2017年11月12日

2巻特典その2 イーネ日本へ行く

『イーネ、日本へ行く』

■ クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク ハガマ邸 書斎

 マイハーク防衛騎士団団長イーネは軍令部から呼ばれ、クワ・トイネ公国東部諸侯の1人、マイハーク市政のトップであるハガマ卿の邸宅を訪れていた。
 書斎に通されると、ハガマ卿は挨拶もそこそこに本題を切り出した。

「実は今度、我が国の文化や軍事を紹介するために、日本国へ親善大使を派遣することになってな。そこで貴族出身者の中から親善訪問団を作ることにしたのだ。君も貴族の家系だし、若い女性の騎士というのも珍しい。是非加わってくれんか」

「……はっ。承知しました」

 ハガマ卿は日本国自衛隊を招いた晩餐会の主宰で、大内田和樹陸将とも交流していた。その席で、大内田がイーネのことを褒めていたのを聞き、わざわざ抜擢したのである。
 そうとは知らないイーネは、マイハーク防衛騎士団の代表として、同じく貴族出身の部下キースとともに日本国に向かうことになった。

■ クワ・トイネ公国北部海域 約100q洋上

 帆船20隻が船団を組んで航行する。
 日本から送迎の提案があったが、公国にもプライドがある。申し出を丁重に断り、自前の軍船団を編成して出港した。
 今回の訪問には、ワイバーン3騎、馬20頭、歩兵100人が随行する。クワ・トイネ公国に竜母はないので、物のように運ばれるワイバーンや馬たちには相当な負担だろう。
 夕日に照らされる軍船の最上甲板で、イーネは北の方角を眺めていた。

「どんな国なのかなぁ……」

 日本国が強いのは聞いているが、実際に戦闘を見たわけではないのでピンとこない。
 どこか幻想じみていて、しかし確かに存在する、クワ・トイネ公国をロウリア王国の魔の手から救ってくれた――そして大内田陸将の生まれ育った国。

「団長……」

「わっ! な、何だ?」

 物思いに耽っていると、キースが横にやって来た。

「もう日本国の将軍を逆ナンパなんてしないでくださいよ。晩餐会のときは気絶までしちゃって……」

「なっ――あ……あれは違うんだ! あれは……」

「あんなことをしなくても大丈夫ですよ。団長は可愛いんだから、もう少し優しくなるだけできっと嫁の貰い手もありますって」

「何だってぇぇぇ!!」

 ぷんすか怒るイーネを背に、キースは意地悪く笑う。

「面白いなぁ。いじり甲斐がある」

 日本国の領海に入って数日後、海上保安庁の巡視船が船団の前と左右に付いて誘導を開始した。仮にも軍艦なので、日本国の東京から一番近い海上自衛隊の横須賀基地へと向かう。

■ 出港から2週間後 明け方

 イーネは霞んだ水平線の向こうから、徐々に大きな山や陸地が近づいてくる光景を眺めていた。

「わぁ……すごい!!」

 沿岸部には巨大な港湾施設が広がる。マイハーク港に日本の民間業者が巨大なクレーンを並べ始めたときは目を丸くしたものだが、横須賀基地はその比ではない。
 そして誘導してくれた巡視船より、もっとスマートで強そうな軍艦がずらりと停泊していた。その先には高層建築物が立ち並ぶ町も見え、異国に来たことを実感する。

 イーネたちが上陸して3時間後。横須賀基地において、文化交流も兼ねた式典が始まる。
 初日は基地が一般開放されたため、多くの民間人が訪れた。クワ・トイネ公国の軍は彼らにとっても珍しいらしく、兵たちの模擬格闘訓練や魔導師のファイアーボールを応用した花火の実演は、多くの者たちの興味を強く引いた。
 一方、イーネやキースはというと、なまじ顔がいいため記念撮影のマスコットとして八面六臂の活躍を強いられていた。この一日で一生分の作り笑いをして、夜にホテルの大浴場に入るまで、顔面は引きつったままだった。

■ 同日夜 横浜市内 ホテル ロビー

「イーネ団長ぉ」

 間の抜けた女性の声が、大浴場から自室に戻るイーネを呼び止めた。

「あれ……ミーちゃん?」

 イーネが振り返ると、マイハーク騎士団本部の受付嬢、ミーちゃんことミーリがいた。
 彼女の真似をして偶然大内田陸将を逆ナンパしてしまったことを思い出し、顔から火が出そうになる。

