2020年02月20日

第99話 超空の要塞P2



「敵の攻撃は防げないという事が解った。弾切れの可能性は無いのか?」

「考えにくいだろう」

「我が方は大艦隊だが、敵が弾を1000発用意できないとは思えない。相手の位置が全く解らないのであれば戦いようも無いぞ。
 このままでは、この帝国連合艦隊が!!栄えあるグラ・バルカス帝国海軍が手も足も出ずに……全滅する可能性すらある!!」

「敵基地の位置すら解らないのか?」

「それについてですが!!」

 さきほどの報告者が発言する。
 話の途中で幹部から割り込まれたため、発言の機をうかがっていたのだった。

「本国から入電がありました。
 敵はロデニウス大陸のロウリア王国基地、クイラ王国基地及び、島国ナハナート王国基地から飛び立ち、攻撃してきたと現地諜報員から報告があったと……」

「と、言うことは……」

 カイザルの目が光る。
 
「軍本部に連絡、リーム王国駐留艦隊は即時日本国へ向かい出撃。リーム王国内の陸軍航空隊については、王国内空港から離陸し、日本本土へ攻撃隊を差し向けよ。
 王国の艦隊も戦力にはならんだろうが、使え。
 数があることに意味がある。
 それと、本国軍へ、超重爆撃連隊の派遣を要請、同時攻撃を行うよう伝達せよ。
 我が艦隊にあっては、このままナハナート王国を目指し、日本軍基地を攻撃する!!」

「しかし、チエイズとグルートでの補給無しでは日本本土まで航続距離が届きませぬ!!」

「解っている。リーム王国から帝国海軍が出撃し、陸軍航空隊も出撃し、さらに超重爆連隊も来たとなれば、奴らは本土防衛を優先せざるをえない。
 他にも攻撃があってはならないため、弾薬に限りがあるなら本土防衛にまわすだろう。
 チエイズとグルートで我が軍が補給してから行くと、日本軍にも補給の時間を与えてしまう。
 敵は我らを研究している。当然奴らも我が方が補給を行った後に来ると想定して作戦を組んでいる事だろう。
 ならば、奴らに補給の時間を与えず。先行してリーム王国からの出撃をさせることによって奴らの戦力集中を阻害し、大艦隊をもってナハナート前線基地をたたく。
 これが成功せぬなら、今の技術格差では何をやっても成功せぬだろう。
 ナハナート王国攻撃後は一度チエイズとグルートで補給を行い、今後の作戦を考える事とする」

「本土やリームからの攻撃こそが囮……と申されるか」

「超重爆連隊ならば、もしかすると日本の攻撃が届かない可能性があるかもしれない……。それに、日本国がリーム本土を攻撃するのかも興味がある。
 今後の運営に関して参考になるだろう」

「自国の本土へ攻撃隊を送り込んできた国を攻撃せぬ訳がございません」

「普通は……な。情報局の断片情報だが、あの国は特殊だ。
 今まで我が方が……日本国に対して驚異評価を低く見積もっていたのも、あの国独自の外交方法があったからだ……まあ良い。
 少なくとも奴らに大きなダメージすら与えずにやられるようなことはせぬ!!」

 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊司令長官、猛将カイザルは燃料補給無しでナハナート王国に向かい、突き進む事を決意するのだった。

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第99話 超空の要塞 P1

「駆逐艦ツルギ、メイロ、メロス轟沈、巡洋艦ベスト、ドリップ轟沈」

 艦隊からは上空へ向かい、猛烈な対空砲が吹き荒れる。
 前世界ユグドにおいても、今世界の竜騎士や、神聖ミリシアル帝国の天の浮き船であっても容赦なく撃ち落としてきたグラ・バルカス帝国の対空砲火が全く当たらない。
 艦隊の様々な場所で艦に着弾したミサイルが爆発し、火球が出現する。
 撃沈、轟沈が速すぎて、もはや報告も追いつかず、何が沈没したか把握できないほどの惨事になっていた。

