2017年09月30日

第69話バルチスタ大海戦2P1

神聖ミリシアル帝国第1魔導艦隊 旗艦 ロト艦橋

 荒れる海、比較的波は高く、通常の船であれば大きく揺られる事だろう。
 しかし、世界一の超大型魔導戦艦を含む神聖ミリシアル帝国艦隊は、海を裂くかの如く揺れずに進む。

 ミスリル級魔導戦艦、旗艦ロトの艦橋から、司令レッタル・カウランは海を眺めていた。

「天の浮舟ベータ3発艦中」

 無機質な声により、報告がなされ続ける。眼前に写る先進的な空母から神聖ミリシアル帝国の剣が放たれた。

 天の浮舟ベータ3型、急降下による敵艦に対する爆撃を目的とする。
 ベータ2型に比べ、機体の大型化、翼面積の増大、エンジンの高出力化により、高威力の爆弾を搭載できるようになった。
 先進的なキャノピーに流線形の機体、しかし翼は第二次世界大戦のレシプロ戦闘機のように横に突き出ている。(後退翼ではない)

 新旧をつなぎ合わせたような機体、日本人が見たならば酷く違和感を感じるだろう。

 護衛にはアルファ3型制空戦闘機が付く。

 神聖ミリシアル帝国は世界の敵、グラ・バルカス帝国軍に格の違いを見せつけ、神罰を下すためにその剣を解き放った。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊 旗艦 グレード・アトラスター

 魔法文明が中心のこの世界から見て、異世界からの転移国家である科学文明国、グラ・バルカス帝国……。
 その技術の推移を集めた機械、他国に対して極秘とされている対空用の電波探知機(レーダー)を見ていた技官は目を丸くする。
 艦隊から北東の方向に、多数の飛行物体が画面に光点として映し出された。

「レーダーに感あり!!北東方向、10時の方向、距離200km、飛行物体多数!!これは……100機を超えています!!!」

 司令カイザルの口元が吊り上がる。
 彼は横にいた作戦参謀に話しかけた。

「見つけたか……どう考える?」

「やはり、先に落とした敵の偵察機はこちらを見つけていたようです。機数からして……空母機動部隊がいるようですな……。
 しかし、敵の位置……神の導きがあったとしか思えませぬ……第3潜水艦隊の近くです。
 迎撃機と偵察機の発艦はもちろんの事として、
第三潜水艦隊の派遣、そして相手の数が判明したならば、比較的距離も近いようなので、戦艦を中心とした打撃部隊も派遣が必要でしょうな。」

「そうだな……まずは迎撃をするとしよう。」

 風上に向かって空母艦隊が爆進する。
 グラ・バルカス帝国は迎撃と偵察のため、アンタレス型艦上戦闘機を発艦させた。



 この世界にとって、恐怖の編隊が空を進む。
 魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの音はカン高く、時速400kmを超える空の進軍……文明圏外国家はそれを見ただけで、撤退の意志を固めるだろう。

 列強と呼ばれし国家の強軍であっても、それを止める術は無い。

 神聖ミリシアル帝国「天の浮舟」部隊長カノンは自らの操るアルファ3型制空戦闘機の中で、グラ・バルカス帝国に対する「初撃」の成功を確信していた。
 編隊の上空約100mから眺める部下たちの編隊は、一糸乱れておらず、誰が見ても練度は高いだろう。

 皇帝陛下から授かった剣、「天の浮舟」は間違いなく世界最高性能であり、彼は自信を強めていった。

「いかんいかん、先の戦いでは敵に遅れをとった部隊がいたらしいからな。」

 かれは戦に油断は禁物だと自戒する。

「ん?」

 微かに影がさす。
 今日は晴天……今飛んでいる空域は雲1つ無い……はず。

 さらにまた、一瞬影がさす。

 カノンは目を細めて太陽を見た。

「敵影!!!」

 一瞬見えた機影……急降下してくる!!!

「敵襲!!!!!!!!!!!!太陽から来るぞ!!!」

 吠えるようなエンジン音と共に、上空から下へ向かう敵が通過する……速い!!
 刀のように研ぎ澄まされた機体、ムーの戦闘機のようにプロペラが前についている。戦闘機の発するエンジン音は、高く、何かが唸っているようにも聞こえた。
 一瞬……美しいと感じてしまう。

 タタタタタタ……

 鈍い射撃音と共に、敵から光弾が放たれた。我が方に比べ、圧倒的ともいえる連射速度……しかしその弾は僅かに放物線を描く。

 飛び行く光弾は、ベータ3型爆撃機に向かって飛翔し、機体の抱える魔導爆弾に着弾、弾は魔力回路を傷つけ、内包された魔力が暴走を始める。
 制御不能に陥った魔力爆弾はその威力を開放、空中に大きな爆発が出現した。

