2022年10月19日

第137話古の超兵器2P3

◆◆◆

 クルセイリース大聖王国 ワカスーカルト
 パーパルディア皇国軍 120門級戦列艦ジャスティス

「ハル・カーク様、船が着きました」

「ありがとう、やはり列強国の船はすごいですね、船足が速い」

 よっこらせ……というかけ声と共に初老の男、シルカーク王国全権大使、王族の1人ハル・カークは立ち上がる。

 クルセイリース大聖王国の外交大使カムーラの事前連絡によると、この後迎賓館で和平調印式が行われる予定となっていた。
 ハル・カークは外務郷カルクやその他護衛と共に最上甲板へ出た。
 辺りを見渡す。

「これが……クルセイリースですか?」

 歴史ある都市だと事前に聞いていた。
 しかし、どんよりとした街、暗い色を基本とした建物群、歴史ある町並みというよりもむしろ軍事敵施設に近い。
 港から船にラッタルがかかり、軍外交担当のカムーラが歩いてくる。

「ん?」

 バイアの本能が警笛を鳴らす。
 カムーラの表情から前までの謙虚な雰囲気は消えていた。
 かつて新興国を統治した際、敗戦協定で攻撃を加えてきた蛮族によく似た顔。

「おい、警戒レベルを戦時警戒レベル1種まで引き上げておけ。
 いつでも戦闘に移行出来るよう、準備を怠るな」

 小声で部下に指示を行う。
 皇国は秘密裏に警戒レベルを上げた。

「シルカーク王国、その他の方々、よくぞ来られた」

 カムーラは1冊の書類を取り出してカルクに手渡す。

「これに署名してもらおう」

 突然現れ、迎賓館へ案内する訳でもなく、突然書類を渡して署名をしろと迫る。
 失礼極まりない言動にカルクは怒る。

「事前の話では迎賓館に移動する手筈だったはず」

 国と国の関係ではありえないほど失礼な対応だった。

「迎賓館?ああ、あれは賓客をもてなす所だ。とにかくそれを読め」

 先日のしおらしい対応と一変した強気の態度。
 国の方針が変わったとしか思えない。
 カルクは書類を読んだ。

「こ……これはっ!!!!」

 事前の内容とは似ても似つかない文章で、シルカークに無条件降伏を迫る内容だった。

「こ……こんなものが飲めるはずがないだろう!
 お前達は国と国の外交を何と考えているのだ!」

「これは心外だな。最初から私はお前達に降伏を迫っている」

「貴様っ!!渡された文章にはこんな文字は全く無かったぞ!!」

「渡した文章には、末尾の右下に案と書いてあったはずだが?」

 よく見ると、末尾右下にインクのにじみのようなものが見える。
 虫眼鏡で拡大すると、3mm程度の文字で、小さく案と記載があった。
 まるで悪徳商法のようなやり方に、カルクは顔を赤くする。

「このような降伏を迫る内容、この調印は無しだ、破談とする!!」

「そうか、残念だ。では帰られるがよい」

 カムーラは足早に船を下りる。
 彼らはすぐに馬に乗り、全速力で街の方向へ駆けていった。
 
 一部始終を見ていたバイアは経験から攻撃の可能性を察知し、指示を出す。
 
「錨を上げろ!!すぐに帆を張り、風神の涙の出力を全開!!
 全速力で同海域を離脱する!!!」

「はっ!!!」

 120門級戦列艦ジャスティス乗組員は俊敏に動く。
 その時だった。

「日本軍ちょうかい より発光信号!!
 飛行物体を探知!!南南東方向距離70km!!
 騎数120騎、速度211km、高度400m!!」

 攻撃が来ることは間違いが無く、緊張が走る。

「空中戦艦か、もしくはワイバーン?……オーバーロードに迎撃を指示!!」

「了解、飛行物体接近!!飛行物体接近!!竜騎士団にあっては南南東方向の警戒にあたれ!!
 交渉は決裂した。交戦を許可する。
 繰り返す、交渉は決裂した。交戦を許可する!!!」

 ギュオォォォォォォンンン!!!!!!!
 付近にワイバーンオーバーロードの咆哮が響き渡る。
 上空を警戒していた竜騎士団は、南南東方向へ飛ぶのだった。


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第137話古の超兵器2P2


◆◆◆

 クルセイリース大聖王国 西部軍事都市ワカスーカルト沖合

 パーパルディア皇国対圏外文明国防衛艦隊 120門級戦列艦ジャスティス

「まもなくワカスーカルトの港に入ります」

 艦橋に報告が上がる。

「ついに……この時が来ましたな」

 艦長ガーラスは司令長官バイアに話しかけていた。

「うむ、我らに屈する国の光景、何度見ても良いものだ」

 列強パーパルディア皇国魔導戦列艦隊は風神の涙により、帆に風を受け、ワカスーカルト港へ向かっていた。
 上空を見上げると力強い竜が5騎、新型竜母から飛び立ったワイバーンオーバーロードが警戒にあたる。

 万が一、皇国艦隊が攻撃を受けた場合、すぐに魔導戦列艦隊が猛烈な砲撃を加え、都市を焼き払う手筈となっていた。

 ガーラスはふと沖合を見る。
 遙か先には、1隻の鋼鉄の艦が海に見えた。。
 日本国海上自衛隊イージス艦 ちょうかい。

「7km離れているとは思えない大きさですね」

「もしもあれが敵側だったらあの1隻で我が艦隊すべてを凌駕する大戦力だ……日本国が味方につくと、これほどまで気持ちに余裕が出るものなのか」

 現実は凌駕というレベルの差ではない。ともあれ、味方に組み入れた日本国との行動は、すさまじいまでの安心感を彼らに与えた。
 戦争は常に死の危険性が伴うもの、それは列強国と文明圏外国家でもある程度の被害を受ける。
 しかし、日本国が味方につくというのは、別格の安心感があった。
 戦争にいくというよりも、観光に行くという方が心情的には近い。