「どうしたんです? 突然顔真っ赤にして」

「う、ううん。何でもないの」

 彼女も親善訪問団の1人である。日本での広報員として抜擢されたらしく、イーネとは違う場所で引っ張りだこだそうだ。何故か猫の獣人なのがやたら受けているとミーリは言う。

「で、日本の男性に教えてもらったんですけどぉ、近くですっごく甘くておいしいものが食べられるらしいんですよぉ。団長も行きませんかぁ?」

「甘くておいしいもの? こんな夜中でも営業してるの?」

「なんかぁ、一日中やってるらしいですよぉ」

「一日中……従業員は倒れないのかしら。じゃ、私も行こうかな」

 政府から現地活動資金として支給された日本円がある。日本の食文化を探るために、と自分への言い訳を考えながら、甘いものが大好きな2人はスイーツのあるファミリーレストランへ出かけた。

■ 横浜市内 某ファミリーレストラン

「んー! 美味しいですぅ!」

「確かに……すごくおいしい!!」

 2人の前には、こぢんまりとしたパフェが並ぶ。
 控えめで上品な甘さのふわふわした何かと、新鮮なフルーツのほのかな酸味が、絶妙なハーモニーを醸し出している。

「こんなにおいしいものが世の中にあるなんて……!」

 初めて食べる甘い食べ物に、貴族という立場を忘れ、イーネはばくばくとスプーンを進めた。

「店員さーん! おかわり――!!」

 イーネが大きな声で店員を呼びながら満面の笑みで振り返る。
 その瞬間、イーネの後ろの席を立つ人物を見て固まった。

「あ」

「あれ? お久しぶりです、イーネさん」

 忘れもしないその顔は、大内田である。どうやら部下2人と一緒に食事していたようだ。

「あの……お久しぶり……です」

「日本はいかがですか? ……と、聞くまでもありませんね」

 にこりと笑みを見せる大内田に、イーネは顔を真っ赤にして俯く。口の周りはクリームがいっぱい付いていて、真っ白に汚れてしまっていたのだ。

(何てことだ……えらいところを見られた……)

「こちらの女性は?」

 大内田の部下の男が、大内田に尋ねる。

「クワ・トイネ公国マイハーク防衛騎士団のイーネさんだ」

「ああ、以前大内田さんがお話していた方ですか。確かに、素敵な女性ですね」

 微笑む男たちの様子が、イーネの心を余計にえぐる。

「では、私はお先に失礼いたします」

「あ、はい……」

 イーネは取り繕うこともできず、ひどく落ち込む。
 それを見た大内田は、足を止めてイーネに話しかけた。

「日本での滞在はいつまでですか?」

「えと、あと3週間ほどです」

「親善訪問団がお泊まりの場所は、プリンセスホテルでしたっけ。前に教会に連れて行っていただいたお礼と言うと何ですが、今度は私に日本国の観光名所をご案内させていただけませんか? 休みが合えば、ですが」

「は、はい! 是非!!」

 目を輝かせて返事するイーネに、大内田も嬉しそうに頷いて立ち去った。
 その後ろ姿を、いまだクリームで口の周りを白くしたまま、無垢な少女のようにボーッと眺めるイーネ。

「だ……団長!? 今のイケおじ様はどなたですか!!?」

 いつもののんびりした口調をすっかり忘れたミーリが、イーネに机越しに詰め寄る。

「クワ・トイネ公国救援部隊の指揮を執った、陸上自衛隊の猛将、大内田陸将よ」

「大内田陸将……ってあの外国人なのに国から貴族の称号をもらったあの人ですよね!? 団長、手が早いです!! しかも教会ってディスウール教会ですよね!? 完全にデートスポットじゃないですかぁ! 男慣れしてなさそうな顔して……そういう戦略だったんですね!! ぐぎぎぎ……!!」

 ミーリの目が怖くて、イーネもドン引く。

「そ、そんなんじゃないから!!」

 後日、イーネと大内田は「日本国が異世界に転移後、初の世界を超えてデートした人物」として『世界面白歴史書』(宝大陸社刊)に刻まれるのだった。
 また、ミーリは本格的に日本で仕事をするようになる。来日したイーネを隙あらば食べ歩きに連れ回し、大内田との進展状況を根掘り葉掘り聞きまくって、イーネをうんざりさせたという。
タグ:日本国召喚
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2017年11月10日

