グラ・バルカス帝国陸軍要塞 ラテ・アルマイ
「敵は?」
「まだ来ていません」
要塞長はにやりと笑う。
「やはりこの要塞ラテ・アルマイに手は出せんようだな」
日本国による主要軍事工場への空爆、そして神聖ミリシアル帝国による海上封鎖によって、グラ・バルカス帝国の補給線は絶望的状況となっていた。
整備された道路の主要な橋はあっさりと空爆により落とされ、物流は滞り、さらに各基地の地上へ駐機してある航空機、対空火砲陣地も空爆によって破壊される。
その後、前線を拡大させて簡易航空基地を作った敵国ムーの複葉機が何百機も飛んできて、徹底した破壊を行う。
対空兵器を削られた後の航空攻撃は脅威以外の何物でも無く、何機落としても空の物量で圧倒される。
欺罔されたはずの弾薬庫や、食料庫は燃やされ、各地に散らばる基地、駐屯地の機能は著しく低下していった。
そんな中、森と森の間、地下に作られた地下要塞ラテ・アルマイは、敵の攻撃を受けること無く現在に至る。
全世界を敵に回す覚悟をしたグラ・バルカス帝国は、一時的に敵が物量によって攻勢に出た場合を想定し、統合基地ラルス・フィルマイナや首都レイフォリアへの緩衝地域として、旧レイフォル国第2の都市レイリングを守る要塞、ラテ・アルマイを陸軍絶対防衛ラインと定め、森と森の間に開かれた平地部分に地下にも至る要塞を築く。
長射程の回転砲塔を多数持つ要塞は、空から隠れるように作られ、攻撃を受けた場合も耐えうる高度な装甲を持ち、制空権下でも敵陸軍を圧倒出来る火力を投射できるように設計されていた。
要塞を迂回し、森を進軍しようとした場合は木々が邪魔になって大した兵力は運べない。
小規模の兵力であれば、レイリング駐屯地だけで対応出来る。
ラルス・フィルマイナよりも東側400kmに位置するこの基地は同程度の敵が来ても難攻不落であり、基地にいる者達は圧倒的な自信を持って勤務に就いていた。
ラテ・アルマイを統括する要塞長コルヒ・ミールは要塞地下に設けられた作戦本部指令室で、要塞すべてに繋がる放送を流す。
「諸君、敵は強大だが、我が要塞は落ちはしない。
我らはグラ・バルカス帝国のムー大陸における絶対防衛ライン。
帝国の守護者、帝国の盾であり、剣である。
ラテ・アルマイの精鋭たちよ、防衛線を死守し、敵を蹴散らすぞ!!!」
要塞はわき上がる。
兵達は、自分の仕事に誇りを持ち、帝国絶対防衛ラインを守るために戦う事を決意するのだった。
◆◆◆
「………いったい敵は何処にいるのだ?」
要塞長コルヒ・ミールの頬を汗が伝う。
敵の大部隊がムーの国境を出たとの情報を入手してからすでに相当日数が経過している。
一向に攻めてくる気配が無かったため、偵察を出すも、敵の発見には至らない。
要塞には弾薬や食料の備蓄は多く、万全の体制だった。
「何故来ないのだ?」
敵の動きに要塞長は不気味さを感じ始めていた。
「我らの要塞が難攻不落と知り、恐れおののいたに違いありますまい」
楽観的な意見が幹部から出るが、やはり気持ちが悪い。
噂に聞く日本軍の実力が本当ならば、そこまで甘い相手ではあるまい。
コルヒ・ミールが思考を巡らしていると、部下が飛び込んでくる。
「報告!レイリング前に、日本の機械化師団及びムー陸軍が現れましたっ!!!」
皆理解に苦しむ。
師団がここを通らずにワープしていく事など考えられない事だった。
「そんな馬鹿なことがあるかっ!!森があるんだぞ、機械化部隊はこの要塞前を通過しないと行けないはずだっ!!
南は斜面のきつい森、北は平野だが、アールの森があるんだぞ。
森を機械化部隊が超えるなんて、無理に決まっている。一体何処から現れたというのだ?」
「日本の戦車部隊がアールの森の木をなぎ倒しながら進軍してきたとの事です。結果ラテ・アルマイは迂回されました」
「う……え……戦車が木をなぎ倒しながら進軍だと?そんな……え?そんなこと出来るのか?」
要塞は動けない。
グラ・バルカス帝国の要塞ラテ・アルマイは迂回され、戦うこと無く無意味な存在と化すのだった。
タグ:日本国召喚
ドイツ軍はマジノ線を迂回しアルデンヌの森を抜けて侵攻しました
グ帝人にワープ(SFに登場する空間跳躍的な移動)の概念があるかどうか不明なので、ここでは「迂回」という意味で使っているのでしょう
>>敵の大部隊がムーの国境を出たとの情報を入手してからすでに相当日数が経過している
書籍の地図を見ると、国境から西側海岸線まで約1000kmくらいなので、 ラテ・アルマイは国境から約600km離れていることになり、日本とムーの部隊の進行速度を60km/日とすると約10日間、40km/日とすると約15日間はかかることになります
「要塞司令」或いは「要塞司令官」か、要塞に配置された○○部隊の「隊長」になるんでないかな?
でも、マジノ女学院はノリと勢いだけのアンチョビ高校に負けているからな…
しかし、アルデンヌの独軍戦車隊は戦車は最新、戦車兵もベテランの最精鋭でしたが、随伴歩兵・工兵隊はベテランの損耗が激しく、少年兵・老人兵ばかりだったそうです。
当然掛かる負担が大きく、アルデンヌ攻勢が途絶したのは戦車ではなく随伴歩兵・工兵が保たなくなったのが原因とも言われる程。
これは作業車両が優秀な陸上自衛隊ならではの戦法。
連携すべき機動兵力の大半が既に吹き飛んでるからな
この要塞の部隊はこれからどうするんだ?
アルデンヌはもとからフランスとベルギーの交易路があったわけで、待ち構えて居なければ抜けられるのはわかるんだが
この時もフランス軍が森林地帯を機甲部隊が突破できる訳がない、という思い込みから防備が手薄なアルデンヌの森林地帯を独機甲部隊が突破、マジノ要塞は迂回されフランス降伏に至る…
陸自がオマージュとは言えかつて歴史を変えた戦いを自分達がなぞって同じように歴史を変えてるんですから胸熱な展開ですね。
隕石魔法か何かを撃つ魔帝時代の投石機だと思って震撼するでしょうね
心理バイアスの強いパ皇勢だけが平気
敵の立地条件や進入ルートだけを根拠に近代国家を蛮族認定する構図は
他に類を見ないんですが
空の衛星と地元住人との情報で工事しやすいルートも分るか。
戦後、新たなる交易路になるレベルで仕上がっていたりして。
というか、戦車が酷使され過ぎて、限界を迎えそう(笑)
装甲車「俺達の出番は無いのか(泣)」
陸自の装甲車や自走砲なら、戦車の後に続いて進めます。
跡地は、倒木や切り株や根や溝で、かなりの荒地になっています。
そこを、ムー陸軍のムー製トラックで進めるかというと、無理でしょう。
パンクやスタックが続出します。
砲も、分解して運べないものは持っていけません。
ムーの文明水準だとほぼ舗装されていない道路ばかりだから
俺達の認識するオフロード走行が前提の車両じゃね?
自衛隊の装備品の中でも施設科の土木建設機械は下手な土建屋よりも充実しているし、3トン半トラックのような装輪車が通れる道も造れるから
ムー製トラックが通れない理由の方が頓珍漢になりかねないぞ