 敵ではなくて、良かったと心底ほっとする。
 様々な者達がそれぞれの目的を追い求める中、艦隊は港へと入港した。

■ クルセイリース大聖王国 ワカスーカルト防衛支部

「あれがパーパルディア皇国の戦列艦か?確かに大きな戦列艦だ。しかも船速が早い」

 ワカスーカルト防衛長官エル・ガンエンは冷静に分析する。
 彼は続けた。

「さすがは列強国……と言いたいところだが、あれなら飛空艦隊で何とかなるだろう。
 問題はあれだな……」

 沖合を睨む。
 彼は傍らに立つ幹部に話しかけた。

「本当にあれは7km以上離れているのか?」

 電磁レーダーによって計測された距離は、どう考えても見た目と合致しない。

「間違いありません、日本国の戦列艦です」

「むぅ……」

 大きい。いや、大きすぎる。

「これほど離れていて、あれほどの威容を放つとは……。
 飛空艦隊の敗れた相手か……。軍王様が懸念されるのも理解出来る。
 奴らの主力は?」

「約150km西側の沖合に待機している模様です」

 クルセイリース大聖王国軍は地上及び飛空艦、そして離島等に設置された計測機器等、あらゆる情報活動を通じ、日本国護衛艦隊の位置を把握していた。

「警戒心が強いな。艦隊の展開範囲は?」

「7隻が相当な間隔をもって展開しています、しかし展開範囲は10kmの円状の中に入ります」

 エル・ガンエンは不気味に笑う。

「軍王様に報告、座標を送る事を忘れるなよ」

「しかし、軍王様は何をなさる御つもりで?直径10kmの円状範囲にいるかどうかを報告しろとは」

「解らぬ、我らの常識では計り知れぬほどのお方だ、しかし国民の事を誰よりも考えておられる器の大きなお方だ」

 エル・ガンエンは遠い目をする。
 彼は続けた。

「ところで、攻撃準備は出来ているな?」

「はっ!!すべて完了しております!!」

 部下は自信をもって答える。

「では、外務担当の合図を待った後、殲滅的総攻撃を行う……茶番だがな」

 攻撃の準備は進む。


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第137話古の超兵器2P1

クルセイリース大聖王国 西部の軍事都市ワカスーカルト

 30代の男が1名足を組み、眼前の男をにらみつける。
 鋭い眼光に、男は直立不動となった。

「ほう……では奴らは艦隊で我が領域に侵入する……という事だな?」

「はっ!!」

「外交部の罠……敵主力艦隊の殲滅か……無慈悲な作戦を考えつくものだ。
 すでにワカスーカルト全住民の避難が完了している。
 港へ向けられた全魔導砲増幅装置、ワカスーカルト飛空艦隊、そして本庁直轄の竜騎士団もすでに配置についている。
 我らが防衛は完璧だ」

「さすがワカスーカルト防衛長官、エル・ガンエン様!!すばらしい!!」

「そう、私は完璧なのだ。
 ふむ……良いことを教えてやろう。
 私の圧倒的なる魔力量と、有り余る実績が原因で、私は軍王様に国の行く末を左右する重大な任務を任された」

 エル・ガンエンという男は扱いやすい。
 しかし人に比べて圧倒的に高いプライドを傷つけ、物理的に消されたという噂が絶えない。
 報告を行う男は、エル・ガンエンの機嫌を損ねないよう、身を乗り出して話しを聞く。

 エル・ガンエンは誇らしげに大きな鍵を取り出した。

「それは……まさか!!」

 正直何の鍵なのか、全く検討はつかないが、自慢げに取り出すという事は相当なものなのだろう。
 なんですか、それは?と言って物理的に消されてはたまらないため、何か思いつく事があるかのような振る舞いをする。

「フフフッ……これはな。
 神話級の兵器、古代黒月族の対ラヴァーナル帝国決戦兵器、キル・ラヴァーナルを起動させ、思いのままに操るための鍵だ!!
 もしも通常兵器で処理出来ぬ場合、我が絶大なる魔力を持って起動させた決戦兵器が敵を消滅させる!!
 この戦いは軍王様が聖都でしっかりと映像で確認なさる。
 どう転んでも我らには勝利しか無いのだ!!!
 フアーッハッハッハーーー!!!!」

「さ……さすがはエル・ガンエン様!!
 そのような神話級兵器を個人に託されるとは!!私そのような事例は初めて伺いました!!!
 本来使用されない事が好ましいのでしょうが、もしもこれが起動され、エル・ガンエン様が敵を倒せばもはや軍神、後の世まで語り継がれる事でしょう。
 やはり実力のみならず、軍王様からの信も厚いのですね。
 次期軍王様に最も近いのはエル・ガンエン様かもしれませぬ!!」

「お主言いよるのう、良く解っているじゃないか。
 フハハハハッ!!」

「ハーッハッハッハーー!!!」

 様々な思惑が交差する。
 時は進み、調印式の日を迎えるのだった。


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posted by くみちゃん at 21:31| Comment(15) | 小説