるを得ない。

「くそっ!!あいつからまた嫌味を言われるのか」

 撃墜数を競っているライバル。何かにつけて自分に絡んでくる奴の顔が浮かぶ。
 が、故障ではどうしようもない。

「了解」

 編隊を見上げる。
 相当に高度差が出来てしまったようだ。 
 クラ・ダークヤミーの操るアンタレス型艦上戦闘機は、度重なる激戦でエンジンが疲弊していたのだった。

「これより、帰投す……え?」

 編隊を見上げながら返信しようとした瞬間、最前にいた友軍機が爆散した。
 驚く間もなく、連続して12機の友軍機が爆散する。
 白い衝撃波が爆心地点から放射状に広がり、すぐに煙りと炎に包まれる。

『なっ……なんだっ!!今のは何処から攻撃を受けたっっ!!』

 どの機が発したのか解らない無線が、叫び声を拾う。
 さらに続けて12機が後を追う。
 編隊は乱れ始めるも、さらに数秒して編隊に悲劇が襲いかかる。
 連続して着弾する敵の攻撃は、考える暇すら与えずに無慈悲に……機械的に友軍機を壊す。
 ほんの20秒ほどの間に迎撃機の半数以上が炎を纏った鉄くずとなって空から降る。

 第1撃で隊長機も撃墜されたらしく、無線機はパニックに陥った物達によって混信し、何を言っているのか解らない。

「今の攻撃は何だっ!!見えなかったぞ!!!敵機は何処にいる??」
 
 猛烈とも言える敵の攻撃に晒されながら、機体が故障しているのがもどかしい。
 クラ・ダークヤミーは空を見渡すが、敵機の姿が目視出来なかった。
 
「目視できないほどの距離から攻撃してきたというのかっ!!」

 敵はとてつもない兵器を持っている。
 視認出来ない距離から攻撃されたら、いくらアンタレス型艦上戦闘機が優秀な機動力をもっていたとしても、どうしようもない。

「いったいどうやって……あ……あれはっ!!!」

 前方の空に、微かに光が見える。
 点のように見えた航空機は一瞬で距離を詰め、翼端から光の尾を引く何かを発射した。 光弾は、まるでそれ自身が意思を持っているかのように、旋回中の友軍機に向かって向きを変え、突き刺さって爆発する。
 たったの1撃が当たっただけで、対人、対燃料用の防弾版の仕込まれた航空機を爆散させる。 

「なんて威力だ!!」

 とても対空用とは思えない。
 鏃のような形をした敵機の後方からは、2本の炎が出現していた。
 圧倒的……見たことも無い速度で「それ」は上昇する。
 仲間達も追いつこうと旋回して上昇しようとしていたが、機体性能そのものの次元が異なり、全く追いつけていなかった。
 あっという間に空に消えた。
 敵は旋回してきたのだろう。すぐに姿を現し、光弾を発射、どんどんと友軍機が炎の塊となる。
 バラバラに逃げる機を刈るかのように、無慈悲な攻撃は続いた。

『なんだ??あいつはっ!!!』

『速すぎる!!全く追いつけない!!』

『攻撃が追尾してくる!!避けられ……ガガガガ』

 速さが違いすぎる。

「あ……あんなの……あんなのどうやって勝てというんだ!!」

 クラ・ダークヤミーはかつて無い恐怖を覚える。
 栄えあるグラ・バルカス帝国海軍航空隊……百戦錬磨、常勝無敗が当たり前だった。
 前世界、ユグドにおいても、今世界においても引けをとることなどあり得なかった。
 
 共に訓練学校で死ぬほどの思いをして勉強し、体を鍛え、操縦訓練を行った同僚達……。 出撃前に、話していた先輩操縦士は
「昨日娘が生まれたようだ。帰ったらだっこするのが楽しみだ」
 と言っていた。
 ベテラン上司は
「今回の日本征伐が終わったら、退職して妻とのんびり過ごしたい
と……。

 すべての思いを踏みにじるかのように……今までのお前たちの積み上げてきた強さは無意味であると言わんばかりに訪れる機械的な死。

 ムー国の複葉機と帝国の戦闘機以上の差がそこにはあった。
 練度の問題ではない。
 圧倒的な……埋めることの出来ない技術力の差である。

「し……死んでたまるかっ!!」

 全身を恐怖が駆け巡る。

 彼は艦隊方向に機首を向けた。
 青い海に一筋の煙が尾を引く。

 グラ・バルカス帝国 第2艦隊所属 海軍航空隊迎撃機92機は、艦隊東方約100kmの海域で、日本国航空自衛隊F−15J戦闘機12機と戦闘、故障した1機を除き、全滅した。
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:36| Comment(18) | 小説
この記事へのコメント
現在は航空機用のの無線の妨害はされていないということですね
Posted by at 2020年01月30日 21:00
>>対燃料用の防弾版

