2020年02月11日

5巻特典ファルタス提督P2


■ マギカライヒ共同体 陸上自衛隊 ムー国派遣調査団 仮設テント

 グラ・バルカス帝国の脅威がムー国にも広がり、再三にわたる軍事支援の要請が日本国政府に対してなされていた。
 日本国政府は、本隊派遣は別として、そもそも空自や陸自がムー国へ迅速に展開可能なのか調査するため、調査団を派遣している。
 同調査団に任命されていた百田太郎は、本省から届いた辞令書に目を剥いた。

「こ……これは……」

 トーパ王国へ、有害鳥獣駆除の国際貢献として派遣された件を思い出す。
 作戦名、『オペーレーション・モモタロウ』。
 先遣小隊として派遣されたはずが、すでに民間人が食害されている状況で、本隊の到着を待っていては民間人に甚大な被害が出ると判断、本隊の到着前に魔王軍≠ニ呼称する生物群と戦った。
 個体名・魔王はとても強く、91式携帯地対空誘導弾を防ぎ、12・7o機銃をものともせず、装甲車の放つ35o機関砲を生身で防いだ。
 派遣小隊が持っていた最強の攻撃力である戦車砲、120o滑腔砲でようやく撃破に至った。
 単一の生命体としては、信じられない存在である。
 あんな害獣とは二度と戦いたくないというのが正直なところだ。

 しかし、目の前にある1枚の紙は、無慈悲である。

『マギカライヒ共同体からも、有害鳥獣駆除を目的とした自衛隊派遣依頼が来ている。
 獣の脅威度を計るため、事前調査を実施せよ。』

 前回は日本国から比較的近く、魔王軍という勢力で出現したために、調査であっても小隊を派遣できた。
 しかし、今回の害獣は単体であり、脅威度がわからないにもかかわらず、戦車を遥か遠く離れた日本国からはるばるここまで持ってくるわけにはいかない。
 上の言い分は理解できるが、今回も仮に差し迫った脅威があり、戦いに突入することになった場合、前回のノスグーラのような存在であったらと思うと、百田は気が気ではなかった。
 第二文明圏の国家が、わざわざ日本国に要請してくるほどの獣だ。隊員の命を危険にさらしてしまう可能性が高い。
 事前調査団への重武装を強く進言した結果、左記の通り調査団の派遣が決定した。

○ 軽装甲機動車3台
○ 高機動車5台 (内1台は93式近距離地対空誘導弾装備)
         (内1台 中距離多目的誘導弾装備)
○ 各種歩兵兵装搭載
○ 要請により、AH−1S 3機が出動できるよう待機

 百田としては不満な内容であったが、ないよりはマシである。
 これらの車両は空輸にて、マギカライヒ共同体首都近郊のバルーン平野へ輸送されることとなった。

■ 数日後 バルーン平野

 平野に展開する多数の兵士たち、馬に牽引された魔導砲、そして騎士たちが整然と並び、後ろには航空戦力であるワイバーン25体が控えている。
 部隊をまとめるマギカライヒ共同体首都防衛部陸上隊将官ルイジルが後方の仮設司令部で待機しており、傍らに立つファルタス提督に作戦書をチェックしつつ話しかける。

「まもなく日本軍が到着しますので、合流後、現況を併せてご説明いたします」

「わかりました。それにしても……」

 ファルタスはバルーン平野に隣接する森のほうを見る。
 突如として建ったという石の塔は、木の根や土が絡みついて禍々しく、とてつもない魔力を帯びていた。
 ファルタスは嫌な予感がして身震いする。
 しばらくして、何かを連続して叩くような音が飛来し、ルイジルたちが見たこともない形の飛行物体が現れた。

「なんと……面妖な……」

 細長い箱の上の前後で、ぐるぐると何かが回転する、数機の飛行物体だった。
 近づくにつれて大きくなる音に、思わず耳を塞ぐ。やがてそれはゆっくりと着陸し、中から機械式の車を降ろした。中には吊り下げてある車もあるようだ。
 車輌は全部で8台。配置につく頃、日本軍の展開を指示していたまだら模様の服の男が、ルイジルの前に立ち、ビシッと敬礼する。
 マギカライヒ共同体では、指揮官は比較的きらびやかな服を着る文化があるので、ルイジルから見ると日本軍はひどく野蛮に見えた。

