2020年02月11日

5巻特典 ファルタス提督P6


「なっ――せ……戦車砲並みの威力だぞ!!」

 今の光が当たっていたら、全員殉職していた。
 敵との距離はたったの1・3qしかない。
 魔王ノスグーラの経験を元に部隊を配置していたが、近代兵器に不用意に近づいてしまったようなもので、猛烈に反省した。

「城島!! 戦闘ヘリ要請!! 敵は近代兵器クラスというのも付け加えろ!!!」

『了解! ――間に合えばいいのですが!!』

 城島はすぐに無線を飛ばす。
 敵付近の砂煙は一瞬で晴れ、その姿を現していた。
 ファルタスは古文書で見た兵器そのものの出現に、戦慄する。

「あ……あれは……ラヴァーナル帝国の陸戦兵器!!!」

「そ……そんな!」

 ルイジルもうろたえ、急激に戦意を失う。
 先ほどの丘を吹き飛ばした攻撃は、ただの陸上兵器とは思えなかった。まさに魔法帝国の力の片鱗を目の当たりにしているのだ。
 一方のファルタスは、眼前の命を守るため、そして古の超兵器に自分の力が通用するのか試したくなり、逆境の中で戦意を燃やしていた。

「ルイジル殿!! 百田殿!! これより私が使える最大級の魔法を使う!! 少し時間がかかる、敵の注意を引いてくれ!!」

 百田もルイジルも、反射的に動き出す。
 2人の迅速的確な指示が兵に伝わり、マギカライヒ首都防衛部と陸上自衛隊の攻撃が集中する。

「――はぁぁぁぁぁっ……!! 〈怒れ、金色の神獣よ。唸れ、白色の星獣よ。世は蜃気楼、時は流水、天に映るは愚者の舞踏――〉」

 ファルタスが前に手を出し、花が開くかのように重ね合わせ、全魔力を手の先に収束させた。
 長い長い詠唱は続く。

 本陣を破壊するはずの光弾が弾かれた。
 これを弾く輩が下等種にいること自体が驚きだった。
 しかし直後、猛烈な攻撃に晒される。
 万全の状態であればどうということはなかったが、さすがに防御値が最大値の2割以下というのが、焦りを誘う。
 さらに魔導アーマー内に警戒音が響き渡る。

「何っ!? 攻撃型の魔力上昇!!? こ……魔力数たった300の下等種が、攻撃力1万2千だと!? 馬鹿なっ!!! どうなっている!! 人一人の出す攻撃力を遥かに超えている!!!」

 リョノスは止まない攻撃と差し迫る危機に、半ばパニック状態に陥る。

「危険だ!! すぐに排除せねば!!」

 彼は魔力の上昇源に向かって、魔光砲を発射した。

 中央法王国の大魔導師ファルタスの手の前でエルゴ領域が拡大し、虚数空間からの膨大なエネルギーが流入する。
 流入したエネルギーを外に漏らさぬよう、通常空間を高速で圧縮し続けた。
 手の前には小さな黒い点が発生し、僅かに漏れ出たエネルギーが黒い点の周りに電撃を走らせる。
 膨大に圧縮した空間の外側に、さらに空間の湾曲を発生させ、エネルギーに指向性を持たせる。

「はぁッ……はぁッ……! 〈汝に神罰がくだされん〉……!!」

 古の刻、強大な魔導でミリシエント大陸を征服しようとした一族がいた。
 一族はやがて世界の敵となり、組織的攻撃と一部の優秀な戦士によって解体され、失脚する。
 優秀な戦士数人に、族長が負けたのが原因だった。
 子孫は二度と倒されぬよう、最大にして最強、門外不出、一子相伝の魔法を編み出した。
 その魔法の発射準備が、異国の地で整う。

「食らえ……これが……ラ・バーン家に伝わる、最大にして最強の魔法……!!」

 手の前の黒い点は空間圧縮限界を超え、エネルギーが漏れ出し、光り輝き始める。

「そして、この……ファルタスの極大攻撃魔法――」

 付近の粒子を吸い込み、光の弾はさらに大きくなる。
 まばゆい閃光を放ちながら、光弾が振動を始める。
 付近の重力が影響を受け、周りに落ちていた小石が宙に舞い始めた。

「――〈イクシオンレーザー〉だッッ!!!」

 ファルタスを中心に帯状の光が放射し、猛烈なエネルギーが射出される。
 質量を持つエネルギーは周りの空気を押し出しながら、一瞬で走る。
 マッハ7以上の速度を持つエネルギー周りでは、先端から斜め後方に向かって衝撃波を発した。
 同衝撃波境界層では、空気が粘性発熱によって超高温に達する。

 空気中の分子は原子に分解され、さらに原子もその形を保っていられなくなり、電子が飛び出してプラズマ化、付近の空気は化学平衡流と言われる状態まで達した。
 プラズマを纏ったエネルギーは直線とその周囲に影響を及ぼしながら、古の魔法帝国の超兵器へ向かった。

 ――ズァァァァァァァァァァッッ!!!