→ 対燃料タンク用の防弾板
Posted by at 2020年01月30日 21:05
第1艦隊全滅の報は伏され、
→第2艦隊全滅の報は伏され、
Posted by at 2020年01月30日 21:31
ベテラン上司は
「今回の日本征伐が終わったら、退職して妻とのんびり過ごしたい
と……。
→ベテラン上司は
「今回の日本征伐が終わったら、退職して妻とのんびり過ごしたい」
と……。

鍵カッコの閉じ忘れです。
Posted by at 2020年01月30日 21:48
軍人ですので、退職ではなく除隊や退官等が適当な表現かと思います。
Posted by at 2020年01月30日 21:58
F15って、12:92を対処できるほどミサイル積めたっけ?
ミサイルキャリア化されていない現状ではステーション8つだと思うので、96発ミサイル撃って機械的故障率が5%以下ってのは考え難いと思う。
また、護衛中に全部ミサイル撃っちゃうのもちょっと。
実際には半分ミサイル撃ったら、4機か8機を直衛に残して残りはバルカンで接敵を阻害するに留めるんじゃないかな?
可能な限り余裕を持って対応すると思うのでちょっと違和感を感じました
Posted by at 2020年01月30日 22:18
燃料タンクを鋼板で守る航空機もあったけど、零戦相当ならパイロットは防弾ガラスと背中の鋼板で燃料タンクは防漏タンクだと思う

燃料タンクに穴が空いて空気が入ると焼夷弾で火災になるから、ガソリンを吸収して膨張するゴムで穴をふさい空気が入る量を減らして燃えにくくするのが基本構造

あと出火する熱を検知して自動で炭酸ガスを出して火を消す自動消火装置

貫通を完全に防ぐ防弾燃料タンクは重量的に難易度が高い
Posted by at 2020年01月30日 23:12
そんなフラグ建てるからwww
Posted by at 2020年01月31日 07:20
現代戦で有視界戦闘なんてまっぴらだぁ〜〜〜
Posted by at 2020年01月31日 09:00
とりあえず、
過去のブリーフィングの話が唐突に始まったのでかつての戦いとか一文入れて。

物たちじゃなくて者たちじゃないかな。
Posted by at 2020年01月31日 10:18
この方、この後どうするんだろう…。
戻った所で艦隊ご臨終・エンジン不具合・夜間かつ海上と不時着ワンチャンすら怪しい。
撃墜されといた方がまだマシだったんじゃね?
Posted by at 2020年01月31日 12:32
航空機用の無線が妨害されていないのなら、偵察機との交信は発光信号じゃなくて良かったのでは?
実は既に艦隊直上に電子戦機がいて、艦隊から離れたら交信可能なのかな?
Posted by at 2020年01月31日 18:28
グ帝のパイロットには、定番フラグ建築死の称号をやろう
Posted by at 2020年02月02日 12:34
>>勝利を治めたかったが
→ 勝利を収めたかったが
Posted by at 2020年02月02日 12:59
レーダジャミングしているということは、当然現用の圧縮通信デジタル通信も妨害しています。アナログによる音声通信などのローテクが運用できる余地は有りません。
二次戦時の交戦記録を見ると、旋回による上昇は接敵の無い通常時の上昇方法であり、交戦時は一直線の上昇を行います。
また性能が零戦相当であれば発動機出力と機体構造の対荷重関係で本格的な全周防弾版は採用できません。操縦席背面の防弾版もせいぜい7.7mmを防ぐのが限界です。53型63型64型などはもう少しマシですが艦上機としての運用に問題がでてきます。
Posted by M6A1 at 2020年02月03日 03:19
この状況だから機首の方向を調整してから速度が低下する急角度で上昇するアンタレスしか想像できなかった

速度を維持できる角度で直進しながら上昇するか、速度が低下する急角度で上昇して失速前に機首を下げるかの2択しかないという先入観があったけど(こっちが零戦の得意技)、同じ位置で高度を変える旋回上昇とも読めてしまうな
Posted by at 2020年02月03日 14:27
クラ・ダークヤミーなんて
相変わらずのネーミングですな
Posted by at 2020年02月05日 00:36
「第1撃で隊長機も撃墜されたらしく、無線機はパニックに陥った物達によって混信し」

物達→者達
Posted by at 2020年02月07日 03:12
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