2017年08月13日

1巻特典その1

■ ロウリア王国東方征伐海軍 海将 シャークン

 戦場に爆炎と悲鳴がこだまする。
 ロウリア王国竜騎士団の波状攻撃をあっさりと防いだ日本国の艦隊は、その圧倒的ともいえる牙を、ロウリア王国の艦隊へ向けていた。
 大きな音が海上に鳴り響くと、ほぼ同時に味方の軍船が爆散、轟沈する。
「ちくしょう!! 化け物どもめ!!!」
 このままでは軍船4400隻、総兵力14万人にも及ぶロウリア王国の主力艦隊が全滅してしまう。
「……ここまでか……」
 国に帰ったら無能のレッテルを貼られ、死刑となるだろう。しかし、それでも多くの兵たちを救うために彼は決断する。
「全軍撤退せよ。繰り返す、全軍撤退せよ」
 魔力通信で、友軍に撤退命令を下した。
 シャークンが搭乗する旗艦も回頭を始めるが、直後に何かに押されるような感覚に襲われる。海水が口に入り、彼が意識を取り戻したとき、その目には旗艦が真っ二つに折れて沈みゆく状況が写る。
 ロウリア王国東方征伐海軍海将、シャークンは海に漂いながら、友軍が撤退していく状況を眺めていた。
 撤退を開始した途端、敵からの攻撃が止まり、撤退完了後は海に生存者たちを吊り上げているようだった。おそらく、将である私は捕まれば拷問を受け、情報を引き出したのちに、兵の志気を鼓舞するために首を刈りとられるのだろう。我が国ではそうする。即座に撤退して死刑になったほうが楽だったかもしれない。
「まったく、ついていない……だが」
 我が海軍をここまで追い詰めた日本国とはどんな国なのか、一体どのような兵器を使用しているのか、好奇心が勝った。あわよくばその一端に触れられるかもしれない。
 シャークンは、近づいてきた大型船に救助された。

 シャークンたちは武装を没収され、船の甲板に座る。目の前には日本国の兵と思われる男が立ち、こちらを睨むように見つめていた。
 ケガをしている者たちは別の場所に連れていかれたようであるが、もしや生かすか殺すかの選別が行われているのだろうか。
「この中で、指導的立場の者はいるか?」
 敵兵の一人が声を上げる。
 味方の兵たちが、一斉にシャークンへ視線を集めた。
(……やはり隠せぬか)
「私が指揮していた。ロウリア王国東方征伐海軍、海将シャークンだ」
 敵の目が見開かれる。
「では、こちらへいらしてください」
 他の護衛の兵とともに、シャークンは船の中へ通された。
 船内は太陽の光が差し込まないのが常識だが、この船の中は昼のように明るく、快適そのものだ。ロウリアの軍船とは別格の技術力で作られた船であることは疑いようがなく、そこでようやく魔導船であることに気づいた。
 ある部屋に通され、中には日本国海軍の指揮官と思われる人物が座っていた。
 連行されたシャークンを前に立ち上がると、敬礼で迎える。
「まさか、あの大艦隊の海将殿にお目にかかれるとは思いませんでした。本来の戦争であれば、我々はあなた方を捕虜として扱いたいと思いますが、日本国政府はあなた方を武装勢力と位置付けています。処遇については現時点で私の口からは何とも言えませんが、日本国に移送するまでの間、身の安全は保障いたします」
 当面は拷問を受けないとわかっただけで、シャークンは安心する。
「貴国は強いな……このような魔導戦艦を持っているとは。列強国は文明圏外国家に武器を売っていなかったと記憶している。いったい何処から購入したのかね?」
 シャークンは、この船を列強国から購入したものだと考えていた。もしかするとパーパルディア皇国と敵対する列強国が、代理戦争のために売ったのかもしれない。
「? この護衛艦は我が国で造られたものですよ。それに魔導戦艦とは何なのか、よくわかりませんが……しかし、この護衛艦のような船を持つ国がこの世界にもあるのですね」
「馬鹿な……文明圏外国家で、このような船を造れるはずがない!!」
「そう言われましても……まあ、今からあなたは我が国に移送されます。我が国をその目でよく確かめてから、判断してください」
 シャークンはまだ聞きたいことがあったが、質問は強制的に打ち切られた。