 着弾点に、目も眩むほどの光と鼓膜を裂くような轟音、圧倒的なエネルギーが解放される。
 一瞬のあとに大きな爆発が生まれ、目標付近に膨大な土煙を発生させた。

 ――ゴォォォォォ……。

 轟音が山々で反射し、しばらく続いた。

「はぁっ……はぁっ……! どうだ……!!」

 ファルタスの魔力は、その一撃で空になった。

『す……すごい! これを人間が、ただ1人で作り出せるというのか!! まるで波○砲だ』

『い……いや、どちらかというとメド○ーアのような……』

 自衛隊員たちが、無線を使って勝手に感想を並べる。
 ルイジルに至っては、あまりの凄まじい威力に固まっていた。
 轟音は止み、煙が晴れる。
 ファルタスの直線上の大地がえぐれていた。その先に、煙を出す物体が1つ。

「や、やったか!」

 煙を上げて、停止しているようにも見えた。

「やったようですな」

「「「う……うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 兵たちが、凄まじい戦いの勝利に雄叫びを上げた。そのとき、

 ――ギギギギギ……。

 敵が動き、手を司令部に向けた。

「う……動いたぞ!!?」

「バカな……不死身か!!!」

「わしの……最大奥義を以てしても……倒せぬか……!!」

 ファルタスは絶望し、百田らもただ敵を凝視した。
 向けられる手にもはや抗する術はなく、万策が尽きている。
 絶望のあまり、ルイジルが上を向く。
 その視線の先で、光の矢が上空を通り過ぎた。

「え?」

 突如として現れた光の矢は、敵に向かう。
 敵も気づいて避けようとするが、誘導されたそれは致命傷を負った魔導アーマーの装甲をいとも容易く貫通し、突き刺さってその威力を解放した。

「なっ――」

 爆散し、破壊し尽される魔導アーマー。
 誰が見ても確実な破壊が起きる。
 陸上自衛隊戦闘ヘリ『AH−1S』から放たれた空対地誘導弾、地獄の炎、ヘルファイアの名を冠した兵器は、その名の通り敵にとって地獄の炎を発生させ、古の魔法帝国製汎用人型陸戦兵器を破壊した。

「ぐ……おぉ……ぉぉぉぉ……」

 リョノスは割れた装甲から何とか脱出し、地面を這っていた。
 片足は失われ、もはや虫の息だ。

「そんな……あの……あの魔力を感じぬ攻撃は……一体何なんだ……!」

 理解が追いつかない。

「おい! いたぞ!!!」

 彼が下等種と呼んでいた生物が迫る。

「この私が……こんなところで……!」

 古の魔法帝国の遺伝子操作生物リョノスは、マギカライヒ共同体に捕らえられた。
 彼は神聖ミリシアル帝国に送られ、国際社会の監視下に置かれることになる。
 さらに古の魔法帝国の情報を引き出すために、長く壮絶な生を強いられるのだった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 21:18| Comment(14) | 小説
この記事へのコメント
AH-1S「コブラ」対戦車ヘリコプターにヘルファイアは積めない。AH-1Sの対戦車ミサイルはヘルファイアレーザー誘導式対戦車ミサイルではなく、1世代前のTOW有線誘導式対戦車ミサイルです。
Posted by at 2020年02月11日 23:09
魔力は衰えたが効率良く使って大きな攻撃力を発揮する技術が開発された感じかな

魔貫光殺砲みたいだw

イクシオンレーザー見たかったので嬉しいです
Posted by at 2020年02月11日 23:56
>>彼は魔力の上昇源に向かって、魔光砲を発射した。

この魔光砲第二弾の発射結果はどうなったのでしょうか
ファルタスは詠唱中なので防御できないはずですが
Posted by at 2020年02月12日 00:44
>>、門外不出、一子相伝の魔法を編み出した。

魔法の存在自体は隠していなかったようですね
書籍第5巻の描写では、古代禁呪火炎閃光魔法として国内の魔導師たちに知られていました
Posted by at 2020年02月12日 00:49
Posted by at 2020年02月11日 23:09
その指摘、一年遅かったな
Posted by at 2020年02月12日 06:16
鬼に金棒: ファルタス提督がMGZ型魔導アーマーを身に付けてイクシオンレーザーを放つこと
Posted by at 2020年02月12日 06:58
こりゃ日本でも戦術高エネルギーレーザーを大々的に開発するフラグになるかな?若しくは電力問題とブラッグピークを克服した荷電粒子砲とか
Posted by at 2020年02月14日 18:47
これまでに登場した人類の中では単純な攻撃力なら最強かな?
Posted by at 2020年02月15日 16:21
AH-1Wスーパーコブラにアップデートしたことにすれば、ヘルファイアも可能かも
Posted by at 2020年02月16日 20:08
転移後の年数を考えれば使える類似弾薬の絞り込みや量産される装備に合わせた改修がある程度進んでいるんじゃないかな
と、流せないなら強引な理由付けをすればいいんじゃね?
Posted by at 2020年02月17日 10:37
魔法も侮れないシロモノであるとわからせる描写、イエスだね!
Posted by at 2020年02月17日 17:02
ラヴァナール帝国の魔導兵器はもっと強力なんでしょ
バイオテクノロジーなんか地球を凌駕してるし
日本もこのままだと勝ち目ないんじゃね
Posted by at 2020年02月23日 13:29
陸自の80号機以降は近代改修型のAH-1Fじゃなかったっけ?
そっちの方ならヘルファイア運用能力あるよ
もしかすると削ってる可能性はあるけど
Posted by at 2020年02月23日 13:47
実弾兵器は地球側もかなりのもんだけど
エネルギー兵器、生体工学、ロボット兵器なんかはラヴァナールの圧勝というか地球側は同じ土俵にも上がれてない感じ
つーかラヴァナールは大陸ごと時空転移出来るもんな
文明レベルが地球と別次元
こんなチートにどうやって勝つんだよ
Posted by at 2020年02月23日 14:07
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