2020年02月11日

5巻特典 ファルタス提督P5


「おおぉぉぉぉ! これはすごい!!」

 ファルタスは圧巻の戦術を目の当たりにし、素直に感嘆した。

「これが、魔力の少ない者でも簡単に扱える銃を有効利用した戦法です。通常の魔導師をこれだけの数投入することは不可能です。しかし兵器が魔導師並みの域に達すれば、こういった戦法も可能となります」

「なるほどな……これを極めた国がグラ・バルカス帝国だったというわけか……」

 ファルタスの脳裏を、急降下してくる敵の飛行機械、そして船をも砕く光弾の連続着弾が過った。
 思い出した恐怖を悟られないよう、必死で記憶を振り払おうとする。

「ぬ!? あれは……」

 戦場に変化が訪れた。
 ゴーレムが4体現れ、その影に隠れるようにゴブリンたちが配置する。
 銃弾はゴーレムという岩の塊にはじき返され、すぐさま砲撃が再開された。
 煙に包まれる戦場。砲弾が命中したゴーレムは粉々に吹き飛ばされ、周囲のゴブリンも運命をともにする。
 しかし――

「ゴーレム1体!! 走ってきます!! 砲撃当たりません!!!」

「何ィっ!? あんなに速く走るゴーレムなんているのか!!?」

 そのゴーレムは、左翼に展開する歩兵小隊に突入した。
 弾き飛ばされる歩兵たち。味方がいるため、砲撃も銃撃も一時止めざるを得ない。
 陣形が初めて崩れ、兵の心に恐怖が宿る。

「第32歩兵小隊、突破されました!!」

「なっ……馬鹿な!! あんなゴーレムは聞いたことがないぞ!!」

 焦るルイジルの隣で、ファルタスが冷静に呟く。

「あれは、ゴーレムではないのかもしれません」

 敵は平野をまっすぐ、司令部に向かって爆走する。
 第32小隊と歩兵携帯型高火力大銃大隊の間、距離500mほど開いているが、そこを一気に駆け抜けていく。

「あの突進力、大銃では効果がないぞ!! 砲を当てるしかない!!! 全火力、あのゴーレムに集中せよ!!!」

 砲が突進を続けるゴーレムに照準を合わせて、火力を集中させる。
 しかし、まったくといっていいほど当たらなかった。

「ルイジル司令、我々も攻撃してよろしいか」

 見かねた百田が、彼の前に進み出て尋ねた。

「それはもちろん助かりますが、あなた方先遣小隊は敵の脅威度を計るための隊と聞き及んでいます。魔王ノスグーラを倒したときの兵器も、砲もお持ちでないと伺っております……国としてのお客様でもある。無理はしないでいただきたい」

「お心遣い、感謝します」

 百田は城島分隊長に指令を出す。

「城島分隊長!! 01式をあのゴーレムに撃て!!」

『了解!』

 城島は直径14p、全長97pほどの筒を取り出した。

「我が国の大銃のようなものでしょうか?」

 ルイジルは、まだ1・5qも先の化け物相手に構える日本の兵を見て、不思議に思う。
 大銃弾がそのような距離を飛ぶはずもないし、ましてあれほど遠い動目標に対して、常識的に考えて当たるわけがない。

「あれは……何の魔力も感じない。またしても科学文明の兵器か……」

 ファルタスも同様に、日本国の兵を見つめていた。
 しかし、日本国がこけおどしの国ではないことは知識として認識している。
 かつて世界を恐怖に陥れた魔王を小隊で殲滅し、そして第三文明圏列強パーパルディア皇国をただ1人の兵も失うことなく降した。
 さすがに後者は噂が拡大したか、もしくは日本国が情報操作を行ったとしか思えないが、勝った事実はある。
 
 城島は迅速的確に準備を行う。
 やがて、照準器の中心に、敵ゴーレムを捉えた。
 発射準備完了の合図を送る。

『01式軽対戦車誘導弾、目標、敵人型機動兵器! 距離1300!! 発射用意!!』

『――撃てッ!!』

 轟音とともに、砲身後方に白煙が吹き出たあと、小型ミサイルが飛翔を開始した。
 01式軽対戦車誘導弾。戦車を撃破するために、人間単体で携行して運用できるよう設計された兵器は、急激に加速して目標に向かう。
 放物線を描いて飛翔したそれは、正確にゴーレムへと着弾した。

 ――ガァァァァンッッ!!!

