E-400型潜水艦アリアロス
友軍が撃沈された。
我が艦隊は魚雷を多数前方へ発射、さらに対魚雷欺瞞装置を大量に射出して撤退を開始した。
「来るな……来るな……来るな……!!」
聴音機を耳に当てる隊員は、死神の到来を恐れる。
我が国最新鋭の魚雷欺瞞装置は水中音響を乱す。
我が軍には試作品でさえ作れないほどの高性能魚雷を敵が持つと想定して作られた。
欺瞞装置は効果があるはずだった。
しかし、2艦は為す術も無く撃沈された。
超高性能魚雷を想定したが、その想定すら遙かに上回る探知能力、そして追尾能力がある……一瞬の判断が死に直結する戦場で判明するという悲劇。
敵が魚雷を投下したら、たったそれだけで死が確定する。
家族の顔が浮かぶ。
死と向き合うと言うことは、これほどまでに怖い事なのか。
(来るな……来るな……来るな……)
彼は神に祈る。
しかし、その祈りが届くことは無かった。
彼の耳に、死神の足音が届く。
心に重くのしかかる音。
落ち込んでいる暇は無い。
彼は生き残るため、すぐに報告する。
「!!!艦直上!!敵魚雷が投下されました!!!」
「何故だ!!何故我が位置が解るのだっ!!」
ラトバリタが叫ぶ。
艦長ネトリールは苦しそうに目を瞑る。
「水中音響学の次元が違うという事か……。
デコイ全弾発射出!!!出力全開し急速潜行!!」
命令はすぐに実行され、艦が急速に傾く。
ピコーン……ピコーン……ピコーン……。
魚雷の放つ探信音が響き渡る。
聴音機を当てていなくても、艦に届く音が聞こえる。
死に誘う音は徐々に……徐々に近づいてきた。
「あああっ……ああああっ!!!」
死に直面したラトバリタが叫ぶ。
人間は死と真に向き合ったときに本当の姿が出る。
ピコーン……ピーン……ピーン……ピーン
「のあぁぁぁぁぁああああああああああああああああっ!!!!」
「総員衝撃に備えよっ!!!」
ガァァァァアァァ!!!
艦長が指示した瞬間、大きな衝撃が艦を襲う。
「ぐあぁぁぁぁっ!!!」
「……え?生きている……」
「助かった……のか?」
隊員達はすぐに被害確認を行う。
しかし……。
「エンジン停止……操舵不能!!」
「スクリュー……いや、後部約三分の一が消し飛んでいます!!!防水扉により浸水を防止」
もはや戦闘能力を失った艦は、敵の的になるだけ。
艦長はすぐに決断した。
「これまでか……急速浮上!!」
艦は動かない。
「……どうした?早くメインタンクの海水を排水せよ!!」
「圧搾空気が作動しません!!ポンプも動きません!!!」
何処がどう壊れたのか解らない。
絶望が全身を支配した。
急速潜行中の命中であったため、艦は高速で海底に向う。
バキッ……バキバキ……バキバキバキバキ……。
潜水艦は耐圧限界を超え、外部からつぶれ始める。
艦内の配管から高圧の海水が流れ込み始めた。
「そ……そんな……そんなそんなそんなそんなぁ!!!」
死を前にして、ラトバリタは叫んだ。
バキバキバキバキバキ……ガギッ……………。
大きな空気の放出、隊員達の絶叫、そして絶命と共に海中に静粛が訪れた。
この日、日本国海上自衛隊第1護衛隊群第5護衛隊はレイフォリア沖合において、グラ・バルカス帝国の中でも屈指の練度を誇る リーテ潜水艦隊 と交戦、全艦撃沈した。
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船内から艦の外観が正確にわかるのか、という点については、ベテラン乗組員の経験と勘から判断したということなのでしょう
その通り。
浮上して降伏することが、唯一生き延びる道だった。
隔壁 というより 防水扉 ですかね
切り札&起死回生の一撃の筈の沈黙の歓待があっさり撃破され(^^;;
一艦ぐらい、当たり所と良く(運悪く)強制浮上してしまって拿捕されるような強運の艦があっても良かったかも!?
まあ乗組員を後方に輸送する手間が省けたので殲滅した方がいいとは思いますが・・・・
コロナ禍の折、健康に気を付けて下さい。
次回も楽しみにしています。
潜水艦には乗りたくないな
イ400のような通常型潜水艦の潜行中はエンジンではなく電池と電動機を使うと思うのですが、どうなんでしょう?
ワルター機関的なものを使えば「エンジン」でおkですが。
もしくは世界の翻訳機構の裁量による表現でもいけますか。
降伏させて情報入手、からの政治戦なんてのも期待してたんだが、同じ事の繰り返しばかりではなぁ
まあ、生き残っても民間人虐殺で死刑になりそうだけど
重い機関部を含めた後ろ三分の一がもげ落ちて、隔壁で浸水を防げれば、重量と浮力のバランスが崩れ、浮力過大で猛烈な勢いで浮上してしまいそうなんですけど。
重い機関部が前部にあって無駄に長いシャフトでスクリューを回す謎設計だったりすれば話は違いますが。
一隻だけでも浮上降伏して捕虜が出た方が後々の話の展開に幅が出てきそうなものですが・・・。
こういうガチンコ勝負を読みたい