2020年02月11日

5巻特典ファルタス提督 P1

『日本国召喚 五 新世界大戦』メロンブックス特典
タイトル『ファルタス提督』

■ 第二文明圏 マギカライヒ共同体 港町ミル 日系病院

 日本国の医療はこの世界でも高い評価を得ており、セイカーロという日系の大病院は、日本と国交を正式に樹立していないにもかかわらず、マギカライヒ学院連合(事実上の政府)からの直接の依頼で、首都エーベストに近い港町ミルに設置されている。
 今、この病院は戦場の様相を呈していた。
 次々と運び込まれる負傷した兵士たち。ある者は呻き声を漏らし、重度の負傷兵に対しては現地の看護師が回復魔法をかけ続け、先進的な手術室に移送される。
 彼らは世界連合艦隊参加国の兵たちで、バルチスタ海域にほど近いこの港町ミルが、ニグラート連合で収容しきれなかった負傷者たちを受け入れているのだ。
 そんな一室で、1人の男が目を覚ました。

「うぅ……ぅぅぅ……」

 白く、無機質な天井が視界を覆う。

「お……俺は……助かった、のか……?」

 全身に痛みが走り、思うように動かせない。
 鍛え上げられた肉体を持つ中年の男ファルタスは、何があったのかを思い出す。
 中央世界の文明圏国家として、艦隊を率いて国の威信を背負い、世界連合艦隊に参加した。
 戦闘状態に突入した直後、迫り来る急降下爆撃機を魔法で迎え撃とうとした瞬間、敵から放たれた光弾が船を貫いた。
 魔法を使う暇もなく、船の爆発とともに海へ投げ出されたのだった。

「あれほど……修行に打ち込み、鍛錬したのに……まったく……実戦で、役に立つことはなかった……」

 国の代表として、自分は戦場に挑んだ。
 敵と戦うまでは、圧倒的な自信があった。

「何が大魔導士ファルタスだ……!! 何が英雄……ファルタス提督だ……!!」

 部下がどうなったのかさえわからない。自分が今までやってきたことは、まったくの無駄であったとさえ思えてくる。あまりの悔しさに、涙が頬を伝った。

「あ! 気がつきましたか! 先生――!!」

 白衣に身を包んだ女性が、ファルタスの呟きを聞いて誰かを呼んだ。

「おお! 意識が戻りましたか、よかった……貴方は生死の境をさまよっていたのですよ」

 廊下から現れたのは、白衣を着た老人だった。

「助けていただいたのですね、感謝します。ありがとう」

「あと1週間もすれば、リハビリとして街の散策もできるようになります。もう少し辛抱してください」

 担当医はファルタスの状態をチェックすると、すぐ戻っていった。
 ファルタスは、どうやって自分はここへ運び込まれたのか、戦いの結果はどうなったのかを、周囲の負傷者に聞いた。
 戦いは痛み分けに終わり、自国の軍は壊滅、部下も多くが戦死していた。
 自分は無能だ、部下の命すら救えなかったとファルタスの気分は沈んでいく。

■ 1週後

 だいぶ回復し、身体も動くようになってきた頃、ファルタスは個室へと移された。
 ――コンコンコン………。
 個室の扉がノックされ、入室を促す。

「失礼します」

 軍服に身を包んだ者たちが3人、入ってきた。

「ファルタス・ラ・バーン提督ですね? 私はマギカライヒ学院連合首都防衛部陸上隊のルイジルと申します」

「中央法王国海軍のファルタスです。何かご用件でしょうか?」

「本日は、お知恵を拝借したく参りました。提督は大魔導士でもあられるとお聞きしています。魔法帝国の魔法も研究しておられたとか」

「それはまぁ……そうですが」

 ファルタスは古の魔法帝国、光翼人が個人で使用できる魔法の研究者でもある。
 魔法帝国の魔導機関もすさまじい性能だが、個人魔法も現代魔法とは隔絶したものであった。
 ものによっては国家機密にあたるため、話すことはできない。

「実は……我が国の首都北方100qに、古の魔法帝国の遺跡の1つがあります」

「ほう?」

 魔法帝国の遺跡は、各国が国家機密として取り扱っている場合がほとんどである。
 そんな国家機密の他国の軍人に話すなど、通常では考えられない。

「……先日、その遺跡の調査中に研究員があるボタンを押したところ、棺が開かれ、化け物が出現したのです」

 ルイジルの口調が重くなる。

「その化け物は我々が保有する文献には記述がなく、すさまじいまでの魔力を持ち、調査隊の隊員30人中19人が殺害されました」

「な……なんと!」

「それだけではありません。化け物討伐のために陸上隊20人を派遣したのですが、これも全滅してしまったのです!」

「軍人がやられてしまったのですか」

「ええ。しかも現在、化け物は大型ゴーレムを20体作成し、首都に向けて侵攻を開始しました。マギカライヒ共同体学院連合は、同案件を国家の非常事態と捉え、現在陸上隊主力の本格派遣を決定しています。しかし、我が国も機械文明に重きを置いた国、魔法の知識が乏しい者も多く、古の魔法帝国に精通する者が少ない。そこで、魔法に詳しいファルタス提督がセイカーロ病院に入院されていることを聞き、お話を伺いに参りました」