2巻特典その1 虚構の英雄

『虚構の英雄』

■ ロウリア王国 王都ジン・ハーク

 ロデニウス大陸統一を目論んだロデニウス戦役は、失敗に終わった。
 北方の海域に突如出現した日本国が参戦し、その圧倒的な魔導を前にロウリア王国軍は壊滅的被害を受け、王が日本国に逮捕されたことにより力の統制が崩れた。
 ロウリア王国は各諸侯が所領の統治権を回復し、にらみ合う事態となっている。パーパルディア皇公国への返済、クワ・トイネ公国と日本国への賠償に追われ、王国の国力は疲弊し始めていた。
 敗戦の混乱が次第に落ち着き、共和制への移行が進む中、戦争の経緯などを知らない国民や兵士たちは、相次ぐ増税に苦しんでいたものの、とりあえずは食うに困らない程度の治安と経済状況を保っている。
 軍は将軍パタジンが中心となって、大幅に削減された軍事費で必死に再建に取り組んでいた。

「ターナケイン! 軍部のお偉いさんが呼んでいるぞ!」

 竜舎の施設課長が、竜騎士団唯一の生き残り、ターナケインを呼んだ。

「はーい! すぐに行きます!」

 ターナケインは戦後、紆余曲折あって、ロウリア王国軍竜騎士団の総長に最年少で昇格した。新たなワイバーンと竜騎士の育成のため、毎日必死で職務に明け暮れている。

「お前は王国兵で唯一、日本軍に一矢報いた竜騎士だからな。何か褒賞でも出るんじゃないか?」

「どうですかね。軍部の窮状を知っている以上、あまり楽観できませんよ」

「それもそうだなぁ……候補生はどうだ?」

「……まだまだですね。テストライダーを正式採用したいぐらいです」

「この国の未来はお前たち若者にかかっているからな。何とか頑張ってくれよ」

 課長に苦笑いで返し、竜騎士団本部を出るターナケイン。軍の迎えの馬車に乗り、片道約2時間のハーク城へ向かう。

■ ハーク城 王都防衛騎士団 幹部会 議場

 王都防衛竜騎士団は、王都防衛騎士団の下部組織である。防衛騎士団の上位にロウリア王国軍があり、三大将軍などは王国軍の所属である。パタジンは王国軍将軍と、防衛騎士団総長を兼任している。
 つまりターナケインは竜騎士団の総長だが、中間管理職なのだ。
 防衛騎士団本部の最奥にある、議場の重厚な扉を開いたターナケイン。
 中には厳しい顔をした軍幹部が座っていた。

「よく来たな、ターナケイン君。掛けたまえ」

 ターナケインが椅子に腰掛けると、幹部はためらいがちに口を開く。

「単刀直入に言おう……日本国が君を捜している。この意味がわかるな?」

 日本国の鉄龍に唯一有効打を与えた兵を、日本国が探している。おそらく搭乗者が被害を受けたか、もしくは搭乗者が貴族か。いずれにせよ、いい話では決してなさそうだ。

「……私はどうすれば?」

「拘束せよという命令は来ていないので、しばらくは普段通りに過ごしていいそうだ。後日、案内が届くらしい。それに従って日本に行ってくれるか」

 国のために、侵攻してきた敵を相手に命をかけて戦った。
 そして敗北の結果がもたらしたのは、敵国への身柄引き渡し。
(組織は個人を守りはしない。都合が悪くなれば切り捨てるのみか……)
 勝てばいい。しかし、負ければすべての権利が奪われる。それがこの世界の常識である。

「すまない……勝っていればこうはならなかった……」

 幹部は若き竜騎士に、申し訳なさそうに謝罪した。

■ 数日後

 ターナケインの家に、一通の封書が届いた。
 ロウリア王国で出回っている物とは明らかに異質な紙に、大陸共通言語で無機質な文字が書かれている。

「ん? 『式典』のご案内?」

 手紙を読み進めると、送迎の日時やその後の行程が詳細に書かれている。しかも不可解なのが、帰国の日時、そして場所までが記載されていた。

「どういうことだ?」

 ターナケインは一瞬淡い期待を抱きかけたが、歴史上、こういった甘言で要人を誘い出して処刑した例はいくらでもある。
 引き継ぎ作業を進め、その日を待った。

■ さらに数日後

 育ててくれた親に今生の別れを告げ、ターナケインは日本国の用意した『自動車』と呼ばれる乗り物に揺られていた。
 馬が牽いているわけでもないのに、荷馬車のない馬よりも速く地面を疾走する。
 国境を越えてクワ・トイネ公国に入ると、荒れた大地が急に緑に覆われ、大穀倉地帯が姿を現す。
しばらく走った場所に、大量の墓地が見えてきた。