 通信網からは、報告なのか悲鳴なのかも判別できないほどの怒号が聞こえる。
 
「もはや……これまでだな」

 ミレケネスは、理不尽な戦力比に自分の力の無さを痛感する。
 次の司令を発しようとした瞬間、艦首に対艦誘導弾が着弾した。

 目も眩む光が出現し、轟音と共に艦が激しく揺れた。

「きゃっ!!」

 悲鳴が聞こえた。

「み……ミレケネス様あぁぁぁぁぁ!!!」

 爆発は、艦橋の構造物の一部を破壊し、艦が激しく揺れたため、ミレケネスは海へ落ちてしまう。
 冷たく、暗い海に投げ出され、海水が口に流れ込む。
 どちらが上かも解らずもがく。
 冷たく、息が出来ずにパニック状態となった。
 やっと顔を海上に出し、浮いている艦の破片に必死で捕まった。

「皆……私の力不足だ……すまない」

 彼女の目の前には、対艦誘導弾の連続着弾によって爆発炎上する旗艦バルサーの姿があった。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 連合艦隊 旗艦グレードアトラスター

「失礼します」

 会議室の扉がノックされ、帝国軍人幹部が入ってくる。

「一報が来たか?」

 帝国3将のうち、最も位の高いと言われる軍神カイザルは、幹部を睨み付けた。

「はっ!!」

「どうなった?」

 ペーパーによる報告書を作る前に、迅速を有する情報は口頭で幹部に伝えられる。

「本日夕刻、先遣第1艦隊と、第2艦隊が日本国軍から攻撃を受けました。
 何処から攻撃されているのか解らないようなロングレンジ攻撃であり、敵は……誘導弾を使用したとの事です。
 飛行機に対しても、そして艦船に対しても誘導し、確実に着弾する攻撃を行ってきたと……。
 なお、日本国の誘導弾に対し、先進技術実験室が開発した誘導弾欺瞞装置は全く効果無、く、先遣第2艦隊は全滅、第1艦隊は駆逐艦9隻を除いて……全滅いたしました。
 海将ミレケネス様の生死は不明です」

「なんだって!!??」

「先遣艦隊は大艦隊だぞ!!それが全滅だと??ありえない事だ」

「何と言うことだ!!」

 場がざわついた。
 カイザルは、沈黙のまま考える。 
 主力に次ぐ大部隊。それが戦艦、空母を含む440隻の大艦隊が事実上の全滅をしたという事実。
 海軍本部の最悪の想定は本当だった。 
 敵は誘導弾を使用し、その弾は100発100中の命中率を誇るという。

 これは、故障しなければ当たるという事だろう。

 駆逐艦や巡洋艦を100隻作るより、多少高価だろうが弾を100発作った方が安いに決まっている。
 敵の位置は捕らえられていない。と言うことは、敵は我が方よりも優秀な目と耳を持っており、さらに遠くから狙い撃ち出来る武器まで持っている。

 今すぐにでも撤退したい所だが、日本懲罰は帝王府の命令。

 と言うことは皇帝陛下の命令という意味であり、主力部隊がすべて健在にも関わらずに撤退するという選択肢は無かった。
 帝王府職員は軍事の素人。準備に準備を重ねた大艦隊の主力部隊を温存して撤退などしたら、軍幹部は全員罪に問われるだろう。

 つまり、進むしか選択肢は無く、皆それを理解していた。
 会議は続く。


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posted by くみちゃん at 21:03| Comment(38) | 小説

2020年02月19日

5巻特典 ムー人の考察

タイトル『こちらムー統括軍情報通信部情報分析課』

■ 第二文明圏 ムー オタハイト

 ムー統括軍情報通信部の技術士官マイラスは、今日も他国の兵器について研究していた。
 新年度の配属で来た新人の女性部下、カーナが彼の隣に席を並べ、先輩を手本にしつつ手伝っている。
 マイラスの目の前にあるのは、アニュンリール皇国の研究資料だ。

「アニュンリール皇国は、どう考えても国土の大きさに対して文明が低すぎます。過去に吸収された南方世界の国家には、今のアニュンリール皇国より技術力が高かった国も含まれていますよね」

 新人と思えないほど快活な口調のカーナに、マイラスは内心頼もしさと面白さを半分ずつ抱く。

「確かに、情報部もアニュンリール皇国本土に関しては何も掴んでいない。探りを入れようとすると何らかの事故や行方不明に遭って、必ず不遇の死を遂げる。彼の国は謎が多すぎるな」

 南方世界への進出は幾度も試みられていた。だが遥か昔からあの辺りは巨大な海魔が生息する危険な海域として知られており、水棲型の邪竜の類いがうろついているのではないかとさえ推察されている。陸地の調査もろくに進まないこともあって、死者の世界ではないかと本気で信じている者がいるほどだ。

