2023年07月14日

第141話崩壊2P5

◆◆◆

 軍神の棟最上階 
 儀式の間において、魔道機械音が大きく鳴り響いた時だった。

「ギャァァァァァッ!!!」

「なっ!!」

「えっ??」

 中心部にいた大魔道士5名が青色の炎に包まれ、灰となる。

「何があった??」

 軍王はとっさに報告を求めた。

『不明です。術式も完璧で、術者防壁も完璧だったはず……現在原因を調査中です。なお、魔法(メテオ)の起動は成功し、敵艦隊付近に向かって星の欠片は落下を開始しました』

 メナスはローブの下で舌打ちした。

「ちっ!出力を上げすぎたか、使えない魔道士どもめ……しかし、目的は達成出来そうですねぇ……フフフ」

 メナスは皆に聞こえぬようにつぶやいた。

「なんてことだ!!!」

「気をつけろ!!防壁が破れている可能性があるぞっ!!」

 突然の大魔道士の死に、術式に関わる者達は動揺を隠せなかった。
 魔道を極めし者達の死は、国家の損失と言っても差し支えなく、軍幹部の衝撃も大きい。
 動揺は波のように伝搬し、場全体に広がっていった。

「うろたえるなっ!!」

 儀式の間全体に響き渡る軍王ミネートの声

「古代神聖魔法は発動している!!敵に1撃は加わるのだ!!
 大魔道士の死、この無念さは筆舌に尽くしがたい!!しかし、死を無駄にするな。
 うろたえるのでは無く、原因を特定し、再発防止措置を行え!!」

 場は冷静さを取り戻す。

『防壁部の術式については現在原因を解析中、メテオについては魔力投影します』

 ブゥゥゥン……

 音と共に、立体映像が儀式の間に映し出される。
 宇宙空間から大気圏へと突入し、空気の粘性発熱で高温の赤い尾を引く星の欠片が映し出された。

「おおおおぉぉぉぉ」

「こ……これが……」

 初めて見るメテオ(国家級敵国殲滅魔法)に感嘆の声が流れる
 星の欠片は重力加速度と指向性のある神通力に引っ張られ、速度を徐々に上げていく。
 赤い炎の尾は徐々にその長さを伸ばしていくのだった。


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第141話崩壊2P4


◆◆◆

 〜軍神の棟の最上部〜

 薄暗い部屋に複雑な魔方陣が画かれる。
 中央部には国でトップの実力を誇る大魔道士5名が五芒星を画くように立つ。

 同5名を魔力伝導率の良い配線で繋ぎ、中央部に秘宝が置かれていた。

「これより国家級敵国殲滅魔法を使用する」

 軍王の号令の元、大魔道士達が呪文を唱え始める。

「今ですね……」

 メナスは他に聞こえぬよう、小さくつぶやいた後、目に見えぬほどの直径1mmほどの使い魔を飛ばした。

「さあ、魔方陣5節の防壁部を指示通り、53秒以内に書き換えなさい」

 軍王、魔道士その他警備を行う兵に気付かれる事なく、メナスは使い魔を放つのだった。

◆◆◆

 国家級敵国殲滅魔法の準備は着々と進んでいた。

 5人の大魔道士は呪文に集中し、魔道機械を多くのオペレーターが操る。
 総括の報告者が無機質な声で報告を続けていた。

『魔力充填135%、神通力変換必要魔力に達しました』

『神の棟へ接続開始』

 軍神の棟が光り輝き、クルセイリース大聖王国の端に設置された神の棟へ光の道が出来る。 空から、いや、宇宙から見ると、まるで光り輝く十字架……グラウンドクルスのようだ。

『神通力変換開始……なっ!!これはっ!!』

「どうした?」

『神通力、の力が想定の28倍出ています!!これほどの出力だと重力引き寄せに、より指向性を持たせ、より高高度にある星の欠片を引き寄せる事が可能です!!』

「ならば高威力をたたき込め」

『はっ!!』

『神通力変換、出力向上……』

『最終呪文詠唱』

 5人の大魔道士がほのかに光る。
 音域を会わせて最終呪文が唱えられ始めた。

「神の僕たる幾千の星々よ、我らに従属し、敵を滅せよ」

『出力安定、座標入力……入力完了!!国家級敵国殲滅魔法(メテオ)起動準備完了』

 軍王は神話級の魔法使用に震える。
 正に神の力を我が采配で使用する。
 この一撃は国を救った一撃として、歴史に名を刻むであろう。

「フフフ……俺ともあろうものが、緊張してきたぞ」

「私も感無量です。この神の技法に立ち会う事が出来るなんて……」

 感極まり、全身が震えた。

「軍王様、号令を」

「うむ……我が国を侵略せんとする、悪魔の艦隊よ、聖なる国に牙を向いた事を後悔しながらあの世へいけ
 我らが一撃は神の一撃!三千世界の灰となれ!!
 国家級敵国殲滅魔法……メテオ!!」

『メテオ起動』

 国に出現した大きな光の十字架から、宇宙に向かってクロスの光が伸びる。
 高空に漂うチリに巨大なクロスの光が映し出された。
 この奇跡の光は多くの国民が目撃することとなる。

「な……なんだ、あれはっ!!」

「空に十時の光??」

「神が降臨したのか?」

 多くの国民は、その奇跡の出現に驚き、歓喜し、祈るのだった。


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第141話崩壊2P3


 軍王は思考を止めて目を瞑った。
 神通力の使用を先祖に詫びる。
 拳を天に向けた。
 上を向く軍王の顔は晴々としていた。
 
 
「古代の掟よりも、眼前の脅威を取り除く。それが軍王たる私に課せられた使命である!!
 聖王国臣民を繁栄に導く使命が私にはある!!!
 すべては聖王家のために!!
 すべては臣民のために!!
 すべては公のために!!!
 我が決定に一片の悔いなし!!」

 軍王は誰もいない部屋で大声を張り上げる。
 強く拳を握りしめた。

「メナスはいるかっ!!!」

 隣の部屋まで聞こえる大声に、メナスはやってきた。

「……軍王様、ご決断を」

 ローブの下にはイヤラシい顔があった。

「神通力の使用による副作用の可能性はどう考えている?」

「神通力は大地より無限にあふれ出ています。
 神々の大いなる遺産が地下に眠っているとしか思えません。
 無限の神通力は、文字通り無限。
 大量使用をしたとしても、すぐに次の大魔法が連発出来るでしょう。
 副作用など無い、まさに万能なる力なのです!!
 クルセイリースは神に守護された国としか思えません。」

「……そうか、ではこれより国家級敵国殲滅魔法を使用する。
 目標は沖合に展開中の日本国艦隊だ!!!」

「承知しました……2発目として、日本国には使用しないので?」

「敵国の正確な座標が解らぬ。それに、関係ない民を巻き込んで消滅させることもあるまい」

「……ふふ…甘いですね。
 私は大魔法の補助につきましょう。
 この大いなる魔法は神の魔法。かつて名を馳せた古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国でさえもこの大魔法を防ぐ事は出来ず、国ごと尻尾を巻いて逃げ出した」

「今回あふれ出る神通力を使用するとはいえ、触媒となる「王家の秘宝」と「軍神の指輪」は相当に古く、補修に人の手も加えられている。
 使用される神通力の出力も、神の使用した星堕としに比べると遙かに低いため威力は相当に落ちる。
 しかし……」

「はい、艦隊を全滅させるなど造作も無い事」

「……儀式を開始する!!軍神の棟へ行くぞ!!!」

 軍王ミネートは、聖王国を護るため、軍神の棟へ向かうのだった。


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