2019年05月19日

第92話 帝国激震3P1

日本国 大阪市 なんば

 グラ・バルカス帝国の皇太子グラ・カバルは地方都市を体験するため、日本国の案内人と共に、大阪市のなんばを訪れていた。
 縦横無尽に走る地下鉄、そして雑多ながらも人情を感じる街並み、見たことの無い楕円形の観覧車、そしてあまりの人の多さに多少の嫌気を感じながらも日本の国力に関心をしていた。

「ほう……日本もなかなかやるでは無いか」

 特に、地下鉄については驚いた。
 グラ・バルカス帝国の首都では主に路面電車が走っており、地下鉄は構想段階だった。

「気に入りましたか?」

「この下町のような雰囲気は嫌いでは無い。
 ん?あれを食しても良いか?」

 カバルは串カツ屋を指さす。
 昭和4年に創業した由緒ある串カツ屋のようだった。
 庶民に混じって列に並ぶ。
 身長が高く、ガタイの良いカバルはどうしても目立つが、転移後エルフやドワーフが街を歩くことも多くなり、他種族を多く見るようになった日本国において、外国人のような顔である彼はそこまで珍しい存在ではなく、特に興味は引かない。

 ビールと呼ばれるキンキンに冷えた酒と、串カツ。
 カバルはビールを飲み干した。

「うまい!!日頃、このような庶民の味は食べられなかったからな。
 やけどしてはならぬと、冷えた食べ物しか出なかった。
 むろん、病院食は庶民の食べ物であろうが、味が薄く、お世辞にも美味いとは言えぬ」

 カバルは満足そうにうなずいた。
 確かに、日本国は他国に比べて大きく進んでいるようだ。
 しかし、結局は軍事力での優劣が勝敗を決す。
 このような美味い食べ物を失うのは少しもったいないようにも感じたが、致し方ない。
 店を出た後、彼はたこ焼きと呼ばれる食べ物に手を伸ばす。
 ソースの旨味、そしてマヨネーズの甘み、青のりのほのかな香り、どれもが絶妙にマッチし、とても美味しかった。

「このたこ焼きという食べ物は、無理に中身がタコである必用は無いな」

 ソーセージや肉、もしくは麺でも美味いだろう。
 率直な感想を述べる。
 一時が経過し、大阪視察を終えた。

「これよりグラ・カバル殿には日本国の首都、東京を見て頂きます」

 次のスケジュールは東京となっていた。

「首都か、ここからどれくらい離れている?」

「おおよそ500kmになります」

「そうか、では飛行機で行くのだな。日本の飛行機がどのようなものか、楽しみだ」

「いや、新幹線で東京に向かいます。鉄道です」

 案内人の鉄道という言葉に、カバルは少しうんざりした。
 時間がかかりすぎる。

「鉄道という事は、6時間か以上かかるではないか!!飛行場は近くに無いのか?
 都市の造り方がなってないぞ」

「かかる時間は2時間30分弱です。途中止まる駅があるとはいえ、時速270kmで結んでおりますので」

 聞き間違えかと思い、カバルは聞き返した。

「な……なんだと?鉄道が時速270km超え?」

「はい、そうです」

 聞き間違えでは無かった。
 しかし鉄道は高速になればなるほど、脱線の危険性が上がる。
 
「日本国では、高速鉄道による脱線による事故は、年間何回起きている?」

「開業以来54年経過していますが、新幹線が原因の事故による死者は1人もいません。
 脱線という意味においては、過去に一度だけ地震の直撃を受けた時に脱線しています」

「バカを言うな……鉄道は、速度が上がれば上がるほどに何故か脱線の危険性が上がる。
そんなに高速で走らせて脱線せぬ訳が無い。それほどまでに、日本の鉄道の車輪と線路は滑らかだというのか!!」

「高速による脱線の主な原因は振動です。滑らかを追求しても解決しないため、振動問題を解決すれば脱線は起きにくくなります」

「え??」

 グラ・バルカス帝国においても、鉄道の高速化は急務であった。
 しかし、制御技術も無く、時折起きる脱線事故、高速化すれば脱線で多大な死者が出る事は間違いなく、頭を悩ませていた。
 そもそも振動が原因であると突き止めた鉄道技術者はおらず、意味不明な脱線の原因解明の可能性に、カバルはなんとも言えない気持ちになった。
 
 この案内人の言うことが本当ならば、グラ・バルカス帝国は日本国よりも鉄道技術で劣っている事になる。
 プライドが軋む。

「まあよい、行くか」

 グラ・カバルは案内人につれられ、日本国の首都東京を目指す。

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2019年05月03日

第91話 帝国激震2 P5


◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 情報局技術部

「ほ……本当ですか!?まだ敵の主力武器すら良く解っていない状況で、本格的に日本国への侵攻が始まると?」

 情報技官ナグアノは、上司の言葉に耳を疑う。

「始まると言っても海軍航空隊による空爆と、艦砲射撃による敵都市の殲滅のみだ。
陸上侵攻はさすがに現況では厳しい」

「それは解っています。しかし、日本軍の武器もこの情報誌しか無い状況で、本格的侵攻作戦を行ったら、多大な被害が出ます!!」

 別冊宝大陸という日本の書物。
 これに記載された日本軍の武器性能が本当ならば、とてつもない被害が出るだろう。
 危険な情報があるにも関わらず、動いていく現実に彼は頭を悩ます。 