「仮に文明水準を低く見せかけているとしたら、そのメリットって何があるんでしょうね?」

「見せかけている……うーん、ぱっと思いつかないな。逆に、文明水準を高めない理由から考えるのはどうだ? 南方世界は広大な土地を持っているから、自分たちだけで完結できているんじゃないか?」

「それは経済を向上させない理由になりませんよ、マイラス技官……」

「外の豊かさを国民が知ったら、統治体制を維持できない……とか?」

「だから鎖国をしている……ちょっと弱い気がします。私には、何か別の意図があるとしか思えません。――実は、先進11カ国会議から帰るアニュンリール皇国使節団の船と我が国の商船が、この海域で出会っています」

 カーナは資料に埋もれた地図を取り出し、アニュンリール皇国で唯一交易が許された島、ブシュパカラタンの北方を指さす。

「何か問題なのか?」

「この海域で出会った時期が問題なんです!! アニュンリール皇国が会議から立ち去った、8日半後なんですよ!!」

「……――!」

 マイラスも気づいた。

「速力が18ノット(時速約33q)は出ている計算になります。あのボロ船の、『風神の涙』すら搭載していないと言う船が、18ノットの、しかも連続航行など、できるはずがありません!! 何らかの魔導機関を積んでいないと不自然です!」

「アニュンリール……何を企んでいる? さらに調査が必要だな」

 マイラスは資料に何事かを書き込み、フォルダへと仕舞った。
 次に、先日届いた封筒を開封する。中には真新しく現像された写真が入っており、そこには神聖ミリシアル帝国の空中戦艦が写っていた。

「こんなに大きな物体が空に浮くなんて……信じられん」

 戦闘記録によれば、直径が250m以上もあり、時速200qもの高速で空を飛翔していたという。
 横から覗き込んだカーナも目を丸くする。

「本当だ……情報部の話は嘘かと思っていましたが、まさか現実にあり得るなんて……」

 カーナは写真を覗きながら、情報部が得た神聖ミリシアル帝国に関する資料の中でも薄い資料をめくる。

「『光のシャワーのような兵器を使用した』というのが、おそらくアトラタテス砲ですね。分速3千発の猛烈な連射、しかも敵の未来位置を予測してばらまくから、グラ・バルカス帝国の航空機でさえひとたまりもなかったでしょう」

「ああ。我が国よりも50年近く航空技術が進んでいる国でさえ、空中戦艦には手も足も出なかった。それをよくも墜としたものだ」

 マイラスが『グレードアトラスター』を褒めるようなことを、顔色一つ変えずに呟く。
 それを聞いたカーナは、少しムッとした。

「『パル・キマイラ』が撃墜されたのはまぐれ当たりですよ。通常の戦法を採っていたら、被撃墜はなかったと考えます。……つまり、適正運用さえすれば、世界にはあれに勝てる兵器は存在しないということですけど。古の魔法帝国が復活すれば、我々に未来はないのでしょうね……」

 情報局では、古の魔法帝国の存在を裏付ける資料を数多く取り扱っているため、現実主義者が多いムーの中でも魔法帝国の将来的な復活を信じる者は多い。

「カーナ君、それは正しくもあるが、間違いでもある」

 マイラスが不適に笑うので、カーナは小首を傾げた。

「グラ・バルカス帝国がパル・キマイラを墜としたのは、確かにラッキーヒットだろう。しかしこの出来事は、古の魔法帝国の兵器は無敵ではないと証明したことになる。神聖ミリシアル帝国が古の魔法帝国の力をどの程度引き出しているのかはわからないが、現段階では勝てる国は存在する」

「そんな国が……どこです?」

「日本国だよ」

「……技官の日本国贔屓はいきすぎだと思います」

 カーナは半眼で、先輩に対して率直に言い放つ。

「違う違う、冷静に分析した結果だよ。アトラタテス砲、これは日本国でいうところの近接火気システム、CIWS【ルビ:シウス】に酷似している。分速3千発は旧式のCIWSで採用されていた数値だ。日本国の対艦誘導弾の波状攻撃を食らえば、CIWSだけでは決して対応できない。それに戦艦の主砲で沈んだのであれば、対艦誘導弾でも同程度の損害を与えられる」

