2020年05月18日

第102話 日本海海戦2P3

◆◆◆

 リーム王国東側 高空

「間もなくリーム王国領空を出ます」

 作戦部長アーリトリガーも、現場指揮のために中心部の爆撃機に同乗していた。

 超重爆撃機グティーマウンは成層圏を行く。
 編隊を組む約200機もの爆撃機、圧倒的な威圧感を持ち、決して負けるわけが無いとう確信すら与える。

「陸軍航空隊は?」 

「我らの前方約100kmの超低空を飛行しているはずです。
 ただ、進行速度が我らの方が速いため、日本本土に達する前に追いついてしまうかもしれません」

「敵が我らをレーダーで察知して飛行してきたら、実は下にも大編隊がいる。
 我らは超高空、超高速で進むため追いつけず、下の陸軍航空隊と空戦になるのか」

「超低空で行っても我らが同時出撃するなら敵は気づく。ただ、その数は欺罔することができますからね」

「囮……か。陸軍航空隊には申し訳ないな」

「投射力、そして進行速度。すべてが我らが上です。軍本部の判断も仕方ないかと。
 それに、囮と言っても300機を超える大編隊。しかもそれでも練度の高い陸軍航空隊です。
 囮だけで日本軍航空隊など全滅させることが出来るでしょう。
 日本国如きに遅れをとるはずが無い。
 別の国伝いの噂では、日本国の主力戦闘機は200機しかいないらしいですよ。
 全部出てくる訳は無いのですが、全部出てきたとしても我らが数は遙かに上です」

「なら良いのだがな」

 会話中、無線機を操作していた隊員が焦り出す。

「ん??あれ??」

「どうした?」

「無線封鎖しているはずの陸軍航空隊から無線が発せられているのですが、雑音が酷くて……」

 アーリトリガーは背筋が寒くなるのを感じた。

「スピーカーにつなげ!!」

 迅速に無線機が外部スピーカーに繋がれる。

『ガガガ……第3航空隊全滅!!なんて……だっ!!』

『……すぎるっ!!振り切れな……ガガがッ』

 沈黙……成層圏という超高空で、重い沈黙が流れ続ける。

「いったい何が起こっている」

 当然答えられる者はいない。

「全部隊に伝達、陸軍航空隊は敵の攻撃を受けている可能性大。
 各機監視を密にせよ!!」

 銃座に座る隊員達は空を睨み付ける。
 こんな高空まで来るはずは無いが、友軍が攻撃され、何らかの大きな被害を受けている可能性。
 緊張が高まる。

「最大限の警戒を行え!!決して油断す……」

 ガァァァァン!!!!

「じゅ……十五番機被弾!!!」

 前方を飛行していた15番機が炎に包まれる。
 炎は弾薬に引火し、15番機は空中で爆散した。

「今の攻撃は何ダッ!!!」

 アーリトリガーは叫ぶが、答える者はいない。

 ガァァン……ドォンドドドドドッ!!!

「ああっ!!」

 不可視の攻撃は連続して超重爆撃連隊を襲う。
 空の要塞、機銃に対して圧倒的防御力を誇るはずのグティーマウンは次々を炎に包まれ、雲の海に落ちる。

「先行第3小隊消滅!!」

『何処から攻撃を受けている!!』

『何か飛んできたぞっ!!』

『我、操作不能、我、操作不能!!!!』

 空中に大きな爆発の花が咲く。
 空中で爆散する機体、翼が折れ、回転しながら墜落する機体、炎を纏ったまま流星のごとく落ちゆく機体。
 
 空に炎の……絶望の雨が降る。

 無線は混信し、カオスと化す。
 何を言っているのかも解らず、目視以外に情報を得る方法は無くなった。

 嵐のような何らかの攻撃が止んだ後、超重爆撃連隊友軍機で生き残ったのは83機のみ。
 残りの約120機は一瞬で……たった1度の攻撃で撃墜されたのだった。

「そんな……そんなバカなっ!!
 あり得ない。あり得ない事ダッ!!
 陸軍航空隊はどうなっている?」

「解りません!!無線反応なし」
 
 一瞬の攻撃で半数以上が失われた。
 空気の薄いこの成層圏という領域で、敵の攻撃は弱まる気配が無い。
 しかも、こちらは相手を目視すらしていない。
 圧倒的な軍事的格差を前に、アーリトリガーは名古屋爆撃の失敗を確信する。