「あ……あれは?」

「ギムの住民のものですよ。ほとんどの住民があなたの国に虐殺されたので、町の近くに墓地を作ったんです」

 日本人の運転手は、抑揚のない声で答えた。続けて、ロウリア王国がこれまでに侵略戦争を繰り返していたことも語って聞かせた。
 絶句するターナケイン。
 今回の戦いは、本来自分たちのものだった土地を取り戻すための、正義の戦いだと聞いていた。
 しかし、非戦闘員を一方的に虐殺しているなんて知らなかった。
 彼は、「これはいよいよ命はない」と覚悟する。
 
 城塞都市エジェイに到着し、自衛隊の基地で一泊したターナケインは、翌日、今度は『飛行機』と呼ばれる物体に乗せられ、日本国に向かって飛行していた。
 眼下には地面に張り付くような雲が見え、凄まじい高度と速度で飛行していることを実感する。
 絶対迎撃不可能領域。
 おそらくは列強国ですら、この乗り物を墜とすことは不可能であろう。身をもって感じる国力差である。相手の力を分析せずに戦いに走った上層部に、怒りすらも感じてしまう。
 搭乗して4時間ほど、ようやく飛行機が高度を下げ始めた。
 驚きのあまり体感時間は短かったが、機内説明では本当に、たったの4時間で着いてしまったらしい。
 機が徐々に高度を落とし、見たこともない町の景色が広がる。やがて王国では考えられないほどの、広大で長い滑走路に着陸した。
 ターナケインは瞼を閉じる。人生を振り返りながら、クワ・トイネの民への謝罪や先に逝った先輩たちの顔を思い浮かべる。

(間もなく最期を迎えるのか……親父もおふくろも泣いていたな……)

「よし!」

 覚悟を決め、日本人に案内されて外に出る準備をする。途中、同行していた日本人が何かを説明していたようだが、頭の中がいっぱいで、何を言っているのかよく聞き取れなかった。
 ガコンッという音とともに、飛行機の重厚な扉が開かれる。

「くっ……!」

 太陽の光が強く差し込み、ターナケインは目を細めた。

「――え!?」

 盛大な拍手と歓声が湧き起こる。
 日本人の歓迎を受けたターナケインは驚いて、後ろに人がいるのかと振り返った。

「ターナケインさん、ようこそ日本へ。さあ、どうぞこちらへ」

 連続する閃光を浴び、何が起こっているのか理解できないまま、彼は案内に従って飛行機から降りる階段を歩く。

『今回のロウリア事変で、単騎で戦闘ヘリの編隊に突入し、一矢報いたロウリア王国の竜騎士……ターナケインさんです!!』

 大きな声が流れる。
 やがて見覚えのある鉄龍の前に誘導された。鉄龍の前部が一部焼け、塗装が剥げている。その前に2人の男が立っていて、にこやかな表情を浮かべていた。

「パイロット……操縦士の山根です。貴方があのときの竜騎士さんですか」

「……はい」

「勇敢な方ですね。まさか単機で、戦場の煙に紛れるほどの低空飛行で飛んでくるとは思いませんでした」

 山根が手を差し出す。
 先輩たちを殺し、相棒を葬った憎き敵のはずなのに、何故か憎悪の感情は生まれなかった。
 日本の軍人も、命令で国のために動いていたに過ぎないからだろうか。
 3人は堅い握手を交わす。
 ターナケインはこの時、日本国が自分を殺すことはないと悟った。敵国の兵を「勇敢」と称えるなど、日本国民は他の国の者たちとは完全に異なる考え方をしているのだろう。
 実際は、政治的意図があって開催された行事であったが――

 後日、ターナケインは日本国の軍事戦術を学び、現代戦におけるワイバーンの効果的な航空戦術を編み出すことになる。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 18:23| Comment(182) | 小説

