2020年02月11日

5巻特典 ファルタス提督P4


■ バルーン平野

 少し小高い丘に移動したマギカライヒ共同体首都防衛部陸上隊は、正式な司令部を構築していた。
 眼下の広大な平野に、マギカライヒの陸軍兵たちが整然と整列する。
 陸上自衛隊の百田、そして中央法王国のファルタス提督も、同陣地から軍を眺めていた

「第2砲兵大隊、配置準備完了!」

「第4騎馬隊、準備完了!」

「第18銃歩兵大隊、配置完了!」

 伝令兵たちの報告を聞いて、陸上隊幹部が意気込む。

「砲兵だけで、木っ端微塵に塔を粉砕し、脅威を排除します!!」

 傍らに立つ隊長ルイジルは、不安を見せないよう鷹揚に頷く。

「そうだな……砲撃だけで片を付けたい。しかし、おそらくは砲撃で塔が崩壊する前に、敵が現れるだろう。小隊を滅ぼした敵だ、魔物の中には素早い個体もいる。砲撃だけでは難しいぞ」

「もちろんです。そのための、精鋭銃歩兵大隊です!!」

「フフフ……そういうことだ。銃歩兵大隊の連続隊列撃ちで、何処に逃げても当たるほどの銃弾を打ち込んでやれ!!」

 マギカライヒ共同体の銃は、自衛隊の自動小銃のように連射できない作りであるため、兵の数で装填と連射速度をカバーする。

「全部隊、配置完了!!」

 戦闘準備が整い、ルイジルの号令を待つのみとなる。

「……古の化け物め、マギカライヒをなめるなよ……! 攻撃開始ィ!!!」

「攻撃開始!!」

『攻撃開始!!』

 ルイジルの指令が復唱され、魔信によって全部隊に伝達された。
 陸上配置型科学融合魔導砲の火薬に点火され、空気がその体積を急激に膨張させる。
 魔石が塗り込まれた弾丸が押し出され、砲身内を加速する。
 砲身に光の模様が走り、砲口には六芒星の文様が浮かび上がって、弾丸の魔石と反応してさらに加速していく。
 轟音とともに、猛烈な火と煙が吹き上がり、整然と並んだ砲が、一斉に砲撃を開始した。

 ――ズガァァァァァンッッ!!!

 一帯に響き渡る轟音。森の鳥たちは恐怖のあまり、その場から泡を食って逃げ出す。
 着弾した砲弾がその威力を解放し、猛烈な爆発で塔に衝撃を与える。
 いくつもの着弾によって塔表層の岩の破片が飛び散り、煙に包まれた。
 砲撃音は鳴り止むことなく、無慈悲に攻撃が続けられた。
 ルイジルは頃合いを見計らって手を挙げる。

「打ち方止め!!」

 塔は土煙に包まれており、攻撃の効果測定のために一時砲撃が中断される。

「どうだ!!」

 岩は砕けて瓦礫となっていた。おそらくは跡形も残っていないだろう。
 しかし相手は魔帝の遺跡、何があってもおかしくない。
 ルイジルは塔のあった場所を睨みつける。
 徐々に煙が晴れていくと――
「ば……馬鹿な!!!」
 煙の中から、銀色に輝く円柱の塔が姿を現していた。
 表面を青白い光の膜が覆い、遠目には何処も傷ついていないようにさえ見える。

「し……信じられん!!」

 ルイジルや幹部らも驚愕の声を上げた。

『百田小隊長、あれは……』

 城島分隊長が百田に無線で話しかける。

「ああ。幕末レベルの陸戦用砲撃とはいえ、建物にダメージがほとんどない。建物ごと破壊するとなると、155o自走榴弾砲を使用するか、もしくは空自に爆撃を要請するしかないかもな」

『しかし、今回のうちらには、そのどちらも含まれていませんよ』

 日本国政府は魔王ノスグーラ級がもし現れたとしても対応できるよう、戦闘ヘリも投入する等、火力を調整していた。
 しかし意味不明な塔の出現により、より高火力が必要になる可能性が生じてしまった。

「そう……あれほど進言したのにな。想定外という言葉がまた使用されることになるのか」

『多少過剰くらいがちょうどいいんですけどね』

 戦場には静寂が訪れていた。
 マギカライヒ共同体の全火力を以てしても、塔は破壊できなかった。
 入口が何処にあるのかもわからない上、近づけば何が起るかわからないので、歩兵を突入させるわけにもいかない。

「――ッ!! 塔から魔物が多数出現!!!」

 幹部が鋭く報告する。

「あれは……ゴブリンか?」

 ルイジルも双眼鏡を塔へと向けており、その存在はすでに視認していた。
 鎧を着装し、剣と盾を持ったゴブリンが、塔から走り出てくる。

「ゴブリンですな、皮膚の色が通常のものとは少し違う気がしますが……ただ、魔力が多少強いように見えます」

 双眼鏡も覗いていないファルタスが、横から付け加えた。

 魔物たちは奇声を発しながら、マギカライヒ共同体の歩兵に向かって走る。
 その姿は、黒くうごめく絨毯が迫ってくるようにも見えた。

「あの数……大丈夫でしょうか?」

 ファルタスは懸念を示す。

「提督、中央世界の魔法文明とはひと味違う……科学文明の戦い方をご覧ください」

 ルイジルは幹部へ振り向き、話す。

「用意は出来ているな?」

「はっ!」

「攻撃を開始せよ!!」

「攻撃開始!!!」

 ルイジルの指令は正確に末端まで伝わり、横一列に並んだ歩兵が銃を構え、第1射を発射した。

 ――パパパッパパパパァァ――ンッッ!!!

 戦場に銃声がこだまする。
 最前線のゴブリンが黒い血をまき散らし、次々と倒れ込んだ。
 発砲した兵は直ちに後方へ下がり、次の列の者がすかさず前進して射撃する。
 7列にも達する銃歩兵隊は、最前列に達するまでに装填を終わらせ、連続して射撃を行う。
 途切れることのない銃弾の弾幕は、次々とゴブリンを打ち倒していった。


タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 21:14| Comment(2) | 小説
この記事へのコメント
イチコメ
Posted by at 2020年02月11日 21:16
練度の高そうな戦列歩兵だ
Posted by at 2020年02月11日 23:45
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