「全軍に通達、撤退だ!!リーム王国基地へ引き返すぞ」

「しかし、それでは作戦失敗になってしまいます!!
 帝国の虎の子たる超重爆撃連隊が出て失敗などと……」

「馬鹿野郎!!半数だ。まだリーム王国を離陸して間もないというのに、半数が失われたんだっ!!
 作戦は失敗だ。
 戦力比は明らか。
 ケイン神王国と同等程度だと??
 そんな甘いものではない。敵の強さはそんな次元は超越している。
 このまま進むと報告を入れる間もなく全滅するぞ!!!
 陸軍航空隊が何千機いようとこれでは勝てぬっ!!」

 凄まじい形相のアーリトリガーに、部下は怯む。

「はっ、しかし、無線機の調子が思わしくありません。
 混信もしているし、大きな雑音が入り、通じなくなる事も
 きちんと伝わるかどうか……。」

「発行信号でも良い、とにかく何とかして伝え、すぐに引き返すぞ。
 早くしろ!!死にたくないならな」

 撤退は全軍に伝わる。
 アーリトリガーの乗る機も、旋回するためにバンクする。

 安堵の空気が機内に広がった。

「下方から敵機ぃ!!!!!」

 機銃員が叫ぶと同時に機関砲を下に向けて発射する。
 編隊を組む友軍もあわせて機銃掃射を開始した。

 雲の海に向かい、曳光弾を交えた機関砲が連続して放たれる。
 
『何かが向かってくるっ!!』

「112番機被弾!!」

「見えたっ!!見えたぞっ!!!ロケット弾が、112番機に向かって……明らかに追尾していましたっ!!」

 部下の言葉にアーリトリガーは言葉を失う。

「ゆ……ゆ……誘導弾だとぉ?!ま……まさか、そんな……あの情報は本当だったのかっ!!!」

 グラ・バルカス帝国は戦争に慣れきっている。
 戦場伝説など腐るほど生まれたが、そのどれもが誇張された情報だった。
 誘導弾の可能性も軍本部で真面目に議論されていたが、同作戦を連合艦隊司令長官カイザルが、超重爆撃連隊出撃要請を行った時点で、効果があると踏んだはず。
 つまり、最前線の大将軍が作戦成功すると考えたはずであり、誘導弾などと大それた
兵器は存在しないのでは無いかと彼は考えていた。

 十数機もの敵戦闘機が上空に駆け上がる。
 鏃のような機体、後ろから2本の炎を出し、我が方の戦闘機とは次元の違う速さ、上昇力を見せる。
 自分たちは成層圏の超高度を飛んでいるにもかかわらず、それを超えて遙か高空へ消える。 
 すれ違いざまに数機の友軍機が炎に包まれた。

 敵が上昇した後、恐怖を感じるほどの雷鳴の轟きが機内に響き渡った。

「なんて速さだ!!なんて攻撃力なのだっ!!!」

「敵、プロペラがありません!!!」

「あんなの捉えられません!!」

 機銃員も弱音を吐く。
 どうしようも無い戦力比、先ほどまでの必勝ムードは完全に消える。
 的当てゲームのように、動かぬ目標でも撃つかのように、完全無欠のはずの友軍機が落ちる。
 混乱の極み。