 ゴーレムに着弾すると同時に爆音を響かせ、ミサイルはその威力を解放する。
 倒れ込んだゴーレムには、マギカライヒ陸上隊の砲撃が降り注いだ。

「日本国の兵器は素晴らしい!! まさかこれほどの距離、一撃で当てるとは!!」

 ルイジルが手放しに褒めまくる。

「ま……まだ喜ぶのは早い……!」

 警告したのはファルタスだった。彼は額が濡れるほどの冷や汗を浮かべている。

「確かに、日本国の兵器は素晴らしい……しかしあの爆炎の中、まだ魔力は尽きていない……し……信じられん!! かつて感じたことがないほど、凄まじい魔力を発しています!!!」

「な……何ですと!?」

 ルイジルたちは、煙に包まれる方向を凝視した。

 ――ビーッビーッビーッ――
 古の魔法帝国の超兵器、汎用人型陸戦補助兵器「MGZ型魔導アーマー」内で、リョノスも冷や汗で全身を濡らしていた。

「ば……馬鹿な!! 何の魔力反応もなかったぞ!!!」

 彼は魔導アーマーを偽装するために、ゴーレムのような岩を取り付けていた。
 ゴブリンを先行させ、ゴーレム数体の中に紛れて出撃した。
 おそらくゴーレムがいればケリがつく、そう思っていた。
 魔力をまったく感じない攻撃が連続し、ゴブリンたちが次々と倒れる。
 さらにゴーレムまでもが粉砕され始めた。

 強力であることは違いないが、この程度の攻撃では魔導アーマーに傷一つ付けることはできないだろう。
 元々ゴーレムやゴブリンはお遊びのようなもので、この魔導アーマー1機あれば、下等種の国など容易く根絶できる。
 リョノスは単体で敵軍本陣を破壊すべく、走り始めた。
 案の定、敵の強力な攻撃は当たらなくなり、歩兵も難なく蹴散らせた。

 まっすぐ敵本陣に向かう。

 殲滅するだけなら、最初から魔光砲を撃っていればよかった。ただ、敵の魔力を使用しない攻撃がどれほどのものか、確認しておきたかった。
 しかし、この判断がリョノスを不利へと陥れた。

 突如として強烈な一撃が機体を襲う。MGZ型魔導アーマーに直撃した01式携帯式対戦車誘導弾は、装甲に取り付けた岩の部分でその威力を解放し、メタルジェットにより装甲を貫く――はずだった。
 だが岩と装甲の強度が異り、偶然に複合装甲のような状態となったため、ジェットが拡散してしまい、本体の破壊には至らなかった。
 仮に魔導アーマーが岩を纏っていなかったら、一撃で貫いていただろう。

(チィ……! 現代の下等種どもも、少しは進化したようだな……)

 今までの爆発など何の意味もなかったが、この一撃は魔素粒子を突き破り、3層の装甲すべてを破壊した。
 自分に被害がないのは、単純に運がよかっただけと言える。
 もはや装甲は当初の18%の強度しかない。

「奴らは――危険だ!!」

 リョノスは発射元である敵本陣を見て、右手を掲げた。

「排除ッッ!!」

 急激な魔力上昇、しかも攻撃魔法の術式が展開されていることに、ファルタスは素早く気づいた。

「攻撃が来るぞ!!」

 ファルタスが叫んだ次の瞬間、爆炎の中から光弾が飛び出し、本陣に向かってまっすぐ飛ぶ。

「これならっ!!」

 ファルタスは防御陣を形成し、得意な空間魔法を発動させて、わずかながら時空をねじ曲げた。
 質量が高いものには効果がないので、一か八かの賭けである。
 弾はわずかに逸れ、後方の小高い丘に着弾した。

 ――ズガァァァァァッッッ!!!

 猛烈な光と爆炎が上がり、丘の一部が消し飛ぶ。
 その威力の高さに、百田は戦慄した。

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5巻特典 ファルタス提督P4


■ バルーン平野

 少し小高い丘に移動したマギカライヒ共同体首都防衛部陸上隊は、正式な司令部を構築していた。
 眼下の広大な平野に、マギカライヒの陸軍兵たちが整然と整列する。
 陸上自衛隊の百田、そして中央法王国のファルタス提督も、同陣地から軍を眺めていた

「第2砲兵大隊、配置準備完了!」

「第4騎馬隊、準備完了!」

「第18銃歩兵大隊、配置完了!」

 伝令兵たちの報告を聞いて、陸上隊幹部が意気込む。

「砲兵だけで、木っ端微塵に塔を粉砕し、脅威を排除します!!」

 傍らに立つ隊長ルイジルは、不安を見せないよう鷹揚に頷く。

「そうだな……砲撃だけで片を付けたい。しかし、おそらくは砲撃で塔が崩壊する前に、敵が現れるだろう。小隊を滅ぼした敵だ、魔物の中には素早い個体もいる。砲撃だけでは難しいぞ」

