2019年12月31日

第97話 日・グ大海戦P5

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 夕日は沈み、水平線が微かに明るい。
 暗くなりかけた空を、白い機体が飛ぶ。

 日本国海上自衛隊BP3−C70機、そして前方には護衛の為、F−15J戦闘機12機が飛行する。
 BP3−Cには1機あたり4発の対艦誘導弾が翼に取り付けられている。
 遙か後方ではE−767早期警戒機が飛んでいた。

『航空司令部よりA1、A2、敵艦より迎撃機が発艦、そちらへ向かっている。
 距離190km、速力260ノット(時速約481km)』

 E−767からの情報をリアルタイムで受け、基地から攻撃部隊へ無線で指揮をとる。
 本作戦については、対艦攻撃隊をA1と呼称し、対艦攻撃隊を護衛しているF−15J部隊はA2と呼称されていた。

 遙か後方、ナハナート王国に設置された航空自衛隊の管制センターにおいて、司令八神は指揮を執る。

「司令、何故位置がばれたのでしょうか?一瞬だけ映ったという可能性もあるため、一度飛行コースをずらしてみてはいかがでしょうか?
 敵の迎撃機の進路が逸れなければ、敵は我が方をレーダーに捕らえていない事になります」

 部下が話しかけてくる。

「何故位置がばれたのかは不明だが、敵から見つかったと考えるのが妥当だろう。
 コースを逸らす案も人道上は良いが、仮に我が方がしっかりと敵レーダーに捕らえられていた場合において、事前の情報どおりであれば性能差から被害は出ないだろうが、もしもBP3−Cの最高速度を上回る迎撃機がいた場合は被害が出る可能性がある。
 下手に敵に情けをかけて、こちらが被害を受けたのでは目も当てられない。
 今ならF−15による攻撃が十分に間に合う位置にある」

 司令八神は一瞬だけ瞑想する。
 信心深い彼は自分の決断によって、敵の多くが死ぬ事に対して神様に謝罪した。
 しかし、万が一にでも味方に被害を出す訳にはいかない。
 撃墜を決意する。

『基地司令よりA2、基地司令よりA2、敵機を撃墜せよ。繰り返す。敵機を撃墜せよ』

 明確にはっきりと無線で指示を出す。
 BP3−Cを護衛していた日本国の誇る制空戦闘機、F−15J12機は、アフターバーナーを点火、暗くなりかけた夜空にj各戦闘機から2本の炎が出る。
 急速に加速したF−15J制空戦闘機はBP3ーCを引き離し、西の空へ消えていった。

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第97話 日・グ大海戦P4

 
◆◆◆

 旗艦バルサー艦橋

「総員戦闘配置!!総員戦闘配置!!」
 
 艦内にはけたたましいブザーが鳴り響き、兵は慌ただしく走り回る。

「空母は直掩機を上げろ!!雷撃機は雷装のまま発進待機、各艦は上空警戒を厳とせよ!!」

 矢継ぎ早に指示が飛び、艦隊は戦闘配備へと移行した。
 兵は迅速に動く。練度はあまりにも高い。

 レーダー技師マゼランは、艦橋においてレーダー監視員と共に画面を見ていた。
 周波数を変えての最高出力での再起動。
 今度こそレーダーの使用できない現象を何とかしたい。

「では、再起動します」

 落ち着いてスイッチを押す。
 完全に消えていた画面に一筋の光が現れ、10時の方向から2時の方向へ向けて右回りに回転を始める。

「え!!??」

 一本の伸びる線、付近には考えられないほどの大量の光点が確かに映る。

「敵機!!?」

 思わず声が漏れ出た。
 攻撃が差し迫っている!!かつて無い恐怖。
 一瞬だけ再起動したレーダーは、すぐに真っ白な画面へと変わる。
 一瞬だけ映った光点を見逃さずに済んだ事は幸運だった。

「どうしたっ!!!」

 司令ミレケネスはレーダー監視員から漏れ出た声を聞き逃さなかった。

「ぜ……前方、11時方向敵機接近!!距離200km、速度不明!!数……即時レーダーが使用不能となったため、詳細把握できませんが、50以上!!!
 50以上の敵機が向かってきています!!!」

