2017年09月30日

第69話バルチスタ大海戦2P2


 神聖ミリシアル帝国 魔導連合艦隊 ミスリル級戦艦 旗艦ロト

 魔力探知レーダーを見ていたエルメラは、友軍機の動きに違和感を感じる。

「ん?」

 眼前のレーダー画面に敵の姿は写っていない。しかし、友軍機の動きは明らかに乱れ、やがて1つの点が大きく光って消えた。

「え!!撃墜!?」

 確か、事前の作戦説明で、敵はムーのような科学技術文明であり、人間程度の微弱な魔力しか発していないため、近距離に近づかないと探知できない可能性を指摘されていた。

「しかし……まさか……そんな!!!」

 画面を見て慌てるエルメラ、どうしても最強たる帝国の……しかも探知されていないはずの、第1次攻撃隊が空中で迎撃を受け、撃墜されたという事に納得がいかない。
 仮にレーダーの故障だったら?この現象が時々起こるレーダーに現れるノイズのようなものだったら?

 ミスリル級戦艦には最高の魔力探知レーダーが積んである。自分の報告で戦場が動く、しかし、もしも敵の侵攻だったらとんでもない事に……。
 彼女が悩んでいた時、次々とレーダー上から光点が光を放ち、消え始めた。

 エルメラは意を決し、報告しようとした矢先。

 ガタッ!

 音をたて、彼女の横にいた魔力通信士が立ち上がる。

「報告!第一次攻撃隊より入電!我、攻撃を受けつつあり!!
 繰り返す、我、攻撃を受けつつあり!!!
 100機近くの敵に襲われている模様!」

「なっ……なんだとぉ!!!!」

 初撃が必ず届くと考えていた司令レッタル・カウランはこちらの動きを悟られていた事に衝撃を受けた。
 エルメラはすぐに報告を行う。

「レーダー上の機影、動きが乱れています。すでに十数機が撃墜された模様。」

「続報入電、友軍機多数撃墜され、劣勢、被撃墜機(敵を撃墜した機数)未だ無し」

 無機質な魔力通信士の言葉は司令の焦りを誘う。

「部隊長カノン、応答しなくなりました。」

「レーダー上、反応すべて消えました。全滅した模様」

 絶句……。
 艦橋にも沈黙が流れた。

「まさか……まさか奴らは質において我が方の機を凌駕するというのか!!!」

 前回の戦いでは、奇襲であったという点と、数で追い込まれたという考えが主流であり、旋回性能が我が方を凌駕していた……や、加速能力において我が方を凌駕していたという報告は、負けた部隊の言い訳として、軍部で本気にしている者は少なかった。
 ただ、相手の戦力を過小評価する訳にはいかず、同等の航空戦力を有すると仮定し、本作戦は立案された。
 ここにおいて航空機の性能優勢が敵にあるかもしれないという事実に、司令は衝撃を覚える。

「参謀!どう考える!!」

 横に立つ参謀は目を閉じ、ゆっくりと口を開いた。

「おそらくは制空型の船……数の暴力でやられたのでしょう。しかし、質も高いようだ……フム……少し被害を覚悟する必要があるかもしれません。」

 司令、参謀等上層部は話を続ける。
 敵、航空機の位置が解らず、そして我が方は空で迎撃を受けるとなると、厳しい戦いが予想されていた。

 古の魔法帝国が開発していると言われる魔力を電力に変換し、その電波を照射、電波の跳ね返りを測定する事によって魔力の無い無機質な物体でも探知可能な兵器、発掘されているにも関わらず、その構造が良く理解出来ないが故に未だ試作段階にも至っていない「電探」が無い事が悔やまれる。

 彼らが今後の方針について熱い議論を交わしていた時だった。

「魔力探知レーダーに反応、微弱な信号をキャッチ、機数1、南西方向!」

 エルメラの報告とほぼ同時に、艦橋上の見張り員より同様の報告が入る。
 やがて艦隊上空に1機の飛行機械が現れた。

「……見つかってしまったか!!!」

 艦隊の位置が敵にバレてしまった。これで、敵は大量の航空機を送り込んでくることだろう。

 現れた敵機はムーの戦闘機のように前部にプロペラと呼ばれる送風機能を持つ機械が高速回転している。しかし低翼で、ムーのそれに比べて圧倒的ともいえる速度で付近を飛ぶ。

「これは……」

 レッタル・カウランは嫌な予感に包まれた。
 初めて見る敵航空機、帝国の天の浮舟に比べても遜色のない速度、しかし、旋回性能や加速性能は、明らかに最新式の天の浮舟を上回っているように思えた。

