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猛将シエドロンはリンクされた艦を絶妙に操作し、化け物に対して円形の配置を空に引く。 発射後のエネルギーが聖都にかからぬよう、射線の角度をつけた。
「全艦魔法発動陣形完了、多次元魔力爆縮放射砲発動」
円形に配置された数百もの艦隊の内部に巨大な球形の立体的魔方陣が出現する。
エネルギーが魔方陣中心部に収束を始めた。
「エネルギー充填98%……100%突破……うむ、制御が上手く出来ぬ……120%……やっとエネルギーが安定したか。
多次元魔力の流入確認。
圧縮開始……空間制御により指向性を確保……」
魔力が球形魔方陣の中心部に収束し始める。
中心部が光り輝き、周りに微粒子が飛んだ。
化け物は、多くの目が潰れ、最後の目の瞼に傷を負っているようで、傷口から泡が噴いている。
動きが鈍かった。
「これが我が国が今使える最大最強の攻撃だ!!」
シエドロンは目を見開く。
死ぬかもしれない……彼の脳裏に今までの人生が走馬灯のように駆けた。
家族が……今は成人したが、小さい頃の息子の笑顔が脳裏を過る。
シエドロンは燃える聖都、そして眼前の化け物を見ながら小さくつぶやく。
「仕事人間で、家族らしい事は何一つしてやれなかったな……。
だがな……父ちゃんが……お前達の命、そして未来は護ってやる!!」
「……メルガランテ……」
シエドロンはスイッチを押し込んだ。
魔方陣中心部から、化け物に向かい猛烈な青白いエネルギーが解き放たれる。
エネルギーの波は化け物に命中し、間をすり抜けた波は後方の山を粉砕した。
エネルギー波の直線上の大地は砕け、土煙が上がるのだった。
◆◆◆
テンジー城
まるで神々の戦いかのような光景が眼前で繰り広げられていた。
現れた巨大な化け物は、たった数十人の狙撃部隊によって目を潰され、足止めされる。
再び歩みを開始しようとしたとき、王家飛空艦隊が現れ、攻撃を開始した。
しかし、あまりの巨大を誇る相手には通用せず、何機も撃墜される。
王家残存艦隊は、見たことも無い超高威力の魔法に踏み切った。
途轍もないエネルギー波の放出により、山は砕けて化け物がいた付近は土煙に包まれている。
聖王女ニースはその光景に目を奪われていた。
「ああっ!!!」
聖王女は目を見開く。
王家の誇る飛空艦隊が……まるでただの船になったかのごとく、空から降る。
多くの艦が……艦隊が雨のように空から降り、地上に当たって大きな爆発を起こす。
全ての魔力を失った艦隊は、浮遊する事すら出来ずに地上に落下、魔法に参加出来なかった旧式艦6隻を除いて全滅した。
「うううっ!!」
なんとうい光景か……聖王国の守護者として、聖都を護るために戦い、艦隊が全滅する。
その凄まじい信念、そして自分の無力さ……。
聖王女ニースは涙が止まらなかった。
「ニース様、聖都の三分の二の人口が、都から待避出来ました。残ると言い張る者達もいて、すべての民を誘導するのは難しい状況です」
騎士ミラが報告してくる。
泣いている場合ではなく、指揮を飛ばす必要があった。
「では引き続き避難誘導を……」
ニースが指示をしようとしたときだった。
「ギョォォォォァァァァァツ!!!」
土煙の中から雄叫びが上がる。
ゆっくりと化け物のシルエットが浮かび上がった。
ミラは化け物を向く。
「馬鹿な……あれで生きているというのか……ん??」
化け物の周囲が七色に輝く。
「あれは……まさか高位の回復魔法?ダメージは追っている、しかし……」
動かない……しかし化け物は何れ回復するだろう。
「進言します、ニース様は聖王都より避難してください」
「まだ王都に民が残っています。私が逃げ出す訳にはいかないのです」
「自らの意思で残ろうとする者もいるため、全ての民を誘導するのは実質的に不可能です。
正直、三分の二もの人口が一時的に聖都を離れられただけでも信じられないほどの驚異的数値です。
ニース様は、まだこのクルセイリース大聖王国に必要な人材です。
貴女は生きなければならない!!」
「私は民のために命をかけることを惜しむ事はしません!!」
「……失礼」
ミラは、ニースの額に手を当てた。
「な……何を……」
ニースはその場に倒れ込む。
ミラは部下に指示を出す。
「魔法で眠らせただけだ。
ニース様を聖都から出来るだけ遠くに運んでくれ、必ず安全な場所まで運ぶんだ。
私はニース様の代理としてギリギリまで民の避難誘導を行う。
彼女はこの国のために必要な人材だ。
まったく……最後までおてんば娘だったな」
騎士ミラは苦笑いする。
彼は民の避難誘導に全力を投じるのだった。
◆◆◆
「はあっ……はあっ……はあっ……」
騎士ミラは息を切らして走る。
彼はギリギリまで民の避難誘導を行い、化け物が動き始めたため、馬を飛ばしていた。
「そろそろ良いだろう」
もう十分に離れたはずだ。
ミラは聖都から離れた山の中腹から、聖都を眺める。
多くの場所で火災が発生し、大火は夜空を赤く焦がす。
「動き始めた……」
神話に出てくる化け物は動き始め、大きな口を開けた。
「なっ……」
おぞましい光景……家ごと生命と魂をかみ砕く音が遠くまで離れていても聞こえる。
「く……食ってる……」
ミラは、日本国であったガハラ神国の使者の会話を思い出す。
八岐大蛇は魂を喰らい、喰われた魂は消滅すると……。
恐怖が全身からこみ上げる。
旧式の飛空艇が化け物を攻撃しているが、まったく何もないかのように無視して王都臣民を食べる。
何故こんなことになってしまったのか……愛する聖王国の護るべき民はおぞましい化け物に食われ、美しかった聖都は燃える。
日本国において、事前の情報は仕入れていたはずだ。
歴史のターニングポイントはいくらでもあったはず……でも間に合わなかった。
「……ぐっ……ぐぅ……」
ミラは悔しさに涙を流す……しかし、時は戻らない。
八岐大蛇はクルセイリース大聖王国の残存する民を喰らいつくし、ワカスーカルト方面に向かうのだった。
タグ:日本国召喚
確か、王家直轄飛空艦隊って、50隻くらいじゃなかったっけ?
>>超兵器の周辺には、船にプロペラが付いたかのような、飛空艦が約50隻、取り囲むように空を飛ぶ。
(第138話古の超兵器3P5 より)
正規軍の飛空艦隊と合流したのかもしれんが・・
さらにオロチを操れれば魔帝と互角かも
何隻のほうがよさげ 戦闘機じゃないからね
それに流石にミ帝とやり合うには通常兵器のレベルが低すぎる
魔法(物理)
蛇なのに噛み砕くのか?(困惑)
目が潰されているのに人間の居場所がわかるのか?
すでに回復したのかもしれんが・・
ミ帝のほうが発掘兵器の保有数はずっと多いのを忘れてない?
他にも振動を感知する機能もあるとか。
あと中盤の
化け物の周囲が七色に輝く。
「あれは……まさか高位の回復魔法?ダメージは追っている、しかし……」
ダメージを負うですね。
名工謹製狙撃銃の威力が凄すぎるのか