「戻ってきたっ!!!」

 敵戦闘機が旋回し、こちらに機首を向ける。
 機銃の射程距離の遙か先から、先ほどの誘導弾を発射した。

「ロケット向かってきま……」

 体を押されたような感覚、アーリトリガーは全身に熱さを感じる。
 バラバラに破壊された機体が見えた気がした。

 グラ・バルカス帝国超重爆撃連隊作戦部長アーリ・トリガーは、光に包まれこの世を去る。
 
 航空自衛隊F-15J戦闘機及びF-2戦闘機 150機 は、日本海上空においてグラ・バルカス帝国陸軍航空隊及び超重爆撃連隊計548機と交戦し、そのすべてを撃墜した。
posted by くみちゃん at 19:01| Comment(46) | 日記
この記事へのコメント
>発行信号でも良い、とにかく何とかして伝え、すぐに引き返すぞ。

>発光信号でも良い、とにかく何とかして伝え、すぐに引き返すぞ。
Posted by at 2020年05月18日 19:13
アーリトリガーとアーリ・トリガーは同じ人?それとも別人?
ちなみに第101話 日本海海戦P1では
グティーマウン超重爆撃連隊作戦部長 アーリ・トリガー
になっていて役職も微妙に異なっている
Posted by at 2020年05月18日 19:51
>>「いったい何があっている」

→「いったい何がおこっている」 でしょうか
Posted by at 2020年05月18日 20:23
>>光に包まれこの夜を去る。

夜 → 世
Posted by at 2020年05月18日 20:24
成層圏が安全だと思い密集してないなら撤退を決めた時、速度や機動に制限がかかる爆弾は投棄すると思います。
Posted by 636 at 2020年05月18日 20:33
この自衛隊によるひゃっはー回が読みたかった!
更新ありがとうございます(涙)
Posted by at 2020年05月18日 20:37
この世界の領海って何海里なんだろう。
どこかにあったな?

Posted by at 2020年05月18日 20:50
やられ役の新型兵器はその凄さをさんざんアピールした後に派手に散ることこそが存在意義!
Posted by at 2020年05月18日 21:14
3話だけ日記カテゴリーになってる…
Posted by at 2020年05月18日 23:49
Posted by at 2020年05月18日 20:50
とりあえずグ帝には排他的経済水域の概念はないらしい
Posted by at 2020年05月19日 00:02
綺麗サッパリ成層圏のお掃除完了。いやー気持ちいい
早くグレードアトラスターが沈むところを読みたい
日本国はかの戦艦を沈める方法をよーーーく知ってるしな
Posted by at 2020年05月19日 00:08
Posted by at 2020年05月19日 00:02
排他的経済水域を規定する海洋法諸条約が、82年採択の94年発効だから、リアル世界でもそんなに昔の話じゃないんだなこれが
Posted by at 2020年05月19日 00:16
「それを超えて遙か空へ消える」→「それを超えて遙か高空へと消える」
Posted by at 2020年05月19日 00:35
Posted by at 2020年05月18日 20:50
具体的な数字はなく「列強と一部文明国は領海域を制定している」としか記載されてないな
Posted by at 2020年05月19日 01:16
「列強と一部文明国は領海域を制定している」の記載は4巻
Posted by at 2020年05月19日 01:17
>何があっている
博多弁?
Posted by at 2020年05月19日 01:32
陸軍航空隊って日本とリームへの往復の燃料足りるの?
どこかに説明あります?
Posted by at 2020年05月19日 03:13
>>決して負けるわけが無いとう確信すら持つ。
→ 決して負けるわけが無いという確信すら与える。
のほうがよいかと思います
Posted by at 2020年05月19日 04:50
>>「馬鹿野郎!!半分だ。まだリーム王国を離陸して間もないというのに、半数が失われたんだっ!!

半分 → 半分以上
半数 → 半数以上

もし予備機を40機くらい残しており全部で約240機という設定ならこのままでも良いかと
Posted by at 2020年05月19日 05:01
戦闘機150機繰り出したのか、空自も全力だ。
Posted by at 2020年05月19日 08:00
汚ねえ花火だ
Posted by at 2020年05月19日 09:05
「いったい何があっている」当然答えられる者はいない。

ふむふむなにかの伏線かなぁ⁇

ダッ
ダッ
ダッ
Posted by at 2020年05月19日 12:13
>半数

「6割」のほうが、正確では?
Posted by at 2020年05月19日 12:27
>あんなの捕らえられません!!

