2018年07月07日

第79話 参戦 P1

ムー国 西部航空隊 リュウセイ基地

 ムー国で比較的西側に位置するこの基地で、軍の技術士官マイラスは、他の航空隊に対して説明を行っていた。
 
「と、いう流れでして、政府の依頼により日本国自衛隊が派遣される事になっているのは皆さん知ってのとおりであり、すでに先遣隊との交流はある事と思われますが、本日中には日本国の戦闘機が到着します」

 政府、軍の上層部からの説明があった後、リュウセイ基地の一部が増強され始めた。これはムー国の工事関係者のみではなく、日本国の工事関係者も工事に入り、やがて自衛隊の補給部隊が到着した。
 初めて見たC−130と呼ばれる化け物じみた大きさの飛行機を見たとき、ムーの軍人たちは度肝を抜かれた。
 しかし、マイラスの説明によると、今度はプロペラの無い飛行機が来るという。

「マイラス殿に質問があります」

「何でしょうか?」

「私たちが受けている説明では、日本軍に全面的に協力するように司令を受けています。
ムー国を支援に来てくださる友人に支援を惜しむつもりもなく、命令どおり全力で支援、支援、支持いたしますが……日本国とは、世界第2位の列強国であるムーが、これほどまでに気を使うほどに力を持っているのでしょうか?」

 ムー国にも日本の本は出ているし、富裕層に至っては日本国を旅行し、その国力を直に感じる者もいた。
 しかし、軍人等の一般市民レベルになると、政府の通達や、時々伝え聞く噂程度しか情報源が無く、特に興味のある者以外は、これほどまでにムー国政府が気を使う事が、理解出来ないようだった。

「練度や士気に関しては、私は自衛隊の事を良く知りません。しかし、こと軍事技術面においては、日本国とムー国のそれは、ムー国と文明圏外国家以上の差があります」

 軍人達は身震いする。
 文明圏外国家とムー、その軍事技術の差は歴然であり、絶対に超えることが出来ない、絶対に戦闘となったら勝つことが出来ないほどの差があった。
 それ以上の差であると、軍の……しかも歴代最も優秀とされる技術士官マイラスが断言しているのだ。

「そんなばかな事があると思うか?」

 新人航空兵は、隣の同僚に話しかける。

「いや、さすがに盛りすぎだろう。同じ科学技術国家で、空力をつかった航空機にそこまで差が出るとは思えない」

「おれも、正直あり得ないと思う。参戦してくれるのはありがたいが、ちょっと日本国を神格化しすぎてやしないか?」

 先輩航空兵も、新人航空兵の意見に同調した。
 マイラスは話を続ける。

「今回の、日本国の戦闘機飛来について、西部航空隊の中では友軍を出迎えようといった意見も出ました。
 しかし、空中においてマリンが遅すぎ、日本の航空機が失速してしまう可能性が出てくるため、私が上申し、中止となりました」

 ムー国最強のマリン型戦闘機の最高速度をもってしても遅すぎるとは、いったいどういう事か、一同が困惑する中、聞いたことの無い轟音が聞こえ、F−2戦闘機が飛来した。

「な……なにっ!!」

 一度上空を通過した後、ゆっくりと左旋回を行い、滑走路へと進路をとる。
 日本人が見たならば、いつものゆっくりとした着陸前の旋回……しかし……。

「は……速い!!」

 ムー国軍人は、唖然とする。
 マリンよりも大きい機体、プロペラを持たずに飛行しているが、神聖ミリシアル帝国の天の浮船よりも美しく見える。

 軍人達を驚愕させたF−2戦闘機、およびF−15戦闘機は次々と着陸し、戦闘の準備を整えるのだった。

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2018年06月27日

第78話終わりの始まりP4


◆◆◆

 ムー国東側約20km 海上

 一見空母を連想させるような平べったい甲板、輸送艦おおすみの先端で、男が一人、前を向き、徐々に見えてきたムー大陸を眺めていた。
 海は透き通るほどに青く、心地よい海風が体を冷やす。

「陸将、本国より通信が入りました」

 陸上自衛隊第7師団陸将、大内田和樹はゆっくりと部下に向く。

「グラ・バルカス帝国陸軍がムー国に侵攻しました。国境の町アルーは戦場となり、ムー国陸軍守備隊は全滅、アルーの街は落ちました」

 大内田は目を瞑る。
 通信員は続けた。

「アルーの街では略奪、暴行、処刑が行われ、凄惨を極めているとの事です」

 大内田の目つきが変わった。

「間に合わなかったか……」

 陸上自衛隊第7師団長 大内田和樹、彼は人事異動により、一度は師団長から別の部署への異動内示を受けていたが、情勢が一変したため、異動は一時保留となり、前回のロウリア王国での実戦経験を買われ、このたびはムー国を救うため、再び師団長の任を受けていた。

