2021年08月21日

第117話列強国の意地2P2

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 中央第2艦隊 旗艦 オリオン級戦艦 コルネフォロス

 艦隊司令アケイルは残存艦隊を見渡し、歯ぎしりをしていた。
 普段は美しい海と艦隊の優美さにほれぼれとするところだが、先ほどまでの戦闘とこれから戦うであろう相手の事を考えると美しい海も、天国へ誘う魔の海のように見える。

 艦隊としては戦艦3、巡洋艦4、駆逐艦4を残しているとはいえ、空母は壊滅しているため、空母機動部隊としての戦力は損失したと言って差し支えない。
 さらに、駆逐艦1隻を沈められた艦を救助用に残してきたため、実質的戦力は10隻。
 対して敵は日本国と神聖ミリシアル帝国の連合艦隊33隻。
 今までの日本国軍の強さを考えると戦力比は明らかだった。
 死の行軍……。

「お……おのれ……」

 万全の体制ならば良いが、戦力を欠いた状態での行軍。
 特に日本国の誘導弾を撃たれたらあっさりと終わる現実に、アケイルは怒りと恐怖がこみ上げて来ていた。

「失礼します。敵から通信が入っております」

「通信……だと??」

 かつて敵空中要塞と戦った者達が、戦いの前に通信が来たと言っていた事がある。
 返信するとこちらの位置を晒してしまう可能性があったため、無視することにした。

 繰り返される敵からの無線は、やがてこちらの座標を特定し、そこを航行しているグラ・バルカス帝国海軍10隻とまでの注釈まで着く。
 こちらの位置が完全に特定されており、話しを聞くことにする。

「……通信をつなげ」

「はっ!!」

 戦場における無線のやりとり。つくづく異世界だと考えながら、艦隊司令アケイルは通信を開始する。

「私はグラ・バルカス帝国中央第2艦隊 艦隊司令アケイルである。
 何の用だ?」

 アケイルはぶっきらぼうに話す。

『やっと繋がったか。
 私は神聖ミリシアル帝国 混成魔導艦隊デス・バール 艦隊司令タキオンである。
 航行中のグラ・バルカス帝国艦隊に告げる。
 我とお前たちの戦力比は明らかである。艦隊ごと降伏せよ。
 降伏せぬ場合、逃げる事すら許さずにお前たちを全滅させる。
 一人残らずな……これは神聖ミリシアル帝国皇帝陛下から、お前たちへの最後の御慈悲だ』

 戦った後の降伏は許さないという強い意思表示だった。

「貴様らの艦隊に、我が栄えあるグラ・バルカス帝国艦隊が負けるとでも思っているのか?
 日本との混成艦隊が相手であっても、我らはお前たちが思っているほど簡単に負ける事はない!!」

『何を言っている?日本国はこの海戦に参加しない。神聖ミリシアル帝国のみで簡単に片が付く程貴様らとは、どうしようもない戦力比が生まれてしまったのだ』

 日本国は参加しない。この言葉にコルネフォロスの艦橋はざわついた。
 敵は何故か神聖ミリシアル帝国艦隊だけで戦おうと申し立てている。
 それが本当か嘘かは解らないが、本当ならば勝機が見えてくる。

「神聖ミリシアル帝国艦隊のみで戦うだと?日本に泣きつかなくて良いのか?
 負けそうになったらすぐに泣きついて、日本に助けを求めるのだろう?
 全世界に、負けそうになったら日本に助けを求めましょうと宣言してはどうだね?」

 アケイルは神聖ミリシアル帝国のプライドを刺激し、挑発した。
 日本国さえ参戦させなければ、例え数で向こうが圧倒していたとしても、神聖ミリシアル帝国艦隊程度ならば戦える。
 決して舐めてはならないが、絶望するほどの相手ではない。
 それなりにダメージを与えたら、撤退しても本国から文句は出ないだろう。

 生き残る道へ艦隊を導くため、あえて敵のプライドを刺激する。

『挑発しているつもりか?阿呆め、お前たち如きに帝国艦隊は出ない』

「何だと?」

 意味不明な言動にアケイルは不審に思う。

『我が国、最新鋭艦かつ混成魔導艦隊旗艦である、このオリハルコン級魔導戦艦コスモたった1隻でお前たち如きの相手は十分だと言っている。
 繰り返す。この1隻だけでお前たちの艦隊をたたきつぶすには十分なのだ。
 我が神聖ミリシアル帝国の技術力を身をもって知る事になるかもしれない事を幸運に思え。
 コスモ……これは降伏せぬ場合、貴様らを殺す事になる超戦艦の名前だ。
 死の寸前まで覚えておけ』
 
