2019年05月19日

第92話 帝国激震3P4


◆◆◆
 
 第3文明圏 文明国 リーム王国

 第3文明圏のリーム王国では、王前会議が行われていた。

 王下直轄軍の大将軍リバルの戦況発表が終了する。

「リバルよ、ではお主はグラ・バルカス帝国は神聖ミリシアル帝国を降し、やがては第3文明圏手を出して来ると……日本国よりも軍事力は上と申すのだな」

「ははっ!!帝国と日本国の艦船による砲撃力を比べた結果、グラ・バルカス帝国の戦艦の方が圧倒的に口径が上、砲撃の威力は口径の3乗に比例するとの事。
 同事象から、威力はグラ・バルカス帝国が圧倒的に上にございます!!
 また、船の防御力、そして艦船を量産する力、保有艦艇数を比べたところ、グラ・バルカス帝国が日本国を圧倒しています。
 また、船速に大差はありませぬ。
 グラ・バルカス帝国は、空母を多数保有しておりますが、日本国に空母はございませぬ。
 海での戦いにおいて、日本国はグラ・バルカス帝国に勝てませぬ。
 また、陸での戦いも数がものをいいます。保有する歩兵用装備に大差は無く、戦車と呼ばれる車両も日本国、グラ・バルカス帝国双方が所有しています」

「リバルよ、その分析は正しいのだな?相手はあのパーパルディア皇国を赤子のようにひねり潰した日本国ぞ。
 ムー沖合では、日本の護衛艦が帝国艦隊を倒したと聞く。
 国家運営の大切な情報、戦力分析が間違っていましたでは冗談にならぬ」
 
「陛下、間違いございません。
 ムーでの事象は、ムーの航空攻撃も必ず関与しています。そうに違いありません。
 このままでは、グラ・バルカス帝国は神聖ミリシアル帝国をひねり潰し、現在国力の落ちたパーパルディア皇国もあっさりと滅するでしょう。
 帝国と交渉が出来るのは、今しかございません。
 この期を逃すと、第三文明圏と共に我が国も蹂躙されます。
 今しか無いのです」

「うむむ……」

 王は考え込んだ。

 グラ・バルカス帝国の使節団がリーム王国を訪れたのは先週の事、内陸国家であるリームに、飛び地として存在していた貴重な海に面した土地。
 その土地の使用権をよこすよう命令を受ける。
 そして内陸部のムーが使用している飛行場をグラ・バルカス帝国へ明け渡すよう要求を受けた。

 日本国から海洋輸送のため、タンカーを買い入れていたリームの飛び地は港湾施設として整備されていた。
 グラ・バルカス帝国は同場所を補給基地とするつもりだった。

 グラ・バルカス帝国の使節団ははっきりと言った。
「日本国を攻撃するためだ」と……。
 
 仮にこれを受け入れると、列強第2位のムー国と国交を断絶するばかりではなく、パーパルディアをひねり潰した日本国と敵対する事になってしまう。

 しかし、グラ・バルカス帝国の強さも本物だった。

 周辺国家を瞬く間に制圧し、文明国パガンダ王国すらも短期間で落ち、列強レイフォルでさえ、単艦で滅した。
 伝説は留まる事を知らず、ついには世界最強の国家、神聖ミリシアル帝国に手を出す。
 
 怒りしミリシアル帝国は、世界連合艦隊を率いてグラ・バルカス帝国艦隊殲滅に乗りだし、古の魔法帝国の空中戦艦すらも投入した。
 しかし、結果は痛み分けだったようだ。
 古の魔法帝国製兵器は作れる物ではない。よって、実質的にグラ・バルカス帝国の勝利と言える。