「回答できる範囲でお話ししましょう。化け物の特徴を教えていただけますか?」

「背丈は人間の成人男性ほどの大きさです。全身が……ぶつぶつした皮膚に覆われ、強力な魔力を帯びています。魔法を使用する際は、背中から光の翼が生えたかのごとく輝きます」

「ま……まさか、光翼人そのものではないでしょうね?」

「いえ、光翼人は目鼻口の顔立ちが整った、肌も人間に近い色白であったと文献に残っていますので……今回の化け物は肌が青だったり緑だったり、部分的にまだらです。目もどす黒く、魔物に分類できると思います。口から強力な魔力弾を放ち、その威力はワイーバーンロードの導力火炎弾を上回ります。さらに、魔力障壁も展開できるようで、小銃弾が弾き返されたとの報告も受けています」

 ファルタスは特徴を黙って聞いていたが、ある可能性に至る。

「まさか……研究中だったとされる、量産型ノスグーラでは?」

「ノス……? それは?」

 量産型ノスグーラ。古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国は生物学において、新種の生物を創造できる領域まで研究が進んでいた。
 竜魔大戦で多くの戦死者を出した帝国は、自分たちに変わる戦闘生物を研究していたとされる。
 その試作型の一種が、おとぎ話に語られる魔王ノスグーラであった。
 試作型戦闘生物たったの1体で、過去文明水準が低かった各種族は絶滅寸前まで追い込まれたのだ。
 古の勇者たちによって封印された魔王ノスグーラが先日復活し、トーパ王国の総力と科学文明国家日本国により駆逐されたという話は記憶に新しい。
 ただ中央法王国の文献では、ノスグーラを製造する上で使用する魔力量が尋常ではなく、あまりにもコストパフォーマンスが悪かったため、型式の異なる少数が製造されたのみで量産には至らなかったと記述されていた。
 余りある魔力量、この惑星に存在する魔物を操る念動力、そして高い忠誠心、そして永遠の寿命を与えたが故に、さすがの光翼人も再考せざるを得なかったようだ。

 これを反省した魔法帝国は、魔力量を抑え、念動力を削り、適度な戦闘能力と知能を与え、魔導兵器を自ら操れる程度の廉価版≠設計することとなる。結果、光翼人を模した形が最適と考え、魔力を放出する際は光の翼を展開する化け物が完成した。
 仮称・量産型ノスグーラは型式も様々であったとされるが、翼のような光を発する化け物であれば、おそらくそれであろう。
 ファルタスはこのように説明した上で、マギカライヒ共同体の使者に尋ねる。

「その化け物は、よもや魔導兵器は持っていませんでしたか? もしも古の兵器を持っていたら、非常に厄介ですぞ」

 古の魔法帝国兵が陸戦で使用した数々の兵器群は、どれも伝え聞くだけで現在の文明水準の戦況を覆しうるほどの兵器であり、仮に使用されていれば、敵が単体とはいえマギカライヒ共同体では荷が重いだろう。

「いえ、魔導兵器のようなものは今のところ確認されておりません。しかし、ただの魔物ではなく古の兵器の一種だったとは……これは……他国にも支援を仰ぐ必要もありますね」

「私もその化け物を一目見てみたいものです。何かお力になれるかもしれませんし」

「是非お願いしたい。提督の魔物の知識は、我々には非常に助かります」

 いくつかの確認事項を経て、マギカライヒの軍人たちは本部に戻っていった。

古の魔法帝国製兵器≠ェ絡む問題、そして万が一の場合は国家級の危機になると考えたマギカライヒ共同体は、過去に同様の兵器を駆逐した日本国に対し、自衛隊の派遣を要請。

 これを受けた日本は、有害鳥獣駆除の国際貢献の名の下、陸上自衛隊の派遣が決定した。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 21:11| Comment(9) | 小説
この記事へのコメント
イチコメ
Posted by at 2020年02月11日 21:13
早々に掲載していただき、ありがとうございます
本編更新をお待ちしていましたが、その飢えを満たさせていただきます
Posted by at 2020年02月11日 22:00
お疲れ様です!
ありがとう!ありがとう!ありがとう!
Posted by at 2020年02月11日 22:24
>>ノスグーラを製造する上で・・・型式の異なる少数が製造されたのみで量産には至らなかった・・・

ノスグーラの同類が世界にまだ存在する可能性があるということか
Posted by at 2020年02月12日 01:00
更新お疲れ様です。寒いのでお身体に気をつけてください。
Posted by at 2020年02月12日 09:42
第二文明圏のムー大陸って魔帝移転後に移転してきたんじゃなかったっけ?
元々あった島にムー大陸がくっついたのか、空中を飛んでいた魔帝の施設が落ちたのか?そんなトコだろうと思うけど。
Posted by at 2020年02月12日 18:48
国交がないのに何を根拠にして病院を開設してるんだろう
Posted by at 2020年02月12日 22:19
×自分たちに変わる戦闘生物
○自分たちに代わる戦闘生物
Posted by at 2020年02月13日 06:33
ありがたや ありがたや〜
Posted by at 2020年02月13日 20:49
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