 艦隊司令アケイルは一瞬何を言っているのか理解出来ずに艦長イライガを向く。

「イライガ艦長、私は敵の行動が全く理解出来ないのだが、敵は狂ってしまったのか?」

「たったの1隻で我が艦隊10隻に突っ込んでくるなど、いくら単艦として強力であったとしても自殺行為です。
 しかも、艦隊が後ろに控えているにも関わらず、旗艦が突っ込むなど信じられません」

「敵は上司から責められすぎて狂ってしまっているのか?」

 グラ・バルカス帝国の常識からもかけ離れた行動に、彼等は理由を理解出来ずに議論を続ける。

「敵艦隊が参戦すれば、卑怯者と国際社会に発信するとしよう。
 仮に1隻で本当に来るならば、これは好機だ!!!」

 艦隊司令アケイルは、無線を手にする。

「このグラ・バルカス帝国艦隊に、1艦での突入や潔し!!
 降伏は無い。
 我が帝国の強さを誤認したことを悔いて死ね!!!」

『お前たちはやり過ぎた。
 我らに殺される事を光栄に思え。
 この最新鋭かつ超戦艦に負けたのであれば、後世まで言い訳が効くだろう。
 我が艦と戦った事をあの世で自慢すると良い』

 通信は途切れる。
 グラ・バルカス帝国艦隊は艦隊決戦に向けて準備を開始するのだった。


タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 09:47| Comment(15) | 小説
この記事へのコメント
駆逐艦1隻を沈められた艦を救助用に

駆逐艦1隻を沈められた艦の救助用に
Posted by at 2021年08月21日 13:11
更新、待ってました
Posted by at 2021年08月21日 13:34
かつて敵空中要塞と戦った物達が

かつて敵空中戦艦と戦った者達が
Posted by at 2021年08月21日 13:54
敵は上司から攻められすぎて

敵は上官から責められすぎて
Posted by at 2021年08月21日 13:56
両軍とも馬鹿なのか……
中世の合戦レベルに退化してるのはなんでだぜw
Posted by at 2021年08月21日 19:51
「お前たち如きに帝国艦隊は出ない」
 ↓
「お前たち如きに帝国艦隊は必要無い」の方が良いのでは?
Posted by at 2021年08月21日 23:14
どっちがフラグを立てたのかw
Posted by at 2021年08月22日 08:41
>Posted by at 2021年08月21日 19:51
片方が中世を経験してない(っぽい)からではw
Posted by at 2021年08月22日 08:53
『我が国、最新鋭艦かつ混成魔導艦隊旗艦である、このオリハルコン級魔導戦艦コスモたった1隻でお前たち如きの相手は十分だと言っている。
 繰り返す。この1隻だけでお前たちの艦隊をたたきつぶすには十分なのだ。
 我が神聖ミリシアル帝国の技術力を身をもって知る事になるかもしれない事を幸運に思え。
 コスモ……これは降伏せぬ場合、貴様らを殺す事になる超戦艦の名前だ。
 死の寸前まで覚えておけ』



『我が国、最新鋭艦かつ混成魔導艦隊旗艦である、このオリハルコン級魔導戦艦コスモたった1隻でお前たち如きの相手は十分だと言っている。繰り返す。この1隻だけでお前たちの艦隊をたたきつぶすには十分なのだ。我が神聖ミリシアル帝国の技術力を身をもって知る事になるかもしれない事を幸運に思え。コスモ……これは降伏せぬ場合、貴様らを殺す事になる超戦艦の名前だ。死の寸前まで覚えておけ』
Posted by at 2021年08月22日 09:48
グ帝国、ミ帝国互いにビフゲる!結果は相討ち!
Posted by at 2021年08月22日 13:05
この会話って、日本側でも記録しているんだろうな。
Posted by at 2021年08月23日 11:40
ミリシアルお得意の戦闘前無駄口w

面白いけどね〜w
Posted by   at 2021年08月23日 19:23
どうしてここで、
「もしや、空中戦艦の様なトンデモ兵器なのか?」
と思わないのだろうか?
Posted by at 2021年08月27日 21:59
実は書籍版とか含めるとムーも日本も艦隊決戦前に無線のやり取りがあるので(ムーは牽制の為、日本は警告と退去勧告)この世界では艦隊決戦前に口上を述べるのが習わしだとグ帝に勘違いされそう
Posted by at 2021年09月16日 13:37
主催した会議中に奇襲されるのは最高にムカついたんやろなって
Posted by at 2022年07月14日 13:33
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: