聖都全体に響き渡る地響きのような雄叫び。
その雄叫びに地面が揺れる。
「うあぁぁぁぁつ!!!」
「きゃぁぁぁぁっぁつ!!」
聖都の民は狼狽し、あまりの凄まじさ、禍々しさに……我先に逃げ出した。
銃神ダルサイノ率いる特化狙撃部隊は、『それ』が見える山に3部隊に分かれて昇る。
銃神ダルサイノとその配下は聖王国の名工の作りし銃を背負い、山を駆け上がっていた。
「はあっ、はあっ……はあっ……ダルサイノ様、とんでもないのが現れましたね」
隊員達は重い装備を背負って山を駆け上がる。
訓練により鍛えられた肉体はその負荷に耐え、心地よい汗が出た。
「ああ、敵と判断するまでは、絶対に攻撃するなよ。
配置についたら全部隊に伝えろ」
普段は虫たちの心地よい鈴の音のような鳴き声が響く山々も、禍々しい生物の出現で、虫さえも黙り、静粛に包まれていたため、ダルサイノの指示は部下達にはっきりと届く。
「了解……こんなのと戦う事になるかもしれないなんて……残業手当、しっかりつけて下さいよ」
部下は笑いながらダルサイノに話す。
上下の厳しいこの聖王国において、銃神とまで呼ばれた男に気さくに話すことが出来る。
この会話が許されるのは、銃神の性格の良さ故であった。
「敵では無い事を願う。あれが敵なら我らは王国臣民のために……聖都臣民が避難する時間を稼ぐために命をかけなければならない」
ダルサイノの真っ当な発言に部下は苦笑いした。
「……ついていませんね、聖王国建国以来途轍もなく長い時間が経過しているのに、なんで神話の化け物が、私がいるこの時代の、しかもこの日に来るのか。
来週南部のループ島に家族旅行に行く予定だったんですよ」
「そうか、ではしっかり働いて来週は思いっきり遊べよ」
「フフフ……了解」
走りながら行われる何気ない会話。
自分の命が消えるかもしれない緊張感。
そして守るべき者が背後におり、決して引けぬ決意、様々な感情が入り交じる。
やがて彼らの部隊は化け物の尾を囲むように各山に配置につく。
「それにしても……デカいな、あれが尻尾だけだと思うと、勘弁してくれと言いたくなる」
彼らの額に汗が伝う。
絶望的戦力差を本能で認識しながら笑った。
「まったくですよ、終わったら本当にしっかりと休みを下さいよ。また急な呼び出しは無しですからね」
恐怖を押し殺すように笑う部下、その手は震えていた。
『ギャオァァァァァァッァァツ!!!!!!』
鼓膜が破れるのでは無いかと思われるほどの雄叫びが響き、地面が大きく裂け、大きな地震が起こった。
「うおぉぉぉおっ!!」
近くの岩にしがみつく。
やがて……。
大きな地響きと共に、黒い体が姿を現す。1本と思っていた尾ひれは8つ現れ、頭も8つ現れた。
その体躯はあまりにも大きく、自分たちを例えるならば、ワイバーンにアリが戦いを挑むようなものだ。
「大事な事なのでもう一度言うぞ、全部隊に絶対にこちらからは攻撃するなと指示せよ」
「はっ!!」
銃神ダルサイノ率いる特化狙撃部隊は山に隠れ、身を潜める。
緊張がピークに達したその時……化け物の8つある頭の内の一つ大きく上に上げた。
「ヒュオォォォォォォ」
目が赤く光り、レーザーのようなものが放たれる。
「なっ!!」
ガァァァァァァァン!!
「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」
強烈な爆発音と地響きにたまらず声が出る。
赤いレーザーは聖都に命中し、レーザーの当たった箇所は大きな爆発を起こす。
まさに聖都を切るという表現が正しい。
大きな爆発が山々にこだまし、吹き上がる炎が夜空を赤く照らした。
タグ:日本国召喚
>なんで神話の化け物が、
一般兵士が気づいたということは、建国神話に邪神の姿形や復活について、具体的に記されていたことになります。
聖王女はガハラの予知で知ったような感じでしたが・・
更新お待ちしておりました!
>吹き上がる炎が夜空を赤く照らした。
化け物の復活の様子が見えたということは、あたりはまだ明るいことになります。
最後の場面ではすでに夜になっています。
ということは、化け物の復活から攻撃までの間に、多少の時間が経過していることになります。
対空砲火のために兵士の命を吸い取る暗黒メガコーポも真っ青な代物があるのにw
ブログ自体にアクセスできない状態でした…
更新&削除になってなくてホントに良かったです
イルクスとどっちつおいの?
>>イルクスとどっちつおいの
いや、比較対象になるのはエモールの三龍くらいのものかと。