「お……おのれ!!」

 次々と爆発するベータ3、護衛の戦闘機も攻撃を加えようとするが、旋回能力、そして加速能力が我が方を上回る。
 落ち行く飛行機……そのほとんどが……友軍!!!
 魔力通信機からは、狼狽に満ちた声が聞こえて来た。

『くそっ!後ろに回り込まれた!』

『速すぎる!!ちくしょぉぉぉ!!!』

 また1機、部下が炎に包まれる。
 魔信からは悲劇が流れ続けた。

『何て旋回性能だ!!ぐぎっ!!』

 1機が炎に包まれて雲の海に落ちる。

「も……モルアっ!!くそっ!!」

 部下のモルアは先月子供が生まれたと喜んでいた。帰ったら初めて自分の子供を抱けると……。
 奥さんに何て説明すればいいんだ!!!
 考えながらも彼は操縦レバーを動かし続けた。
 やがて照準器の中に敵を捕らえ、引き金を引く。
 通常の機銃音とは異なる、高音と共に連続して光弾が放たれた。しかし、それは敵に当たる事無く空を切る。
 圧倒的な加速力、そして旋回能力を持つ敵に彼は翻弄される。
 不意に機体が大きく揺れ、激しい振動が彼を襲う。反射的に音のした方向を見た。

「しゅ……主翼が!!!」

 片翼を失ったカノンの操る天の浮舟は、バランスを崩し、機体を回転させながら雲の海に落ちて行った。


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2017年08月16日

第68話 バルチスタ大海戦P5


◆◆◆

 バルチスタ海域 北側

 神聖ミリシアル帝国 第1魔導艦隊 旗艦 ミスリル級戦艦 ロト 

「数が多いため、数パーセントとはいえ結構やられたな……。」

 艦隊司令レッタル・カウランが、艦長タグスに話しかける。

「はい、今回の攻撃ではムーの空母に轟沈と大破が出ています。やはり侮れない敵ですね。」

「しかし主力は我々だ。今回の戦力比は我々が95%、残り5%が世界連合艦隊と言っても差し支えない。」

「報告します!!!」

 話を遮るように通信員が声を上げる。

「第6偵察隊より入電!!敵艦隊発見!!戦艦10、空母9、巡洋艦約40、小型艦多数!!大艦隊です!!!」

 艦隊司令レッタル・カウランの口元が吊り上がる。
 規模からしておそらくは敵の主力……。

「ついに見つけたぞ!!よくやった!天の浮舟発進!!敵を……殲滅セヨ!!」

 現代の日本人が見ても一見して先進的に見える空母……。
 その空母から多数の攻撃隊が発艦してゆく。
 
 様々な思惑を載せ、戦場は動き続ける。

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第68話 バルチスタ大海戦P4


◆◆◆

 マギカライヒ共同体 機甲戦列艦隊 旗艦バルテルマ

「敵機、我が艦隊に向かって急降下開始!!!」

 簡単に攻撃を許してしまった事に、艦長テルンは眉間にシワを寄せた。
 見張り員から報告直後、敵の機体が高音を発し始める。
 まるで死神の悲鳴のようにも聞こえる音と共に、敵は機首を我が艦隊に向けた。

「対空戦闘開始!!!」

 比較的小型の魔導砲が空を向き、射撃を開始する。
 空へと打ち上げられる光弾は単発であり、全く敵に当たらない。

「くそっ!!」

 次の瞬間、敵が光弾を発射した。
 
 急降下爆撃機から発射された機銃弾は、木製の船体に大きな穴を開け、上から下に貫通する。

「船底破損!!浸水!!!」

「なっ…何だとぉ!!」

 空を飛ぶ兵器からのたったの1射で船が破損した事に驚きを隠せず、敵を睨みつけるテルン。

「あれは何だ!!!」

 敵は黒い何かを落とし、機首を上げて離脱する。

ドバァァァァァッ……ドゥゥゥゥゥ……

 グラ・バルカス帝国の急降下爆撃機から放たれた爆弾は、マギカライヒ共同体機甲戦列艦隊旗艦バルテルマの内部でその能力を開放、炎は内部にある火薬へと引火、爆圧は放射状に広がる。
 海上には猛烈な閃光と爆発音が発生し、同船は木端微塵に粉砕されてこの世から消えた。

◆◆◆

 ムー機動部隊 旗艦 戦艦ラ・エルド

 空を我が物顔で飛び回る敵機……。
 ムーや神聖ミリシアル帝国艦から打ち上げられる対空兵器はとんど敵を捕らえる事が出来ず、逆に艦内には悲壮感溢れる報告がなされつづけていた。