「なんだとっ!!」

 自分たちに向けられた明確な殺意に背筋に悪寒が走る。

「航空攻撃か!!迎撃機を可能な限り上げろ!敵機を1機たりとも近づかせるな!!!」

 指示が飛ぶ。
 予測していた攻撃、そして予測通りに攻撃が来る。
 艦橋はさらに慌ただしくなった。

「距離200で探知出来た事は幸いでしたな」

 傍らに立つ参謀、デルンシャはミレケネスに話しかける。
 日頃はおっとりとした雰囲気で眼鏡をかけ、やさしい風貌を持つ。
 彼は続けた。

「距離が200あるなら、迎撃も余裕をもって間に合うでしょう」

「敵が我が帝国と同程度ならな。
 第2先遣艦隊との距離は近い。その第2先遣艦隊が連絡する間もなく全滅している。
 司令アウロネスは優秀だ。大艦隊が手も足も出ずに連絡すら出来ずに全滅しているのだ。
 敵がどういった戦いをするのか全く読めん」

 出撃前に聞いた資料を思い出す。
 日本軍は誘導弾という未来兵器をもっているかもしれないと。
 荒唐無稽に思えるその想定性能を見たとき。そんな事が出来るわけが無いと一笑に付した。
 しかし、第2艦隊が……しかも大艦隊が全滅しているのならば、軍本部の荒唐無稽な仮説も現実味を帯びてくる。

「デルンシャ、全艦に指示、敵は誘導弾を使用してくる可能性有り。先進技術実験室配布の妨害装置を使用できる状態にしておけ!!」

「はっ!!あれを使用なさるおつもりですか?」

「ああ、我が軍の頭脳ともいえる先進技術実験室は優秀だからな。きっと効果があるだろう。先進技術実験室の職員を艦橋に呼べ」

「はっ!!」

 ミレケネスは艦の中央部を見る。
 左右に取り付けられた筒状の物体が、斜め上空を向いていた。
 しばらくして、艦橋の扉が開き、眼鏡をかけた優男が入ってきた。

「やっと我々の出番と言うことですねぇ」

 先進技術実験室の第1級技術者、万が一の時のために装置が配備されている第2艦隊旗艦に乗り込んでいた。

「司令ミレケネス様、参謀デルンシャ様、艦長フイトル様、改めてご挨拶申します。
 先進技術実験室第1級技師カンダルと申します」

「カンダル殿、現在の状況は聞いているな?」

「はい」

「迎撃に失敗した場合、敵の誘導弾の攻撃に晒される可能性がある。
 迎撃、さらに対空砲で撃ち漏らした場合、新兵器の出番となるだろう。
 ……自信はあるか?」

「フッ、当然でしょう。ミレケネス様」

 軍人であれば帝国3将たるミレケネスにこのような言葉遣いは決して許されないが、技術員と言うことで、苦言を呈する者はいない。

「情報局技術部にナグアノという人物がいます。帝国大学時代の私の同級生で、非常に優秀な人物でした。
 彼が、日本国が誘導弾を配備している可能性を指摘します。
 そして、ムー国内において販売された日本の書物でも誘導弾を確認いたしました。
 何処までが欺瞞情報で、何処からが本当の情報なのか。彼は悩んでいたようです」

 カンダルは続ける。

「我が先進技術実験室と、情報局技術部は情報共有し、仮に誘導弾が本当に存在するならば、どういった誘導方式になるのかを徹底的に洗い出しました。
 情報局技術部は、レーダー技術の応用だと指摘し、我が先進技術実験室は、レーダーの可能性も捨てきれないが、熱源探知型の可能性もあると考えました。
 おそらくは中間は慣性誘導、最終はレーダーもしくは熱源探知型の誘導でしょう」

