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中央世界 神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス とある酒場
この日の夕方、酔っ払い共はいつものように酒を飲み交わしていた。
ドワーフ風の男が豪快にビールを一気飲みした後、話し始める。
「プハァーーうめぇ。一仕事の後のこの酒、染み渡るぜ」
仕事後のキンキンに冷えた日本製ビールは格別だった。
「そういえば、グラ・バルカス帝国の大艦隊が日本へ向かってたんだっけ?あれ、どうなったんだろうな」
「ああ、知らねぇのかい?何でも先日大規模な戦闘が行われたようで、本日政府発表があるんだぜ」
「ああ、それで今日はこんなに人が多いのか」
カルトアルパスは世界交易の拠点であり、情報が集まる。
画像受信式魔導通信モニター(いわゆるTV)があるこの酒場も、情報を早く得たい商人や、各国の関係者、そして地元労働者で繁盛していた。
「ほらほら、来たぞ!!」
美人のエルフキャスターのお辞儀からニュース番組が始まる。
「こんにちは、本日は神聖ミリシアル帝国広報部が先ほど重大な情報を文章にて発出いたしました。
本日はこのニュースについてお伝えしていきます」
酔っ払い共はモニターに注目した。
「先日未明、グラ・バルカス帝国主力連合艦隊と、我が国の空中戦艦パル・キマイラ及び日本国海上自衛隊が戦闘し、グラ・バルカス帝国艦隊の旗艦を含む数百隻を撃破、もしくは撃沈したため、敵艦隊は撤退を開始。
我が国及び日本国の作戦部隊に被害はありませんでした。
繰り返しお伝えします」
「被害無し?被害無しだって??おいおいおい、本当かよ」
「世界連合艦隊でも被害甚大だったのにな」
「あのグラ・バルカス帝国主力艦隊をやっつけたのか???」
酔っ払い共はざわつく。
ニュースは続く。
「我が国の空中戦艦パル・キマイラ及び日本国海上自衛隊は1000隻にも上るグラ・バルカス帝国主力艦隊と交戦し、数百隻を撃沈、グラ・バルカス帝国艦隊は撤退いたしました。
現在撃沈した艦の具体的数値は情報を整理した後に発表されます。
広報部によると、これは空中戦艦の効果的運用及び日本国海上自衛隊との連携がうまく取れた結果であり、今後も各国と連携した運用を行いたいとの事です。
なお、軍事専門家によれば本海戦は圧勝であり、グラ・バルカス帝国製兵器の運用方法を我が国の軍隊が研究して対応した成果……」
淡々と政府発表について伝えるニュースキャスター。
政府は嘘は発表していなかった。
グラ・バルカス帝国艦隊は実質的に日本国の前に敗れたが、神聖ミリシアル帝国は、さも自分が撃退したかの如く自国の強さを誇張して発表し、抱き込んだ軍事専門家に発言させる。
「おぉぉぉぉ、やっぱり神聖ミリシアル帝国は世界一だな」
「違いねぇ」
「魔帝製兵器を持っている我が国に、非魔法国家が勝てる訳がないんだ」
敗戦続きだった彼らの、どんよりとした心に光が差す。
神聖ミリシアル帝国の民はこのニュースを心から喜び、そして他国のこのニュースに触れた物達は、グラ・バルカス帝国でさえも退ける神聖ミリシアル帝国の圧倒的力に畏怖を覚える。
日本を良く知る物達は、放送に情報操作が加えられたと見抜き、日本国の強さに震えるのだった。
タグ:日本国召喚
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情報操作を行ったのは何物なのか、それが気になりますね。皇帝や政府中枢である可能性は低そうだし。
バルチスタ沖海戦のときは、他国は存在を知らなかったようなので、国内外に機密保持されていたような感じでしたが。
現実世界の情勢を見るに
意外とバカにはできないことだと思う
日本「・・・全部俺のお陰って言うと色々とメンドイのでミ帝の成果を嵩増ししちゃおう」
メテオスの性格考えると皇帝や上層部に嘘教えるはずないし。
海自との連携云々は微妙だが嘘をついているとも言えない
だが、聞き手はミリシアルの方が活躍したような印象を受けることになる
物達→者達
こういう場合、専制権力は自陣営に方針転換を徹底させやすい
日本としても戦力を隠せるならその方がいいし、何も悪いことはない。
人で無し?(笑)
日本を良く知る者たちの間違いかとw
過去にもミ帝政府が情報操作していたはずなので、ミ帝国民は「敗戦続き」とは思っていなかったはず
「完勝できなかった」か「辛勝」くらいに思っていたのでは
他国民(酒場にいるミ帝人以外の者たち)が「敗戦続き」と感じていたのでしょうね
→カルトアルパスは世界交易の拠点であり、情報が集まる。
最後まで真実を知らずにいられると良いね