 迫り来る脅威、国の舵取りは非常に難しい。

「リバルよ、帝国は……港湾施設、そしてムーの国外退去と空港使用を認めたら、王族の統治……我が国の統治には口を出さないと約束した。
 間違いないな」

「ははっ!!グラ・バルカス帝国は、特例としてリーム王国に限り、認めるとの事で間違いありませぬ」

 王は目を瞑る。
 断れば滅ぼされるかも知れぬ。
 しかし、承諾すれば第2文明圏列強と、日本、もしかすると神聖ミリシアル帝国でさせも敵に回す。
 
 王は目を開いた。

「グラ・バルカス帝国に、港湾施設の使用を認める。また、ムー国外交官には国外退去を命じ、日本、ムーの資産を凍結する。
 空港はグラ・バルカス帝国に明け渡すこととする」

 会議室はざわついた。
 王は続ける。

「日本から、問い合わせが来ても明確な回答をするな。
 日本に対する我が国自身の攻撃意思は無いと明確に示せ。
 グラ・バルカス帝国からの攻撃が行われる時、日本が沈む時となろう」

 第3文明圏リーム王国は、グラ・バルカス帝国の軍門に降る事を決意するのだった。

 着々と……準備は進む。


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第92話 帝国激震3P3


◆◆◆ 

 翌日ー
 航空自衛隊 百里基地

 グラ・カバルは百里基地の一室で、ムービーによる自衛隊兵器の概要説明を
受けていた。
 食い入るようにディスプレイを見るグラ・カバル。
 日本国の歴史が流される。
 鎖国から砲による開国、欧米列強国によるアジア侵攻により、日本国とタイを除いて植民地化していくアジア。
 そして日ロ戦争……人海戦術、そして日本海海戦。当時の列強ロシアに辛勝し、300年以上続いたアジア植民地が希望に沸く。
 やがて、映像は第2次世界大戦を映し出す。
 空を埋め尽くす曳光弾による対空砲火、そして近接信管。まるでグラ・バルカス帝国の空母機動部隊から取られた映像であるかのようだった。

 1機の飛行機が突っ込んでくる。
 まるでアンタレス型戦闘機のような形をしたその機体、ドップラー効果により高音を発しながら近づいてくる航空機は機首を上げるそぶりを見せなかった。

「ああっ!!!」

 突っ込んできた機体は空母にそのまま激突し、爆発と共に猛烈な炎をあげる。

 突っ込んでいった兵は死を覚悟していたのだ。

 途轍もない精神力、そして強すぎる意志。
 猛烈な強い意志を感じる攻撃だった。
 必ず死ぬ作戦……カバルにはとうてい受け入れる事が出来ない。
 映像は次々と、空母に突っ込む航空機を映し出す。

 やがて、爆弾の雨が街に降る。
 下には「東京大空襲」と、グラ・バルカス帝国語で記載してあった。

 第2次世界大戦までの記録が終わる。

「……日本も、血塗られた歴史を生きてきたようだな」

「そうですね、国土のほとんどを焼き付くされての敗戦、この時日本は何もかも失ったかのように見えました。
 しかし、生き残った人々は、復興に全力を注ぎます。
 戦後、急速な復興を日本は遂げました。
 では、次に我が国の兵器について、概要をご説明します」

 画面が切り替わり、現在の日本国の兵器について解説が始まった。
 ミサイルと呼ばれる誘導弾、敵が動こうがついて行くという反則的な兵器。
 特に対艦ミサイルは、超低空を飛行してレーダー網をかいくぐり、砲撃の範囲外から100発100中とも言える制度で命中、一撃で巡洋艦を中破以上に追い込む。
 爆発の映像を見せられる。
 大きな船体よりも遙かに爆発が大きかった。

 想像を遙かに超える技術格差、グラ・カバルの額は汗で水玉がびっしりと作られた。  
「こ……これは本当なのか……」

「はい、もちろんです。」

「こ……こんな物を作られたら……」

(こんな物を作られたら、戦闘の様相が一気に変わってしまう)

 カバルは言葉を飲み込んだ。
 もしも、日本国がこのミサイルを大量に所有していたら、非常にまずいことになる。

「なお、グラ・バルカス帝国の日本国本土への攻撃意思が確認出来たため、日本国政府は各重工業に各種ミサイルの量産を指示しています。 
 日本国の生産設備については……」