「被害よりも、皇太子殿下が捕らわれた事が問題なのだ!!
 皇帝陛下の御意志も確認出来ている。軍としては当然総力をあげて動くだろう。
 決まったことは仕方が無い。
 そこで、情報局としても出来ることは無いか、探っているのだよ」

「そんな……では、多大な被害は覚悟の上と?」

「今回の侵攻は距離がとにかく長い。
 ある程度の被害は覚悟しているようだが……」

 何か出来ることといっても、非常に難しい。
 ある程度の被害との事だが、とてつもない損失が出るかもしれない。

「しかし、何が出来るかというと……はっ!!!」

「どうした?」

「通じるか解りませんが、ありました!!出来ること。被害を少なく出来るかもしれない!!!」

「では、明日までに資料をまとめろ!!」

「承知しました!!」

 情報技官ナグアノは、自国のために知恵を絞るのだった。

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第91話 帝国激震2 P4


◆◆◆
 
 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス アルビオン城
 
 中央世界、神聖ミリシアル帝国の帝城とも言えるアルビオン城において、帝前会議が行われていた。
 皇帝ミリシアル8世を頂点として、楕円形の席がもうけられ、外務大臣ペクラス、帝国情報局長アルネウス、そして対魔帝対策省長官ハルコン、軍務大臣シュミールパオ、国防長長官アグラ他、蒼々たる軍幹部が並ぶ。
 
 同会議室において、グラ・バルカス帝国と第二文明圏連合軍の戦果、そしてグラ・バルカス帝国の動きが報告されていた。
 概要資料に目を通し、各人は沈黙する。

「では、第2文明圏+日本国の連合軍は、敵の機械化師団を壊滅させ、帝国の最前線基地バルクルスの壊滅と確保に成功、さらに敵の皇太子グラ・カバルを捕らえたというのは真なのだな?」

 外務大臣ペクラスが、情報局長アルネウスに問う。

「はい、敵の機械化師団は日本国の攻撃によって壊滅、さらに日本軍は制空権を確保し、基地に対する大規模空爆を実施、基地の反撃能力がほぼ無くなった状態で、第2文明圏が総力を挙げて占拠した模様です。
 この時、偶然なのでしょうが、敵の皇太子が基地におり、戦闘に巻き込まれて負傷、負傷程度がムーの医療技術ではどうしようもないレベルであったため、日本国に移送されました」

 世界連合を率いてグラ・バルカス帝国を叩こうとした。
 念には念を入れて古の魔法帝国の空中戦艦までもを投入した。
 しかし……結果は痛み分けであり、さらに空中戦艦を1隻撃墜されるという醜態をさらしてしまう。
 神聖ミリシアル帝国の求心力は、この作戦で大きく低下したといっても過言では無かった。
 そんな中、敵基地陥落の知らせ。
 第2文明圏が総力を結集した作戦であり、さらに神聖ミリシアル帝国にとっても喜ばしい事であるはずだが、自分たち以外の者が為し得た大戦果に、微妙な空気が流れた。

「情報局は、さらなる情報をつかんでいます」

 右上に赤い印が着けられた紙がこの場で配られる。
 事前の根回しを行えないほどの極秘中の極秘情報を記載する場合のみに使われる紙。
 魔法による複写は出来ず、魔写にも写らない。時間経過と共に消えるインクが使われていた。

「グラ・バルカス帝国は日本国に皇太子の引き渡しを要求しましたが、日本国政府はこれを拒否いたしました。
 帝国は懲罰を行うと称し、大規模艦隊で日本国のいずれかの都市を狙うとの情報を、レイフォルに潜入中の調査員が入手いたしました。
 なお、皇太子が捕らわれるという異例の事態のため、本件派遣艦隊の規模は世界連合時に衝突したときの敵艦隊総量を陵駕するとの事です」

 衝撃に沈黙が流れる。
 敵はあれ以上の戦力を本国に隠し持っているのだ。

「日本国は強気だな。相当に自信があるのだろう」

「しかし、さすがに数が多すぎるのではないか?日本国の主力艦数は、100にも満たない数だっただろう?
 ムー国首都をねらった敵本国艦隊を葬り去った時も、数にあまり差が無かったし、敵に戦艦が混じっていなかったと記憶している」

「軍部の分析では、グラ・バルカス帝国にある程度のダメージを与えるも、防ぎきれずに本土の都市が焼かれるという分析となっております。
 ただ、どの都市を狙うのかによって、帝国のダメージも変わるかと……」

 場がざわつく。
 ミリシアル8世が手をあげると、すぐに静まりかえった。

「我らは敵による日本国への侵攻作戦、静観する。
 もちろん、侵攻が確認出来れば情報提供は行う。
 日本国も、都市が焼かれるとさすがに本気になるだろう。
 今まではまるで人ごとのような対応だったのでな。
 ただ、我が国としても何もしない訳にはいかぬ。日本国を砲撃し、弾薬が尽きた敵艦隊を万全の状態で襲うのだ。
 大いなる戦果があげられよう」

 皇帝陛下の言は重い。
 皆平伏する。
 
 敵の侵攻ルートや帰るルートが判明しないため、狙って襲うことは難しく、ある程度の予測と索敵によって待ち受けなければならないため、実際は難しい作戦。
 軍幹部は言葉を飲み込む。

 神聖ミリシアル帝国は、グラ・バルカス帝国の大規模作戦を静観することとした。

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posted by くみちゃん at 20:13| Comment(39) | 小説