「捉える」かな?
「捕らえる」だと「つかまえる」という意味あいになるし。
Posted by at 2020年05月19日 13:09
まさに、

「こんにちは
 そして、
 さようなら」
Posted by at 2020年05月19日 18:39
F-15J及びF-2計150機で、それぞれ対空装備フルロードして、
1機につき短〜中距離AAMは8発積んでいけるから、
敵548機に1発1殺でいっても、それなりに余裕が残る数字よなぁ……
この一夜の戦闘で、エース何人生まれただろうか?
Posted by at 2020年05月19日 20:00
>しかもそれでも練度の高い陸軍航空隊です。
「それでも」は要らない気がします
Posted by at 2020年05月19日 21:16
いや、同世代の戦闘機を5機ならともかく
レシプロなんていくら落としてもエースにならんでしょ

Posted by at 2020年05月20日 00:34
回避能力を持たない敵にミサイル撃って、機銃すらロックオンしてボタン押すだけの自働制御だしな
Posted by at 2020年05月20日 04:35
昔のゲーセンのアフターバーナーの方が手ごたえがあったぜ!ぐらいの感じかな。
Posted by at 2020年05月20日 10:45
一機につき四発でもちょっと余るから全然余裕ですね。
Posted by at 2020年05月20日 14:17
名古屋をバーベキューにするどころか
自分達が木っ端微塵にされました
Posted by エンジ at 2020年05月20日 23:04
今まで自衛隊の戦果に懐疑的だった各国の反応がちゃんとしたものになれば良いなぁ。
ア皇編では旧日本軍の機体が活躍すると良いなぁ。
Posted by at 2020年05月20日 23:56
光に包まれこの夜を去る。→光に包まれこの世を去る
Posted by at 2020年05月21日 03:29
>エース云々
無人のドローンとか(生物の)ワイバーンは兎も角、
交戦状態にある敵性国家の軍用機を(基準数になる5機)撃墜したら、
(狭義的には)エースと呼ばれる資格だけはあるんじゃないかな?
戦時では非武装の偵察機や輸送機・連絡機なんかも、撃墜すればスコアとして計上されてたし
――まあ、防衛省が公式に認定したり叙勲や昇進の査定に含めるとか、
メディアに出して自衛隊への入隊希望者を増やす為の宣伝塔として
活用したり……とかに、考えてるか否かは別としてね
Posted by at 2020年05月21日 16:51
島戦争だと(機銃による?)敵機撃墜経験があればレデロキラーと言われてな
Posted by at 2020年05月21日 17:14
『我、操作不能、我、操作不能!!!!』

「なんちゅう脆い船じゃ」
脳内再生されました
Posted by at 2020年05月23日 01:14
Posted by at 2020年05月21日 03:29

発行信号?、この夜を去る、なんか詩的な表現。昼間だけど。
Posted by at 2020年05月23日 15:28
>>「我らの前方約100kmの超低空を飛行しているはずです。ただ、進行速度が我らの方が速いため、日本本土に達する前に追いついてしまうかもしれません」

夜間超低空飛行だとせいぜい400km/h
グティマウンの巡航速度は700km/h以上はあるはず
30分以内に追い越して引き離してしまうので、同時攻撃にならないような気が…
Posted by at 2020年05月26日 07:40
超高速()
Posted by at 2020年06月04日 13:17
Posted by at 2020年05月19日 05:01
目視の概算で言ったんでしょ
Posted by at 2020年06月04日 13:25
なせカテゴリは日記?
Posted by at 2020年07月07日 08:09
今更ですが、「いったい何があっている」→「いったい何が起こっている」の方が良いと思います。
Posted by at 2020年07月19日 16:23
アーリトリガー迅速な判断しているのに戦死って気の毒な。
Posted by at 2020年08月28日 18:21
Posted by at 2020年05月19日 03:13
各地に空港と給油施設作ってる
Posted by at 2020年10月31日 16:30
いやあ、何度読み返しても胸がすくねぇ
Posted by at 2020年12月13日 20:15
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