 民間船を徴用し、迅速にムー大陸に上陸する。
 上陸後はムー国各地に設置された駐屯地を経由しつつ、燃料の補給を受け、アルーの街方向に向かう予定であった。
 
「空自は?」

「はい、まもなく準備が整うとの事です。我が隊が戦場に着くまでには間違いなく準備が整うとの報告を受けています」

「そうか……」

「上陸後はムー国軍司令との会談の後……」

 部下は今後の予定を話始める。


 
 日本国最強の機甲師団 陸上自衛隊第7師団は、この日、ムー国を救うべく、ムー大陸に上陸した。
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第78話終わりの始まりP3

◆◆◆

 最前線……塹壕

「テーー!!!」

 轟音と共に、歩兵が携帯していた小型の砲が火を噴く。
 曳光弾を交えて発射されたそれは、敵戦車の近くに着弾し、土煙を巻き上げる。
 動目標に対する砲は、なかなか当たらなかった。

「う……撃てーーっ!!撃て撃て撃て撃てーー!!!」

 砲に限らず、機関砲も発射される。しかし……曳光弾を交えて発射された機関砲は、大きな金属音と共にはじかれ、あさっての方向にとんでいく。
 大口径砲は当たらず、小口径砲ははじかれる。
 にもかかわらず、敵の進軍速度は衰える事無く、あまりにも速いその進軍速度に、ケイネスは戦慄した。
 
 敵戦車は土煙を巻き上げ、進軍してくる。
 やがて、敵の砲が発砲した。

「ぐぁぁぁぁぁ」

 誰かが叫ぶと共に、近くの塹壕が削れ、数人が死亡する。
 次々と、死者の報告が入っている。
 しかし、守護者たる自分達が引く訳にはいかない。

 ケイネスは、絶望的な気分の元、砲を打ち続ける。
 やがて、戦車のエンジン音が聞こえるほどの距離となった。

「があっ!!」

 様々な場所で悲鳴があがり、やがて塹壕からの攻撃は止まる。

 近くに砲が着弾し、朦朧とする意識の元、ケイネスは塹壕から空を見上げる。
 体のどこをどう撲ったのか解らない。
 全く体の感覚が無く、意識だけはある。

 先頭の戦車がケイネス達のいた塹壕を超えていく。
 次から次へと来る戦車は、まるでそこに何も無かったかのように塹壕を超え、自分たちの陣地を超えて街への向かう。

「だ……だめだ……そちらには街が……」

 薄れゆく意識のなか、ケイネスは声を絞りだした。

◆◆◆

 砲兵陣地 

 砲兵陣地は、敵の猛烈な攻撃にさらされていた。
 うまく欺罔された砲、しかし、敵戦車に向けて砲撃を行った瞬間、空から敵戦闘機による攻撃を受ける。
 ようやく敵戦闘機の攻撃が収まったと思った次の瞬間、大地が舞い上がった。
 
 連続したグラ・バルカス帝国からの砲撃により、アーツ・セイの持つ砲以外の砲は破壊されつくし、死体が散乱する。

 そんな中、アーツ・セイの所属する砲兵隊は、敵に一矢報いるために砲撃準備を行っていた。
 1両でも撃破したら、少しは敵の攻撃が緩むかもしれない。
 陸戦においてムー国人が、敵を全く撃破出来ないことなど、あってはならない。
 そんな思いの元、準備を進める。

「砲弾装填よし!」

「よく狙えよ!!!」

 砲兵アーツ・セイは人生最大の集中力を発揮する。

「……今!!!」

「てーーっ!!!!」

 轟音、そして壮大な煙が大砲より吹き上がる。
 現代の砲に比べ、燃焼効率の悪い過去の砲撃は、燃焼エネルギーがうまく砲弾に伝達されず、煙が多く、見た目はとても強そうに見える。

 砲弾は飛翔していく。
 奇跡敵に、敵前列から2番目を行く戦車に着弾した。

 いやな金属音のすぐ後に続けて、猛烈な爆発音と共に煙りが上がる。
 敵戦車は煙に包まれた。

 しかし……。

 次の瞬間、何事も無かったかのように、戦車が煙の中から飛び出してくる。

「ば……バカなっ!!当たったはずだっ!!」

 戦車砲が旋回してこちらを向いた。

「つっ!!」

 轟音と共に、敵戦車から57mm砲が放たれる。
 砲は自らを回転させながら弾道を安定させ、まっすぐにこちらに向かってくる。

「ヴァッ!!」

 砲は着弾し、アーツセイは意識を絶った。

 ……この日、アルー防衛隊は全滅、街は蹂躙された。
 多くの捕虜が出現し、多くの者が処刑され、アルーの街にすんでいた者の末路は凄惨を極める。
 街にはグラ・バルカス帝国旗が掲げられ、版図は広がった。

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posted by くみちゃん at 08:40| Comment(17) | 小説