2023年04月25日

第140話崩壊1P7


「被害報告!!」

『装甲展開用の魔素はすべて使い切りました!!魔導機関損傷無し、の出力安定!!』

『電磁波反射式レーダー破損、使用不能!前部外殻損傷、魔素安定化に影響有』

「!!!電磁反射式レーダーが損傷したのか?復旧は可能か!!」

『完全にもっていかれました。修復不能』

「なっ……」

 敵の攻撃は魔導レーダーに反応しない。
 どうやったのかは全く検討がつかないが、本当に反応しない。
 そんな中、唯一の魔力不使用の攻撃を防ぐための超高性能の目が失われる。

 他の後ろに控える飛空艦も劣化版のレーダーは備え付けてあるが、リンク機能が無いため、正確に飛翔位置を把握するためには、魔信で話し続けなければならなかった。

 撤退したい所だが、飛空艦が後ろに控えており、攻撃の要、聖王家の象徴、もはや神話を具現化したとも言える聖帝ガウザーが撤退する事があって良い訳が無く、ガウザーの撤退はクルセイリース大聖王国の王家敗退と同じ意味を持つため、出来ない。
 
「なんという事だ……」

 絶望の中、ガウザーはつぶやく。
 そんな中、追い打ちがかけられる。
 
『敵、大型誘導弾が近づいてきます!!!距離20,超低空から亜音速で近づいてきます!!』

 魔導望遠装置を眺めていた監視員が運良くSSM−1Bを発見した。

「くそっ!!何と言うことだ!!しかし……亜音速で間違いないな?
 下部アトラタテス砲は使用可能か?」

「はい、上部は冷却中ですが、下部は使用可能です!!」

 今回の誘導弾は遅くて大きい。迎撃可能な可能性が高い。
 勝機はある。
 ガウザーがにやけた瞬間……

『敵大型誘導弾上昇!!』

「いかん!!すぐにアトラタテス砲で迎撃!!」

『射程外です!!』

「閃光魔法だ!!クルスカリバーを使用せよ!!」

『しかし!敵の攻撃に魔素が無く、電磁反射式レーダー故障中のため光学手動照準になります!!』

「かまわん!」

『了解!!クルスカリバー(極大閃光魔法)放射!!』

 聖帝ガウザーの前方に六芒星が出現した。
 その中心部から目視可能なレーザーが宙を駆ける。

「当たれ!!当たるのだっ!!もやは装甲が無い!!頼む、当たってくれぇ!!」

 神速の誘導弾に比べて今回のは、亜音速であり、酷くゆっくりと見える。
 とはいえ、音速に近い速度が出ているため、当たりそうなのに当たらない。

「着弾まで3……2……1……」

「く……くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 イージス艦みょうこうから発射された90式艦隊艦誘導弾改(SSM−1B改)は、古代魔法帝国(ラヴァーナル帝国)の遺産、空中戦艦、聖帝ガウザーに命中、実に260kgにも及ぶ弾頭はガウザーの表面装甲を粉砕して内部に侵入して高性能爆薬に着火し、その威力が解放された。
 
 猛烈な炎と圧力は艦内を駆け巡り、兵達を焼き尽くしながら圧力の弱い方に向かう。
 やがて、空中に巨大な十字架の光と炎が出現し、周囲に爆音が響く。
 
 聖帝ガウザーは3つに折れ、炎を纏いながらゆっくりと地上に墜ちていく。

 地上に衝突したそれは、猛烈な炎と爆発を伴いながら、周囲の草木を焼き尽くすのだった。 司令アロエリット、艦長ガンドライトは苦しむ間もなく戦死。
 
 後方から聖帝ガウザーに続いていた飛空艦隊は、その壮絶な最期を唖然としながら見守るのだった。


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第140話崩壊1P6


◆◆◆

 クルセイリース大聖王国 古代兵器 聖帝ガウザー

『敵、12発もの迎撃兵器を放出、神の炎に向かって飛翔中』

「くそっ!!これほどの数をも単艦で対応してしまうのか!!迎撃が12発、相当に命中率に自信があると見える」

 やるべき事はやった。
 レーダー上に写る敵と自分の放った神の炎。
 その距離は徐々に近づく。

 艦長の思考は巡る。
 敵は先ほど、1発の神の炎に対して2発の誘導弾による迎撃を行った。
 つまり、100%当てる自信は無い。
 今回も、12発を放っている。
 撃ち漏れを警戒しているのだろう、20発撃たないのは、おそらくは管制能力の限界なのかもしれない。
 それにしても、北西世界は何と高い技術力を有しているのか。
 敵の力を測らず、勝手に開戦した軍王も本当に無能だ。