「思った以上に……これは……手こずりますぞ!!
 まさか……形まで……似ていますな」

「何に似ているというのだ?」

「神話にある、魔帝の生物兵器『魔王』に追い詰められた種族間連合を救った……太陽神の使いが使用していた「神の船」、形が似ているのです。速さも音速の半分程度とたしか伝承にはありましたな」

「神話の話か……仮に敵が太陽神の使いであろうと、神聖ミリシアル帝国は敗北せぬ!」

 横に立つ参謀は、グラ・バルカス帝国の航空機を前に冷汗を流す。
 直営機の迎撃を振り切り、飛行機械は飛び去って行った。

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第69話バルチスタ大海戦2P1

神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊 旗艦 ロト艦橋

 荒れる海、比較的波は高く、通常の船であれば大きく揺られる事だろう。
 しかし、世界一の超大型魔導戦艦を含む神聖ミリシアル帝国艦隊は、海を裂くかの如く揺れずに進む。

 ミスリル級魔導戦艦、旗艦ロトの艦橋から、司令レッタル・カウランは海を眺めていた。

「天の浮舟ベータ3発艦中」

 無機質な声により、報告がなされ続ける。眼前に写る先進的な空母から神聖ミリシアル帝国の剣が放たれた。

 天の浮舟ベータ3型、急降下による敵艦に対する爆撃を目的とする。
 ベータ2型に比べ、機体の大型化、翼面積の増大、エンジンの高出力化により、高威力の爆弾を搭載できるようになった。
 先進的なキャノピーに流線形の機体、しかし翼は第二次世界大戦のレシプロ戦闘機のように横に突き出ている。(後退翼ではない)

 新旧をつなぎ合わせたような機体、日本人が見たならば酷く違和感を感じるだろう。

 護衛にはアルファ3型制空戦闘機が付く。

 神聖ミリシアル帝国は世界の敵、グラ・バルカス帝国軍に格の違いを見せつけ、神罰を下すためにその剣を解き放った。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊 旗艦 グレード・アトラスター

 魔法文明が中心のこの世界から見て、異世界からの転移国家である科学文明国、グラ・バルカス帝国……。
 その技術の推移を集めた機械、他国に対して極秘とされている対空用の電波探知機(レーダー)を見ていた技官は目を丸くする。
 艦隊から北東の方向に、多数の飛行物体が画面に光点として映し出された。

「レーダーに感あり!!北東方向、10時の方向、距離200km、飛行物体多数!!これは……100機を超えています!!!」

 司令カイザルの口元が吊り上がる。
 彼は横にいた作戦参謀に話しかけた。

「見つけたか……どう考える?」

「やはり、先に落とした敵の偵察機はこちらを見つけていたようです。機数からして……空母機動部隊がいるようですな……。
 しかし、敵の位置……神の導きがあったとしか思えませぬ……第3潜水艦隊の近くです。
 迎撃機と偵察機の発艦はもちろんの事として、
第三潜水艦隊の派遣、そして相手の数が判明したならば、比較的距離も近いようなので、戦艦を中心とした打撃部隊も派遣が必要でしょうな。」

「そうだな……まずは迎撃をするとしよう。」

 風上に向かって空母艦隊が爆進する。
 グラ・バルカス帝国は迎撃と偵察のため、アンタレス型艦上戦闘機を発艦させた。



 この世界にとって、恐怖の編隊が空を進む。
 魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの音はカン高く、時速400kmを超える空の進軍……文明圏外国家はそれを見ただけで、撤退の意志を固めるだろう。

 列強と呼ばれし国家の強軍であっても、それを止める術は無い。

 神聖ミリシアル帝国「天の浮舟」部隊長カノンは自らの操るアルファ3型制空戦闘機の中で、グラ・バルカス帝国に対する「初撃」の成功を確信していた。
 編隊の上空約100mから眺める部下たちの編隊は、一糸乱れておらず、誰が見ても練度は高いだろう。

 皇帝陛下から授かった剣、「天の浮舟」は間違いなく世界最高性能であり、彼は自信を強めていった。

「いかんいかん、先の戦いでは敵に遅れをとった部隊がいたらしいからな。」

 かれは戦に油断は禁物だと自戒する。

「ん?」

 微かに影がさす。
 今日は晴天……今飛んでいる空域は雲1つ無い……はず。

 さらにまた、一瞬影がさす。

 カノンは目を細めて太陽を見た。

「敵影!!!」

 一瞬見えた機影……急降下してくる!!!