「マギカライヒ共同体、旗艦バルテルマ、轟沈!!」

「トルキア王国戦列艦隊、ヘルマ、ぺクノス、ジェイアード、轟沈!!」

「中央ギリスエイラ公国魔導戦列艦、ナーノ、ピルコ、ミーリル轟沈!!」

 増え続ける被害……海上の各所で炎に包まれる友軍……数が多いため、全体としてはまだ数パーセントの損耗ではあったが、青い海の上で発生し続ける赤い炎はそこにいる兵たちの心に恐怖を植え付けた。
 すでにムーの空母も2隻が爆弾を受け、消火活動中である。
 ムーの準備した対空兵器は、たったの3機撃墜したのみであり、数十機が乱舞するこの戦場において、戦果はひどく小さいもののように思えた。

「これほどまでに差があるというのかっ!!」

 ムー国艦隊司令レイダーの手は強く握られ、その拳からは血がしたたる。
 多くのもの達が高空から急降下してくる敵に注意を向けた。

「低空に敵機!機数4、空母トウエンに向かっています!!!」

 レイダーの背中に汗が噴き出す。
 日本国の資料で読んだことがある攻撃……水中を進み、船の喫水線下を攻撃、爆圧の逃げにくい水中で爆発するため、船体に多大な被害をもたらす兵器……確か……魚雷!!!

「い……いかん!!奴を空母に近づけるな!!!全火力を集中してでも奴を落とせ!!」

 レイダーの指令の後、ムーの対空火砲が水平を向く。
 流星雨の如き光弾の嵐が吹き荒れ、海上には的を外れた弾丸が着弾し、飛沫を上げる。

 一言で表すならその光景は「猛烈」であった……。しかも!!

「敵、何かを投下、4隻とも上昇、離脱開始!」

「海を良く見ろ!!水中をかける攻撃が来るぞ!!!」

 魚雷投下ポイントから空母トウエンに向かって白い雷跡が伸びる。

「回避しろ!!それは強力な攻撃だ!!!」

 空母トウエンはゆっくりと旋回を開始、しかし焦っている彼から見るその光景は、もどかしいほどにゆっくりとしたものに見えた。
 最初の1撃が空母をかすめる。

「よし!」

 1発を回避したことにより、僅かな希望が生まれた次の瞬間、トウエンが震えた。

ドーン…ドーン…。

轟音と共に2本の水柱が出現する。

「「おおおおおっっっ!!」」

 それを見ていた者達は、あまりの光景に驚きともなんとも言えない声を発した。
 グラ・バルカス帝国の雷撃機から放たれた魚雷は空母トウエンに着弾し、その船底を破壊、艦は一瞬大きく振動した後、急速に傾き始める。

「トウエンから通信、船底から多量の浸水を認める。」

 目に見えて船速が落ちていく。そして誰が見ても明らかにそれは沈み始めた。

「ちくちょう!!やられた!!!」

 レイダーは吠える。

「空母トウエン、マシガ艦長、総員退艦を指示。」

 多くのもの達が見守る中、第二文明圏の機械技術大国ムーの誇る空母トウエンは、ゆっくりと海に沈む。
 空母周辺は水流が渦をなし、沈んでいく……脱出できなかった兵を巻き込みながらムーの誇る空母は海へと消えた。

 世界連合艦隊を混乱に落としいれたグラ・バルカス帝国空母機動部隊の第1次攻撃隊は、一通りの攻撃を終え、帰投していった。

 第二文明圏連合竜騎士団が現場空域に到着した頃には、すでに敵の姿は無かった。

◆◆◆

 グラ・バルカス帝国 海軍連合艦隊 旗艦グレードアトラスター

 戦艦グレードアトラスターは帝国監査軍所属であったが、その能力の高さから、今回連合艦隊旗艦としての役割を与えられていたため、本来乗艦しないはずの帝国海軍東方艦隊司令長官カイザルが乗艦していた。

「第1次攻撃隊から入電、第2次攻撃の要あり、戦果……」

 艦橋では第1次攻撃隊が敵に与えた大戦果が報告される。
 一方我が帝国の損害は極めて軽微であった。

 カイザルは目を閉じて考える。

「やはり弱敵とはいえ、数が多すぎるな……よし!!
 航空攻撃を反復させつつ、戦艦を中心とした打撃部隊を送るぞ!
 伏兵の可能性も考慮し、編成は……」

 グラ・バルカス帝国海軍連合艦隊は、その大艦隊の一部を……艦隊決戦として、世界連合艦隊殲滅のために差し向ける事を決定したのだった。

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posted by くみちゃん at 22:34| Comment(3) | 小説