 製造規模の説明が始まる。
 数値については良く理解できなかったが、帝国に比べても遜色のないほどの生産設備があり、ミサイルの弾切れは望めない事だけは理解できた。

「では、次に我が国の戦闘機がどういった物か、ご覧にいれます。基地の外へお願いします」

 カバルは案内人につれられ、基地建物の屋上に上がり、滑走路を見渡した。
 滑走路の先にはプロペラの無い機体が2機……。

「これより離陸を開始します」

 甲高い音の後、轟音が響き渡る。
 滑走路の戦闘機は後ろから2本の炎を出し、滑走路を走る。
 その速さはやがてアンタレス型戦闘機を遙かに超え、急上昇を開始した。

 ゴォォォォォォォ……

 雷鳴の如き音が響き渡る。
 信じられない速度で上昇したそれは、上に向かって視界から消えた。

「な……な………バカな……」

 速さ、上昇力の次元そのものが違う。
 アンタレス型戦闘機が戦ったら、全く敵を捕らえることは出来ぬだろう。
 いつの間にか、グラ・カバルの体は冷や汗でびっしりと濡れている。
 あまりの軍事力の差に、僅かにカタカタと震え始めた。

(まずい……まずいぞ!!このままだと帝国は日本国に大規模な攻撃を仕掛ける。
 しかし、艦隊が壊滅してしまえば、神聖ミリシアル帝国に付け入る隙を与えてしまう。
 おそらくは、防御に徹していれば、日本軍の数は少ないため、乗り切れるはず……しかし、それを本国に伝える手段が無い)

 何故今まで日本国の力に気づかなかったのか、疑問に感じる。
 グラ・バルカス帝国皇太子グラ・カバルは祖国を救うために、日本国と交渉を決意するのだった。


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第92話 帝国激震3P2


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 新大阪駅から乗ったのぞみ号と呼ばれる鉄道は、机に置いたコーヒーがこぼれないほどに揺れず、非常に快適であった。
 初めて見る地上で見る時速270kmという速度に驚愕し、所々使われている素材、電光掲示板等、帝国の技術を明らかに上回る技術が認められ、カバルは多少の焦りを感じる。
 思い出せば、大阪においても厚さを感じさせないほどのテレビ、痛みの少ないアスファルト舗装、薄い信号機など、所々帝国を上回っている。
 一方、帝国が上回っているといえば、建物の高さのみ。

 建築技術は帝国の方が上回っている。基幹技術は上という考え、それが、目の前の建物を見て吹き飛ぶ。

 
 日本国 首都東京 墨田区 東京スカイツリー

「こ……これは……これは……」

 東京スカイツリーを地上から見上げるグラ・カバル。
 その光景に足が震える。
 近くにある高層ビル、それでも十分に高い建物と言える。

 しかし、それを遙かに貫き、天に向かって生える無機質な構造物。
 あまりの大きさに、自分の遠近感が麻痺したとさえ思えてくる。
 高さ634mにも及ぶ建物。
 帝国において、634mの物といえば、もはや山しか無い。
 
「そんなバカな!!これが人工構造物だというのかっ!!!!」

 多少建設工学をかじった事のあるカバルは、その建物の高さ、それをなす材料の質、そして作ってしまう経済力に恐怖を覚えた。
 上の展望室へ向かう。
 エレベーターの速度、そして液晶画面の演出、すべてが未来の出来事のように思え、空中回廊から見渡すコンクリートに埋め尽くされた都市、時折目立つ高層ビルは、国力の高さを感じざるを得なかった。

 淡々と案内を続ける案内人、カバルは後ろを付いて回る。
(日本の都市は、自分たちの作り出した都市のレベルを遙かに超越している。)
 そんな考えが、カバルを支配していた。
 軍事技術でも遙か先を行っていた場合、帝国はとんでもないことになる。
 グラ・カバルはもっと日本を知ろうと決意する。


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