驚きながらも自艦の被害を確認する。
皇国の誇る最新式対魔弾鉄鋼式装甲を施した120門級戦列艦ジャスティスには20もの大きな穴が開いていた。
装甲をかろうじて貫通したかのようであった。
煙が燻る。
『フフフ……蛮族の諸君、あいさつは受け取ってくれたかな?我が名はクルセイリース大聖王国の守護神、エル・ガンエンである。
この神話級兵器、キル・ラヴァーナルの外殻岩石を剥がす手間が省けた。礼を言おう』
超大音量で敵は語りかける。
『ただの挨拶で瀕死ではないか、フフフ……弱い、弱すぎる。あまりにも弱い。もっと楽しませてくれよ』
「くそっ!!」
風神の涙により、帆をいっぱいに張った魔導戦列艦は迅速に旋回している。
しかし、強大な敵を前に、いつもは速く見える船がひどくゆっくりともどかしく見えた。
「ぐ……ぐううぅ!!」
「バイア司令!!気付かれたか」
司令バイアは頭に破片を受け、意識が朦朧としていた。
額が切れたようで、頭から血を流す。
「ガーラス艦長、最善をつくしてくれ」
「はっ!!」
「しかし……化け物だな」
山という大質量と戦っているようだ。
しかも、外壁の岩は削れたが、肝心の城部分に魔導砲はあまり効果が無いようにも見える。
周囲には死体が散乱し、なんとも言えない匂いを放つ。
「あの砲撃をつぶす!!」
彼は魔信を手に取った。
「こちら司令バイアだ!!直掩の竜騎士団は敵の砲を攻撃しろ!」
通信士も死んでいる者が多い。
人手不足の中、司令バイアは指揮をとる。
ワイバーンの火炎では効果は薄いであろうことは重々承知している。
しかし、魔導砲を発射して来るのであれば砲手がいるはずであり、敵が炎に焼かれれば攻撃の手は少なくなる可能性があった。
ギュオオオォォォォォン!!!!
竜の咆哮が響き渡る。
しかし……。
「え!あれは……」
敵化け物の口の前に6つもの魔方陣が出現する。
報告書で見たことがある……アガルタ法国の艦隊級極大閃光魔法に似た魔法陣だ。
上空を旋回していた皇国のワイバーンオーバーロードが攻撃態勢に入る。
『やれやれ、うっとおしいハエはたたき落とさねば』
キル・ラヴァーナルの顔の前に六芒星が出現した。
『これほどの魔力と記憶容量があれば、我が国の魔法を組み込んで使用することなど造作も無い。
フフフ……殲滅の裁きだ。
神に矢を引いた愚か者どもよ、死ね。
クルス……カリバー』
次の瞬間、魔素の位相変化によって集積したレーザー状の熱線が空を駆け、ワイバーンオーバーロードに命中。
命中した竜は真っ二つに引き裂かれる。
空を可視出来るレーザー光線様のものが駆け抜ける。
一瞬だった。
一瞬ですべてのワイバーンオーバーロードが炎に包まれ、空から落つ。
『フハハハハハッ!!フアーッハッハッハッハ!!!こんなことも出来るぞ!!』
キル・ラヴァーナルは拳を振り上げる。
旋回中のジャスティスに近づき、力任せに拳を振り下ろした。
ドガアッ!!
神話級兵器、キル・ラヴァーナルの拳を受けた魔導戦列艦は炎に包まれながら真っ二つに折れる。
発現した炎はすぐに海水に浸かって消火した。
艦長ガーラス、司令バイアは海に投げ出され、流木につかまる。
「はあっはあっ……化け物めっ!!!」
見上げた先には、岩の化け物が彼らを睨み付けていた。
パーパルディア皇国 対圏外文明圏防衛艦隊旗艦 120門級戦列艦ジャスティスは、クルセイリース大聖王国の神話級兵器キル・ラヴァーナルと戦闘し、轟沈した。
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描写はありませんが、キル・ラヴァーナルは歩きながら海に入ってきたことになります
水深が浅かったので、上半身を海上に出したまま、海底を歩いてきたのでしょう
単独で戦闘したような描写ですが、パ皇軍は艦隊で来ているので他の戦列艦や竜母が近くにいるはず
この後で残った艦隊と戦闘になったのでしょう
巨大拳の衝撃で、艦内の魔石燃料や炸薬などが発火・誘爆したようです
破壊された戦列艦の破片が浮いていたので、それにつかまったようです
(戦列艦は装甲や砲があり重いので、浸水すると沈んでしまいます)
>キル・ラヴァーナルの顔の前に
>岩の化け物が彼らを睨み付けていた
上半身は砲門付の巨大な城という描写でしたが、前面には人間の顔に似ている部分があるようです。
腰くらいまで浸かってるのかな?
たぶん、頭の城の地下通路から、別の城へ行ける。
岩塩屋の居る城は司令部やメインカメラに過ぎず、やられても終わりではない。
ただのスピーカーwwww