「もちろんです。そのための、精鋭銃歩兵大隊です!!」

「フフフ……そういうことだ。銃歩兵大隊の連続隊列撃ちで、何処に逃げても当たるほどの銃弾を打ち込んでやれ!!」

 マギカライヒ共同体の銃は、自衛隊の自動小銃のように連射できない作りであるため、兵の数で装填と連射速度をカバーする。

「全部隊、配置完了!!」

 戦闘準備が整い、ルイジルの号令を待つのみとなる。

「……古の化け物め、マギカライヒをなめるなよ……! 攻撃開始ィ!!!」

「攻撃開始!!」

『攻撃開始!!』

 ルイジルの指令が復唱され、魔信によって全部隊に伝達された。
 陸上配置型科学融合魔導砲の火薬に点火され、空気がその体積を急激に膨張させる。
 魔石が塗り込まれた弾丸が押し出され、砲身内を加速する。
 砲身に光の模様が走り、砲口には六芒星の文様が浮かび上がって、弾丸の魔石と反応してさらに加速していく。
 轟音とともに、猛烈な火と煙が吹き上がり、整然と並んだ砲が、一斉に砲撃を開始した。

 ――ズガァァァァァンッッ!!!

 一帯に響き渡る轟音。森の鳥たちは恐怖のあまり、その場から泡を食って逃げ出す。
 着弾した砲弾がその威力を解放し、猛烈な爆発で塔に衝撃を与える。
 いくつもの着弾によって塔表層の岩の破片が飛び散り、煙に包まれた。
 砲撃音は鳴り止むことなく、無慈悲に攻撃が続けられた。
 ルイジルは頃合いを見計らって手を挙げる。

「打ち方止め!!」

 塔は土煙に包まれており、攻撃の効果測定のために一時砲撃が中断される。

「どうだ!!」

 岩は砕けて瓦礫となっていた。おそらくは跡形も残っていないだろう。
 しかし相手は魔帝の遺跡、何があってもおかしくない。
 ルイジルは塔のあった場所を睨みつける。
 徐々に煙が晴れていくと――
「ば……馬鹿な!!!」
 煙の中から、銀色に輝く円柱の塔が姿を現していた。
 表面を青白い光の膜が覆い、遠目には何処も傷ついていないようにさえ見える。

「し……信じられん!!」

 ルイジルや幹部らも驚愕の声を上げた。

『百田小隊長、あれは……』

 城島分隊長が百田に無線で話しかける。

「ああ。幕末レベルの陸戦用砲撃とはいえ、建物にダメージがほとんどない。建物ごと破壊するとなると、155o自走榴弾砲を使用するか、もしくは空自に爆撃を要請するしかないかもな」

『しかし、今回のうちらには、そのどちらも含まれていませんよ』

 日本国政府は魔王ノスグーラ級がもし現れたとしても対応できるよう、戦闘ヘリも投入する等、火力を調整していた。
 しかし意味不明な塔の出現により、より高火力が必要になる可能性が生じてしまった。

「そう……あれほど進言したのにな。想定外という言葉がまた使用されることになるのか」

『多少過剰くらいがちょうどいいんですけどね』

 戦場には静寂が訪れていた。
 マギカライヒ共同体の全火力を以てしても、塔は破壊できなかった。
 入口が何処にあるのかもわからない上、近づけば何が起るかわからないので、歩兵を突入させるわけにもいかない。

「――ッ!! 塔から魔物が多数出現!!!」

 幹部が鋭く報告する。

「あれは……ゴブリンか?」

 ルイジルも双眼鏡を塔へと向けており、その存在はすでに視認していた。
 鎧を着装し、剣と盾を持ったゴブリンが、塔から走り出てくる。

「ゴブリンですな、皮膚の色が通常のものとは少し違う気がしますが……ただ、魔力が多少強いように見えます」

 双眼鏡も覗いていないファルタスが、横から付け加えた。

 魔物たちは奇声を発しながら、マギカライヒ共同体の歩兵に向かって走る。
 その姿は、黒くうごめく絨毯が迫ってくるようにも見えた。

「あの数……大丈夫でしょうか?」

 ファルタスは懸念を示す。

「提督、中央世界の魔法文明とはひと味違う……科学文明の戦い方をご覧ください」

 ルイジルは幹部へ振り向き、話す。

「用意は出来ているな?」

「はっ!」

「攻撃を開始せよ!!」

「攻撃開始!!!」

 ルイジルの指令は正確に末端まで伝わり、横一列に並んだ歩兵が銃を構え、第1射を発射した。

 ――パパパッパパパパァァ――ンッッ!!!

