シエリアは、レイフォリアにあるとある家の屋上からダイジェネラ山を見ていた。
何処から来たのか、青い空が黒く染まるぼどの……とてつもない数のワイバーンが空を舞う。
帝国の対空砲が大量の光弾を空に打ち上げた。
対空砲弾が命中したワイバーンはバタバタと血だるまになって墜落していった。
対空砲の数も多く、すでに200騎は落とされたのではないだろうか?
しかし、敵の進行速度は変わること無く、ダイジェネラ山に近づいていった。
「あああっ!!!」
シエリアは、目を見開く。
大量のワイバーンは首を伸ばし、大きく口を開ける。
口の前に火球が形成されていった。
大量の魔力が共鳴して甲高い音が響き渡る。
多くのワイバーンから一斉に火球が放出された。
雨のような大量の攻撃、最大魔力を込めた一つ一つの火球は大きい。
導力火炎弾の一斉攻撃。
「ひ……火の雨っ!!」
ガアァァァアァン!!!
放出された粘性を持つ火炎弾は山に命中し、付近を燃やす。
1発1発は大した威力ではないが、何しろ数が多い。
湿気の多い山も、途轍もない量の火炎弾に見舞われ、たまらず燃え始める。
後の歴史書に火の雨と呼ばれた攻撃、怒りの異世界連合は止まらない。
◆◆◆
ダイジェネラ山作戦統合本部
「森林火災が発生しています」
敵の攻撃は、レイフォリアの街から監視している監視員から、有線で報告がなされ、作戦統合本部は状況をリアルタイムに把握出来ていた。
「奴らの狙いはこれか……」
「はん、森林を焼くだけか?表層を焼く程度ではダイジェネラ要塞は落ちん!!」
会議途中、バタンと音を立ててドアが開いた。
軍の幹部達が集まる司令室に、免れざる客が入ってくる。
「お……おい!!どうなっている!!本当にここは大丈夫なんだろうな!!」
外務省のゲスタだ。
ランボールはうんざりとした表情を浮かべるが、ゲスタに状況を整理して話した。
「敵の攻撃はワイバーンによる大量の火炎弾です。
粘性を持った火球は脅威ではありますが、要塞の機能には何の影響も与えないでしょう。 要塞表層部は森林火災によって高熱に達し、付近の酸素も消耗しますが、この要塞は2重3重の防火扉があります。
砲は要塞内への収容作業が開始されています。今回の攻撃で壊れる事も無い。
敵が山を焼く事は想定済みであり、防御態勢に徹すれば酸欠に陥る事も無い。
ワイバーンは生物であり、火炎弾も限界が来ます」
彼は一呼吸置いて続けた。
「つまり今回の攻撃では、いかにワイバーンを揃えようと完全なる火力不足です。この攻撃で要塞は傷つきません」
「おおぉ、そうかそうか、効果の無い攻撃をしてくるとは、やはり異世界は蛮族どもの集まりだな」
焦っていたゲスタは胸をなで下ろし、自分の命に危機が及ばない事を知って安堵するのだった。
「ただ、対空砲の秘匿が難しくなるな……」
ランボールは火災の後の日本国による攻撃を懸念する。
タグ:日本国召喚
・ワイバーンの撃墜や火炎弾攻撃が目視できる
・シエリアが夜中に徒歩で行くことができた
ということから考えると、意外に近くて、2〜3キロくらいでしょうか。
>ただ、対空砲の秘匿が難しくなるな
収容できるなら外部から見つかりにくいので秘匿可能とも思えます
砲(要塞砲?)と対空砲は別のものを指しているのでしょうか
樹木の遮蔽がなくなり、対空砲の収容位置がわかってしまうという意味でしょうか
平野部からなら40〜50キロ先の山なら見通せると思うよ
高校の強歩(遠足モドキ)でも朝から夕方までに未舗装路や山道を含めて35キロくらい歩けたし一桁距離と言うことは無いと思う
っていうか2〜3キロって車両通行可能な道なら徒歩でも1時間足らずで着くしそこはまだ戦場内と言っていい場所だろう