「その対艦誘導弾とやらにも、アトラタテス砲なら対応可能かもしれませんよ」

「いや、アトラタテス砲では決して迎撃できない。それと、アトラタテス砲には非魔力物の飛来を探知する機能が備わっている。構造としては魔力を電気に変換して電波として発射、その反射波を捉えるのだが、この位置情報を計算し、未来位置に向かって質量を持つ光弾を放って高い命中率を叩き出しているんだが――」

「ああ……えっと、よくわからないですけど、それって日本国はおろか、どんな相手でも負けないって話になりません?」

 眉をひそめるカーナに、マイラスは「情報局員たるもの、話は最後まで聞け」と窘める。

「このシステムは日本国にも存在する。レーダーと呼ばれていて、対艦誘導弾にもこの装置は搭載されている。さらにこのレーダーに映りにくい対艦誘導弾も、日本国では開発中だそうだ」

 遥か先をいく未来の戦争の戦い方に、カーナは驚きを隠せない。

「兵器って、敵がいてそれに合わせて進化するものですよね……。日本国は一体何と戦ってきたんでしょうか……」

「日本国の自衛隊員が言っていたよ。『前世界のアメリカ合衆国なら、魔帝が相手でも普通に勝つのではないか』とね。前世界では魔帝級の超大国に挟まれ、領土を脅かされるような状態だったらしい。だからあそこまでの兵器を持つに至ったそうだ。彼らの幸運は、普通の国なら高性能兵器の輸入だけで終わるものが、資源を持たない技術立国だったためにコストさえかければ大抵の兵器を自前で作れるようになった点だ。転移後も兵器の運用にはそこまで困っていないようだよ」

「魔帝級の超大国がそこかしこにある世界……そんな中を生き抜いてきたなんて、すごい国ですね」

「ただ、弱点もある。日本は魔力を運用して戦ったことがない」

「え? じゃあ、魔素の上昇を探知できないんですか?」

「それどころか、もし大魔導師級の人物がすぐそばで攻撃型魔法の術式を展開しても、それに気づかない」

「ええぇぇぇっ!! じゃあ自分たちが武器を持つか異邦人に持たせないかでしか抑止ができないし、テロにはとことん弱いんじゃないですか?」

「ああ、そうだろうな。まだ日本でテロが起きていないのは、単に敵対国家が国土内にないのと、日本が魔力探知に弱いと気づいていない、または気づいていても実行に移して犯人の国籍が特定されたら国ごと滅ぼされると思っているんだろう」

「なんてアンバランスな……」

 カーナは日本国の異質さに戦慄を覚える。

「ああそうそう、日本の話ついでだが、ファッションも進んでいるぞ。ええと、確かここに……」

「……ファッション?」

 日本国の情報をまとめたキャビネットを開けるマイラス。

「ほら、これ」

「こ……これは!!」

 彼が差し出したのは、日本国の女性ファッション誌だった。
 表紙を飾る女性は、顔だけ見れば特筆するほどでもないが、服の着こなし、アクセントとなる装飾品のセンスが抜群で、どこかの貴族の令嬢かと思うほど美しい。
 カーナはプライベートで着ている服を思い出し、気に入っていた服でさえ急に古くさく思えてしまった。

「わ……私は何故今までこの国を知らなかったんだ!! マイラス技官、すぐに日本の研究に取りかかります!!」

「いや、君の持ち場は技術研究――」

「何を言ってるんですか! このような技術を使いこなす民族を研究することこそが、ムーの未来にもつながるんです。ファッションの研……いや、民族性の研究をして……あ!! そうだ、日本国にも魔素の特性について情報を渡すべきです!! あの国がテロで右往左往したら、ムーの国益を損ないます!!」

「まぁそれはそうだが……」

「では、私を日本に派遣してください!! 今すぐに!!!」

「待って。君は技官――」

「技官だからこそ! 魔素探知システムを詳細に説明できます!! ムーの国益のために!! 日本に派遣してください!!!」

「えぇ〜……」

 カーナの凄まじい形相に、マイラスはとうとう押し切られてしまった。
 後日、マイラスの部下カーナはムーで蓄積された魔素研究の基本的な内容を伝える技官として、日本国に派遣された。
 彼女は民族性の研究をするという名目で、しっかりと日本のファッションを楽しむのだった。
 

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posted by くみちゃん at 22:16| Comment(265) | 小説