「日本国陸上自衛隊、国際派遣部隊先遣隊長、百田太郎と申します」

「マギカライヒ共同体のルイジルといいます。この度は学院連合(政府)の要請を受けていただき、感謝します」

「我々は脅威度を測定するための先遣隊です。概要をお聞かせ願います」

 百田は、すでに軍が展開している光景を目にし、嫌な予感がしていた。

「はい、実は……」

 ルイジルはファルタスに語った説明を百田にもする。

「なるほど、ここがその最前線というわけですね」

「ただ、その魔物は突然足を止めました。敵の出方を見ていたのですが、一夜にして、突然……あの塔が現れたのです」

 土が付着した、禍々しい石の塔を指さすルイジル。
 塔の下には何か大きな柱状のものが突き出て、地面を押し上げたようにも見える。

「では、あの塔については何もわかっていないということでしょうか?」

「はい。化け物があの場所で進軍を停止したということ、そしてあの場所にも魔帝の遺跡が存在する可能性が指摘されていた程度です」

「そうですか……」

 百田もファルタスも、嫌な予感がますます強くなる。

「自衛隊の皆様の本隊を待ってから、という意見もあったのですが、首都までたった50qという場所にできた、意味不明な塔を放っておくわけにはいきません。我々はマギカライヒ共同体首都防衛部の威信をかけて、これより塔に総攻撃をかけるつもりです。その戦いを見て、脅威度を判断して頂きたい。もしも……万が一のことがあれば、多くの部隊派遣をお願いします」

 ルイジルの目は決意に満ちていた。

タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 21:12| Comment(1) | 小説

5巻特典ファルタス提督 P1

『日本国召喚 五 新世界大戦』メロンブックス特典
タイトル『ファルタス提督』

■ 第二文明圏 マギカライヒ共同体 港町ミル 日系病院

 日本国の医療はこの世界でも高い評価を得ており、セイカーロという日系の大病院は、日本と国交を正式に樹立していないにもかかわらず、マギカライヒ学院連合(事実上の政府)からの直接の依頼で、首都エーベストに近い港町ミルに設置されている。
 今、この病院は戦場の様相を呈していた。
 次々と運び込まれる負傷した兵士たち。ある者は呻き声を漏らし、重度の負傷兵に対しては現地の看護師が回復魔法をかけ続け、先進的な手術室に移送される。
 彼らは世界連合艦隊参加国の兵たちで、バルチスタ海域にほど近いこの港町ミルが、ニグラート連合で収容しきれなかった負傷者たちを受け入れているのだ。
 そんな一室で、1人の男が目を覚ました。

「うぅ……ぅぅぅ……」

 白く、無機質な天井が視界を覆う。

「お……俺は……助かった、のか……?」

 全身に痛みが走り、思うように動かせない。
 鍛え上げられた肉体を持つ中年の男ファルタスは、何があったのかを思い出す。
 中央世界の文明圏国家として、艦隊を率いて国の威信を背負い、世界連合艦隊に参加した。
 戦闘状態に突入した直後、迫り来る急降下爆撃機を魔法で迎え撃とうとした瞬間、敵から放たれた光弾が船を貫いた。
 魔法を使う暇もなく、船の爆発とともに海へ投げ出されたのだった。