■ 後日 ロデニウス大陸でベストセラーとなった本「海王戦記」より(一部抜粋)

 日本国に連れてこられた私が最初に見たものは、天を貫かんとするほどの高層建築物が大量にそびえ立つ姿だった。
 列強国を遥かに凌ぐ、人が造ったとは思えない構造物群の脇を、『高速バス』と呼ばれる馬の全力疾走よりも圧倒的に速い乗り物によって駆け抜ける。乗り物はそれほどの速度で走っているにも関わらず、揺れは少なく大変快適であった。
 やがて私は強制収容所に収容された。我がロウリア王国の強制収容所とはまったく似つかず、空調が完備された清潔な空間だった。海将としての特別待遇ではなく、他の乗組員も同じ空間で暮らし始めた。食事も上等で、真に先進的な国とは、捕虜の扱い一つとっても大変紳士的なのだと思い知らされた。
 拷問は法律で禁止されていると聞いて安心した私は、この国の軍事力について情報収集を行い、あまりにも無謀な戦いを挑んでいた現実を知る。
 この国、日本国は今後世界に出るだろう。その時は世界の常識、列強国と衝突することも十分に予想される。
 世界の無知は悲劇となってその国を襲うだろう。
 ロウリア王国と日本の戦闘が集結し、何度か尋問を受けたあと、私は解放された。
 生きて帰れたことが奇跡であり、この生を神に何度も感謝したものだった。
 
 ロウリア王国海将シャークンは、日本との戦闘終結後帰国し、晩年は世界に名を轟かせる強靭な海軍艦隊創設の立役者となった。
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2017年07月29日

2017年07月12日

第67話 大戦前夜 P4

◆◆◆

 第2文明圏、ムー大陸北方 バルチスタ海域 グラ・バルカス帝国海軍

 大艦隊が東へ向かっていた。
 現代の日本人がそれを見たならば、ため息が出るほどの力強さを感じるだろう。
 帝国海軍の誇る戦艦や重巡洋艦の主砲は、海上自衛隊の所有する護衛艦の主砲よりも遥かに大きく、そして力強く見える。

 上空には数多くのアンタレス型艦上戦闘機が一糸乱れぬ編隊を組み、上空で警戒を行っている。
 艦隊も乱れは無く、異世界軍主力艦隊と戦えるとあって、兵たちの志気も高い。

 幸いにして空は晴れ渡り、見通しも極めて良好だった。

 グラ・バルカス帝国の誇る最大にして最強の戦艦、グレードアトラスターの艦橋において、艦長ラクスタルは海を睨む。
 かつてないほどの嫌な予感がする。

「副長……気を引き締めろ、本戦いは今までのように一筋縄ではいかない気がする。」

「戦いに油断は禁物であるため、心してかかります。しかし艦長、油断は決してしませんが、我が国の優位性は揺るがないと考えます。何か気になる事でも?」

「……カンだ。長年のカンがそう告げている。」

「怖いな、艦長のカンは良く当たる。」

 2人が話していると、通信兵が声をあげた。

「報告いたします。最前列艦前方1時の方向、250km先海域に、敵の大艦隊を発見、第1次攻撃隊が発艦準備を開始しました。」

「ついに戦闘だな……。」

 ラクスタルの眼光が鋭くなる。
 グラ・バルカス帝国海軍はバルチスタ海域において、世界連合艦隊を捕捉した。

 後に壮絶な戦いと記録された「バルチスタ海域の戦い」が幕を開ける。


タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:08| Comment(1796) | 小説