 意味の解らない技術用語が多く登場し、軍人達の頭にははてなマークが浮かぶ。
 
「レーダー誘導方式であれば、弾頭からのレーダー反射波を利用して誘導しているに違いない。
 我が国のVT信管も、レーダー反射波を利用していますしね。
 レーダー反射率の高い金属片をばらまいてやれば、敵誘導弾が艦を見失う可能性が高い。 また、仮に先進技術実験室の導き出した可能性の一つ……熱源誘導方式を使っている場合ですが、艦よりも遙かに大きな熱源を多数出現させ誘導弾を欺罔すれば良い。
 我々先進技術実験室は、本件誘導弾欺罔装置のうち、電波を対象とした攪乱装置をチャフ、熱源追尾型を対象とした攪乱装置をフレアと名付け、本第1艦隊と本艦隊主要艦艇に配備いたしました」

 カンダルは熱弁した。

「そ……そうか、それは頼もしいな。是非頼むぞ」

「はい!!現在の我が国の考えられる対抗手段をすべて使用しており、私は絶対の自信があります。
 誘導弾の存在自体驚異的ではありますが、この欺瞞装置は仮に敵が我が国の20年……いや、30年先の技術を使用していたとしても、絶対に効果があります。
 最終防御は我らに……お任せ下さい!!」
 
 参謀デルンシャは拍手する。

「それは素晴らしい。さすがは我が国の頭脳ともいえる先進技術実験室……よろしく頼みますぞ!!」
 
 かつて無い敵を前に、絶対的な自信を示すカンダルに、艦橋の空気は少しだけ和らいだ。
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第97話日・グ大海戦P3


◆◆◆
 
 グラ・バルカス帝国先遣艦隊第1先遣隊 旗艦バルサー

 第1先遣艦隊230隻は東へ進む。
 
 帝国3将のうちの一人、女帝ミレケネスは第1先遣艦隊の旗艦、戦艦バルサー艦橋において、落ち着きの無い様子で海を睨んでいた。

「まだ無線機とレーダーは使用できないのか?」

 先ほどからレーダーと無線機が全く使用出来なくなっていた。
 第2先遣艦隊との合流海域まであと少しという状況下で、無線機が使用できなくなるという現象。
 各艦一斉に使用できなくなっており、明らかに故障でも無く、自然現象としてはタイミングが良すぎる。
 さらに、日本国からと思われる、発信元不明の警告文がこの現象が日本によるものであるとの可能性を高めていた。
 また、陸軍バルクルス基地における生き残った物達によって語られた日本軍の攻撃前の現象に酷似している。

「ミレケネス様、偵察隊が帰還してきます」

 レーダーや無線機に異常が出ると同時に、敵の攻撃の可能性を予測したミレケネスは、直ちに偵察機20機を各方面に派遣し、敵の空からの攻撃を警戒するために偵察機を各方面に飛ばす。
 そのうち、前方、第2艦隊方面に飛ばした偵察機が帰ってきたようだった。
 空母に着陸する前に旗艦上空を通過する。
 無線機が使用出来ないため、緊急時は光を使った発光信号により、前方の状況を旗艦に伝える手筈となっていた。

 チカッチカチカチカッ!!

 発光信号が伝えられる。

「ダ・イ・イ・ニ・カ・ン・タ・イ・ゼ・ン・メ・ツ」

「だ……第2艦隊全滅!?」

 艦長フイトルが叫ぶ。

「バカな!!こんな短時間で全滅などするものかっ!!」

 見間違いでは無い。確かに発光信号は第2艦隊全滅との報を送っている。
 練度の高い帝国軍人が、発光信号を間違えるわけも無い。

 艦橋はざわつきはじめ、騒然となった。

◆◆◆

「おかしいな……故障してないはずなのに」

 レーダー技師のマゼランは、レーダーが感知しなくなる原因を探る。
 故障の可能性も考えられたため、一生懸命に原因を探す。

 レーダーが映らなくなったのは、敵の干渉だろうと考えられていた。
 しかし、干渉するなんて、一体どうやったら出来るのか?
 レーダーは自分の発した電波を敵機体に照射し、跳ね返ってきた電波を拾って位置を割り出す装置である。
 
「まさか……同一周波数を割り出して照射されている??ならば、レーダーが使用できなくなる可能性もある!!」

 可能性に思い至ったマゼランは、一度電源を完全に落とし、周波数を変え、最高出力で再起動を試し見るのだった。 
 
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