2017年11月06日

第70話バルチスタ大海戦3P4


◆◆◆


 グラ・バルカス帝国第1打撃群 旗艦ベ・テルギス

 艦隊はすでに戦闘態勢に移行し、万全の状態で敵を迎え撃つ。
 司令カオニア、参謀バーツはまだ何も見えぬ水平線を睨みつけ、艦橋の各員も最善の仕事を行うため、任務に集中する。

 通信士シアノスは本隊からの暗号通信及び各種周波数で流される無線を聞き逃すまいと、通信機に意識を集中させていた。

『……の諸君』

 !?航空機のやりとりを行う無線周波数帯に、戦場にあるまじき声が聞こえたような気がした。

『グラ・バルカス帝国の諸君』

 はっきりと聞こえる無線の声、把握してる最寄りの敵機の位置はまだ艦隊から遥かに離れている。

「……なんて出力だ!」

 あまりにも高出力の無線に彼は驚愕する。
 明らかに語りかけて来るその声、異常な事態、彼は迅速的確に報告を行った。

「敵船から航空用無線周波数帯で通信が入っています!!!」

 どうやって我が国の無線周波数を割り出したのか、微かな疑問を抱きつつ、司令カオニアは無線機まで足を運ぶ。
 自分からっ無線を発する行為は敵に自分の位置を教える事になる可能性があるが、すでに敵大型航空機は真っ直ぐにこちらに向かってきており、位置はすでに敵に知られているものだと考えられた。
 本体との無線でのやりとりも頻繁に行っており、無線封鎖をする必要性が無く、彼は無線機を手に取る。

「貴君はだれだ?所属と階級、氏名を述べよ」

『やっと無線に気付いてくれたのか、君たちは魔導通信が使えないので大変だよ……。
 私は神聖ミリシアル帝国対魔帝対策省、古代兵器分析戦術運用部、空中戦艦パル・キマイラ艦長メテオスという』

「我々に何の用だ?」

 空中戦艦という言葉、自分たちは巨大な航空機と考えていたが、仮に戦艦並みの防御力があった場合はとんでもない事になる。
 司令カオニアは、額に汗をかきながらメテオスに問う。

『なに、君たちに忠告をしようと思ってね』

「忠告……だと?」

『私はね……弱気者を一方的に虐殺するほど趣味は悪く無いのだよ。
 全滅する前に、尻尾を巻いてとっとと帰りたまえ。
 この、君たちにとって救いとも言える言を、本隊にも伝え、レイフォル地区からさっさと逃げるのだよ。
 もう一度言おう……私はね、弱き者を一方的になぶるほど悪趣味ではない』

 仮にグラ・バルカス帝国の前世界に住まう国の者がこの通信を聞いたなら、グラ・バルカス帝国を見下すこの言動をした国が焼き尽くされないか心配し、祈ることだろう。

「我々がそんなこけおどしで撤退すると思っているのか?」

『私が今乗っているのはね……古の魔法帝国……かつて恐怖により全世界を配下に治めたラヴァーナル帝国の船なのだよ。
 君たち文明圏外の猿どもでも、その意味は理解出来るだろう?
 それとも、君たちは力の差すら理解出来ない愚か者なのかね?
 君たちの飛行機械は、あれだけ数がそろっていながら、我が艦1隻に損傷を与える事無く全滅したのだよ?』

「過去の遺物を信仰し、未来へ目を向けぬ貴様らなどに負けはせぬ」

『魔力を持たぬ君たち如きが我が帝国に食い下がったのは褒めてやろう。
 だがこれまでだ。魔力無しでは決して決して届かぬ領域に我らはいるのだよ。
 神聖ミリシアル帝国に逆らった愚か者よ、私の最後の慈悲だ、撤退したまえ』

 沈黙……あまりにもバカにした言葉に、歴戦の猛将である司令カオニアは無線機を手放し通信士に渡す。

「おい、シアノス通信士」

「はい」

「馬鹿めと伝えてやれ!」

「はい?」

「聞こえなかったのか……馬鹿め!だ」

「は……はい!!」

 シアノス通信士は発信ボタンを押し込み、はっきりと発言した。

「バカめ!!」

 神聖ミリシアル帝国空中戦艦との通信は終わった。

 古の魔法帝国(ラヴァーナル帝国)の超兵器、空中戦艦パル・キマイラはグラ・バルカス帝国連合艦隊第一打撃群36隻を滅するために侵攻を続けるのだった。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 23:05| Comment(426) | 小説