「あれほど……修行に打ち込み、鍛錬したのに……まったく……実戦で、役に立つことはなかった……」

 国の代表として、自分は戦場に挑んだ。
 敵と戦うまでは、圧倒的な自信があった。

「何が大魔導士ファルタスだ……!! 何が英雄……ファルタス提督だ……!!」

 部下がどうなったのかさえわからない。自分が今までやってきたことは、まったくの無駄であったとさえ思えてくる。あまりの悔しさに、涙が頬を伝った。

「あ! 気がつきましたか! 先生――!!」

 白衣に身を包んだ女性が、ファルタスの呟きを聞いて誰かを呼んだ。

「おお! 意識が戻りましたか、よかった……貴方は生死の境をさまよっていたのですよ」

 廊下から現れたのは、白衣を着た老人だった。

「助けていただいたのですね、感謝します。ありがとう」

「あと1週間もすれば、リハビリとして街の散策もできるようになります。もう少し辛抱してください」

 担当医はファルタスの状態をチェックすると、すぐ戻っていった。
 ファルタスは、どうやって自分はここへ運び込まれたのか、戦いの結果はどうなったのかを、周囲の負傷者に聞いた。
 戦いは痛み分けに終わり、自国の軍は壊滅、部下も多くが戦死していた。
 自分は無能だ、部下の命すら救えなかったとファルタスの気分は沈んでいく。

■ 1週後

 だいぶ回復し、身体も動くようになってきた頃、ファルタスは個室へと移された。
 ――コンコンコン………。
 個室の扉がノックされ、入室を促す。

「失礼します」

 軍服に身を包んだ者たちが3人、入ってきた。

「ファルタス・ラ・バーン提督ですね? 私はマギカライヒ学院連合首都防衛部陸上隊のルイジルと申します」

「中央法王国海軍のファルタスです。何かご用件でしょうか?」

「本日は、お知恵を拝借したく参りました。提督は大魔導士でもあられるとお聞きしています。魔法帝国の魔法も研究しておられたとか」

「それはまぁ……そうですが」

 ファルタスは古の魔法帝国、光翼人が個人で使用できる魔法の研究者でもある。
 魔法帝国の魔導機関もすさまじい性能だが、個人魔法も現代魔法とは隔絶したものであった。
 ものによっては国家機密にあたるため、話すことはできない。

「実は……我が国の首都北方100qに、古の魔法帝国の遺跡の1つがあります」

「ほう?」

 魔法帝国の遺跡は、各国が国家機密として取り扱っている場合がほとんどである。
 そんな国家機密の他国の軍人に話すなど、通常では考えられない。

「……先日、その遺跡の調査中に研究員があるボタンを押したところ、棺が開かれ、化け物が出現したのです」

 ルイジルの口調が重くなる。

「その化け物は我々が保有する文献には記述がなく、すさまじいまでの魔力を持ち、調査隊の隊員30人中19人が殺害されました」

「な……なんと!」

「それだけではありません。化け物討伐のために陸上隊20人を派遣したのですが、これも全滅してしまったのです!」

「軍人がやられてしまったのですか」

「ええ。しかも現在、化け物は大型ゴーレムを20体作成し、首都に向けて侵攻を開始しました。マギカライヒ共同体学院連合は、同案件を国家の非常事態と捉え、現在陸上隊主力の本格派遣を決定しています。しかし、我が国も機械文明に重きを置いた国、魔法の知識が乏しい者も多く、古の魔法帝国に精通する者が少ない。そこで、魔法に詳しいファルタス提督がセイカーロ病院に入院されていることを聞き、お話を伺いに参りました」

「回答できる範囲でお話ししましょう。化け物の特徴を教えていただけますか?」

「背丈は人間の成人男性ほどの大きさです。全身が……ぶつぶつした皮膚に覆われ、強力な魔力を帯びています。魔法を使用する際は、背中から光の翼が生えたかのごとく輝きます」

「ま……まさか、光翼人そのものではないでしょうね?」

「いえ、光翼人は目鼻口の顔立ちが整った、肌も人間に近い色白であったと文献に残っていますので……今回の化け物は肌が青だったり緑だったり、部分的にまだらです。目もどす黒く、魔物に分類できると思います。口から強力な魔力弾を放ち、その威力はワイーバーンロードの導力火炎弾を上回ります。さらに、魔力障壁も展開できるようで、小銃弾が弾き返されたとの報告も受けています」