 戦場に銃声がこだまする。
 最前線のゴブリンが黒い血をまき散らし、次々と倒れ込んだ。
 発砲した兵は直ちに後方へ下がり、次の列の者がすかさず前進して射撃する。
 7列にも達する銃歩兵隊は、最前列に達するまでに装填を終わらせ、連続して射撃を行う。
 途切れることのない銃弾の弾幕は、次々とゴブリンを打ち倒していった。


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5巻特典 ファルタス提督P3


■ ラヴァーナル帝国辺境統治庁 総務室

 量産型戦闘培養体コード・009、通称リョノスは、ラヴァーナル帝国辺境統治庁の一室で、魔導記憶装置を読んでいた。

「ふむ、魔帝様はこの世界に住まう神々の隕石落としから大陸を守るために、大陸ごと未来へ転移されたのか……空間を開くのに使用された魔力量は……おお、天文学的数値の魔力が使用されている。さすが魔帝様だ」

 リョノスは魔法帝国の偉大さに、感激する。

「今は……なんと! 魔帝様転移からこれほどの時間が経っているのか! 魔力使用量から予測される跳躍時間は……10年後、+−9年! なんということだ、まもなくじゃないか。今私が復活したのは、空間神の導きがあったとしか思えんな!」

 都合のいい解釈をして、ただ1体で人格破綻気味に笑う。

「座標は……なるほど、空間特定のための『僕の星』が機能しているのか。地上にも多くのビーコンがあるようだな。万単位の月日をもってしても壊れないとは、さすが魔帝様だ!! まもなく復活されるのであれば、下等種の国の1つくらいは献上せねば、魔帝様に作られた私の名が廃るというもの……」

 リョノスの独り言が続いていた。
 ――ビーッビーッビーッ――
 警戒音とともに、立体モニターに映像が映し出される。
 そのモニターには棒グラフと、魔法帝国が使用していた言語の数値が、桁を増やしながら上昇していた。

「魔力反応が上昇しいている。何者かが悪意を持って迫っている?」

 映像を見ていると、バルーン平野に展開した時代遅れな軍が接近していた。

「これは……現地人の軍隊か? 先日滅ぼした下等種の仲間か……ほう、面白い。魔帝様に支配されていた時代に比べると、さすがに文明と呼んでいいものがあるようだな。魔帝様や龍神国家に比べれば足下にも及ばんが……ふふふ、その程度の魔力で私と戦うつもりか!!」

 リョノスは不気味な笑みを浮かべる。
 席を立ち上がり、悠然と武器庫へ向かった。

「これを使うか」

 人型の、白く無機質な物体が佇んでいる。顔にあたる部分は透明で、中にヒトが入ると外が見渡せる。
 内蔵された魔導エンジンにより、魔力を発生して保存するほか、操作者の魔力を増幅して放てる。さらに手や足の力も何倍にも増幅できる、古の魔法帝国製兵器。
 汎用人型陸戦補助兵器「MGZ型魔導アーマー」
○ 高さ 2m
○ 全幅 1・2m
○ 後背部に魔導兵器を搭載可能
 防御力も、生身に比べると遥かに向上する。

 彼がこの魔帝の兵器を身に纏うと、ずいぶん物々しい出で立ちになった。

「部下もほしいところだな、ゴーレムだけでは心許ない……。――チッ、雑魚しか残っていないか……仕方ないな」

 元いた部屋に戻って、机に設置されたディスプレイを叩いて舌打ちすると、さらに下層の部屋へと出向く。
 そこにはカプセルに入った、培養体が並んでいた。
 操作者の意思によって自由に動かせる生物兵器、培養体量産型ゴブリン。
 野生のゴブリンロード並みの強さがあるが、あくまで前時代的な戦い方しかできない。
 しかし量産が利き、コストが安く、コントローラーさえあれば人一人の意思で操作可能なため、文明水準の低い種族の支配や、恐怖支配にはうってつけだった。

「2千体、その他魔獣か……少ないが致し方あるまい」

 スイッチを操作してカプセルを開ける。
 おぞましい形相の量産型ゴブリンが寝床≠ゥら起き上がり、リョノスの指示に従って武器庫に並んだ。そこで前時代的な鎧、盾、そして剣を装備していく。

「さて、と。本来なら私一人で殲滅できるが、恐怖を煽るためには体裁も重要だからな……」

 人知れず公務員じみた判断で、リョノスは準備を整えていった。
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