 艦長ガンドライトは凄まじい気迫で画面を睨み付ける。
 司令アロエリットは、緊迫の空気の中、口を挟めずにいた。

 眼前では魔力探知センサーで感知した魔力を元に、映像化される画面が浮かび上がる。
 青い光の尾を放ちながら飛翔する優雅な姿、そして途轍もない性能を持った攻撃が10発も飛翔する。
 本来であれば誇らしいだけの映像だが、先の攻撃により、足の震えが止まらない。
 これが通用しない場合、管制能力が許す限り数で押すしか無いが、それを防がれたら打つ手が無い。

『まもなく接触する模様……4……3……2……1……今!!』

 先ほど見た悲劇、神の炎が爆発し、2秒か3秒の間隔をおいて次々と……次々と神話級兵器が迎撃されていく。
 音速に近い速度で飛翔しているはずの……小さなコアに当てていく。
 
 司令アロエリットは眼前のあり得ない光景を呆然と眺める。
 悲劇の再来……すべての神の炎は爆散し、炎の雨と化す。

「あ…あ…あ……そ……そんな!!」

 主力兵装が封じられた。
 追加攻撃があたまに過るが、まずは敵の攻撃を防がなくてはならない。
 攻撃の効かない相手には、相手の弾切れまで神の炎を撃つしかないが、どちらが先に弾が尽きるのだろうか。

『敵!!残り2発が向かってきます!!!』

「ちくしょう!!アトラタテス砲自動管制!!」

「了解!!」

 2発の誘導弾が迫る。
 近づき、射程に入ったそれに対し、轟連式対空魔光砲(アトラタテス砲)が火を噴く。
 
「2発当たると不味い!!」

 艦長は他者に聞かれぬよう、小さくつぶやいた。
 魔導電磁レーダーを見ると、敵はどんどん近づいてくる。
 対空砲はシャワーのように打ち込まれているのに当たらない。
 何故当たらないのか、ガンドライトはたまらず叫んだ。

「何故だ!!何故当たらぬのだああぁぁ!!当たれ、当たれ当たれ当たれ当たれ当たれーーーーっ!!!」

 小さな爆発が起こり、敵の弾が空を回転しながら落下をはじめた。

『命中!!残り1発!!』

「や……やった!!!」

『アトラタテス砲オーバーヒート!!!冷却開始します』

 射撃が止まる。

「魔素展開!!前面にエネルギーをすべて回せ!!装甲強化!!」

『了解!!!』

 空気がゆがむほどの強力な魔力が前方に展開された。

「来るぞっ!!!」

 全員が何かにつかまった。次の瞬間。

 ガアァァァァン!!

 聖帝ガウザーが激しく揺られる、同時に各種アラームが鳴り響いた。


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第140話崩壊1P5


◆◆◆

 イージス艦みょうこう 戦闘指揮所

「敵、ミサイル10発を発射、先ほどと同様、放物線を描いて向かってきます」

 レーダーを見ていた南野は再度敵から誘導弾が発射された旨を報告する。
 射撃管制を行っていた牟田口も極めて落ち着いている。

「どうやら敵は攻撃の手を緩めるつもりは無いようだな」

 艦長が牟田口に話しかける。

「そのようですね、あれが攻撃のつもりなのでしょう。当たるわけ無いのに、1発では解らんのだろうか」

「牟田口、戦場で楽観だけはするなよ」

「失礼しました」

 艦長は目を瞑る。

「確認だが、SSM1Bは対空プログラムがなされたもので間違い無いな?」

「はい、間違いありません。
 簡易な対空プログラムに仕様変更がなされています」

 既存のSSM1Bは簡易式対空プログラムへ仕様変更され、SSM2も順次対空プログラムと新型人工衛星誘導システムに対応出来るよう、順次改良が加えられている状況であった。
 彼は目を開く。

「敵の攻撃を迎撃、その後敵空中艦に対空ミサイルを2発、艦隊艦誘導弾(SSM1B)を1発ほど届けて差し上げろ」

「はっ!!」
 
「敵艦への直接攻撃を開始する!」

 ギリシャ神話において、主神ゼウスが娘、女神アテネに与えたとされる、あらゆる災厄、魔除けの能力を持つとされるイージスの盾
 イージスの名を冠した護衛艦がその真価を発揮する。

 
 イージス艦みょうこうの前部に設置された垂直発射装置の蓋が開いた。
 煙と炎をあげ、連続して対空誘導弾が射出された。

 その数12。

 12本もの科学の槍は白い尾を引きながら飛翔し、一瞬で青空に消えた。

 続けて艦中央部、斜めに設置された筒から一際大きな煙が上がる。
 さきほどよびもゆっくりと発射されるそれは、明らかに今までのミサイルよりも太くて大きい。
 斜め上方を向き、ロケットモーターによりゆっくりと加速を開始する。
 巡洋艦でさえも1撃で大破させうる威力を有する自衛隊の艦対艦誘導弾(SSM−1B改)は敵空中戦艦に向けて放たれた。

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