 ファルタスは特徴を黙って聞いていたが、ある可能性に至る。

「まさか……研究中だったとされる、量産型ノスグーラでは?」

「ノス……? それは?」

 量産型ノスグーラ。古の魔法帝国、ラヴァーナル帝国は生物学において、新種の生物を創造できる領域まで研究が進んでいた。
 竜魔大戦で多くの戦死者を出した帝国は、自分たちに変わる戦闘生物を研究していたとされる。
 その試作型の一種が、おとぎ話に語られる魔王ノスグーラであった。
 試作型戦闘生物たったの1体で、過去文明水準が低かった各種族は絶滅寸前まで追い込まれたのだ。
 古の勇者たちによって封印された魔王ノスグーラが先日復活し、トーパ王国の総力と科学文明国家日本国により駆逐されたという話は記憶に新しい。
 ただ中央法王国の文献では、ノスグーラを製造する上で使用する魔力量が尋常ではなく、あまりにもコストパフォーマンスが悪かったため、型式の異なる少数が製造されたのみで量産には至らなかったと記述されていた。
 余りある魔力量、この惑星に存在する魔物を操る念動力、そして高い忠誠心、そして永遠の寿命を与えたが故に、さすがの光翼人も再考せざるを得なかったようだ。

 これを反省した魔法帝国は、魔力量を抑え、念動力を削り、適度な戦闘能力と知能を与え、魔導兵器を自ら操れる程度の廉価版≠設計することとなる。結果、光翼人を模した形が最適と考え、魔力を放出する際は光の翼を展開する化け物が完成した。
 仮称・量産型ノスグーラは型式も様々であったとされるが、翼のような光を発する化け物であれば、おそらくそれであろう。
 ファルタスはこのように説明した上で、マギカライヒ共同体の使者に尋ねる。

「その化け物は、よもや魔導兵器は持っていませんでしたか? もしも古の兵器を持っていたら、非常に厄介ですぞ」

 古の魔法帝国兵が陸戦で使用した数々の兵器群は、どれも伝え聞くだけで現在の文明水準の戦況を覆しうるほどの兵器であり、仮に使用されていれば、敵が単体とはいえマギカライヒ共同体では荷が重いだろう。

「いえ、魔導兵器のようなものは今のところ確認されておりません。しかし、ただの魔物ではなく古の兵器の一種だったとは……これは……他国にも支援を仰ぐ必要もありますね」

「私もその化け物を一目見てみたいものです。何かお力になれるかもしれませんし」

「是非お願いしたい。提督の魔物の知識は、我々には非常に助かります」

 いくつかの確認事項を経て、マギカライヒの軍人たちは本部に戻っていった。

古の魔法帝国製兵器≠ェ絡む問題、そして万が一の場合は国家級の危機になると考えたマギカライヒ共同体は、過去に同様の兵器を駆逐した日本国に対し、自衛隊の派遣を要請。

 これを受けた日本は、有害鳥獣駆除の国際貢献の名の下、陸上自衛隊の派遣が決定した。

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posted by くみちゃん at 21:11| Comment(9) | 小説

2020年01月30日

第98話 日・グ大海戦2 P5


「現在被害確認中、巡洋艦ベルナンテ及び駆逐艦バリスター連絡取れません」

 着弾地点の煙が徐々に晴れていった。

「駆逐艦バリスター轟沈、巡洋艦ベルナンテ大破、戦闘継続不能」

 敵の攻撃を防ぐ手立てが無いことが判明した。
 ただ的となり、撃たれ続けるしか手が無い。
 どうすれば良いのか解らず、ただただ女帝ミレケネスは立ち尽くす。
 
 その時、一時的にレーダーが回復した。
 監視員がのぞき込んだ画面には、艦隊直近が光点で埋め尽くされる。

「レーダー回復、敵ロケット攻撃多数飛来!!距離30km、数は……250以上です」

「……なんてことだ」

 ミレケネスの率いる第1先遣艦隊の数を上回る敵の攻撃。
 圧倒的な物量で挑んだつもりだった。しかし、敵は1発で巡洋艦すら大破させる高威力で100発100中の弾丸を、艦隊数以上に打ち込んできた。

 沈黙の絶望が艦橋に広がる。 
タグ:日本国召喚
posted by くみちゃん at 20:47| Comment(2849) | 小説