「敵襲!!!!!!!!!!!!太陽から来るぞ!!!」

 吠えるようなエンジン音と共に、上空から下へ向かう敵が通過する……速い!!
 刀のように研ぎ澄まされた機体、ムーの戦闘機のようにプロペラが前についている。戦闘機の発するエンジン音は、高く、何かが唸っているようにも聞こえた。
 一瞬……美しいと感じてしまう。

 タタタタタタ……

 鈍い射撃音と共に、敵から光弾が放たれた。我が方に比べ、圧倒的ともいえる連射速度……しかしその弾は僅かに放物線を描く。

 飛び行く光弾は、ベータ3型爆撃機に向かって飛翔し、機体の抱える魔導爆弾に着弾、弾は魔力回路を傷つけ、内包された魔力が暴走を始める。
 制御不能に陥った魔力爆弾はその威力を開放、空中に大きな爆発が出現した。

「お……おのれ!!」

 次々と爆発するベータ3、護衛の戦闘機も攻撃を加えようとするが、旋回能力、そして加速能力が我が方を上回る。
 落ち行く飛行機……そのほとんどが……友軍!!!
 魔力通信機からは、狼狽に満ちた声が聞こえて来た。

『くそっ!後ろに回り込まれた!』

『速すぎる!!ちくしょぉぉぉ!!!』

 また1機、部下が炎に包まれる。
 魔信からは悲劇が流れ続けた。

『何て旋回性能だ!!ぐぎっ!!』

 1機が炎に包まれて雲の海に落ちる。

「も……モルアっ!!くそっ!!」

 部下のモルアは先月子供が生まれたと喜んでいた。帰ったら初めて自分の子供を抱けると……。
 奥さんに何て説明すればいいんだ!!!
 考えながらも彼は操縦レバーを動かし続けた。
 やがて照準器の中に敵を捕らえ、引き金を引く。
 通常の機銃音とは異なる、高音と共に連続して光弾が放たれた。しかし、それは敵に当たる事無く空を切る。
 圧倒的な加速力、そして旋回能力を持つ敵に彼は翻弄される。
 不意に機体が大きく揺れ、激しい振動が彼を襲う。反射的に音のした方向を見た。

「しゅ……主翼が!!!」

 片翼を失ったカノンの操る天の浮舟は、バランスを崩し、機体を回転させながら雲の海に落ちて行った。


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2017年08月16日

第68話 バルチスタ大海戦P5


◆◆◆

 バルチスタ海域 北側

 神聖ミリシアル帝国 第1魔導艦隊 旗艦 ミスリル級戦艦 ロト 

「数が多いため、数パーセントとはいえ結構やられたな……。」

 艦隊司令レッタル・カウランが、艦長タグスに話しかける。

「はい、今回の攻撃ではムーの空母に轟沈と大破が出ています。やはり侮れない敵ですね。」

「しかし主力は我々だ。今回の戦力比は我々が95%、残り5%が世界連合艦隊と言っても差し支えない。」

「報告します!!!」

 話を遮るように通信員が声を上げる。

「第6偵察隊より入電!!敵艦隊発見!!戦艦10、空母9、巡洋艦約40、小型艦多数!!大艦隊です!!!」

 艦隊司令レッタル・カウランの口元が吊り上がる。
 規模からしておそらくは敵の主力……。

「ついに見つけたぞ!!よくやった!天の浮舟発進!!敵を……殲滅セヨ!!」

 現代の日本人が見ても一見して先進的に見える空母……。
 その空母から多数の攻撃隊が発艦してゆく。
 
 様々な思惑を載せ、戦場は動き続ける。

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